機動戦艦ナデシコ  アナザーストーリー


世紀を超えて

第77、7話 回想の時




…ナデシコが木連の一斉攻撃を受けていた正にその時…明日香インダストリーの秘密ドッグにて、

ネルガルから買い上げた新造戦艦が起動しようとしていた…。

『カグヤ』


艦長でもあり、オーナーの娘でもある「カグヤ・オニキリマル」の名を頂く機動戦艦…。

その正体は、プロトタイプナデシコの改造艦であった…。


…。


「ホウショウ…ホウショウは何処!?」

「はい、カグヤ様…如何なさいました?」


ここは『カグヤ』艦長室…。


「ヒスイを呼んでくれない…大変な事になってるみたいなの。」

「はい…ですがヒスイは今、リアクトによる制御コンピュータとの同化実験中でして…。」



「それどころじゃ無いですわ…アキト様の心を掴む最大のチャンスがやってきたのよ!!」


ドン!


机を叩き、カグヤは一喝した。

…が、ホウショウははぁ…とため息をつくと冷静に言い放つ。


「何があったかは知りませんが…ヒスイに協力させる気ですね?

無論!…アキト様がネルガルに捕らえられたと、信頼できる筋から情報が来たのよ…。」


「でも…彼の姓はラズリ…カグヤ様の幼馴染はテンカワさんと言いませんでしたか?」

「ああ、アキト様…貴方のカグヤが今参ります!!」


…完全に自分の世界に入るカグヤ…。

正直…クルーたちが哀れでならない。(爆)


「しかし…本人かどうかも判らないのに…良くそこまで入れ込めますね…。(汗)」

「しょうがないんじゃない?…ま、他人の恋路に口出しは野暮ってもんだしね…。」


いきなり横からの茶々が入り、びっくりするホウショウ。(笑)


「あ、カオル…何時来てたのかしら?」

「今さっきだよ…あ、カグヤ様…カオル・ムラサメ…ただ今着任しました。」


「ああっ…アキト様ーっ…うふふ…ユリカさん、残念でしたわね…。(ニタリ)」


「…聞いてないし…。(汗)」

「仕方ないわ…貴方は初めて?…この状態のカグヤ様見るの…。」


「話だけならタカチホに聞いてた…まさかこれほどとは思わなかったけど…。」

「…慣れて置きなさい…彼が絡むと何時もこうだから…。(汗)」


…ぬっ


「…二人とも、呆れてる暇があったらカグヤ様を止めようとは思わないの?」


「わっ…なんだタカチホか?」

「止められるならとっくに止めてますよ…。(汗)」


…これまたいきなり登場したのはベルギー系の血が入っているという美女タカチホ…。

…これでコミック系のカグヤガールズが、この船に全員集結した事になる。


「アキト様…うふふふふふふ…。(妄想)」


「…で、どうします?」(エマ・ホウショウ)
「ここは強攻策で…。」(カオル・ムラサメ)
「いえ…搦め手で行くべきでは?」(リサコ・タカチホ)


…そして…。


「せーの」

「「「あっ…テンカワ・アキト!?」」」


…がばっ!!


「あ、アキト様!?…何処、何処ですかっ!?」


…やはり…その手が一番ですか…。(汗)

まあ、ともかくカグヤが正気に戻ったのを幸いに、ホウショウが声をかける。


「カグヤ様…正気に戻られましたか?」

「あ、アキト様は…あれ…居ないじゃないの…。(呆)」


「「「ふう…どうやら現実世界に戻られたようで…。(汗)」」」


「もう…騙したのね…アキト様居ないじゃないの…発信機にも反応無しだし…。」

「はい、取り合えずムラサメとタカチホが着任の挨拶にきたので…って、え?」


…発信機ですと?(汗)


「どうしたの3人とも…ハトが豆鉄砲食らった様な顔して…。」


「あの…今発信機とか仰られてませんでしたか?」
「なんだか不穏当な発言だと思ったんだけど…。」
「…それ以前に、一体何時付けたんですか彼に。」



各自、それぞれの感想を述べる3人。


「そう、あれはアキト様と初めて会った時の話ですわ…。」

「はぁ…。(汗)」


「あの時運命の出会いを感じた私は…彼の事を良く知りたくて思わず発信機付きの飴を…。」

「「「…うわぁ…えげつない…。(汗)」」」


ガビーンな表情(縦線付き)で呆然とする3人。

…だが、カグヤは止まる気配すら見せず、次の一言を口にする。


「今でも体内に残っているようですけど…余程近くないと発信機は反応してくれないわ…。」

「成る程…それで確認済みなのですね?」


「…そう。…依頼と見せかけて確認した結果…アキト・ラズリはアキト様だと判ったの…。」


…頬を染めながら、恐ろしい事をポンポンと口にするカグヤさん…。

アンタ…凄すぎるよ…。(汗)


…そして…ホウショウはこの場から逃れる為、アキトの危機をヒスイに伝える…。

という名目で部屋から出て行ったのであった…。(爆)



…。



…さて…その頃ヒスイはメインコンピュータとのリアクトを行っている最中であった。

リアクト…電子転換されると、そのものと同化したような感覚を受ける。

…例えばエステでリアクトを使うと、エステバリスと同化して、あたかも自分がロボットになったかのような錯覚さえ覚えるほどだ…。


そして今…彼女はコンピュータと同化しているようなもの…。


…ヒスイは試しに艦のエンジンに火を入れてみる…。


まるで…普段どおりにコンピューターを扱っているのと変わらない感覚…。

…だが…レスポンスにタイムラグが無い。


通常、どんなに早いCPUを積んだコンピュータでも、入力から出力までは僅かなタイムラグがある。

…だが…それが無い。


無論…入力も正に一瞬…。


自分自身にコンピュータの計算力がついたような…。

…上手く言えないが…そんな感じがしていた…。


…。


…その時…カグヤの通信機が…不信な電波を拾う。


(…なんでしょう?)


…そう思った時には既に、通信の傍受が始まっていた。


(あっ…思っただけでやってしまうんですね…。)


…ヒスイは今後の課題だと思いながら、そろそろ切らないといけないと回線を切る…。

だが…何を思ったか直ぐにまた、傍受を開始した。


『…ザザッ…北辰殿!…ザッ…間違えたでは…ジュビッ…違い…!』
『ガガガッ…南雲…ザザザザーッ…我とて…』


(北辰…南雲…!?)


…彼女には…その名に聞き覚えがあった。


片方は名前だけを。

…そしてもう片方は…懐かしい戦いの首謀者であった…。


…その時彼女の記憶は…懐かしい過去へと飛んだ。

…ふと思い出した記憶が…何らかの理由でフラッシュバックを起こしたのかも知れない…。



…。



ある世界のある時…そしてある場所…。


カチャ…


自らに銃口が向けられている。

…相手は…弟同然だと思っているクルーだった…。


「…ハーリー君?…どう言う冗談ですか。」

「…まずお聞きします…貴方は誰です!?


「…何のことでしょう?」

「嘘を言わないで下さい。…本物の艦長…ルリさんは暫く前に亡くなっています。」


そう…この時既に火星の後継者第2の反乱は収まった後だった…。

なお、ルリ達は南雲達の攻撃が始まる前に時間を遡っている。


「では…ここに居る私は何者ですか?」

「判りません。…最初は僕の様に死に損なったのかと思っていましたが…貴方は違う!」


…あの時(第2話)死ねなかったのか君は…。(汗)


「…どう…違うと言うのです?」

「当初…ネルガルからの極秘説明では、死亡したサブロウタさんに影武者を立てる為、指揮の変化などでそのことに気づくものが出るのを抑える為の艦長交代だと言う話でした!」


「艦長なんかには…シャロンさん達の動きをキャッチしたネルガルが、上手くナデシコを動かす為に練習航海の名目で艦を動かしたって話してましたけどね…。」

「はい。…ですが…それさえも…欺瞞に過ぎなかったんですね…。」


「…お見通し…ですか?」

「ええ…結論から言えば…貴方はルリさんではなく…それを誤魔化す為に慣れない艦長補佐なんかやらせてたとしか考えられません。」


…そこで…彼女は言った。


「判りました…後で私の部屋に来てください…本当の事をお話します。」


…。


…ハーリーが部屋に通された時…まず最初にしたことは…腰を抜かす事だった。(笑)


「…る、ルリさん…その髪は!?」

「…偽者だと気づかれてしまいましたからね…。(苦笑)」


…そこには…先ほどまでと同じ姿で、黒髪・黒目になったルリが居た。

変装を解いたその姿でも、彼女とホシノ・ルリはそっくりであったという…。


「…では…先ずお名前から…。」

「星野瑠璃…私達は皆そんな名前です。」


「は?…皆?」

「…判らないならその方が良いです。」


「で、なんで…ルリさんの偽者なんかしてたんです…?」

「この世界に人探しに来て…似てるからとネルガルにスカウトされました。」


なお、その時に記憶の刷り込みのような事をしている。

…バクバクドリーム…夢を覗くそれにアキトが写ったのはその為であろう。(DC版)


「…人探し…ですか?」

「ええ、姉妹達と…ある方を。」


「…ある方ですか。」

「ええ、でも…この世界の方では駄目みたいです。遺跡融合の際に多少遺伝子が書き換わってしまったらしく…資格…と言うか資質…を無くしてしまったようですから…。」


「…そうだったんですか…いえ…それならいいんです…。(わかっているのかコイツは…?)

「…隠していた事は謝りますが…ネルガルからそう言われてたんですよ…。」


…その時…突然ハーリーは笑った。


「…僕の知ってるルリさんじゃないなら応援できます。」

「は?」


「艦長と…上手く行くと良いですね!」

「…ハーリー君。…何処でそれを…。(汗)」


…真っ白な顔で耳まで赤くしてれば誰でもわかるってものである。

しかし…まあ、良く判らない人もいるでしょうがそう言う事らしいです。(爆)


「…お幸せに。…僕はもう一度…艦長を…僕の知ってるルリさんを追いかけて見ます。」

「…そうですか。…私にはハーリー君の言ってる事の方が良く判りませんが…頑張ってください。」


…その時…突然空間が揺れ動いた!

ご都合主義と言う事無かれ!!(ヲイ)


「えっ?…なんで宇宙空間に地震が!?」

「な、オモイカネ!?…え、敵じゃない…どう言うことですか!?」


「説明しましょう!!」


「わあっ!?」「きゃ…!?」


…説明お姉さんイネス女史参上!!

説明を求める声が掛かれば、この人は何処へでも行くであろう…。(汗)


「これは…一言で言うなら…アキト君たちの行動が歴史の修正力を上回ったのよ。」

「…と、いいますと。」


「つまりね…普通歴史に差異が出た時…歴史はそれに対抗するような出来事を起こして歴史を吊りあわせようとするわ。…それが修正力。」

「でも…完全には直らないんじゃ…。」


「ええ。…でもね歴史的に大まかに見れば変わらないならいいのよ。…要は飛行機で行こうが電車で行こうが、定刻に目的地に到着すればいいってのと同じ…。」


例としては件の青狸(自称猫型)が上げられるだろうか?


「…まあ、個人の行動まで歴史書に書かれては居ませんしね。」

「そう言う事よ…それで…今ここに居る私達も歴史通りになるように書き換えられるって訳。」


「…待ってください…それって。」

「今の記憶は消える…いえ、無かった事になるわ。…いえ、存在が消えてしまう人も出るでしょうね…。」


…それを聞いて…二人は蒼白になった。


「そんな…イネスさんはどうするんです!?」

「私?…私はこのままで居るわ…別時空からの"説明依頼"もこなさなきゃならないし…。」


…んな事もしてたんですか。(汗)


「…。」

「何処の世界のアキト君も、容易に過去に逃げてどうするのかしらね…いらない責任背負い込むだけでしょうに…。あ、ここは私が時を越えなかった世界みたいね…。


…もう、別時空との会話…もしくは説明に夢中のイネスを置いて、ハーリーは早速例の大型ナノマシンを自分に投与しようとした。

だが…そこに声が掛かる。


「待って下さい。…それ、私にも分けてください…。」

「え?…でもこれって…死ぬほど痛いですよ?(Byヒ〇ロ・ユイ)


彼女…後にヒスイと呼ばれる事になる少女は何かを決意したような顔で言う。


「…私には…やらなければならない事が山ほど有るんです。…ここで消えるわけには…。」

「…書き換わるだけですから…同じ事ですが…。」


詭弁ですね。…異世界からの遺物でしかない私は消えるしかない筈です。」

「…いいでしょう…お譲りします。…けど…後悔しないで下さいよ?」


…プシュ…


…床に倒れる二人。

そして…その直ぐ後に一人の青年が走り寄ってきた。


「ルリさん…ハーリー君!…異常事態です、至急ブリッジに…え?」


…二人は動かない…。

あ、ハーリーはまだピクピク言ってる。(汗)


「あ…ルリさん!?」

「む…無駄です。…既にナノマシンが飛び立った後ですから…肉体は死亡してますよ…。」


「…ハーリー君!?…どう言う意味ですか。」

「…実は…かくかくしかじか…。」


「なんですって!?」

「…そう言う事です…それじゃあさよなら…艦長…。」


…肉体のあちこちが凍り付いてるのに良く生きてるなぁ…。

しかし…何故かくかくしかじかだけで通じるのか…不思議だ。(爆)


「ハーリー君?…くっ…駄目か…。


…艦長と呼ばれた青年はクルー達の突然の死に歯軋りをした。

そして…あるものに気づく。


「これは…。彼らが使ったのは…このナノマシン…?」


…青年はそれを手に取り、そして…。




…。




…ゆさゆさ…ゆさゆさ…

ヒスイは…揺らされる体に気づく…。


「ヒスイ…ヒスイ!?」

…艦長………はっ!?


…何時の間にか…ヒスイは寝てしまっていた…。
…と言う事にしておいて欲しい。(爆)


そして…彼女が正気を失っているうちに、ホウショウが彼女の肩を揺すっていたのだ。


「…あ、目が醒めたわね…。」

「…は、はい。…テスト中に気を失ったようです。」


「ふう、まあいいわ…カグヤ様が呼んでるわ、行って来なさい。」

「はい。」


…そして、くるっと後ろを向いたまま、ホウショウが止まる。


「それと…。」

「はい?」


…更にくるっと顔だけが振り返る…。

そこに浮かぶのは…一言で言うなら"にまっ"とした表情…。(汗)


そして…決定的な一言が発せられた。(爆)


「百合は駄目よ?」
「…はっ?(呆)」



…どうやら妙な勘違いが有ったらしい。(爆)

なお…彼女がこの『根も葉もない噂』を打ち消すのには、まだ暫く時間が必要となるのであった…。



…それはさておき…。



「…。」

「…どうしたんですかヒスイ?…急に立ち止まったりなんかして…?」


「いえ…何でもないです。」

「そう…今日のヒスイ…何処かおかしいわよ…。」


「何でもないです。(…艦長も…この世界の何処かに居るんですよ…ね?)

「そう…じゃあ急ぎましょ。」


…そして…二人は駆け足でその場から消えていった…。


(会えるなら…もう一度だけでもあの人に…)


…カグヤ専用オモイカネのメモリの片隅に…唯一言、それだけを残して…。

続く

::::後書き::::

どうも、BA−2です。…77話記念ネタばれ企画(ヲイ)、77.7話『回想の時』です。


…これだけ読んで、ヒスイの正体を完全に把握できたら凄いかもしれませんが、

断片的にはご理解頂けたはずです。


…約一名、芋づる方式で正体がばれる恐れもありますが…まあ、この際それは放って起きます。(爆)


…そう言えば…カグヤ用のオモイカネにも、名前を付けてやらねばならないかもしれませんね。

なお、今回で判ったかも知れませんが…イネスさんは逆行しませんでした。


…唯でさえ強力な方なので…ハンデだと思ってください。


…なお、カグヤガールズの性格は、本編から多少弄る事になりそうです…。

コミック版のイメージを正確に残すのは少々難しいかもしれないので…。(汗)

では!

 

 

代理人の感想

・・・いやまぁ、CDは聞いてないんですがコミック版だけだとそれほど個性のあるキャラでもないような(爆)。

丁度劇場版のラピスみたいにまっさらな状態に近いんじゃあないでしょうか?

何が言いたいかというと要は・・・・・・・・・・・やったもん勝ちです(笑)!