機動戦艦ナデシコ  アナザーストーリー


世紀を超えて

第82話 『復活のナデシコ・不完全版』(苦笑)





「俺自身が伝説になってやるさ!!」


…それが…戦いの始まりを告げる一言であった。


秋人は『玄武』をゆっくりと前進させる…。

だが、アキトは一言


「伝説にでも何でも好きになるといい!…俺は忙しいんだ!!


とだけ言い放つと、即座に急上昇に移った。


彼にとっての重大事はルリ達の安否でしかない。

…こんな所で無駄な時間を食うわけには行かなかったのだ…。


…しかし、それで相手が満足するわけが無い。


「臆したか!?…逃げられると思うな!!」


…刹那…アキトは視界の隅に移る"何か"に気付き、回避運動を取る!


ゴォッ…


突如として後ろから迫ってきた腕…それはアキトの今まで飛んでいた辺りを飛んで行った…!


「…腕!?…ロケットパンチか!?(爆)

「まあ似たようなものだ…俺を倒さねば先には進めん!!」


…ギリィッ


アキトは歯を噛み締めた。

そんな事をしている暇が彼には無い…!


「クソッ…このままじゃ…。ルリ…サフィー…!!

「…ルリ?…魔女のことか…。」


「貴様等はそう呼んでいるらしいな。」

「…いいだろう。…俺を倒せたら返してやっても良い。


ピタッ…


「…本当か?」

「ああ…二言は無い。」


…ごぉっ…


その時…周囲の空気が突然引き締まる。


…アキトは追いつける見込みの薄い追跡を続けるより、

ここで戦って取り返したほうが早い…と踏んだのだ。


…何故だか…敵が嘘をついているとは思わなかった。


「…ほぉ…流石は黒帝…素晴らしい闘気だ。」

「…能書きを言っている暇など無い…沈めぇぇええっ!!


そして…アキトは敵に突っ込んでいく…!!


…。


彼我の機体の体格差…優に3倍以上。

アキトの乗るのが通常の空戦フレームだと言う事実を差し引いても、相手の戦力は強大であった。


…迫り寄るほどにその巨大さが引き立つ結果となる敵機の巨体…。


機体のあちこちに引かれた網の目模様…亀の甲羅をイメージされたと思しきそれは、力学的に見ても防御力が高いと思われた。

そして…先ほどのロケットパンチで飛んで行った後の腕からは、ジンシリーズのような爪がせり出してこちらを掴もうとガチガチやっている…。


…何より印象的なのは、胸部からせり出している亀の頭!(爆)


普通のロボットならライオンとかとかが付くであろう部分を占拠した、その禍々しさすら感じる亀の頭は己の意思を持つかのようにぐぐっと顔をアキトの方に向け、口を開く…。

そして…その口の中に強大なエネルギーを集め出して…!


「き…強大なエネルギーだとっ!?」


ゴォオオオオッ!!

アキトが回避行動を取るのと、胸部の亀がグラビティーブラストを放つのはほぼ同時だった!


…歪む空間に引きずり込まれそうになるのを何とか押さえ込んだアキトは、

この隙を突こうと敵に肉薄
「…甘いな。」
「なぁっ!?」


敵は…既にアキトの目の前に移動していた!

まだ僅かに周囲にはボース粒子が漂っている…。


そう、ボソンジャンプだ。…だが、早い!

全く何のタイムラグも無く、アキトはその腕の射程内に囚われていたのだ!!


…まさに一瞬…!


気が付いた時には既に遅く…アキトはそのハンマーのような腕の直撃を受け…



ドォッ!ザッパー………ン…!!


…海面に叩き付けられたのであった…。


…。


「…おいおい…あれだけ手加減したんだ。…まさかこれで終わりと…?」


ゆっ…くりと、迫ってくる敵…。

アキトは衝撃により混濁した頭で、ぼんやりと現在の状況を考えていた…。


(何故…こいつは一息に攻め込んでこない…!?)


だが、そんな彼を現実に引き戻す声が一つ。


「…黒帝!…早く体勢を立て直すんです!!…玄武のジャンプは連発が効かないんだから!」

(…誰だ?)


「貴方もテンカワ・アキトならこの程度で!!…倒れられては困るんだよ…。

「その声は…確か…アオイ・スミヤ…。」


「起きているんだな!?…なら…そこから離れて!…既に射程内」
「!!」


ザババッ…バッシャァアアアアン!!


…またも間一髪の回避…。

アキトが反射的に機体を動かした時…今まで居た場所に敵がまたもパンチを打ち込んでくる…!


「はぁっ…!このままじゃジリ貧だ!!」

「…いや…もうそろそろの筈だから…もう少し粘って欲しい…!」


「ふっ…何を企んでいるのかは知らないが…俺と玄武のコンビをどうこう出来るのか!?」


ゴォ……
ガチャコン!


…玄武の両腕が戻り、再装着される。


…ガシィィィン!


そして今度は両腕を突き出し、かろうじて浮いている状態のアキトの空戦フレームと、

今も波間を漂っている状態のラティフォリウムに狙いを定めた…。


「さらばだ。…黒帝。」

「待って!…兄弟子…貴方は自分の先祖を殺す気なのかい?…そんな事をしたら!


…秋人はふっと自嘲気味に笑う。

それには、この期に及んでナデシコとの通信を断ってからこんな通信を入れてきたスミヤに対する苦笑も含まれていたのかもしれないが。(笑)


「ああ、俺たちは消えるかも知れん。…だが、そうとも限らないだろう?」

「そうとも限らないって…某カ〇ダバランス飲料のCMじゃないんだからさ…!(汗)


緊迫した画面の背後に、イメージ画像として大量の小便小僧(ペットボトル装備)が現れる。

緊張感が少し損なわれたような…。(汗)


…。


だが…それは、スミヤの時間稼ぎでしかなかった。


…。


ザパアアアアアアアッ…!!


「ナニッ!?」

「…よしっ…先ずは間に合ったようだね!!」


…気が抜けたところに突然の轟音…流石の秋人も一瞬怯む。

それとは対象的にスミヤの顔は『してやったり』の表情で歪んでいる…。


そして…アキトが決定的な一言を呟いた…。


「…第3方面軍旗艦・トビウメ…!?」


…それは…歴史の修正力だったのだろうか?


だが…それはむしろ、修正不可能な段階にまで達した"現実"に対する、

歴史からの『皮肉』のようにも見えるのであった…。



…。


ナデシコ・ブリッジ…。


…いま、ブリッジはおおわらわであった。

連合軍最強と名高いラティフォリウムが殆ど抵抗も出来ないまま敗北し、アキトも大苦戦。


更に何故かレーダーにすら映らなかったトビウメの存在…。

それらが今まで積み重なった混乱に、更なる拍車をかけていたのである…。


「え?…え?…なんでトビウメが!?」
「艦長…こんな近くに居たなんて…どういう事かしら!?」

「あれ?…副提督、なんで艦長に聞くんですか?」
「メグミ・レイナード…トビウメはミスマル提督…艦長のお父上の艦なのよ。」

「ああ、成る程…。」


…混沌とするブリッジ。

だがそれも…トビウメ側からの通信によって中断されることとなる。


…ドン!!


いきなりのミスマル提督のどアップ!(爆)

そして…


ぱくぱくぱく…
(字幕:ユリカァアアアアアーーッ!!)



何故かいきなり音声が切れて、字幕表示が始まる。(爆)

これなら破壊音波も怖くない。(笑)


「あれ?(汗)」

「か、艦長…提督のお声は少々大きすぎるので…こちらで勝手に処理…うっ…させて頂きました。」


…かなり辛そうにジルコニアが答える。


彼女は失われたオモイカネの代わりを、自らの脳で行っているのだ。

その負荷は想像を絶する物があるのだろう…。


…ぱくぱくぱくぱく…


その間にも、ミスマル提督の口パクは続いていた。

どうやら向こうは気付いていないようである。(爆)


「えー、提督はなにやら伝えたいことがあるようですが…ハイ。」

「ミスター…どうやら援護してくれるようだな。」


…その言葉どおり、既にトビウメは玄武に対して砲撃を行っていた。

向こうには届いてすら居ないが…牽制にはなっている様子。(爆)


…その時…音声が元に戻った。

どうやら、字幕の作成が間に合わなくなったようだ。(苦笑)


「…という訳だ。…分かったなユリカ。」

「…御免なさいお父様…よく聞こえませんでした。(汗)


…当然である、元々聞こえていなかったのだから。

だが、ミスマル提督は気分を害した様子も無く再度説明を始める。


「うむ…スミヤ君はこんな事態を想定していてね。…補給物資を用意しておいたのだよ。」

「えー!本当ですか、お父様…あ、でも…。」


…ユリカは言いよどむ。

既にオモイカネを失ったナデシコは無力だ。


「心配要らない。その中にはルリ君用に調整された、オリジナルのオモイカネもある筈だよ。」


…そこに、スミヤからの通信が入る。

内容には…かなり気になるところがあるが…。


「…ルリちゃん用のオモイカネ?」


「そう…今までナデシコに積まれていたのはジルコニア君でも上手く使えるように調整したものなんだ。」


…ある意味とんでもない事実である。

だが、本来ルリ用に作られたオモイカネでは、量産型のジルコニアには荷が重すぎたのだろう…。


…今回はそれが功を奏した形だが…。


「じゃあ…ナデシコはまだ戦えるんですか!?」

「その通りだ。…ナデシコの下にいる護衛艦…パンジーに積んである。…急いで搬入しなさい。」


「はい、お父様!」

うむ…それまで私はこいつを抑えておこう!」


だが…結果的にそれは叶わなかった…。


…。


…バシュ…バシュ…バシュ…


玄武のフィールドに阻まれて、機体に届く事すらなく消えるレーザー砲…。

避ける必要も無いので、秋人はされるがままにしていた。


「ふふ…スミヤも腕を上げたなぁ…。」


…完全に敵の罠に嵌った格好だが…秋人は余裕そのものだった。

それは、自らと愛機に対する絶対的な信頼と自信からくる物である。


事実、この程度の攻撃では玄武がダメージすら受ける事すら無い。

…無論、それはスミヤも承知のはずだが…。


「さて…スミヤ。…この程度で俺を抑えたつもりか?」

「まさか…第2波行くよ。」


…ザザーーーーッ!
……ザザザアァアアアアァッ…!



…海中から…凄まじい数の艦艇が浮き上がってきた。

スミヤは…この襲撃を予見していたのだろう。…連合軍の主力をここに集結させていたのだ!


「ほぉ…これはこれは。」

「ふふふ…連合軍のおよそ二割をここに集結させたんだ。…流石の兄弟子も…。」


だが、秋人は


「雑魚が何匹群れても無駄だ。」

「…!」


玄武を囲むように集結する連合の大艦隊…。

空さえ見えない大包囲網の真ん中で…秋人は苦笑していた。


「スミヤ…確かに普通ならこれでどうにかなるだろうが…。」


ばああああああああああ…っ!!


…周囲からのレーザー砲は、まるで収束する光そのものだった。

同士討ち覚悟の超密集隊形から繰り出される一斉砲撃はまさに壮観!


「ふう…眩しいだけだぞスミヤ?」


…だが…やはり玄武には届いていないようであった…。(爆)


…。


ザパッ…


ナデシコの横にパンジーが付いて補給作業を行う。

…今までレーダーから逃れるためにエンジンを止めていた所為だろうか、未だ動作が遅い。


…いや…直ぐそばで行われている戦闘…

と呼ぶには少々圧倒的過ぎる"戦闘の気配"に当てられたのだろう。


…じわじわと設備が搬入される中…突然スミヤからの通信が入る。


「艦長…参謀として提案します!」

「え?…あ、ハイどうぞ。」


「…オモイカネ復旧後、即…この空域から脱出するべきです!」


…。


…ざわっ…


「な、兄さん!?…なんで?…だって連合の主力があれだけ集まっているの」


ドシュ…

…その時…ジュンは艦隊を貫く円錐状の光の奔流を見た…。


「え…?」

「…拡散型グラビティブラスト・広角重力波砲。…玄武の得意技だ。」


さて…玄武と言う機体…実は大気圏内での機動性は皆無に等しい。

…全身を覆う装甲が特殊な金属製であることもあり、重量が枷になるのだ。


…いざと言う時はジャンプすればいいが…アレはあくまで隠し技…。


そこで、腕の振りだけは早くして接近戦に対応し、

近づけなくてもいいように遠距離砲撃武器が充実しているのだ。


そして…広角重力波砲は、『避けさせない』為の兵器である。

…アレが放たれたら最後、何かを盾にでもしない限り、決して避けられない。


…そして…その真価はこのように敵が密集している状況下で最大限に発揮されるのだ…。


…。


「分かったね。…あれでも時間稼ぎにしかならない。…早く脱出するんだよ!

「ですが…お父様が!!」


…スミヤの目が細く釣りあがる!


「ユリカ君!!…君がそこに居たままじゃ提督は逃げられないじゃないか!!」

「あ…は、はい!…了解しました。…参謀の意見をいれ、一時撤退します。(汗)」


…何だかんだで結局参謀の言いなり新米艦長ユリカさんであった。(爆)

ただし…その判断は決して間違っては居ない…と、思う。


…。


…それからは…まさに時間との勝負だった…。

次々と討ち取られていく味方艦隊を呆然と眺めながら…

ナデシコクルー達は物資搬入と、オモイカネの復旧を待っていた。


…普通なら物資など置いて帰るべきだが、今回の場合破壊されたパーツが多すぎたため、

応急処置用の物資だけでも積み込まなければ、即座にでも沈んでしまうだろう。


…修理が終わるまでの時間…そのなんと長いことか…。

…だが…幸いと言うか…不幸にもと言うか…感傷に浸る時間はそれほど長くなかった…。


…。


「…僅か3分…これだけの艦艇が…あっさりと…。」

「いえ…良くここまでもったものですよ…提督。」


「スミヤ君。…最初に君の言ったとおり、守備を捨てて連合の全軍で当たるべきだったなぁ。」

「…いえ、想像以上でした。…全くダメージが無いとまでは予測していませんでしたから…。」


…あれから3分…。

既に大半の艦艇は失われ、残った艦も無傷なものは無かった。


…ドォォオオオン…


「また一隻…。」


…そう、また一隻の艦艇が先ほどのロケットパンチで沈められた。

機関室を貫かれては助かる物も助からない。


「僅か数分で我が連合軍の5分の1が消滅か…恐ろしい化け物だな…。」

「はい。…機体も…パイロットも。」


提督もスミヤも…かなり沈痛な表情をしている。


「しかし解せん。…あれなら一日で連合をほぼ壊滅することも容易かろうに…。」

「さて…動けない理由があるのでは?」


「…では何故今日に限って出てきたのだろうな…。」

「さぁ?…多分、比較的時間があったからでは?…忙しいようなら流石に諦めるはず。」


…ズゥゥ…ン…!!


「…更に一隻ですか。…ん?」

「どうしたのかねスミヤ君…。」


通信ごしにだが…スミヤが何か気付いたらしいことは提督にも分かった。


「…トビウメ…パンジー…クロッカス!?」

「うむ…残ったのは本艦含めて3隻だけだが…。」


…スミヤはコクピットで俯き…肩を震わせる。


「くくっ…ふはははははっ…!!」

「…す、スミヤ君!?…どうしたのかね!」


「いえ、これが笑わずに居られますか…どうやらまだ…ツキは残っているようだ…。

「??」


…唖然とする提督を尻目に…スミヤは叫ぶ!


「中々やるようだが…のこる3隻…トビウメパンジークロッカスは精鋭揃い!…そう簡単にはいかんぞ!!(爆)」


…そこまでやるか普通!?(滝汗)

だが、秋人もまた、普通ではなかった。


「…分かった分かった…じゃあ飛ばすぞ?(呆)」


そして…両手の指先から、パンジーとクロッカスに対してバルカン砲のような物を撃ちかける!

青い光を放つそれは…CC!


「…さて…じゃあ、指定の位置に…跳べぇっ!!


…シュンっ!!


その瞬間、クロッカス・パンジーの両護衛艦は消えた。

…いや、約束の場所に飛んでいったのである…。


…もし、その時のスミヤの顔を見た者が居たら、それは間違いなく不幸であろう。

何故なら彼の顔は、これでもかと言うほどに怪しげな微笑を浮かべていたのだから…。


…。


「おや…?」


…2隻が消え、一応歴史的には格好がついた形になった(?)時、秋人は頭上の異物に気付いた。

そう言えば…先ほどから顔の見えない男がいる…。


「甘いぞ黒帝…!」


バシュ…!
   バシュ…!
          …ガシィィィイイッ!!


「ぐぁあああっ!!」

「…幾らなんでも無視は酷くないか!?(苦笑)」


…先ほどからの混乱に乗じ、アキトは上空のルリ達の下に向かおうとしていた。


だが…壊れかけたフレームでは速度も出ず、
遂に玄武に発見され、ロケットパンチで貫かれ…無かった。(爆)


「…なぁ!?」


…気付くと、アキトの乗る空戦フレームは両手を玄武の右手、両足を玄武の左手に拘束されていた!

しかも、その腕達はロケット噴射しつつ、本体の方に戻っているではないか…!


「馬鹿な…完全に制御しているのか!?」

「そりゃそうだ…こいつはビットみたいな物だからな…。」


必死に暴れるが、じわじわと高度を下げていくアキトの空戦フレーム…。


…だが…その時、敵が両腕を飛ばしたと判断したトビウメでは、

英断、もしくは蛮勇ともいえる作戦が展開されようとしていた!!


「…今なら敵戦力は減退している。…行くぞ!!」


…そして、何故か飾ってあるフクベ提督の遺影(ヲイ!!)に全員で黙祷をする。

そして…覚悟を決めたかのような晴れやかな顔で…、


「行けぃっ…特攻!!」


…冗談無しでやる気か!?(爆)

だが、そんな作者の想いとは裏腹に、トビウメは敵機に肉薄していったのである…。


…。


ごぉぉおおおおおおおっ…!!


「ん?」


肉薄してくる巨大な風を切る音に秋人が気付く。

だが、はぁ…とため息をつき、哀れむように言う。


「…腕が無くなったと思ったか…?」

「な…違うのか…。」


「黒帝…お前を掴んでるのは、玄武にとっちゃ手袋みたいな物だ…。」

「ほぉ…俺は手袋に捕まっていると!?(怒)」


…あまりの侮辱にアキトは怒り狂う!


「いや…正確に言うとな…封印だよ。」

「…!?」


「…まあいいや…見せてやるよ。…玄武の恐ろしさを…な!」


…ガシャン!!


右腕の内部から、アイアンクローが3本せり出してきた。

更に…左腕には凄まじいまでの光が集まりだす!!


…。


…ガシィッ!!


「見せてやるよ…必殺技!!


玄武は突っ込んできたトビウメを軽く受け止め…


…ブォ…ン!!


…その時…トビウメは通常ではありえない軌道で玄武の頭上に振り上げられた!!

玄武のパワーは、自分より何倍も大きな戦艦を軽々と持ち上げてしまう程だったのである。


「…ぐわあああああっ!?」


…非常識なパワーで振り上げられたトビウメは激しい衝撃を受け、

脱出装置兼用のブリッジが外れ、提督たちを乗せたまま海に落下していく…!!


「お父様ああああっ!?」


…恐らくユリカの絶叫も聞こえているまい…。

だが…後に分かるが、この為に命が助かったのだから人生何が役立つか分からない。



…。



そして…右腕のアイアンクローで固定されたまま、
玄武の頭上に上下180度反転状態で掲げられているトビウメは…


「うおおおおおっ…沈めぇええええええっ!!」


秋人の…裂帛の気合に答えるかのように、玄武の左腕の光が大きく…強くなる!!

そして…!!



…ドゴォオオッ!!



左腕は振り上げられ、トビウメを貫いた…!


……。


…トビウメの巨体は…玄武の左腕が貫いた辺りから見る見るうちに白熱していく…。

そして…それが全体に行き渡ったその時…!!





















「ヒィィィィィイイイイイト…
エ〇ドォォォオオオオオッ!!」


















…閃光!そして…爆砕!!


凄まじいまでのエネルギーの奔流が、戦艦の全てに行き届き…それが臨界を迎えた事により戦艦と言う殻を突き破って外部に流れ出す…いや、この言い方は正しくない。何故ならそれは爆発と言うべき物であったし、流れ出すと言うよりは弾け跳ぶ…いや、粉微塵に破砕された船体からはそれでも生ぬるい…
そう、まさしく暴走とでも言うべき程の事態にまで成っていたのだ…!!



………。


…ぱら…ぱらぱら…

かつて…トビウメの一部であったろう指先大の小さな破片が周囲に降り注ぐ。


「小生は今日も絶好調である!…なんてな、黒帝。(苦笑)」

「真顔で冗談は止せ…。(汗)」


…恐ろしいまでの威力…。


周囲に充満した大量の熱により蜃気楼のように揺らめく玄武の姿は、

そのダークグリーンの色合いもあり…まさしく悪魔そのものであった…。



…。


「…なんて事…。(汗)」

「ユリカ…早く逃げよう!!」


…未だ応急修理すら終わらないナデシコのブリッジで、ユリカは呆然としていた。

ほんの十数分前に現れたばかりの援軍は、もう何処にも無い。


逃げようにも、未だオモイカネの修理すら終わらないのだ…。

最早打つ手無しかと思われた…。


「…か、艦長…敵機のパイロットからの通信です…。」

「つ、つないでメグちゃん…。」


…ユリカ達の声にも精彩が無い。

命の危機は既にもう直ぐそこまでやってきていたのだから仕方ないが…。


「さて…奇跡はもう起きないぞ…。」

「うう…あ、そうだ!」


「…なんだミスマル・ユリカ艦長?」

「えーと、修理終わるまで待ってくれませんか!?」


…幾らなんでもそれは無茶だぞユリカさん。(汗)


流石の秋人も少しばかり眩暈が

…と、そこに通信が入る。


暗号から察するに…間違いなく木連からの物だ。


「…俺だ。」

「閣下!!…直ぐお戻りください!!」


…あ、シンジョウ…。(漢字不明)

ナデシコでも陰の薄さでは随一(私見)の男だ。


「何があった…。」

「…敵が動き出しました!…まるで閣下の留守を狙ったかのような見事な動きで…!」


「…な…!?」

「既に防衛ラインも突破され、一部のコロニーに被害が…」


…ブツン!!

秋人は即座に通信を切る。…もう、時間は無い。


ちぃぃぃいいっ、
…異界からの侵略者めっ!!」



…そして…ナデシコの方をちらりと見ると、秋人はスミヤに通信を入れた。

彼にとっては不本意だが…今回ナデシコを討つのは諦めたようだ。


「スミヤ…奴らがきた。…ナデシコが本当に伝説となれるか…もう少し様子を見る事にする。」

「…そうだね。…それと、もう兄弟子は遠出しない方がいいんじゃない…?」


…苦笑する秋人。


「地球にとっても…木連にとっても…か?」

「まあね…僕は全てにとってそれが一番いいと思うがね。」


「…そうか。…俺は帰る。…後始末は任せた。」

「ああ。了解…。…それと、出来れば 溶断破砕マニピュレータ はもう使わないで欲しいな…。(汗)


…そして…ボースの光と共に玄武は消えていったのである…。

ボソンジャンプの知識の無い者には、さぞかし不可思議な現象に思えた事だろう…。


…。


その頃…ブリッジでは…


「…消えちゃった…。」

「艦長があんまり馬鹿なこと言うから、呆れて帰っちゃったんじゃないのー?」


「うーん。取り合えず結果オーライです!」


「いやぁ艦長…決戦となるとかなりの損害が出ます。素晴らしい英断でしたな!」

「ミスター…。そうか…?(汗)」


その時…ジュンが何時の間に出ていたのか、ブリッジに戻ってくる。


「あ、ユリカ。…オリジナル・オモイカネの据付完了だってさ。」

「あ、ジュン君…じゃあ、ナデシコ発進!!」


「了解。…ですが正規オペレーターのルリさんが不在なので処理効率が70%落ちています。」

「…あ、そっか。…ジルちゃんじゃ完全には扱えないんだっけ。」


「…では、今後の行動ですが…。」


ずずい…と話に入ってくるプロス。

…どちらにしても…やるべき事は今のところ一つだ。


実はここいらで、リーダーシップ的なものを発揮しておきたかったのかもしれないが。


「先ず、浚われたルリさん達姉妹の救出と、艦の破損箇所の修理…。」

「…所でミスター、エステの回収をしなくていいのですか?」


「…あ。(汗)」

「…忘れていたのですか。…まあ、仕方ないですね…。」


…プロスの本格復活までの道は遠いようである。(爆)


…。


「…失礼する。着任の挨拶をしていなかったな。」


…そうこうしている内に、アキトがブリッジに入り込んできた。

どうやら…ルリ達を救い出すまではここにいる気になったらしい。


…アキト・ラズリらしからぬ行動ではあるのだが…まあ、単なる気まぐれなのだろう。

因みに書類などはここにくるまでに偽造済み。(爆)


「アキトだ。…暫くの間、厄介になる。」


…その暫くは、恐らく短くなるはずだ…と、アキトは思っていた。

ルリ達を助け出したら即座に脱出するつもりだったのだろう。


…が、


「…何処かで会った事があるような…?」

「…ぁぁぁぁぁああああっ!(泣)」


…何か思い出しそうなユリカ、そして…崩壊寸前のジュン。(爆)

そして…ミナトとメグミは、


「へぇ…中々かっこいい子じゃ…あれ?」

「…似てる。…さっきのの人に。」


「そうね…意外とスパイだったりして。(苦笑)」

「でも、…スミヤ参謀にも良く似てます。」


「…あ、そう言えば。…弟のジュン副長より彼の方が似てるわね…。」

「…でも、それだけじゃない…。」


すたすたと…メグミはアキトの所まで歩いていく。

そして、


「…な、なんだ?(汗)」

「…やっぱり!」


「!?」

「…イトコのアキ君じゃない!?…私の事…覚えてる!?」


…ぽかーん…

今のアキトの表情は、一言で言うならそんな感じだった。

だが、ゆーっくりとメグミを指差して…


め…メグちゃん…かい!?…うわ…3歳の時に会ったきりなのに良く分かったね!」

「わー、やっぱりアキ君だ…ってアレ?」


…しーん

周囲はそれについていけず、放心している。(汗)

そして…それを見たアキトは…、


「あー、たぶん人違いだな。(汗)」

「…バレバレだけど…まあいいか。…じゃあ今の所、アキトさんって呼ぶからね!(苦笑)」


…何だか知らないけど、ほのぼの系のオーラを漂わせる二人。

だが…皮肉にもそれが、ある者の記憶を引き出してしまった…。


…。


『アキ…アキって女の子みたいなお名前だね!』
『う、うるさいやい!…本当はちょっと違うんだよ。』

『えー、じゃあ教えて教えて…!!』
『あ!…怒られるから駄目だって!』


…。(喧喧囂囂)


『…わ、わかった。…しょうがないから教える。…でも、
絶対秘密だぞ!』
『ふふーん、根競べではユリカの勝ちだね!』

『はぁ…アキト…アキトって言うんだ、僕の本当の名前は。』
『ふーん、アキト…アキトかぁ…。』

『おい、前にもいったけど…ぜぇったい秘密だからな!!』
『うん、分かった!』

『嘘ついたら…絶対許さないからな!!』
『うん、うん!』


…それは色あせた記憶…。

だが、どんなに色あせても消える事無く…
頭の奥に大切にとっておいた記憶…。


「あーっ…アキト、アキトだーッ!!」

「「え゛!?」」



メグミを押しのけてアキトの前に立つユリカ。


「ねぇねぇねぇ…アキトアキトアキト!!」

「だ、誰だ!?」


「私だよ、ほら…火星でお隣だった!」


…はっ

アキトははっとして、手荷物から一枚の写真立てを取り出す。


「…ユリカ…。ミスマル・ユリカか?」

「うんうん…あ、写真拾ってきてくれたんだ!!」


写真立てを手に、心底嬉しそうにしているユリカ。

対してアキトは…固まっていた。


(ユリカ…これがあの時の…ユリカなのか!?)

「アキトってば、私を助けにきてくれたんだね!」


…アキトは動かない…。


(もしそうなら俺は…俺はっ!!)

「…やっぱりアキトは私の王子様だ」


パァ・・・ン…


突然…乾いた音がブリッジに響き渡る。

…そして…支えを失った写真立ては床に落ち…粉々に…割れた…。



…。



一方その頃…地球軌道上の木連軍旗艦。


ルリやサフィーの囚われて(一応)いるブロックから更にずっと奥…。

そこに軟禁されて居る一人の少女が、びくっと体を振るわせた。


「戦巫女様…どうなさいました?」

「美春…アキト…怒ッテル。」


あ、モクレンミブヤモドキ。(汗)

ラピスをつれて再登場だ!


「まあ…ですけど人でしたら機嫌の悪い日ぐらい…。」

「チガウヨ…あの時ぐらいスゴイ怒リ…。」


「…あの時…ああ、戦巫女様がお出でになった日ですね?」

「…。(こくっ)」


…そうしてそれっきり、二人は黙ってしまった。

…その想いを遠く、一年前の忌まわしきあの日に飛ばして…。

続く


::::後書き::::

どうも、BA−2です!

世紀を超えて第82話は如何でしたでしょうか!?


…遂にTV第2話…ってまてぃ…ラピス浚われたところとか書いてないじゃないか!!

というわけで、次回は恐らくユートピアコロニーの話になるでしょう。(爆)


…さて、最強の機動兵器…玄武。

あれについては、勝てなくて当然と言っておきます。(笑)


…アレは、イメージ的に最強最悪のスーパーロボット…とイメージして書いてるんです。

故に必殺技も凶悪な物にしてみました。(笑)


なお…アレに勝てるなら、この世界観では正面からの戦いでは負ける道理が無くなります。

…つまり、『魔王の顔見せ』的な物だったわけです。


…さて、今後も頑張っていきますんで皆様応援よろしくお願いします!

では!

 

 

代理人の感想

>最強の機動兵器…玄武。

でも胸に亀頭。

 

>イメージ的に最強最悪のスーパーロボット

でも胸に亀頭。

 

>アレに勝てるなら、この世界観では正面からの戦いでは負ける道理が無くなります。

でも胸に亀頭っ!(しつこい)

 

虎ならまだしも亀では某冴島警視総監ですら「カッコイイ」と言ってくれるかどうか(爆)。