機動戦艦ナデシコ  アナザーストーリー


                            世紀を超えて

                       第57話 懐かしき土地にて

 

『アキト…アキト…』
「…ダッシュ?」
『…来たよ…やっぱり。』
「そうか…解った。」


…。


アキトが…この極冠に隠れ住むようになってから、はや二ヶ月…。

…火星にやってきた者達がいた…。


「だが…まだだ。」

『そうだね…まだ…時ではない。』

「ダッシュ…俺は間違っていると思うか?」

『うん、間違ってる。(きっぱり)』

「…そうか。…だが、俺は俺の信じた道を行くだけだ。」

『…それがどれだけの悲劇を生んでると思ってるの?』

「さてな…何人死んだことか…ま、コロニー連続爆破犯だし…何を今さらだ。」

『そう言う事だけじゃないんだけどね…。』

…。

…その頃、研究所(笑)


「…そう、月は連合がとり返しちゃったんだ…。」


「ああ、もうじきここにも来るだろうな。」

「すいません、ナツメさん…自分の力が足りないばかりに…。」


…ナツメ・月臣・白鳥が、沈痛な顔で話し合っていた。


「仕方ないよ。…第一、あの爺ちゃん達がろくな事しないってのは解ってたんだから。」

「…こんな時、山崎かアムが居てくれればな…。」


「それよりテンカワさんが…あ、済みませんナツメさん…。」


謝る白鳥。だが、ナツメはふうと肩をすくめるだけだった…。


「…いいの…でも、覚悟は…しとかなきゃならないわね…。」


そして…窓の外を見る。


…この時研究所一帯は、ある種の難民キャンプと化していた。

火星から逃げてきた連中が数多いたのである…。


…連合の支配を受け入れる事の出来ない者達。

それは、前回の歴史を遥かに上回る数であった…。


「…連合が来たとして…耐えられそうに無いわね。」


「ああ、武器も少ない…以前よりは多いがな。…その上、食料が無い。」

「…第一、あの連中の殆どは覚悟が出来ていません。…逃げ惑うだけでしょうね…。」


…静かに…目を閉じる3人。

瞼に浮かぶは…懐かしく、楽しかった日々…。


「…アキト…。アタシは頑張ってるよ…でも、そっちに行く日も近いかもね…。」

「テンカワさんか…あの人さえいれば…いけないな、まだ頼っている…。

「…。(…テンカワよ…どうやって責任取るつもりだ?…俺は知らんぞ…。)


…月臣は、胃薬を飲み込む…。

最近は…1日に10粒は飲んでるような気がしていた…。


そして…彼はもう一度窓の外を見る。

そこでは…火星を追われた独立派の面々が何やら話し込んで居た…。


「なぁ…俺達これからどうなるんだ?」
「なぁに、前はこれよかずっと少ない数で、連合の大部隊を追い返したんだ…大丈夫さ。」
「そんなに簡単なら…良いんだけどね…。」
「心配性だな…連合だってここまでは来ないさ。」
「そうそう…。」



…危機感に目覚めた者は…いまだに少ない…。

 

…。

 

その日の夜


『マスター…マスター…』

「プラス…か?」

『はい…ご報告します。…サレナが自己進化を始めました』

「なに?」

『…マスターのナノマシンがサレナにとり付いた模様です』

「…問題は?」

『ありません…デメリットは無いはずです』

「ならば、放っておいてくれ。」

『了解…お休み中に失礼しました…』

…。

『おーい…アキト?』

「…ダッシュか?」

『うん…て、言うか僕以外に誰がいるのさ?

「…そうか…な…。いや…そう、かもな。」

『でさ、さっき…なんか独り言喋ってなかった?不気味だよ。

「え?…あ、ああ…そうか、済まない。」

『…まったく…脅かさないでよ?』

(ダッシュ…気づいてないのか?…まあ良いか、黙っていよう…。)

…。

…そして…さらに数日後


『アキト…来たよ?』

「ああ、遂に連合の総攻撃だな。」

『どうする気?』

「サレナで出る。…時間ぐらいは稼げるはずさ。」

『…でも、それじゃ意味無いよ?

「…既に手は打ってある。」

『ふーん、じゃあ…ま、気を付けてね。』

「ああ、これで暫くお別れだな。」

『…随分長い「暫く」だけどね。』


…そこに…ラピスが入ってくる。


「アキト…準備できたよ。」

「ああ、じゃあ…行くか?」

「うん!」



…そして…極冠の地から、サレナが飛び立って行く…。



…。




…研究所


「遂に来たわね。」

「ああ、前回以上の大部隊。…指揮官も…今回は、有能な奴が選ばれてるみたいだな。」


「…対して、こちらは切り札を失い…残っている者は小粒になってしまっています…。」

「小粒?…ぶー、叔父ちゃん…仲間を悪く言っちゃ駄ぁ目!」


…以前「ハクチョウ発言」で白鳥を塩の柱にした女の子だ。

…なんで司令室にいるんだろう?…勝手に入ってきたのかも知れないが…。


…その時である。

ゴゴゴゴゴ…


「…船団が…飛び立って行く?」
「臆病者が…逃げ出したのだろうな。」
「…連合に…降伏する気ですかね?」


…それは当たっていた。

船団は、思い思いの方向に飛び立って行く…。


地球側に向かう者…外宇宙に向かう者…。

だが、一つだけ言える事がある…彼らは、勝てないと判断したのだ…。


「…ま、かえってせいせいしたかもね?」

「そうだな…残ったのは肝が有る奴ばかりのはず。」

「…以前の様に…か…。」


希望的観測を述べる3人。

…だが…現実は厳しい。


「あれ…連合軍の艦艇!?」

「…なんで…裏側から!?

「…おかしいと思った!…奴等…火星を囲んでいたんだ!!


…閃光!…爆発!!

…逃げ出そうとする船団が…光と爆風に包まれ…消えていく。


「…し、白旗を揚げている船まで?」

「…くっ…昔を思い出させる!!」


「…そうでしたね…テンカワさんが来る前の我々は…。」


…何時の間にか忘れていた…忌々しい記憶の封印が解かれる。

そう…悲惨な…かつての境遇が…今、彼らの中に…蘇ってきていた…。

…。

そして…船団を残らず破壊して…連合軍の大艦隊が、研究所を囲む。

…まさに猫の子一匹逃がさぬ様に…と、張られた大包囲網であった…。


「…まさしく必殺の陣形ね。」

「逃げ場は無い…か。」

「…なら…一機でも多く道連れですよ。(苦笑)」


…そして…形ばかりの降伏勧告が行われる。

だが…元から助ける気など無いのは解りきって居たので…容赦無く通信を切る。

…。

…その時である。その周囲…火星にいる全ての者達の頭に、声が聞こえたのは…。


『黒帝が…神鎧を纏い…やってくる…』

『黒き百合…ブラック・サレナ…』

『呪われし…復讐者の剣…』



『…滅びを望まぬ物は…敵味方無く…この地を離れよ…』


…。


「なに!?…今のは!?」

「黒帝?…まさかテンカワさんですか?」

「…。(…テンカワ…お前、結構…派手好きだったんだな…はぁ。)」


本日12粒目の胃薬に手を伸ばす月臣。

…なお、これにアキトはまったく関与していません。(笑)


『…ん?…何かあったのかな?』


…ダッシュも関与無し。(爆)


…。


…連合軍戦艦内


「おい…マスミ…聞いたか?」

「ああ、ヤマダさん…はい。でも、どう言う事なの?」


「さあな…でも、一つだけ解る事がある。」

「…ええ、早く降りないと…落とされそうですね…。」


…連合も…少しばかりパニックしていた…。

そして冷静さを残す者は…我先にと戦艦から降下して行った…。



…。



…そして…それから丁度10分後…。


…ドォォォ…ン…!!


…連合軍の戦艦が…突如として爆発する…!!

…それが…戦いの始まりだった…。


「な…あれは…連合議会を壊滅させた…!!」
「…どうやって先回りしたんだ!?」


…だが、突如とした現れた黒い機体は答えない。

ただ…鬼神の如く敵を討つのみ…。


…。


「…アキト…?」

「生きて…いたんですね…。」


…感動しているナツメと白鳥。
…既に、月臣の姿は無い。(笑)


「解るわ…あの動き…間違いなくアキトのものだ…。」

「ええ…間違いないでしょう。…我々の危機に…帰って来てくれたんですよ…。」


…アキトは彼らに通信一つ入れていない。

だが…彼らにはわかった。…アキトである事が…。

…希望的観測がまったく無かったかと言うと、それは無いだろうが…。

ピー、ピー…


「ん…これは!!」

「なに…これは…地図かな?」


…レーダーのモニターが、いきなり切り替わる!

そして、…ある場所にマーカーが付いた…。


「…火星軌道上…?」

「ここまで行けと言う事でしょうか。」


「…多分ね…。」

「で、どうなさるんです?」


…ナツメは悪戯っぽく笑う。


「…アタシはアキトを信じてるんだから!」

「そうですね。…では、行きますか。」


「…でも、アタシ達は…居残りで戦闘を続けるけどね。」

「…そうでした、我々の分のシャトルは無かったんでした。」


「あれ?…白鳥君の分は席があるはずじゃない?…ねぇ、司令官殿?」

「ふっ…お付き合いしますよ…。」


…そして…二人は笑った。久々に…気持ちの良い笑いであった…。


…。


唸りを上げる高射砲…そして、次々と敵を葬っていく黒い機体…!!

…それに援護され…シャトルが次々と飛び立って行く…。


…そして…何かに怯える様に敵を次々と粉砕する月臣機!

更に、何がなんでもサレナと通信しようと試みる南雲機!!


様々な思いを乗せ…戦場を駆け巡る勇者達!(一部例外あり)

そして、シャトル達は…一機、また一機と撃墜されながらも…無事に目的の地点に辿りついた…。


…。


「ここに…何が有ると言うのだ?」


…とあるシャトルを操縦していた…何処かで見たような顔の男がポツリと呟く。

…そこには…何も、見当たらなかった…。


「…大変だ…連合の連中が追いついてきた!!」
「…追いつかれる!!」

「あれ…通信が…出来ない!?」
「電波障害…しかも人為的な物です!!」


「くっ…謀られたのか!?」


…男達は…その時一瞬、騙されたのかと思った…だが。


…ドォォォン!!


突如…爆散する連合軍の艦艇…。


「なっ!?」


…そして…シャトル達を護る様に…鋼鉄の虫達が…周囲に集まってきていた…。


「…これは一体!」

『木星の無人兵器さ。』


「…山崎!?」


…山崎再登場。

…Vサインしながら通信画面に現れる!


山崎は…この事態を予見していたアキトの依頼により、木星に向かっていた。

…そして…史実より遥かに多いであろう漂着者達の為に、プラントで生産活動を行っていたのだ!!

秋山さん…こっちの戦艦に乗り換えてください。…安住の地にご案内しますから!!』

「了解した。…山崎…助かったぞ!(泣)」

『お礼はテンカワさんに言ってよね…僕は彼の指示に従っただけだから。』

「…黒帝?…やはりアレは彼なのか!?」

『うん…多分。』


…因みに、先ほどから行っている電波妨害により、連合も地球と連絡が取れない。

故に木星の存在がばれる事は無い…。


…数年間に渡り、孤独と戦いながら有事に備えてきた良い人山崎。
…その苦労が報われようとしていた…。


なお、秋山先祖の出番はこれでお終いである。(笑)

…。

サレナ・コクピット内


「山崎は…間に合ったか。」

「うん。予定通りだよ。」


…アキトは敵を撃墜しつづけながらも、何処か上の空であった…。


「…これで木連も起こるだろう。…歴史も元どうりだ…。」

「…でも、本当にこれで歴史が元に戻るのかな?」


「ああ、多分な。…ラピス、エステ関係のデータは?」

「全部破壊したよ。…地球の工場も、機械を誤作動させたから、今ごろ燃えあがってる筈。」


「…なら問題無いな。…これで元どうり。…細かな違いは大丈夫だろ。


…無理です。(断言)


「…じゃ、ナツメ達も助けよ?」

「ああ、そろそろ最後の仕上げだ!…南雲さんに報告もしないといけないしな。


…そして…アキトは地上近くに下りていく…。

…彼は何を考えているのだろうか…。(爆)


その答えが出る日も近い…。

続く

::::後書き::::

BA−2です。

…あまり物語が進まない…このままでは60話までにアキトを帰還させる計画が狂ってしまうかも…。
…ま、それはともかく…。


…祝・木連誕生!!(予定)

…これで、木連が無いなんて事もあり得ません。…先ずは目出度い。


ああ、そうそう…サレナの事を皆さんに紹介(笑)したのはプラスです。

…むしろ、怪しげな預言者状態でしたが…。(汗)


なお、メールで秋山の先祖はどうした?…と言う趣旨のメールを頂きまして…空いた役があったので、急遽登場させた事をここでお断りしておきます。


…今後も頑張るので応援お願いします!

では!

 

 

代理人の感想

 

ああ、秋山先祖哀れ(爆笑)!

まぁTV版では一話限りのゲストキャラだったし(苦笑)。

月臣先祖のほうがもっと哀れだし(核爆)。

 

 

 

それにしてもアキト・・・・・・・・・

 

まだ諦めてなかったんだな(爆笑)。