機動戦艦ナデシコ  アナザーストーリー


世紀を超えて

第80話 閑話休題 − 一方その頃 −




…ナデシコは大ピンチ、ルリは浚われ敵の親玉が目の前に居る…。

そして…妹達の危機を察し、アキトが動き始めた…。


そんな時…


ぷかぷかとのんびりナデシコの方角に向かう一隻の戦艦の姿があった…。


カグヤ…


明日香インダストリー所属のナデシコの同型艦である…。


…。


その艦長室で、自分の席からずり落ちた一人の女性が居る。

カグヤ・オニキリマル。…アキト達とも因縁浅からぬこの人物。


彼女の正体は明日香インダストリーの令嬢であり、この船の艦長であった…。

そして彼女は今、とある報告を受けている…。


「…ナデシコが沈んだ…?(滝汗)」

「はい、カグヤ様。…いえ、浮かんではいるようですが…。」


「冗談がきついわホウショウ。…なんでそんな簡単に…。」

「敵の新型の猛攻を受けた模様です。…なお、テンカワさんの姿は確認できなかったそうです。」


うーんと腕組みをした後、カグヤは言う。


「アキト様がそんな事で死ぬはずも無いですわ。…とにかく情報を集めなさい。」

「はっ…!」


「それと、アキト様の歓迎会の準備もね!(ぽっ)」

「本当に早速引き抜く気ですか…?(汗)」


…何処の世界にも苦労人は居るものである。

まあ…引き抜くも何も、未だアキトはナデシコの一員ですらないが…。


…。


…そして、ホウショウはヒスイの元にやってきた。

情報ならそうするのが一番手っ取り早いだろう。


「で、何を調べればいいんです?」

「そうね…取り合えずカグヤ様を正気に戻す方法を…!」


…精神的にはかなりやばい状況らしい。(笑)

いろんな意味で聞くことを間違えている。


「それなら…」

「手があるの?」


「祈りましょう。」

「はぁ!?」


…そして…これまた訳の判らない事をのたまうヒスイ。


「全力で祈れば叶うかも知れません。」

「真面目顔でそんな非科学的な事言わないで欲しいわ…。(汗)」


ひらひらと手を振りながら、ため息混じりにホウショウが言う。

だが、ヒスイは珍しく反論をしてきた。


「何故、叶わないと決め付けるんです?」

「だって…叶うわけ無いじゃない。…もし叶ったとしても唯の偶然でしょう?」


「そうですか?…何も願わないより何かを願ったほうが確率は高くなると思うんですが。」

「いや、それは…そうかも知れないけど…違いはスズメの涙じゃない。」


「…その差が命運を分けるかもしれない。」

「な、なんか神がかった言い方ね。(汗)」


「貴方はぁ…神をォ…信じますかぁ?…なんてね。(笑)」

「…いや…まあ、居たほうがいいと思うけど…居ないでしょ実際…。」


「そうですね…信じるものが居なくなった神は死んだも同然ですから。」

「え゛…。(汗)」


「神々の力の源は信仰心ですから…この世界みたいに政治が信仰に介入している世界では、神々はその力を振るうことが出来ない。…だから更に人心は離れていく…。」

「…。(滝汗)」


「いえ…ここまで荒んだ世相だと、既に消滅すら…あれ?(汗)」

「…ああ、神様…カグヤ様だけでも大変なのに…ヒスイまでぶっ飛んだ人物ではありませんように…。(泣)」


何気なく、信じていないとか言っていた神に縋るホウショウ。(笑)


「それにしても…強力な呪力の波動が…まさか誰かがもう来ていると言うんでしょうか…?」

「ああ…また…妙な事を言う…。(汗)」


…何か…ヒスイはそういうのが好きらしい。

彼女の場合、恐らく電波では無いだろうが…。(汗)


…なお、それを見ていた主要クルー残り2名、ムラサメとタカチホはと言うと…。


「艦長の性格ねぇ…どうでもいいと思わないタカチホ?」

「貴方のそんな能天気な所が羨ましい。…まあ、確かにどうでも良い事と思いますが…。」


「まぁね。…でも、艦長にはしっかりして貰わないといけないかもしれないよ?」

「確かに。…私達の行き先はナデシコ…と言う事は最前線を意味しますからね…。」


意外とまともに将来を見据えていたりする…。

なお、その他にもずいぶん居るであろうクルー達の出番があるかは不明だ。(無い可能性高し)




…。




その時…ブリッジにカグヤが入ってきた。


「皆…きっちりやってるかしら!?」

「はっ…カグヤ様、万事異常はありません!」


「…流石はホウショウさん。…凄まじい立ち直りです。(ヒスイ)」
「まぁね…あいつじゃないとあの人を抑えられないし…。(ムラサメ)」
「その点については同意します。(タカチホ)」


…カグヤを見るや否や一瞬で正気を取り戻し、通常に戻るホウショウ。

自分が壊れたままだとカグヤの暴走を止めるものが居ない…という責任感…いや、


使命感(爆)


が、そうさせるのであろうか?(笑)

だが、それ故に苦労人の烙印を押されることとなるのだが…。


…。


「そ、なら問題ないわ。…ところでヒスイ?」

「はい?」


「一つ…尋ねなければ成らないと思っていたことがあります。」

「な、何でしょう…!」


…突然、カグヤは凄まじい形相でヒスイのほうを見た。

…故にヒスイはピンと背筋を伸ばし、彼女の次の言葉を待つ。

だが。


「アキト様の好みの女性はどんな方でしょう?(大真面目)」

「はい!?(汗)」


…そんな事を大真面目で聞かれても困るだけであろう。

だが、妹に聞くのは大して間違っていないかもしれないが。


「…答えなさいヒスイ!!」

「な、なんで怒ってるんですか!?(汗)」


「貴方もブラコンなんでしょう!?(泣怒)」
「ルリと一緒にしないで下さい!!(激怒)」



…どうやら報告の中にルリについての事が入っていたものと思われる。(笑)

だが、どうやら失礼な話だったご様子。


「違うのね!?
…貴方は違うのね!?(狂乱)」


「私には大好きな人くらい居ます!!」


…つつーっ


遠近法で二人から離れていくホウショウ。

彼女はヒスイの言葉を誤解し、彼女が百合だと勘違いしているのだ。


…訳が分からないと言う方は、77,7話をもう一度読んでみるといいでしょう。(爆)


「そう、良かった…。」

「全く。…でも、お兄様の好みの女性像くらいはわかりますが。」


がばっ!!


「教えなさい!!…艦長命令です!!(血走った目)」

「ぐほ…く、くるしい…。(チアノーゼ)」


…襟首捕まれて持ち上げられるヒスイ。

しかし…げに恐るべきは恋に狂いし者の恐ろしさよ…。


「えー、では…お兄様の好みですが…。」

「ふむふむ…。」


「メモ取ってる…。」
「仕方ないんじゃないの?…ま、人の恋路は邪魔しない方がいいってね。」
「…しかし、その選択如何で明日香の命運が分かれるかもしれませんし…。」


…じわじわと、きゃいきゃいという大騒ぎの中に包まれていくカグヤのブリッジ…。

ここのところ、やはりナデシコ級の恐ろしさであった。(笑)




…。




そして…同時刻。

木星側の艦隊旗艦にて…


ルリが絶叫して倒れていたまさにその時…

同じ戦艦に…幽閉(?)されている女の子が居た。


「でね、でね…ルリお姉ちゃんはお兄ちゃんが好きなの。」

「ふーん。…はっ!」


「んあ?」

「…火星から電波がぁぁああっ!」


…地球と木星の無敵幼女がここに集結している!!(汗)

でも、サフィーちゃん、さらわれた割には余裕があるような…。


あ…だからアキトは気づかなかったわけか。(苦笑)


あ、北辰が血まみれで倒れてる。…何故?(爆)

まあ、間違いで子供さらって来れば、当然こうなるとは思うが…。


「で、何て言ってるの?」

「…好きって言ってもただの好きじゃないんだって。」


「ぶにゃ?」

「『あいじょー』があるって言ってた。…電波が。


「…あぅ?…ところで、電波って何なの?」

「…偉大なる物だよ。」


…久々登場!

木星の爆弾娘コガネちゃん!!相変わらずしょっぱなから跳ばしている!!

なんなんだよ偉大なる物って!?


…だが、妙におとなしいのが気になる。何故だろう?


「電波が『彼女を傷つけちゃ駄目だよ、お友達になりなさい』って言うから。」


…ナレーションに突っ込まないで欲しいな。(汗)


「どっちにしても友達は大事だよ?…奥に居るラピちゃんの妹だし。」
「お友達なの!」


…どうやら一瞬で仲良くなったらしい。(爆)

いいよね、先入観の無い子供って…。


そして…


「舞歌…コガネが大人しいぞ…。(感涙)」

「北斗…あの子こそが私達のメシア(救世主)なのかも…。(感涙)」


…何だか知らないけど助かっているいつもの被害者の面々。(笑)

だが、言ってることがぶっ飛びすぎである。


「…ん、通信…おい、コガネ!」

「なに、北姉!?」


「そいつの姉貴がきたそうだぞ?」

「え、ホント…なの?」


ぱぁーっと明るい顔をするサフィー。

やはり相当うれしいらしい…。


「じゃ、迎えにいこうよサフィーちゃん!」

「あい!」


てってってって…


そうして二人は駆けて行ったのである…。


/(。0。)\...  てってってって……ころん…

  _(・0・)_…     ぽてぽてぽてぽて…とてん


あ、二人して転んだ。(笑)




…。




更に同時刻、火星極冠の最下層。

その一角に何故かキッチンが存在する。


そして…その片隅で居眠りをしている人影が一つ…。

…そこに、もう一つの影が近づいてきた。


「…。」
「サレナ。…起きて下さい。」


ゆさゆさ…


「…。」
「サレナ。…ダッシュが…電脳神が呼んでる…。」


その顔の上半分を仮面で覆った長い黒髪の女性、サレナ・ラズリは幸せそうに居眠りの最中だった。

…近づいてきたのは部下のシルヴァ・シロガネである。


「サレナ。…そろそろ起きて…意識を戻して…。」

「…ん。」


「サレナ。」

ゆさゆさゆさ

「…煩いですよ!!」


ごすっ!!


「きゃっ!?」


ゴスッ!…ガッチャーーーーン!!


「…全く!…って、ああっ…御免なさいシルヴァ!!(唖然)」

「も、問題ないで…うっ…。」


…寝覚めが悪いのか、そばにあったフライパンでシルヴァを強打してしまうサレナさん。(汗)

問題はその一撃で、彼女が壁に叩きつけられ血を吐いていることである。


「ああ…私としたことが…なんて慎みの無い…。」

「い、いえ…。」


「御免なさいね、妹なら庭にクレーター作るくらいで済むのだけど…。」

「どういう例えなのか理解不能です。(汗)」


「…で、何用なのですか…?」

「はい、ダッシュから伝言です。」


…サレナの顔色が一瞬で真面目なそれに変わる。

そう、彼女とて責任者としての立場と言うものがあるのだから…。


「そう…ダッシュはなんて?」

「はい、ナデシコは木星からの奇襲で大打撃を受けています。…ルリさんは囚われました。」


「もう一人の父上…いえ、アキトさんは?」

「地下牢に閉じ込められていたようですが自力で脱出した模様。」


「…そう。…やはり歴史は書き換わるのね。」

「はい。…閣下の愚行は後を引き、この時代のアキト君を完全に蝕んでいます。」


…サレナは少し苦笑した。

閣下とは他ならぬ彼女の実の父…テンカワ・アキトに他ならない。


「愚行…か。話の出所はダッシュね?…もう、AIにまで見限られるなんて…。」

「ダッシュの悪口を言われるのは多少…。今回の失言は忘れますが…お気をつけて。」


「ええ…で、話はそれで終わり?…じゃあ私は寝ます。…洗濯も残ってますし…。」

「ところで…私達の出番は、ナデシコが火星にまで来た時。…ですが…果たして来れるのですか?」


「分からないわ。…ダッシュはどうしたいのかもね…。」

「…それなら予想がつきます。…ただ適当に煽る気ではないですか?」


「…かもしれないわね…。」

「はい、では…良い夢を。」


…そうして…彼女は眠りに落ちる。…楽しい夢が…見たいから。


…。


サレナ・ラズリ…
彼女こそは、ダッシュがこの100年間の空白の間に作り上げた存在である。


ラピスのロストによってオペレーターを失ったダッシュは、名目上だけでもオペレーターを持つ必要があった。
…所詮コンピューターでしかない彼には、指令を下す者が必要だったのである。

だが…最早戦艦の航行コンピュータでは無くなっていたダッシュには、艦長として登録していたアキトでは、命令役として役不足。
更に、彼自身のラピスへの思い入れもあってオペレータは彼女に似ていたほうがいい…。

そこで…ラピスとアキト等の遺伝子を組み合わせ、彼女を作り上げた…。

…遺伝子操作により、彼女には老化と言う概念が無い。
そして…その容貌は、髪の色がアキト似の他はラピスに良く似ていた。

恐らく趣味なのだろうが…あまり良い傾向ではあるまい。

更に…それ故アキト・ラズリが見れば、『姉』と勘違いするかもしれない…が、
それすらも決して良い結果は生まないだろう…多分。




…。




また場面が変わる…。

…一連の物事と同時刻…ここは…ピースランド。


その小高い丘の上で、一人の少女が花束を手に立っていた。


…純白のドレスとフランス人形のような整った顔立ちとは裏腹に、その表情は暗い。

…何故なら…目の前には真新しい墓が7つも並んでいたからだ。


「やりすぎましたね。…プレミア…可哀想な…ボクの遠い甥っ子…。」


…寂しげに呟き、花束を墓に備える。

そして…抜けるような青空をぼんやりと眺めながら…彼女は虚ろに言った。


…あの女の子孫が滅ぶのを喜ぶ自分と…弟の子孫が滅ぶのを悲しく思う自分が居る。」


…誰に言うでもなく…独白は続いた。

それはあたかも…何かに懺悔しているようですらある…。


だが…とある言葉を呟いたところで…彼女の目に光が戻る。

…それが明るいものか、暗い光か…傍目からは判別がつかないが。


「…残るは…ルリ姫ただ一人。」


ぐっ…

その姿と容姿に似つかわしくない、古ぼけたブラスターを両手で握り締め、彼女は悩み続ける。


そう。彼女こそアメジスト・M・ピースランド


…遥かな時を超えし眠り姫…。彼女は遂に動き出し、ピースランドを乗っ取った。

いや、取り戻した…と言う方が正しいのかも知れない。


「…何を迷って居ると言うのですか…あの少女を消せば、ボクの願いは叶うでしょうに…。」

「…お優しい事で。」


ガチャ!


突然背後からかかる声…彼女は即座にブラスターを向ける。

…想い人の…忘れ物を…。


だが…顔を確認したところで、安心してブラスターをしまい込んだ。


「脅かさないで下さい、ウォルフ・シュンリン・サトウ。」

「申し訳ない、姫様…いや、戴冠された以上、陛下とお呼びすべきですかな?」


…彼の正体は…彼女の部下だったようだ。

本当に再登場しやがったよ。(爆)


「どちらでもいいです。…ボクはボクでしかないですから。」

「はっ…ところで…ナデシコに動きがありましたが。」


…くわっ

彼女…アメジストの瞳が僅かに見開かれる。


「それで…今ごろはバッタ達を蹴散らし航行中ですか?」

「…いえ…それが、秋人殿が直接動かれまして…。」


「…馬鹿な…それは無いです。…彼と玄武無しで木星を守れるわけが無い。」

「…どうしても…確かめたかったのではないですかな?」


「…何を…です?」

「恐らく…伝説が、木星を救える存在なのか否かを。」


…はぁ…。

と、アムがため息をついた。


「今の彼にそれを求めるのは酷です。」

「はい、ですから片鱗があるかだけでも確かめたかったのでしょう。」


「…で、結果は?」

「まだ出ていません。…アキトさんも出撃していませんし…。」


「もう、『史実』は当てにしない方がいいですね。」

「…無論です。…第一史実どおりなら、貴方がここに居てはいけませんし。」


…クスッ…

アムは微笑む。


「ボクの目的はたった一つ。…世界をどうこうする気は無いですから。」

「はい。…叶うといいですな、姫様。」


「…『史実』のルリ姫が良い事をいっていました。…『待って駄目なら追いかける』と。」

「…動かれるので?」


「いえ…まだ…時が熟しては居ません。」

「…はっ。…このウォルフ…ご恩はけして忘れません、わが命お好きにお使いください。」


「ふふ…学会から追放された貴方のスポンサーを買って出ただけではないですか。(苦笑)」

「いえ…あのままでは私だけでなく、我が娘達…我が芸術達までのたれ死ぬ所でした。」


「…そうでしたねウォルフ。…では…引き続きナデシコの監視を…。」

「…はっ…姫のご意志のままに…。」


…ここはピースランド…。
かつて…完全中立で平和が保たれると信じて疑わなかった国…。

そして…今は巨大企業の一つ、マーベリック社の本拠地となった国である…。



…。


その日は…運命の大転換点だったのだろう。

鳴り物入りでナデシコが出航し、ひっそりとピースランドの主人が変わった。


…それは…ある意味でナデシコらしい現象だったと言えよう。

個人の感情が、世界の歴史を動かしていると言う点においては。


だが…この激動の日はまだ終わりではない…。

…純白の死神…アキト・ラズリは殺気と闘志を胸に、ナデシコに向かっていたのだから…。

続く


::::後書き::::

どうも、BA−2です。

80話と言う事で、ナデシコを取り巻く環境をおさらいして見ました。


…尤も、木連の本国とクリムゾンの事は未だですけど。


…次は遂にアキトがナデシコに乗り込みます。

果たして…唯で済むでしょうか?


そして…遂にアムも再登場です!

…彼女は母方の家…マーベリック社の総帥も勤めていますんで、性に『M(マーベリック)』をつけることにしました。


さて…こんなのですが、今後も頑張りますんで応援お願いします。

では!






管理人の感想


・・・・・・・・・・おお、考えてみれば凄く久しぶりだな、BA-2さんの作品に感想を書くのは(苦笑)

しかし、あの頃は大人しくヒロインをしていたアムちゃんが・・・こうも変わるとは(汗)

全ての元凶と呼べる誰かさんは、AI君からも見捨てられているそうだし(苦笑)

う〜ん、このさきどうなるんのでしょうかね?