機動戦艦ナデシコ  アナザーストーリー


世紀を超えて

第73話 火星直上の戦い





「全艦配置につけ…主砲用意!!」


フクベ提督の声が、大宇宙に木霊する…。
これが…予言上でも一二を争うほどに有名な、第一次火星戦役の始まりであった…。


…木星からの部隊は…チューリップ数基のみ。

だが、それが呼ぶ増援の量を知るものならば、決して侮れない数であることがわかる筈だ…。


…無論、フクベ提督とて無能な将ではあるまい…。有能であるかどうかは判らないが…。(ヲイ)


…。

「全艦配置につきました!…機動兵器部隊も同様です!!」

「うむ。…まあ正直…機動兵器など無くても勝てる気もするが…それでは拙いらしいしのう…。」


旗艦のブリッジで、そんな会話が行われている…。

そこに、参謀として従軍しているアオイ・スミヤ准将が口をはさんだ…。


「…チューリップはその体積以上の軍勢を吐き出してきます。…これでも少ないぐらいです。」

「ははは…戦艦50隻以上に機動兵器を満載してきたんだ。…心配は要らんと思うがの。」


「…そうですね。…例え負けても予定調和ですし…。

「ん?…何か言ったかの。」


「いえ…。…ああ君、脱出艇と救出艦隊の手配は?

「…抜かりありません。」


…フクベ提督…哀れである。(汗)

知らぬと言う事のなんと恐ろしい事か…。


…。


さて…所変わって木星側…。

チューリップから続々と吐き出される大艦隊…。


ん?…中から夜天光…しかも3機!!


「ふふふ…愚息よ。…機動戦では初陣だが…動けるか?」

「…ば、馬鹿にするな!!」


…と、言いつつも、北斗の夜天光は初めて宇宙に出たアキト(TV)状態…。(爆笑)

まあ、幾らなんでも即座にできる物では無いと言う事だ。


…一体『時ナデ』ではいつ…宇宙での機動戦を北斗に教え込んだのか…不思議だ。(爆)
いや…まさか宇宙遊泳の経験があったと言うのか!?



…30分後。

「ふふふ…北辰殿、流石のご子息も慣れぬ宇宙戦は難しいですかな!?」

「はっはっは…南雲か。…まあ、おいおい鍛えるとしようぞ!」


「…黙れ!…第一俺は機動兵器に乗るの自体初めてなんだぞ!!」


そう言いながらも、何とかまともに動けるようになっている北斗。

…周囲とは上下が逆だが。(笑)


「ほほう…中々いい筋をしているな!…僅か数分で、一応のコツを掴むとは。」

「第一…何だ貴様の機体は!!…そのバズーカの妙なマークが気になってしょうがない!!」


…どうやら、3機の夜天光は、北辰・北斗・南雲の物のようだ。

そして…南雲機だけは、何故か巨大なバズーカを背負っている…。


「ん?…ああ、これはのマークだ。…ふふふ腐った地球連合の奴らに正義の鉄槌を!!」

「…オイオイ…。(汗)」


…何か…とてつもない物の影響を受けているらしい。(汗)

…だが、問題はその後である。


「なあ…親父…アイツ…マジで使う気か!?」

「…さあな。…我にもあやつの行動だけは読めん。」


「ふはははは…ビバ・ソ〇モン!星の屑万歳!!」


…ヤバイ!!…
マジで使う気だ!!(汗)

唯一の救いは戦術核だという事ぐらいだろうか…。


南雲義政…ギャグキャラ決定。(ヲイ)

だが、地球連合にとって脅威である事は否めまい…。


…しかし、何故だか上層部…草壁一族などがまるで出張ってこないのは何故だろう?

…勝利を確信しているとでも言うのだろうか…?


…。


…そして…運命の時はやって来た…。


双方共に配置につき、じわじわと前進している。

…このまま射程距離にはいり次第、戦闘が開始されるのであろう…。


だが…地球の一般将兵達は不幸であった…。(含むフクベ提督)


なぜなら彼らだけは、敵が何であるか知らなかったからだ。

…それはもしかしたら、逆に幸運な事であったかも知れないが…。


…そして…戦いは一発の砲撃から始まる。


…ドォォォォオオオン!!


「な…後ろからだと!?」

「…くっ…何時の間に回りこまれ…一機だけだと!?


…突然の砲撃…しかも背後からの一撃により、木連側の駆逐艦が一隻吹き飛ぶ!

完全な奇襲…だが…何故そんな事が!?


「ぬう…抜かったわ…愚息よ!!…奴を…なめるな!!」

「…親父?…ふん、一機ぐらい…問題なんか無いだろう!?」


「その通り!…北辰殿は臆された…くぁっ!?


…その瞬間、南雲機が閃光に包まれる。

…戦闘中域外なので、未だフィールドを張っていなかったのが災いしたのだ!



「ほげーっ!?」


「ビーム砲…今更そんなものを積んでるとはな…!!」

「フィールドを張っていない連中に奇襲をかけるための物だろうな。」


…とか何とか言いながらちりぢりに逃げる木連の勇士たち(爆笑)

…結局、核弾頭が爆発する事は無かったが…。(ヲイ)


「…敵は隊列を乱した。…今こそ時だ、砲撃開始!」


そして、隊列を乱した結果…完全に地球側のペースで戦闘がはじまることとなる…。

…でも…


「な、我が方のレーザーが効かない!?」

「…前方に展開している駆逐艦隊の被害増大中!」



まあ…当然の帰結であった。フクベ提督…危うし!!


…。

10分後…当初は隊列を乱した木星側が圧倒的に不利かと思われたが…。

…地球側の戦艦砲がレーザー砲だったのが幸いし、完全に木星側有利な状況が続いていた…。


…むしろ、木連側は背後に回りこんだ一機に苦戦している。

数十機の無人兵器が一気呵成に攻め込んでも、一瞬で返り討ちにあうほどだ…。


「…親父…アイツは何者だ!?」

「地球側で一番恐ろしい男よ。…アオイ・スミヤ…黒帝の血を引く者の一人…。」


「ほお…地球側にもいたのか…?」

「うむ…しかも我が知る上でもかなりの使い手だ…。」


「なら…俺が行かねばなるまいな!!」

「…馬鹿者め、早まるな!!」


…ごぉっ…

北斗は夜天光で敵機に突っ込んでいく!!


…宇宙空間では一際目立つライトブルーの機体。

だが、傍目から見れば…背中の大砲の所為で随分鈍重そうに見えた…。


「はっ…火力は高いかも知れんが…そんなもん背負ってちゃ機動戦は出来」

ボコッ!


…アッサリといなされ、アイアンクローの一撃で吹っ飛ばされていく北斗。

どうやら相手が悪かったらしい。(笑)


「ひゃゃゃぁああああ…アー君助けてーーーー…!」

「…全く、未熟だな。」

…スミヤ、容赦無し。

でも、何時の間に枝織ちゃんが出てきたんだろう…。(汗)


…。


「全く…愚息め、人の話を聞かんから…あやつは木連留学時に、師範まで上り詰めた猛者なのだぞ。」

…早く言ってやれば良かったでしょうに。(汗)…おや、でもどうやって留学など…?


「南雲、生きておったか。…因みに我の方が聞きたい…。」

「…で、北斗はどうする。…敵艦隊の方向に飛んでいったが?」


…何だか緊張感の無い会話であった…。(汗)

で、当の北斗(枝織ちゃん?)はと言うと…。


「うーん。…あいたたたた。…もう、酷いなぁ…。」


…連合軍の戦艦に頭から突っ込んだ状態で止まっていた。(冷や汗)

…無論、周囲には既に敵が輪を書くように包囲している…。


「…おい、敵が突っ込んできたぞ。(汗)」
「吹っ飛ばされてるように見えたが…。」
「ど、どうする…。」
「取り合えず出て来次第、蜂の巣だ」


…バギィィィィイイイッ!!

「黙れェっ!!…ふふふ、証拠隠滅だ。…消えてもらうぞ!!」

「「「なんですとーっ!?」」」
あ、一人減ってる。(飛ばされたためと思われる)

…殲滅中。(爆)


「はぁ…はぁ…全く、手の掛かる連中だ…。」


それはむしろ君ですよ…。(汗)
それと、ここは敵陣内だから、早く逃げないと…



「…敵機動兵器が艦隊の懐深くに!!」

「ええい、迎撃せよっ!!」


ほら言わんこっちゃない!!


「フクベ提督…敵機…戦艦に攻撃を加えながら周囲を飛び回っています!!」

「…なに…くっ…内部からずたずたにする気か!?」


…その頃。


「くそーっ!!…味方は何処だーっ!」


…ご存知でしょうが…北斗は方向オンチです。(笑)

帰るに帰れないから戦ってると言うだけである。


「ええーい、邪魔だぁーーーっ!!」


…そして、また一隻、戦艦が爆破される…。


「…戦艦が5隻も…ま、まるで赤いすい」
「…変なあだ名をつけるなぁぁぁぁあああああっ!!(怒)」


…ドゴォォォオオオン!!


「はぁ…はぁ…6隻目…何か危ない所だった…。

「…そうか?…伝説になれる所だっただろうが…。」


「ぐあっ…南雲!?」

「まあいい…貴様、方向音痴だそうだな。…帰るぞ。」


「…た、助かる…。(疲労)」

「あ、おい…そっちは逆だぞ!?(汗)


…だが…この北斗の暴走が、戦況を随分変えているのは皮肉だろうか…?

何にせよ、今度は地球連合側が分断される形になっていた…。


「ええい…あの赤い機動兵器…!!」

「…スミヤ准将が背後からの攻撃を続けてくれています。…それにかけるしか…。」


「うむ…頼むぞスミヤ君…。」

「准将…敵の注意を引き付けていて下さいね…でも、どうやってあそこまで行ったんだろう?



…良いのか、たった一機に全て任せて…。(汗)


…。

だが…作戦自体は木連側の一人勝ちだったようだ…。

…戦闘の行われている空域とは全く別な所から…チューリップが一機、火星軌道上に侵攻していたのだ…。


「しまった…火星に落とされたら負けと同じだ…!」

「どうします!?」


…この艦をぶつける!!…っておい!
…なんで既に誰もいない!?



…お約束にはお約束で答える、正直なクルーたちであった。(笑)

だが…。


「切り離せェっ!!」


…カッ…!!


「ソロ〇ンよ…私は帰って来たぁぁぁぁぁぁぁああああああっ!!(爆)」

「…誰の真似だぁぁぁああっ!?
…ん?…なんで無人兵器から声が?」


…恐らく殆どの方はご存知だろう。

まあ、つまりさっきの光は…『核』。


…。(汗)


「のおおおおおっ…逃げろぉぉぉぉおおおっ!?」

「…まずっ…自分まで巻き込まれる!?」
「アホかぁぁぁああああっ!!」



閃光に巻き込まれまいと、逃げ出す両軍…。

…そして…戦いは終った…。(ヲイ)


…。

…火星の大気圏に、チューリップが突っ込んでいく…。


「…体当たりすら許されんとは…。アレを落とさせるわけにはいかんと言うのに…。」

「いえ、提督。…それで良かったんですよ。…きっと…。」


…すこーしだけ事情通のオペレーターが、提督を慰めている。

だが…今回チューリップは、このままだと予定の位置に落ちないが…。


…。


…ぶぅん…


「…す、スミヤ君!?」

「あ…准将…何時の間にあんな所に!?」


…その時…スミヤが火星軌道上に現れた…!!


「あ、准将より通信!」

「繋げ…早く!!」


『お困りですね提督…あのチューリップの破壊命令を頂きたい。』

「出来るのかね…是非頼む!!」


『ですが…地表にもかなりの被害が予想されます…。』

「構わん、責任はわしが取る!…軍の面子を守らねばならないのだ!」


『…了解した…全力で行きます!』

「…頼んだぞ…!」


そして…その頃の木星艦隊。


「…敵機、次元跳躍門上方10キロメートルに現れました!!」

「次元跳躍か…なにをする気だ!?」


「…本国から打電!?…え…あの機体を食い止めろ…ですか!?

「…今更間に合わんわ!!」


…。


…一方…スミヤ。


「…このまま極冠に落ちても、実害は無いだろうが…粉砕する!!」


そして、両腕を高く掲げる…。

…すると光が…ボース粒子の光が周囲を包み始めた…!!


「…星の大海を行く一艘の小船…遠き星空を行く旅人達よ…
我が声に答え、我が元に現れるのだ…我は汝の力を欲するもの…
…天空から打ち据えられし鉄槌により、我が敵は一撃の下に消え行くだろう!」


「彗星強襲!…コズミック・ライナーっ!!」


…ゴォォォオオオッ!!


遥か彼方からボソンジャンプによって呼び寄せられた彗星が、
凄まじい勢いでチューリップに襲い掛かる!!



バシュ…ドドォォォオオオーーーーン…!


…彗星は一瞬でチューリップを崩壊させた…だが…。


…。


「…ち、地球の連中は何を考えているんだ…!?」

「…アレだけの質量が落ちたんだ…。唯では済むまいな…。」


…木星艦隊は、困惑していた…。

スミヤの呼んだ流星は、チューリップを破壊した後そのまま火星に突っ込み、巨大なクレーターを形成するに至る…。

…どう考えてもやり過ぎだ。


「…あ、あああああ…これでは下の者は助かるまい…。」

「て、提督…。ユートピアコロニー他、数機のコロニーが巻き込まれて消滅しています!!」


…その時、スミヤが通信を入れてきた。


『提督、チューリップ破壊成功しました。…これで軍の名誉は守られます。

「しかし…やり過ぎではないのかね…。」


『…あれを落とさせるわけには行かなかった…と、仰られてませんでしたか?』

「だが…やり方と言うものがあろうに!」


『止むを得ません。…機動兵器の数がもう少し多ければ違った結果が出たかもしれませんが。』

「わしの作戦ミスだと…そう言いたいのかね!?」


『いえいえ…ですが、もし先程の体当たりが成功していた場合でも、コロニーに直撃していた恐れがあるはずですし…。』

「何と!?」


『…ほら、オペレーター君。データを出して差し上げたまえ。』

「…命中確率70パーセント強…か。…ふふふ、参ったな。失敗して幸いだったわけだ…。」


『まさか…さあ凱旋です。…ご覧下さい提督、木星蜥蜴が逃げていきますよ。』

「馬鹿を言うな…最早火星には利用価値が無いだろう…生産拠点の殆どを失ったのだ…。」


『確かに…今回落下した隕石が粉塵を舞い上げております。…晴れるまで随分掛かるでしょうな。』

「…勝負には勝っても、拠点は失った。…まるで意味が無い…。」

『いえ…提督は木星蜥蜴を追い払ったのです。…素晴らしい"戦果"ですよ…。』

「…君が指揮を取っておれば、殲滅すら出来たのではないのかね…?」


『ははは…ご謙遜を。誰がやったからといって結果が変わるとは限りません。』

「…とにかく撤退準備を。」


そう言うフクベ提督の顔には、明らかな疲労が見て取れた…。


『…敵の侵攻を食い止めたんです。…勲章物ですよ。提督…胸をお張り下さい。』

「…同じ立場なら…君には…出来るのかね?」


だが、スミヤは不敵な笑みを浮かべるだけで、その質問はあえて逸らした。


『貴方は軍の面子を守ったんです。…上出来ですよ…。』

「…。」


…こうして、第一次火星戦役は一応地球側の勝利と言う形で決着がつく事となる。

だが…火星という星の受けた被害は甚大なものだった…。



また、戦闘での被害も大きく…木星側は火星宙域から一時撤退。

地球側も、火星からの撤退を余儀なくされた…。


…ユートピアコロニー…壊滅。

今の所…多少の差異はあっても…歴史の概要は一応史実どおりに進んでいた…。


だが…ズレは確実に広がっている。

時に2195年。…ナデシコ出航まで…後一年と迫っていた…。

続く

::::後書き::::

BA-2です。…第73話にしてようやくここまで書き上げる事が出来ました。

…もう少しでTV版ナデシコ本編に当たる部分に入れそうです。


しかし…歴史が動いてますね。…しかも確実に悪い方にと。(ヲイ)

まあ、これでフクベ提督は軍を辞め、ナデシコに乗り込む準備はOKです。


…今回のトラウマは更に大きそうですが…。


さて、新しい年がやってまいりました。

今年も頑張りますので、皆様応援お願いいたします!


では!

 

 

 

 

代理人の感想

フクベ、悲惨の一言(爆)。

それにしてもスミヤ君、到底「アレ」の子孫だとか「コレ」の兄貴だとかには思えませんね〜。

色んな意味で(笑)。

 

しかし、「メテオ・ストライク」には参りました(笑)。