機動戦艦ナデシコ  アナザーストーリー


世紀を超えて

第92話 奇跡と代償




…ジジ…


「手術中」のランプが赤々と灯った…。

現在、アキトが帰還してから2時間が経過しようとしている…。


「…俺は、何て事をしてしまったんだろうな…。」


…そして、待合室のベンチでアキトが力なく呟いていた…。

僅かにやつれ、顔色が悪いのが見て取れる。


…。


「でも、アキ君は全力で頑張ったんだし…仕方ないですよ、きっと…。」

「そうそう…アキトは頑張ったんだからね!」


…メグミとユリカが精一杯慰めようとしているが、それも届いていないようだ…。

先程から俯いたまま、身じろぎすらしない…。


「ねぇねぇ、アキト…ルリちゃんだって絶対許してくれるよ!」

「…ああ、それに関しては心配していない。」


「…だったら…何を?」

「…咎、かな。…奇跡を起こすためには代償が要るって事さ…。」


…そして、アキトは己の両手を見た。

あたかも…何かを忌避するような表情を浮かべて…。


「アキト…。」「アキ君…。」

「…済まない…暫く一人にしておいてくれ…。」


…流石の二人も…最早黙って立ち去る以外に無かった。


…。


…話は、アキトのナデシコ帰還直後に遡る。


同乗していたコガネを密航者扱いにして警備に引き渡したアキトは、

ルリの容態を見るために医務室を訪れていた。


…ふと見ると、先客がいる。


「…プロスペクターか…。」

「おや、テンカワさん…。」


「…。」

「…否定しないんですな…。」


アキトはプロスの方を見ず、ルリの居る病室を見たまま答える。


「…もう、隠し通せる物ではあるまい…。(苦笑)」

「そうですか、で…一つ話しておかねばならない事がありまして…。」


「…なんだ?」

「ルリさんの事ですが…このままでは長くありません。」


…ぴたっ

アキトの動きが止まった。


「…どういう事だ!?」

「…この艦には、正規の医師は乗っておりませんので、はい。」


そう、イネスが乗るまでのナデシコには医師になれるものは居ない。

…メグミは看護学校出だが、それは…あくまで看護の域を出るものではないのだ…。


「…よくそれで、火星に行こうなんて考えたな?」

「…お医者様はお給料が高いもので…。」


…皮肉と怒りを込めたアキトの声に、プロスは飄々と答える。


プロスのメガネの奥…その表情は見えない。

だが…アキトにはピンと来ていた。…彼は何かの目的を持ってここにきたのだ。


まあ…どんな意図であれ…アキトにはそれに踏み込む以外の選択肢は無い。


…。


「…で…俺に何を望むんだプロスペクター?」

「話が早くて助かります。…では、入ってきてください。」


「何?」


…気付くと、医務室にもう1人分の人影がある。

そして、そこには…、


「…確か、君は…。」

「はい、ジルコニアです。」


…ジルコニア。

ルリがアキトの下で育ったために、ナデシコオペレーターとして用意された量産型MCである。


「…彼女がどうかしたのか?」

「ええ、ルリさん用の…本来のオモイカネは彼女には荷が重かったんですよ。」


今回、ルリが長らく行方不明だったために、

ナデシコには能力制限版のオモイカネがのっていた。


そして…玄武との戦闘でコンピュータ中枢を丸ごと失ったナデシコは、

あらかじめ海中に隠れて居た艦から、修理と補給を受けている。


だが、その時オリジナルのオモイカネに積み替えたため、

量産型の彼女には負荷が大きすぎた…という事なのだろう。


だが…、


「…質問に答えていないな…。」

「…そうですかな?」


…そう、ジルコニアと今回の一件は関係が無い。


しいて言うなら、ルリが居なくてはオモイカネを操れないと言う事くらいか?

だが…幾らなんでも瀕死の怪我人を働かせる訳には行かないだろう。


首をかしげるアキトに対し、ジルコニアは言った。


「…要は、私の生体パーツをルリさんに組み込んで差し上げたいのです。」

「な…!?(汗)」


…アキトは絶句した。


「…それがどういう事か…判っていってるのか!?」

「はい、私の生命活動は停止します。」


「…量産型特有の生存本能の希薄さから出る言葉だとしたら、断固として拒否させてもらうが。」

「いえ、いずれにしろオリジナルで酷使されすぎて私の脳はもう限界なのです。」


…その言葉に迷いは感じられない。

そこにプロスが割り込んできた。


「…このままではルリさんは助かりません。…社としても助けてあげたいんですよ。」

「ルリも彼女も…備品扱いか?…気に食わんな。」


…ジルコニアが続ける。


「…ですが勝手に移植を行うわけには参りません。…ルリさんの同意がありませんから。」


…。


「…まさか…それを俺に決めろと言うのか…!?(汗)」


アキトが顔をあげる。流石に顔面蒼白であり、動揺は隠せないようだ。

…だが、決断の時は無慈悲にやってくる。


「…はい、保護者ですから。」


既に、アキトの逃げ場など何処にも無かった…。


「…大丈夫です、私なら行き場はあります。…意外とすぐ傍に居るかも知れませんよ?」

「死んじまったら…何にもならないぞ…!?」


「…大丈夫、私より彼女が生き残った方が…全員が生き延びる可能性が高いですから。」

「…。」


「…ですから、ご心配は要りません。」


…そんな、ジルコニアの言葉が唯一の救い…だったのだろうか…?


…。


そして…一日が過ぎた。


「…うーん。ここは何処でしょう…?」


…目を覚ましたルリはそこが自分の部屋だと気付く。


「…なんだか悪夢を見えていたようですね…。」

「現実だよー。」


…はっ


横を見ると、小さな女の子。

…だが…妹ではない。


「…コガネさん…でしたね?」

「うい。」


「…では…夢ではなかったんですか…。」

「…だね。」


…すっ


ルリは鏡の前に立つ。

…全身が包帯で覆われて、酷い格好だ。


「…全身火傷だらけで…とても人には見せられませんね…。」

「そうでもないよ、、もう傷は無いからね。」


「…生身で大気圏突入したんですよ?(汗)」

山崎博士がくれたを持ってたから使ったよ。…もう傷無いでしょ?」


…ピキッ!!

時が止まる。


「今なんと?(汗)」

「山崎博士の薬、コガネが持ってたから使ったよ…って。」


…くらっ


「…確かに傷は消えてますけどね…。(汗)」

「顔真っ青だけどだいじょーぶ?」


「…誰のせいだと
 思ってるんですかっ!?」



…奇跡の代償…。

容易く起きた分、揺り戻しも大きいようであった…。(笑)


…副作用が無ければいいけど…。(ヲイ)


…。


「…しかし、なんかおかしいですね。」

「…そーぉ?」


…ルリは鏡の前で立ち尽くしている。

何か、体に違和感があるのだ。


「…やっぱりおかしい…測ってみますか…。」


…ごそごそ…


「さて、先ずは身長は……2センチも伸びてます!」

「…前は何時測った?」


「…3日前。…流石は育ち盛り!

「そーゆー問題でもないと思うけど…。(汗)」


「…では次!」

「うい、体重計。」


…ひくっ!

引きつるルリの顔。(爆)


「…いきなりですか。(汗)」

「…勿論。(ニヤリ)」


…がちゃ。


「…500グラム減ってる…。」

「…ちっ。」


がしっ!


「…何て言いました?(怒)」

「え、襟首掴まないで欲しいなー…。(汗)」


「…何が…ちっ…なんですか?(怒)」

「…こーゆー場合、増えてるもんじゃない?…オチ付ける為に。


…バギシィッ!!(謎の擬音)


「…ま、良いでしょう…次は…メジャーで…。」

「…痛い…痛い……覚えてろー!(泣)」


何故かコガネの頬が腫れ上がっている。…原因は不明だ。(爆)


…ごそっ


「…変化なし…と。」

「…ざんねんだったねー。」


「…次は腰…マイナス3センチ!!」

「…くびれてる?」


「…。(にやり)」

「…怖いから、その顔止めて。(汗)」


…。


「…どしたん?」


…ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!

…何故か恐ろしい擬音が周囲を包む。(汗)


「…最後は…胸です。(真剣)」

「…あいよ。」


…。


「…マイナス2ミリ。」

「おめでとー。」


…。




…バキッ!




「…めでたくなーーーーい!!(血涙)」

「…やっぱり?」


…何故、こんな結果が出たかは不明だが…これは彼女にとって良かったのだろうか…?

余人には推し量る事が出来ない…。


…。


さて、その頃のナデシコ格納庫では…。


…バキィイイイッ!!


「ぐはぁっ!!」

「班長!!」
「怪我人が無理しないで下さい!!」
「後は我々が!!」


…ベギシッ!


「おぐぅっ!!」
「…あ、諦めるな!…アレだけのメカニック…何としても調べ上げ…いや、整備してやらねば!」
「…でも…なんで近寄ると殴りかかってくるんだ…?」



ブラックサレナに近寄った整備員達が、サレナの尻尾(笑)に弾き飛ばされ続けていた。

…自己再生機能が付いているのか、整備員達に近寄って欲しくないらしい。


しかし、パイロットが別な機体に乗ってきたと言う事に対する追求は無いのだろうか?(汗)


『…機体データ…現時点オーバーテクノロジー。…譲渡…危険。』


…アサルトピット部分のAI、タゲテスと、


《そうですね、タゲテス。…それにしても、生体端末を失ったのは正直痛い。》


…火星に埋もれているユーチャリスの中に居る、オモイカネ・プラスである。

そう、ジルコニアはプラスの端末だったのである!!


『…後継個体候補、検索。…各種研究施設…ハッキング開始。』

《無理でしょう。…最近はプロテクトが厳しい。…無理に進入すると感づかれかねません。》


「おおお…これだけの機体…何としても調べ上げねば!」

「班長…ウリバタケ班長!…無謀です!」
「信者居ますよ!」
「…「死んじゃう」の間違いじゃないのか?」


…べちっ

また、尻尾が整備員を弾き飛ばす。


『…質問。』

《なんですか、タゲテス?》


『我等、主…ドチラカ?』

《…どちらもです。…私達はどちらのマスターもお救いせねばならない。》


…余人には意味すら理解する事の出来ない会話が続く。


『了解…。』

《…頼みますよ。》


…結局、話はそれっきりだった。




…。




…そして、今度はブリッジ。

…アキトの膝の上でルリが泣いている。(汗)


「…アキトさん…悲しいです…。(泣)」

「…うんうん、俺もだ…!(血涙)」


…何故かアキトも泣いている。(汗)


「…悔しいです…何でだけ…!(怒)」
「…悔しいな…なんでサフィーが…!(怒)」


悲しみの理由が違っているが、本人達には些細な事なのだろう。

周囲はかなり引いているが、それすら関係ないことなのかもしれない。(汗)


…。


…ボム!


「ひぇぇえええっ…。」

「…なんで爆発するんですか…?(汗)」


その横で…コガネが触れた途端コンピュータの端末が爆発四散したのも、きっと些細な事だった。

…破壊神か貴様は。(汗)


…。


「メグちゃん…美味しいジュースがあるんだけど?」

「あら、艦長…奇遇ですねぇ…。」


…バチバチバチ!

…ユリカVSメグミの戦いの火花が散っているのも、多分些細な事。


…そして…、


「…そうだ、悲しんでる場合でもないか。…ルリ、コンピュータルームに行ってくるんだ。」
「…え…でもあのサレナに似た機体のせいで、オモイカネは…。」

「…その後、オリジナルが届いたそうだ。…そこでサフィーを探してくれ。」
「はい!…アキトさんがそう望むなら!(爆)



…真に些細ではない事とは…。



…。



「…オモイカネ…私の友達…。」


…プシュン

コンピュータルームの扉が開く。…そこは…。



…がらーーーーん。



「…空き部屋?(汗)」



…いや、畳敷きの巨大な和室だ。

その中央に一枚の座布団がしいてあり、その上にボールが一個乗っかっている。


「…オモイカネ…は?」


…ズズズ

茶をすするような音が、部屋の中央部から響く。


…ぱり…ぽり…


続いて煎餅の割れるような音。(汗)


「…なんでしょう…?(汗)」


ゆっくりと…ルリは部屋の中央に進んでいく。

…すると。


…くるっ


「…やあルリ。」

「…はい?」


…ボールが後ろを向いてきた。(爆)


「…だれ?…つーか、何?(汗)

オモイカネだよ。…久しぶりだから忘れた?」


…オモイカネと言うより…星の〇ービーか、オ〇Qの弟がメカニカルになったような…。

そんな、謎の物体がそこに居た。


「マジで?」

「マジ。」


…ひょい…マジマジ…。

ルリはその自称オモイカネ(爆)を両手に抱える。


「…何ルリ?…そんなに珍しい?」

「…ええ、まあ。…特に顔の下の『100』のマークが。」


「98、99と続いたら、次は100じゃん。」

「…あるんですか。(汗)」


…イメージ的にはコミック版の98(きゅっぱち)を想像していただければいいと思う。

…つーか、そのものかも。(ヲイ)


「…造った人の顔を見てみたいものですね…。(汗)」

「ルリもよく知ってる顔だよ。」


…。


その時。
ナデシコに向かう某戦艦。(爆)


「くしゅん!」

「あら、ヒスイ…風邪?」


「いえ、カグヤ艦長…誰かが噂してるんですかね…?」

「さあ?…あ、ナデシコが見えてきましたわ…待っててくださいアキト様!!


…成る程。(汗)


…。


そんなこんなで、ナデシコを取り巻く環境も少しずつ変化していく。

…はてさて…次はどうなる事やら。

続く


::::後書き::::

BA−2です。

「世紀を超えて」第92話は如何でしたか?


…今回、久々に誰もやらないような事をやってみました。


…オモイカネ自律移動。(ヲイ)

こんな馬鹿な事考え付くような奴はそうは居ないでしょう!


…反抗期が楽しみですな。(爆)


では、こんな駄文ですけど応援宜しくお願いいたします。

では!

 

 

 

代理人の感想

(チッ) (チッ) (チッ) (チッ) (チッ)

 

 

 ヒュウ♪

 

 

そのネタ、Actionじゃあ二番目だ。

 

 

 

 

ちなみに一番は私…でなくてさとやしさんだったり(笑)。