機動戦艦ナデシコ  アナザーストーリー

 
                            世紀を超えて

                      第34話 平穏に一番遠い旅路

 

…大空を輸送船が行く…。

アキトは今、アムを乗せてピースランドに向かっていた。


…とは言っても暇なものだ。

実際の操縦はオートパイロットが行っていると言う事もあり、アキトはヒマを持て余していた。


…そんな訳で、今は先日ダッシュから届いた『強襲フレーム』なる新型エステの説明書を読んでいた・・・。


「…スペック的には普通のと変わらない…か。」


…強襲フレーム、その正体は空戦フレームに砲戦の装甲をくっ付けた物だった。

形としては空戦その物だが、二周りほど大きい。


…増加した重量は、エンジンの出力を上げる事で解決して、

ついでに陸戦のホイールダッシュも装備済み。


性能としてはサレナはおろかリモニウムにすら及ばない、量産機に毛が生えた程度。

…無論、砲戦並みの装甲を持った空戦フレームというだけで大した物かもしれないが。


まあ、新型のエンジンを搭載し、一見不要に見えるパーツをあちこちにゴテゴテくっ付けている以上、ただの機体では無いだろうが。


ダッシュ曰く、『チョットした実験機』だと言う。

はっきり言って、何が出るか解らないパンドラの箱のような機体だった…。


…。


「…まあ、使う事も無いよな…ただの護衛なんだし…。」


次に…武器の説明を読んでいたアキトだが、冷や汗掻きつつポツリと呟く。

…あの45サンチ砲以外にも、笑えない武器が目白押しである。


「白兵戦用の武器がチェーンソーだしな…。」


………今のアキトの言葉はきっと幻聴だろう。(汗)


…。


「アキトさーん!…ご飯にしましょう?」


…何時になく上機嫌のアム。


家出同然で国を飛び出し、独立派に荷担した上、

行方不明扱い(死亡扱いだった時もある)にまでされた放蕩王女様のご帰還にしては、

実に不謹慎だ。


…まあ、惚れた男との二人旅…見逃してあげましょう。


置いてかれたラピスが、丑の刻参りしてる事だし…。(汗)


…では、生中継。


「…アム…許・さ・な・イ……!!


かっつーん!
かっつーん!
がっつーーーん!!



「…因みに、アキトも帰ったらお仕置きだヨ?」


…カッツー−−ーン!!


…以上、同時刻の日本からお送りしました。(汗)


…。


…一方のアキト達。


「ぶるる…なんか寒気が…。(汗)」

「アキトさん…寒い時は暖かい物を食べると良いです。」


…そう言ってスープを盛るアム。


「…有難う、アムちゃん。」

「はい、これ…ボクの手作りなんです…。」


…嬉しそうなアム。

アキトも何処かほほえましい気分になっていた。


(…感覚も戻ったし…後で料理…してみるかな…。)


…そう思いつつ、スープに口をつける。

スープは…何処か懐かしい味をしていた…。


「…どうですか…アキトさん!?」


…ニコニコしながらアムが聞く。

それに対し、微笑むアキト…。


「懐かしい味だな…。」

「…ホントですか?」


…アキトの脳裏に懐かしい女性達の姿が浮かぶ…。

 

 

 

 

ユリカ・メグミ・リョーコ…

…。


…ばたっ


「…あ、アキトさん!?」


…アキトは倒れた…。(爆)


第八話…もう一度読んで見てください。何気なくですが…既に書いてますから。

アムの料理はユリカ級だって…。


…。


ゆさゆさ…


何かに揺さぶられた気がした。

…そして、アキトの意識が目覚める…。


「う…ん?」

「アキトさん!!」


…見ると、心配そうなアムの顔…。


「はは…チョット立ちくらみがね…。」


流石に、不味過ぎて死にかけたとは言えないアキトであった…。


「それなら栄養つけないと…はい、お代わりどうぞ!


…それは失敗だったようだが…。

…因みにアキトは、その後どうにか逃げきったらしい…。


…。


『アキトー、いるー?』


…ダッシュが突然通信を入れて来た。


「…どうした?」

「あ、ダッシュさん?」


怪訝そうに答えるアキト…。

しかし…何故アムがダッシュの事を知っているのだろう?

…確かに…見た事はあるはずだが…。


『あのね、この先にテロリストがいるんだけどさ。』

「…そうか、なら排除する。」


…言っている内容はかなり過激だが、

世間話の様に言われると、何処か危機感に欠ける…。


『連合軍の艦隊をそのまま乗っ取ってるみたいだから、戦力は高いよ?』

「…なんで艦隊ごと乗っ取られるんだ?」

『月であれだけ負けが込んでればねぇ…見限る連中も出てくるよね…。』

「…。」


『いや、アキトが悪い訳じゃないからさ。』

「…ともかく、このままだと拙いんだろ?」

『そうだね…拙そうだね。』

「…ならば、行くだけだ!」


そして、アキトは輸送船の格納庫へ…


「…はい?」


…行って硬直した…。


可変機構の調子は良いよ〜♪』


…そこにある筈の強襲フレームが無い…。

そして、代わりに…、


「あの戦闘機は何だ…?」

『強襲フレーム・高機動形態だけど?』

「まさか…あの体中の謎のパーツは…。」

『可変用パーツだよ。』


…そこにあるのは…一言で言うなら…Zガンダムのウェイブライダー?


『正確にはリ・ガズィ・カスタムを参考に作ったんだけどね。』


…どうやら変形して戦闘機になるらしい。

人型の時は、戦闘機パーツの殆どがバックパックに移動する。


変形の意味があるのかどうかは非常に疑問だが…ま、実験機だし…いいか…。


「…まあいい…行くぞ…ぉ?」


…そして、気づいてしまった…。


「…なんで45サンチ砲がくっ付いている?」

『…主砲。』

「…あれで戦闘機と戦えと?」

『戦闘機とは、機銃代わりのラピッドライフル×2で戦ってよ。』

「じゃあ、何の為の主砲だ?」

『ふっふっふ』

「怖いから笑うな…。(汗)」


…ま、そんな訳で大空へと羽ばたく強襲フレーム高機動型…。(名称募集中)

一抹どころか多いに不安を抱えつつ、アキトは飛ぶ…!!


前方に哨戒機らしい機影が見えた…!!


…。


ドッコーーーーン!!


「…なんで…すれ違っただけで爆発する?」

『衝撃波が凄いからね…ま、その為の高機動型なんだけど。』


…実は全速力ではフレームが持たなかったりする。

その為の高機動型…と言う事は、サレナと似通った設計思想の元で作られたのだろう…。

…そう、実は高機動型のパーツは追加装甲と同意義なのだ。


「…しかし…何でこんな物を…。」


アキトのぼやきも当然かもしれない。

…少なくともこの時代にあって良いものでは無い。


『このまま僕が、この遺跡にいたとしてさ…。』

「うんうん」


ドゴーーーン!…一機撃墜。


『元の時代になったらまた戦争が起こる訳じゃないかい?』

「…ま、そうだろうな…全ては遺跡から始まった訳だしな。」



ボガ−−…ン!…もう一機。(汗)


『その時…僕はどうなる?』

「…成る程、あまり良い事にはならないな…。」


『だからさ、自分の身ぐらいは守りたいんだよ。』

「…その為の実験機か…。」

『半分は趣味だけどね。』

「…。(滝汗)」


『それにさ、戦闘機ならこの時代の地球にもあるじゃない。』

「…確かに、今エステバリスを出すのは拙いな。」

『まだ、連合軍側の量産体制は整ってないみたいだしね。』


「…。」

『どしたの?』

「…俺は…取り返しのつかないことをしてしまったんだよな…。」


連合側にまでエステが流出した事に責任を感じるアキト…。


『何を今更…。』

「…うぅ…。(汗)」



そんな間抜けたやり取りの間にも、落ちていく哀れなテロリスト諸君・・・。

…アキトの撃墜数は既に10機を数えていたりする。

本人すら気づかないうちに…。


「…何なんだあの戦闘機は!?」


…そして、事情を掴めず混乱する敵本陣。

どうやら、旧式の空母を乗っ取って司令部を置いているらしい。


ま、アキトの進行方向に居たのが不幸だったって事で。


…。


「…敵艦隊発見、ダッシュ…行くぞ!」

『主砲はフィールド全開で撃たないと機体が壊れるからね〜。』

「了解…発射!」


ドオオォォォォゥ…ン!!………チュドガァァァァン!!


…駆逐艦が一発で弾け飛ぶ!!


「…なんて威力だよ…。(汗)」

『砲戦のでさえ120ミリだからね…技術発展を差し引いてもおつりが来る。』


「でも、廃れたんだろ?」

『まあね…戦艦の巨砲は航空機の機動力には無力だったんだ。』


…だからって航空機に巨砲を乗っける事は無いと思う…。


…。


『…それじゃ、さっさと片付けますか?』

「…そうだな…こんな所で足止め食らっている場合じゃない!」


…その時…ダッシュは確かに笑った…と、アキトは後に語る。


『…それじゃ、アレ試してみるかな?』

「あれ?」

『うん、取りあえず変形して。』

「わかった。」


…戦闘機パーツがバックパックに移動する…変形し、そこに人型の機体が現れた!


『そしたら…ボソンエンジン最大出力で、転送されるエネルギーは両腕の間に!』

「…OK………溜まって来た…!」


…太陽から持ってきた尋常では無い量のエネルギーが両手の間に収束する!!


『そして、感情を込めてエネルギーを引きだぁす!

「…待てぃ!!」


…ストップをかけるアキト。

何かに気づいた様だ。


『…そして叫ぶ!ストナァアアア

「待てって言ってるだろう!」


『…なに?いいとこなのに…。』

「それはもしや…」


…。


『ゲキガンってさ…アレに似てるよね…ゲキガンフレアなんてシャインスパ』

「アレそのものなのは確かだ!!…だが、だからって!!」

『一回試してみたかったんだよ〜。』

「第一、アレはゲッター炉のエネルギー!サンシャインって付いてても太陽エネルギーは」


…はっ!!


あの馬鹿なやり取りの間にも…両腕のエネルギーは溜まりつづけていた…!!


『拙い!…装甲が溶け始めてる…早く捨てて!!』

「…わ、解った!!」


…ぽいっ…。


…フワフワと漂いながら、敵艦隊の中心辺りに落ちていく偽ストナーサンシャイン


『あーあ、カッコ悪い…。』

「…そうだな…。」


…!


『…あ!、アキト…退避だよ!!

「え?…あ!!


…機動力に勝る高機動型に変形し、その場から離脱を図るアキト。

…一方…。


「…くっ…敵の照明弾は何時になったら消えるのだ!?」

「目くらましの間に逃げる気みたいですね…。」


…何も知らない、哀れなテロリスト諸君…。


…。


………カッ!!


…。


…その日…沖合いで漁をしていた沿岸の漁師はこう語る…。


「…あの時…太陽は二つになった…。」


と…


…。


数時間後…。


「で、どうなったんですか?」


…アキトは無事に帰りついたようだ。

アムと何やら話している。


「…敵を殲滅できたのは良いんだけどね…エンジンが少し駄目になっちゃってね…。」

『何とか修理できるレベルだけど、危ないからもう必殺技は無理だねー。』

「確かに無理だ…確かに。」


…何処かホッとした表情のアキト…。

何気に恥ずかしかったらしい。


「…でも、これで暫くはゆっくりとした旅が続くんですよね?」

「たぶんね…。」

「良かった…アキトさんに何かあったらボク…。」

「アムちゃん…。」


「あ、そうだ…ご飯、もうすぐですから少しだけ待ってくださいね。」


…。(汗)


あ!レーダーに反応…さっきの連中の残党かな?…じゃ、行って来る!

「アキトさん!ご飯は!?

「ゴメンね…お詫びに明日からは俺が作るから…じゃ!」


…何かから逃げ出すように走り出すアキト。(爆)

そのまま大空へと飛び立つ…。


「ふう…しかし、アムちゃんがあんなに料理下手だったとは…。」

『災難だったねアキト?』

「ああ、ダッシュ、有難う…ニセの警報鳴らしてくれて。」

『…解った?』

「ああ…俺は少し寝るから、操縦宜しく…。」


…。


それから暫くして…


『…アキト…アキト?』


…そして、アキトが完全に寝入ったのを確認すると、ダッシュは静かに語り出す…。


『さっきのテロリストだけどさ…上のほうに何人か、ピースランドの人間が混じってたんだよね…。』

『向こうは…アム君の事…予想以上に危険視してるのかも知れない…。』

『…多分…血の雨が降るよ。』


…何処か重苦しい静寂が辺りを包む。


『アキト…君は…やはり…!?』


その時…ダッシュが何かを察知した!


『!!…アキト…敵の奇襲だ!』

「…ん?」


『データ照合…あれは…プロの誘拐団だよ!!』

「何?…狙いはやはりアムちゃんか?」

『八割方は間違い無い!』

「くっ…行くぞ…!!」


…。


その日から…アキト達がピースランドに辿りつくまで…何者かの襲撃が途絶える事は無かった…。

…時にはマフィアが…時にはテロリストが…。

果ては暗殺者まで…。


…そんな、平穏に一番遠い旅路の果てに…アキト達はピースランドに辿りついた…。

そこで待つ物は…一体…。

続く


−−−火星極冠遺跡−−−


アキト達がピースランドに辿りついたその頃。


…何処と無く活気に溢れる中にも、荘厳さを残す空間がある…。

だが、そこに生命の息吹は感じられない。


その中央にて、演算ユニットと融合したAI…オモイカネ・ダッシュは静かに考えていた…。


『…わかんないなあ…どうしてアム君が狙われないといけないんだ?』


誰が狙っているかは一目瞭然だ…ダッシュが解らないのは別な事である。


『…アム君は実母が亡くなった時…家を継ぐ権利を放棄している。』

『それに記録を見ると、ホントに仲良さそうに見えるんだけどなァ…。』

『それなのに、どうしてあの人は彼女を狙うのかな?』


…なんだかんだでダッシュが生まれてから、経過時間で数年しか経っていない。

まだ、人間の心を理解するには経験不足なのだ。


『ま、アキトもいるし…大丈夫とは思うけど…。』

『人の心か…なかなか理解できないな…。』


…理解しない方が幸せかも知れないが…。


…。


『…あ、きたきた…。』


…その頃、火星に降り立ったシャトルがあった…。

そのシャトルは、数十人の人間を降ろすと、すぐにまた飛び立っていった…。


『草壁夏目…月臣弦悟郎…白鳥五十六…』

『…あーあ、皆落ち込んでる…ま、しょうがないだろうけど…。』


…。


…その頃、ナツメ達は研究所への道を移動していた。

どの顔にも明るさに相当する物は無い。


だが、それも仕方の無い事だ。

…月での出来事は、彼らに暗い影を落としていたのだから…。


「…くぅ…内部に敵のスパイが居たとは!この白鳥…一生の不覚!」

(…それは違う…最初から…連中は…グルだった…!)


何か勘違いしている白鳥に対し、つっこむ事も出来ない月臣。

…ふと、気になってナツメの方を向く。


…ナツメは…弱々しく…笑った…。


「大丈夫…月臣君の所為じゃない…アタシを…庇ったからなんでしょう?」

「ナツメ…済まない…俺は…テンカワを…。」


だが、ナツメは…月臣の声など聞こえていない様だった…。


「悔しいよねー…結局アタシ達…唯のピエロだったんだ…。」

「…。」

「あの時無茶して月まで行くなんて言わなきゃよかったな・・・。」

「…。」

「機材全部使っちゃって…もう、暫く火星から出られない…アキトの…お墓参りも…出来ない…。」


…そこまでいって固まるナツメ…。


「お墓参り?………そっか…アキトは…もう…居ないんだ…。


…今まで、あえて意識の外に追いやっていたのだろう。

ボロボロと涙をこぼし始める…


…その目に、何かが映った…。


「…あ、あれ!?」


…車を止めさせ、ある場所に駆け寄る。

…そこには…大破したブラックカイザーの残骸が…風雨に、晒されていた…。


「あれ…アキトが…アキトが前に乗ってた奴だね…。」

「ああ、そうだな…。」


…感慨にふける二人…そこに白鳥が追いついてきた。


おおっ、あれこそはブラックカイザー!」

「ああ、あの頃が懐かしいな…白鳥…。」

「ああ、そうだな弦悟郎…楽しかったな…。」


ふと、ナツメが顔を上げた。

…何処か遠くを眺め、ポツリと呟く。


「あの頃か…楽しかった…本当にそう思う…。」


…あの頃は…戦況的には苦しかった…だが…自分たちには希望があった。



…それに比べて今はどうだ。


月と火星は確かに独立を手にした。

だが、その内部は既に腐り、仲間でも容赦無く切り捨てていく。


…現に、ナツメ達は体良く追い払われたような物だし、

地球からの物資が止まった月では、既に餓死者も出ていると言う。


…そして…なにより…かつて、彼らを救った英雄はもういない…。


…。


…楽しかった時は既に過去の物語となり、今の彼らの前途には暗い暗雲が立ち込めていた。

山崎は月に抑留され、七瀬・アム・ラピスに至っては居所すら知れない…。

…彼らはそんな状況に置かれて居たのだ…。


…。


所変わって、また極冠遺跡。


『大変だなぁ…あの人達も。』


…他人事の様に言うダッシュ…だが、確かに他人事だ。


『まったく…困ったもんだね、如何したら平和に暮らせるんだろう?』

『…そうだね…暫く考えてみるのも悪くないか…。』


…そして、長い思考に入るダッシュ。

…答えは出ない…少なくとも…数年で解る問題では無い…。

::::後書き::::

BA−2です。

第34話です!

…なんか、大変な事になりそうな予感が…!


アムは果たして無事でいられるのか!?

…そして、火星に追っ払われたナツメ達の運命は!?


…今後とも頑張りますんで応援宜しく!

では!

 

 

代理人の感想

 

・・・・まあ、オリジナルから150年後の技術で作られてるわけだし・・・・

・・・軍艦の装甲にしたって往時よりは薄いだろうし(多分)・・・

とはいえ駆逐艦を一撃か(汗)。

確かにあの威力でピンポイント射撃をされたらたまったもんじゃないな〜。

 

それにしても。

形の上では独立したとは言え月で自立した経済を確立できなければ

結局地球に支配されるだけの筈。

月の独立派はそこらへん理解してたんでしょうかね?

いや、これまで地球が搾取してきたものを正当な価格で売れば経済的には多分自立できると思うんですが。

経済封鎖される状況で食糧の自給が出来ないのは・・・・・・・さすがに厳しいなぁ。

 

 

 

・・・・ところでこの世界のダッシュはどこでこんな趣味を覚えたんだ(笑)?