機動戦艦ナデシコ  アナザーストーリー


世紀を超えて

第84話 敵は高空に有り




…沈黙…。

ナデシコのブリッジを…今、沈黙が支配していた。


「な…。(硬直)」

「…むう…!?」


流石のプロス&ゴートも、凄まじい展開についていけていない。

…それ程に、今目の前で起こったことは前代未聞の出来事だったのだ…。


「…ゆ、ゆ…ユリカぁっ!?」

「ち、ちょっ…いきなり艦長殴り飛ばして…どういうつもり!?」


アキトの平手打ちで吹き飛ばされたユリカは、今ブリッジの壁にめり込んで止まっている。

ジュンはユリカに駆け寄り、ミナトがアキトに掴みかかった!


「うーん、アキトってば激しすぎるんだからぁ〜〜♪」


が、当の本人はと言うと…

…目をグルグル回してはいるが、取り合えず元気なようである。


しかし…丈夫だね、この人も…。(汗)


…。


そして…当然の如く、アキトは周囲を敵意に満ちた視線で囲まれる事となる。

着任早々艦長殴り飛ばしたのだから当然だが…。


「…とにかく…事情を説明していただきましょうかテンカワさん…?」

「アキト・ラズリだ。…名を間違えるな。」


…二人の間に視線の間で火花が散るような、痛い沈黙が生まれる。

周囲の人間は、気温が下がったかのような錯覚すら覚えた…。


「…テンカワさん、事情を説明して頂けますかな…?」

「…だから違うと言っている。」


プロスはこの時既に気付いていた。…彼こそテンカワ・アキトその人だと…。


…実は、彼らは以前仕事で何度か会う機会があったのだ。

だが、プロスはアキト・ラズリ=テンカワ・アキトという考え方に、遂に至る事は無かったのである。


…それは、彼の脳裏に残るあの少年…。

テンカワであるが故に全てを失った彼の事を、無意識に思い出すまいとしていたのかも知れない。


研究所の一室でこちらを憎々しげに睨んでいた彼が、自分達に協力してくれるとは考えづらい。


…だが…彼は『企業人』として責務を果たさねば成らなかった。

ネルガルの未来にとって、『黒帝』は失う訳に行かない手札であったのだから…。


「貴方以外に考えられないんですよ。…メグミさんのイトコは…テンカワさんしか居ないはず。」

「成る程。…しくじったな、既に調査済みか…?」


アキトは苦笑する。

…どう足掻こうが、もう隠し通せる物ではない事に気付いてしまったのだ。


「さて、お分かりになって頂けた所で…なんで艦長を殴ったりしたのです?」

「…裏切り者に対しての処置としては、甘すぎるぐらいだが?」


…しー…ん


…裏切り者…の部分から、言葉を失う一同。

暗い笑みを浮かべるアキトが、この上なく恐ろしい物に見えたのだろう…。


そこに、一つの影がゆらっ…と割り込んでくる…。


「…何にしても、上官反逆罪だと思うけど…ね。」

「…アオイ・スミヤ…か。」


…カチャ、
…バァン!バァン!!



…し…ぃ…ん…


…アキトは突然…拳銃を天井に向かって発砲した!

気の弱い者は既に腰を抜かしている…。


「ユリカ君を傷つけて…次は無差別発砲ですか…。(怒)」

「…誰にも当たらなかっただけ…ありがたく思って貰いたいな…。」


すすっ…


両者共に格闘用の構えを取る。

…既に臨戦態勢だと言っても良いだろう…。


「…一度…死んでみるのはどうかな?」
「…お断りだ。」



そんな…硝煙の匂いが立ち込めるブリッジで…

…一人の人物がアキトに向かって歩み寄っていった…。


「ま、待ってくれ…テンカワ…少し話がある!!」

「…ジュン!?…下がっていてくれないか!?」


だが、珍しくジュンは引き下がらなかった。


「兄さんは黙ってて下さい!」

「な…判った。…だが無理だけはしてくれるな…。」


…そして、アキトの前に仁王立ちになったジュンは…

殺気を体中に感じながらも逃げ出さないように歯を食いしばり、言葉を繰り絞る!


「…話がある。…こっちに来て貰うよ?」

「良いだろう。…その度胸に免じて…死に場所は選ばせてやるよ…。」


…そして…二人はブリッジから出て行ったのである…。

なお、周囲はアキトの台詞の中にある不穏当な台詞が気になって仕方なかったらしい。(爆)


…。


…がちゃ…


ここは、今はまだ使われていない小型の会議室。

…ジュンはその部屋に内部からカギをかけると、アキトの方に向き直り…


…突然土下座をした!!


「…何のつもりだ…?」

「違うんだ!…悪いのはユリカじゃないんだ!!」


…涙ながらに語るジュン。

そして彼は…過去の真実を語り始めた…。


…。


…アキトがユリカに本名を教えたその日。

…ジュンは遠くの大木の陰に隠れて、ユリカの様子を伺っていた…。


「ううう…ゆりかぁぁぁぁああああ…。(泣)」


鼻水と涙で顔をぐしょぐしょにしているジュン…。


…せめて近くで一緒に遊ぼうとは思わないのか?という方もいるだろうが、

目の前には嬉しそうに自転車の相乗りをしている二人…。(注:ジュン視点)


流石に…それを邪魔する勇気が彼には無かったのである…。


…。(数時間経過)


夕暮れ迫る頃…アキトは両親の元に帰っていく。

…そして…ユリカが帰ろうとしたその時、ジュンは偶然を装いユリカの前に現れた。


「ユリカ…偶然だね…。(暗)」

「あ、ジュン君来てたんだぁー。…うん、帰ろ!」


…こうしてユリカと一緒に手を繋いで帰る道…。

それは何回も繰り返された、幼い彼の数少ない楽しみだったという…。(同情)


だが…その日は普段とは違い…ジュンの顔は曇ったままであった。

何故なら…


「…アキ君はねー、アキトって言うーんだホーントーはねー♪」

「…。(心の中だけで滂沱)」


「だ・け・ど、秘密だかーら自分の事アキ君って呼ーぶんだよー、可笑しいねー、アキトー♪」

「…ぅぅぅ…。(顔で笑って心で泣いて)」


…そんな、ユリカの能天気な歌声(しかも替え歌)が響き渡っていたからである。


惚れた女が他の男の名前を連呼しているのは正直こたえる物があるだろう…。

…そんな訳で、ジュンの忍耐が限界に達するまで、大して時間は掛からなかったのだ。


「…ユリカ…誰だよアキトって…。」

「…ダメ、約束だからアキ君がホントはアキトって名前だって事は喋っちゃいけないんだ!」


…見事にバレバレである。(笑)

そして、ジュンの密告の結果…ネルガル他が動き出す事となるのであった…。


…テンカワ一家の災難には、こう言う裏事情があったのである。


…。


…ジュンの土下座は続いていた。


「…以上が全ての事実だよ、テンカワ…。」

「成る程な…。」


「だから…全ては僕の責任なんだ。…恨むなら僕を!
 …ユリカに罪は無い!!

「…。」


…アキトは何やら考える目をしていた。

そして…ボソッと呟く。


「ジュン。…お前は馬鹿か?」

「…な!?」


がばっ…


あまりに酷いアキトの言い草に、流石のジュンも怒りで顔を上げる。

…だが、アキトは思いのほか冷静だった。


「良いか…俺はお前と何の約束もしていないんだ…。」

「…そ、それはそうだが…僕の密告が君の運命を狂わせたんだぞ!?」


「…約束が無いのなら…密告されようが約束を破った事にはならない。」

「けど…。」


煮え切らないジュンに豪を煮やしたか?

…突然、アキトが真面目な顔でジュンに尋ねる。


「…では一つ聞こう。…警備員が警備中に品物を盗まれたら…責任問題だろう?」

「そ、そりゃそうだ。」


「では普通…その責任を周囲に居た客に被せられるか?」

「…そんな馬鹿な話…ある訳無いじゃないか…。」


…アキトはふっと笑った。


「そう。…この場合、警備員がユリカで観客がお前だ。」

「えっ?」


「わざとでは無くとも、秘密を漏らしたのはユリカだ。
 …それを、俺たちの約束とは無関係のお前が重荷に感じる必要は無い。」

「けど…ユリカは自分が話したとは思っていないんだ。それだけは覚えていて欲しい。」


…アキトはぽりぽりと頭をかいた。困っているのだろうか…?

困惑した表情で、アキトは一言しぼり出した。


「やれやれ、ユリカは幸せ者だな。…いい理解者が居る…。」

「僕なんて…所詮は君の引き立て役じゃないか…。」


…だが、アキトはそれを笑い飛ばす。


下らんな。…ろくでもない未来が見えているなら足掻いて見せろ。…それが人間だ。」

「…それは…ユリカを僕が取ってもいいって事なのか…?」


「振り向かせる事が出来るなら、それは当然だな。」

「…出来るのか?…この僕に…。」


「出来るのか…じゃない。…やるんだよ。

「…そう簡単にいくものか!(怒)」


「…当然だ。足掻いて足掻き続けて…それで報われるかは別問題さ。」

「…厳しいな。…だが、それが真理かもしれない…。」


ぷっ…くくっ…はははっ…

気付いたら、二人とも大声で笑っていた。


「ふふ…厳しいか。当たり前だ。…だから気に病むな。」

「…ああ、判った。…済まなかったな、途中からは愚痴ばかりだった。」


「ふっ…お前の愚直にすら見える純粋さは、俺には眩しく見えるよ…。」

「…じゃあ、言いたかったのはそれだけだから。」


…ジュンは部屋を後にする。


「参ったな、人間的には完敗だよ…。」


そんな独り言を残して…。


…。


そして…その頃ブリッジでは…

あるモニターに全員が集まって騒いでいた。


「いい話ねぇ…。」

「…アキトさん、昔はあんな子じゃ無かったんですけどね。」


「おやおやメグミさん…それは3歳時の事でしょう?」

「しかし、良いのかミスター?…盗聴なんかして、ばれたら大変だと思うが。」


二人の会話は…見事に盗聴されていたのであった。(笑)

…ジュンの苦労は見事に報われなかったのだ。


「でも彼、何だか苦労してるみたいねぇ…。」

「そうかも。…ある時から全く音信不通だったし…。」


だが、周囲からのアキトに対する敵意は完全に消えているようだった。

…理由はわからないとしても、彼らの過去に何かあったのは一目瞭然だったから…。


…。


暫くして、盗聴器の電源も切られた頃。

一人部屋に残ったアキトは、誰にも気付かれないようにポツリと呟いた。


「…例えそれが事実だろうが…アイツの事を許すとは、一言も言ってないからな…。」


その台詞が誰かに聞かれる事は、遂に無かった。

そして同時刻の格納庫で、


「じゃあ、兄さん…後は頼むね。」

「うん、本当ならお前はトビウメで置いてけぼりされる筈だったんだけどね…。」


「まあ、いいじゃない…じゃあ、行くよ?」

「ああ、次はビッグ・バリアだからね…。」


…ジュンがナデシコから離れたのに気付く者も居なかった。

…相変わらず影が薄いことで…。(泣)


…。


なお、ユリカが復活するのにそれから3時間ほどかかった事を追記しておく。(汗)

…あそこまでやられたと言うのに、


「それでもアキトは私が大好き!」


等と言い切ってしまうその姿に、ブリッジクルー全員が盛大に引いたという…。




…。




さて…数日後。

連合軍本部では、緊急会議が開かれていた。


『ナデシコ許すまじ!!』


…議長役を務めるアフリカ方面軍指令のガトル大将が盛大に声を張り上げる。


『我らが苦戦してるさなか、あの船は火星に行くという。…そんな勝手を許すわけにはいかない!』


熱く語る大将。

だがそこに、秘書官らしき女が割り込んできた。


「…司令、そのナデシコから通信が。」

「おぉ…予定通りだな。…繋いでくれ。」


…そして、出てきたのはと言うと…。


「明けまして、おめでとう御座いまーす!」

「…。(話どおりとはいえ…まさか本当に…。)」


…史実どおり、振袖姿のユリカであった…。

連合首脳一同は唖然としている。…まあ、当然だが。


「うぉほん、君は先ず国際マナーを学ぶべきだな。(汗)」

「そうですか?…では…」


…と、言って今度は英語(多分)で話し始めるユリカ。

…詳細は事情で省くが、
要約すれば一言で済む。(爆)


「…ビッグバリア解いてくれません?」


…で、連合軍側の対応はと言うと…


「無理だ。(即答)」


…にべも無いものだった。

と言っても、それはナデシコとしても完全に予定内であったが…。


「では、勝手に通っちゃいますよ♪」

「…通さないと言っているわけではない!」


…おや、予想外の反応だ。(爆)


「え、じゃあ通してくれるんですか…?」

「今は無理だ。…だが勝手に通って衛星を壊されてはかなわん。」


「じゃあどうすれば…?」

「…上を見てみるんだ。…木製蜥蜴の戦艦が居るのが判らんか?(汗)」


…じー。


「見えませんよ?」

「レーダー使え、レーダー!(怒)」


…じー。(レーダー凝視)


「…やたら古いタイプの連合軍艦が一隻居るだけですよ?」

「それが…木製蜥蜴の艦なのだよ。」


「えっ…?」

「艦長…では、此方から補足させて頂きます。」


不思議そうにするユリカに対し、スミヤが現れて補足説明を試みる。


「…要はアレを動かしているのが木星蜥蜴、あるいはその協力者だと言う事です。」

「つまり…乗っ取られたって事?」


「はい。…とは言ってもアレは100年前に反乱軍に乗っ取られて以来行方知れずだった艦です。」

「…沈めても構わないんですか…?」


「ユリカく…艦長…?」


…くるっとガトルの方に向き直ったユリカは宣言する。


「では、ナデシコがその艦を沈めます。…ですからバリアを解除して下さい。」

「なんと!…艦長、無意味な戦闘は社の利益を損なうのでは…。」


「プロスさん?…道を塞いでるならどっちにしても倒さないといけませんよね?」

「…成る程、そういう事でしたか。」


意外なほどあっさりと引き下がるプロス。

…そして、それを横目で見ていたガトル等連合側から提案が行われた。


「諸君らの気持ちは良くわかった。…では一つテストを受けてもらう。」

「…テスト?」


「そうだ。…第三防衛ラインまで上がって来ると良い。」

「…良いんですか?」


「うむ、そこで防衛部隊と一戦交えて勝てたのならば…バリアは解こう。」

「判りました!」


…にやっ


「だが…その前にブリッジが制圧された時は、連合の命令に従ってもらうぞ…?」

「はい!」


「…言質は取ったからな?」
「――え?」



…。(刹那)


ガチャ…ドドドドドドド…

突如、ブリッジに武装した兵士達がなだれ込んできた。…その数5人!


「艦長…ごめんなさいね。」


更に、ユリカにはムネタケが銃口を向けている!


「なっ?…キサマッ!!」

「…参謀、失礼致します…お静かに願いますよ!」


そして、今まで居ても誰も気付いてくれなかったナカザトは、マシンガンをスミヤに向ける。


「ははは…早速制圧されたな?」

「ガトル大将…これはどういう事です!?」


「最初からムネタケ等にはそういう命令を出しておいたのだよ。…ま、経験の違いだな。」

「…そんな、ズルイです。」


「…では、木星蜥蜴は正々堂々と戦ってくれるのか?…実戦は甘くないぞ。」

「…う。(汗)」


…完全に勝ち誇るガトル大将他、連合のお偉いさん方。

…なお、彼らの発案ではない事は想像に難くない。


「さて、ではナデシコをこちらに向けるのだ。」

「答えは…"NO"です!」


…完全に制圧されたように見えるブリッジで、ユリカは言った。


「だが、ブリッジは制圧したぞ。…約束を反故にするのかね?」

「まだ艦長の私が居ます。…艦長が倒れない限り、完全制圧にはなりません!」


…その台詞に連合議会側が固まる。

今度は…彼らが試される番であった。


「それは…どういう事かね…?」

「私には艦を守る義務があります。…死ぬまでここを明渡すわけには行かない…という意味です。」


「…我らに君を殺せと言うのか…。」

「ナデシコを制圧したいのならそうなるでしょうね…。」


…痛々しい沈黙…。

ここにミスマル提督が間に合わなかったのは、ある意味幸いであったろうか…?


…ユリカ自身、不敵な笑みを浮かべてはいるが指先が震えている。

やはり、恐ろしい物は恐ろしいのだ…。


…。


「む、ムネタケ君!」

「は、ハイ!?」


「…やりたまえ。」

「そ…それは…命令…なのかしら…ね…?」


…命令を下すと言う事は、実行したのと同じ意味を持つ。

流石のガトルもこう言う展開になるとは思わなかったのだろう…返答が遅れた。


「……う……う、うむ」
「…大変です!!」


…そして、絞り出した声を掻き消すような大声をあげ、ブリッジに駆け込む兵士が一人。


「な、何よこの忙しい時に!?」

「副提督…反抗した奴が兵を倒しながらブリッジに向かっています!」


「…どんな奴?」

「はっ…それは…」


ズボッ…


「え…?」

「…こんな奴だよ。」


…ムネタケの背中から、腕が一本生えていた。

兵士の帽子がずり落ちる…と、そこから現れたのは…


「アキト…来てくれたんだ!!」

「ふう…そういう事だ。…思ったより覚悟が出来ているようだからな…見直したぞ。」


どさっ…


ピクリとも動かないまま倒れるムネタケ。

そして、それに驚いて周囲の兵士の動きが止まった。


「…好機は今…ですね!」

「参謀!…動かないで下さいと言ったでしょうに!!」


バタタタタ…


…迫るナカザトのマシンガン!

スミヤは両腕をクロスさせてガードし、そのまま正面から突っ込んだ!


「木連式『竜牙八連』っ!!」
「くうっ!?」


…この『竜牙』と言う技は、手を広げたまま敵に掴みかかると言うだけのシンプルな技である。

だが、身体能力に優れた物が使うとそれだけで恐怖の殺人技となるのだ…。


…イメージ的には吸血鬼とか狼男とかの爪攻撃みたいな印象である。

最も此方は『握りつぶす』為の技なのだが…。


…熟練した使い手が使うと、まるで竜に噛み付かれた後のようになると言う…。

…それ故に『竜牙』の名を与えられたのだ。

(なお、それを瞬時に8回連続で繰り出すから『竜牙八連』…彼の場合これが限界らしい)


…。


そして今…


「うわあああああああっ…」


ナカザトは一撃目で片腕を握りつぶされ…


「どあああああぁぁぁぁぁぁぁ…。」


…第2撃目で窓をぶち破り、遥か彼方に飛ばされていった…。


「たぁああああっ!!」


「ぎゃひー!」「ふぐっ!?」「ほごぅ!」
「けふぅ!?」「あがっ!??」



…しかし、スミヤの攻撃は止まらない!

更に、一撃で一人づつ兵士達が粉砕されていく…。


「…これで止めです!」


そして、第8撃目で、最後に残った軍服姿の男を吹き飛ばす!!

…え、“はち”…?(汗)


雪崩れ込んだのは5人。

元から居たムネタケ・ナカザトを入れてもその数7人…。


いや、ナカザトで2回だから…いや、ムネタケはアキトが倒したはず…。

だったら…今のは…?(汗)


…。


「…ほげぇぇぇえええええっ…!」

「あ…フクベ提督…。(汗)」


吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられる提督。そう言えばあの人も軍服だった…。

…なお、幸いにして一命は取り留めたという。(爆)


…。


…こうして、ナデシコクルーはブリッジを奪回した。

幸い傷が浅かったムネタケが、残った兵士を説得し…彼らは今、艦の一室に閉じ込められている。


…って、アレでも浅いのか…?(汗)


そして…ユリカはガトル大将に向かって言った。


「では、第三防衛ラインまで向かいます。」

「わ…判った。…だが、此方も相応の準備はしていると言う事を忘れないようにな…。」


…ぷつん

こうして、連合軍との交渉(?)は終わった…。


…。


「…と言うことで、ナデシコはこれより軌道上の第三次防衛ラインに向かいます。」


…ユリカの号令と共に、ナデシコはあわただしく動き出す…。

そして、そんな中…


「…艦長。」

「あ、アキト!…どうしたの?」


「いえ、先ほどは失礼致しました。…突然の無礼お許しいただきたい。」

「え、あー…あの事?…久しぶりでびっくりしたんだ、気にしてないから大丈夫!」


「いえ、それにしても素晴らしい覚悟でした。…最近の軟弱者達に聞かせてやりたいです。」

「そんなー、素晴らしいって…アキトってばぁ…。」


「少し、過小評価していた。…艦長としての貴方は信頼できそうです。」

「し、信頼!…アキトっ、私頑張るからね!」


「はい、艦の運命は艦長の決断に掛かっています。…精進して頂きたい。」

「うんうん、でも、アキトも私の事助けてね?」


「了解。…ですがそれは部下として当然の事です。」

…助けるのが当然って…やっぱりアキトは私の王子様だね!!」


そして、それを見ていた各クルーからのコメント。


「ミスター、どうやら仲違いは終わったようです。」

「そうですかねぇ…私には何処かギクシャクと見えますが…。(汗)」

「そうね…でも…はっきり敵視しているよりは良いんじゃない?」


…。


…二人の会話が終わった頃、メグミがアキトに話し掛けてきた。

どうやらタイミングを見計らっていたらしい。


「ね…アキ君。…ううん、アキトさん…。」

「…どっちでも構わないけど…?」


「ね…何だかさっきの言い方、刺があるように見える。」

「そうかな。…少なくとも今は上司だからな…。」


「…艦長の事、嫌いなの?」

「今回の事で、信頼に値する艦長だと判断したよ。」


…メグミは首を振る。


「…そうじゃなくて。」

「…公人としての俺は艦長を認めた。…でも、
 私人としての俺がユリカを許す事は無いと思う。」



「そっか…そうなんだ…。」

「やっぱり、仕事とプライベートは別問題として考えないとな。」


…そして、アキトが行った後、メグミはチラッとユリカを見た。


「アキトってばもう…えへへへへ…。」


クネクネしながらニヤニヤしているユリカを見て、

メグミははぁ…とため息をついた。


「アキ君、あなたがどう考えてるか良くわかんないけど…。」

「…アキト、貴方の愛情に応える為に頑張ります!(びしっ)」


「…艦長は…そう思ってないみたいだよ…。(汗)」


…それは、唯の独り言だった。…のだが、聞こえている人も居るようである。


「そうだね。…困った物さ…。」

「えっ!?…参謀!?…聞いてたんですか?」


「そうだね。…『アキ君』の所からかな…。」

「はぁ…でも、艦長ってどうしてあんな人なんですかね…。」


「…彼女も"ユリカ"だからね。」

「…答えになってません。(汗)」


…とはいえ、そうやっている間にも時は流れる。

お気楽な時間は終わりを告げようとしていた…。


「…レイナード通信士。」

「どうかした?」


ジルがメグミに突然話し掛けてきた。

その顔には…少しばかり焦りの表情が浮かんでいる。


「はっ…格納庫からアキト・ラズリ様が発進なされました。」

「え?」


「艦長から、帰還命令が出されています。…エステとの通信願います。」

「………通じないな。…そっちはどう?」


「そちらで駄目なら、こちらでは無理です。(即答)」

「…試しもしないで言わないで。」


「無駄なのは事実です。」

「もう、量産型の癖に煩いんだから…。」


それに対し、ジルは少しばかり寂しげに眉をひそめる。


「…申し訳ありません。」

「あ、別にけなしてる訳じゃないから。普通の量産型って…人形みたいで不気味でしょ?」


「私が通常と違っているのはわかりますが…。」

「そのままでいた方が良いと思うよ。…少なくとも私はね。」


その時の彼女の微笑みはとても美しかった…と、後にジルは語る。

…残念なのは、それを見ていた男が居なかった事か…。(爆)


「…はい、有難う御座います。」

「良かった。…でも、アキ君…どうしちゃったのかな…。」


…なお、当のアキトはと言うと…

既にグングン上昇を続け、単独で第三防衛ラインにまで辿り付いていた。


「…この距離ならエネルギーウェーブもまだ届くはずだ。…待ってろよ。」


…どうやら心配で、居ても立っても居られなかったらしい。(笑)

そして、一足早く第3次防衛ラインまで上がって来たアキトを迎えたのは…、


「…テンカワ。」

「ジュンか?…なんでここに居る?」


デルフォニウムに乗ったジュンであった…。

…アキトの周囲は既にデルフォニウム部隊によって囲まれている。


「このデルフォニウム部隊は僕が指揮する事になっている。」

「…そうか、頑張れよ。」


「…え?(呆)」

「貴様らの相手をしている暇は無い。
 …俺の敵は…高空に有り!!


…そして、ジュン達を追い越したアキトは、そのまま上昇を続ける。

彼にとっては、何故ジュンがここにいるか…など、小さな問題でしかないのだ。


「お…追え、追うんだ!!」

「はっ!」


…そして、アキトを追うデルフォニウム部隊…。


…まさか無視されるとは思わなかったのだろう。

故に…部隊の名誉を賭けて、アキト追跡を始めたのである…。


…。


こうして、軌道上の戦いは"前回"とは全く違った展開を見せる事となるのであった。
…果たして、この先どうなるか…それはもう、誰にも判らない。

だが、一つだけいえるのは…この戦いのカギを握るのもやはり、この男だと言う事だ。



「ルリ、サフィー…待っていろ、俺が今助けてやる!!


…雄叫びと共に、アキトはビッグバリアに突っ込んでいく…。
彼の運命や…いかに…。


続く

::::後書き::::

こんばんわ、BA−2です。

…最近思ったんですけど、長くなりすぎた所為で新規の読者様方はこの「世紀を超えて」が読み辛いのではないかと心配です。

…今度あらすじでも付けた方がいいのかも知れません…。


さて、今回はムネタケの反乱・そして、連合軍との交渉でした。

…意外とあっさり片付きましたが、
あのタイミングで行われた場合…前回では対処できたでしょうかね…?


…次は同時刻の木連側の様子でも書いてみようかと思っています。


こんな駄文ですけど、応援よろしくお願いしますね。

では!

 

 

 

代理人の感想

裏切り者か・・・・そう言う事になってしまうんでしょうね。

あたしゃやっぱりジュンが悪いとしか思えませんが(爆)

法律の問題ならまだしも道義と感情の問題ですからねぇ・・・・

 

 

>あらすじ

まぁ、事実上Actionでは随一の長編ですしね〜。しょうがないでしょうね(苦笑)。

もっとも、情報量(伏線)が多いので本当に大雑把なあらすじになってしまうでしょうけど。