機動戦艦ナデシコ  アナザーストーリー


世紀を超えて

第97話 デビルエステの大暴走




「ぷはぁ…やってられねぇぜ。」


突然だが、これがリョーコの第一声である。


今回サツキミドリが破壊される事が無かったため、

リョーコ達パイロット三人娘は何の障害も無くナデシコに乗り込んできた。


そして、主要クルーの集まった格納庫で、なし崩しに自己紹介と相成っていたのである。

…因みに、前回より丸一日ほどの時間が経過していた。


「…とりあえず風呂…それから飯な。」


…とは言っても、パイロット達は破壊されたコロニー内部の修復作業に駆り出されていた為に、

こんな愚痴ばかりが口からついて出ている。


…最も、史実でも同様の台詞が第一声だった事を考えると予定調和と言えない訳でもない。


そして更に言わせて貰えばこの一件はアキトの自業自得以外の何物でもないのだが、

ルリの策略により全てハーリーに責任が押し付けられていたりする。


…まぁ…ハーリー自体も押し付けられた責任をネルガルのほうに押し付けているが…。(ヲイ)


…。


そして…、


「私、パイロットのアマノ・ヒカル!蛇使い座のB型18歳〜♪」


…ヒカルのほうの自己紹介も始まった。

だが、


「好きな物はピザの端っこと…」

「それは良いが、もう一人のパイロットは何処だ?…それにこのツールボックスは…?」


…アキトに遮られる。(笑)


「え?…ああこれは…、」

「…二人残れば上等か…。」


…何気に酷い言い方のリョーコさんである。

すると、それを待っていたかのようにコミュニケに着信がはいった。


…。


『…勝手に殺さないで…。』


…じいーっ


突然入った通信に、全員がツールボックスを見る。

…勿論、怪しさ全開だからだ。(笑)


「…イズミちゃん、何処に居るの?」

『それは…言えない…。』


…カツ…カツ


アキトが突然歩み出る。

そして、ルリに向き直って言った。


「…ルリ、『黒ヒゲ危〇一発』ってゲームを知ってるか…?」

「…はい?」


…シャキン!

突然何処からか抜き放たれるサーベル!!



『…とにかくツールボックスを開けて…。(汗)』

…聞こえんなぁ?…第一、そんなに怪しい物体を見逃すほどには甘くはない!!」


つつい…っとアキトはそのツールボックスに近寄り、

…おもむろにサーベルを構えた!!


「ちょっと待て−−−ッ!!(叫)」
「駄目−!!…イズミちゃんが死んじゃう−−−ッ!!(汗)」



ああ、恐るべきは傭兵のサガ。(笑)

怪しい物は切り捨てる…これが生き残る鉄則だと言うのだろうか…。


…。


が、捨てる神あれば拾う神あり。


「…まぁまぁ、テンカワさん落ち着いて。きっと場を和ますための冗談ですよ。」

「…コウ、だが、あからさまに怪しいぞ。」


見るからに温厚そうな青年がアキトをたしなめてくれた。


…オオサキ・コウ…アースヴァグランツの一員でありアキトの親友である。

今回、アキトを追いかけるような形でナデシコに乗り込んできたのだ…。


最も、ルリなどは…、


(この人、前回は居なかった…警戒する必要がありそうですね…。)


等と考えていたりするが…。


…取り合えず、プロスのスカウトに応える形で、

彼も搭乗機ごとナデシコに乗り込む事となったのである。


…。


異様に目立つその金色の機体はラティフォリウムとブラックサレナの横に並べられている。

なおスミヤが艦を降りたので、ラティフォリウムには現在パイロットが居ない。


「…僕は?(BY ジュン)」


普通のエステに比べるとショルダーアーマーがサレナ風のものに換装され、

背面には大型スラスターを装備している事が違う。


「…コイツは…伝説のリモニウムじゃねぇか…しかし良く出来たレプリカだぜ…。」

「機体のコードネームは『ネモフィラ』。…宜しく頼みますよウリバタケ整備班長?」


機体を眺めつつ、感銘を受けたように呟くウリバタケにコウが話し掛けた。


「ああ。…しかし一体誰が…リモニウムは製作者以外に作れる奴なんて居ない筈なんだが…。」

「…貴方でも無理なんですか?…出来ればチューンナップをお願いしたいのですが。」


少しばかり焦ったような雰囲気で、コウがウリバタケに言う。

だが、ウリバタケはうーんと唸り…首を横に振った。


「…見本があるから修理なら出来る…だが…改良は無理だな。…もう弄れる所が無い。」

「…そうですか。…なら、急いで火星に辿り着かないと…。


…。


一方、とりあえずの自己紹介が終わったリョーコ達は自室へと案内されていた。

すると…休憩室の片隅になにやら縁日らしき物があるのに気付く。


「…ん?…艦長、ありゃなんだ…?」

「ああ、あの子達が遊園地行ったんだけど途中で駄目になっちゃって…。」


ポン!

ハーリーがエアガンを撃つと、台の上の箱が倒れる。


「…なるほどな、だからせめて縁日のマネで…ってか?」

「ええ、射的がしたいって子が居たから。…アキトにも頼まれたし。(はーと)


「ふーん。でもよ、何であんな小さいガキが戦艦に居るんだ…?」

「…えー、話すと長くなるんですが…色々あって。(ヲイ)


…カツ…カツ


「…ほー、ま…この際だから俺も少しやってみっかな。」

「…あ、行っちゃった。…もしかして…やりたかったの…?」


…苦笑いしながらそんな風に思うユリカである。

そして、残り二人はと言うと、


「リョーコちゃん、ああ言うの好きそうだよね。」

「…うさぎライフル…それは…ラビット?」


…何だかんだで全員屋台に向かう。(笑)


このノリがナデシコらしさであるのだが…、

それに感染していることに、本人達は勿論気づいてはいない…。


…ポン…ポン!

サフィーが大きなライフル型のエアガンを撃っている。


「わーい、わーいなの!」

「サフィーちゃん凄い凄い!」


次々と転がっていく景品たち。(笑)

跳弾の効果も相まって、一発で2つ3つと転がっていく…。


「…ま、負けた…何なんだあのガキ…百発百中だぞ…!?(汗)」

「撃つ場所から台まで25メートルもあるのにねぇ…。」


…どんな射的屋だ?(汗)

だが、店番がプロスである事を考えると…利益を出そうとでもしていたのは明白。


唯一の失敗は、お子様達のレベルの高さに気付かなかった事か…。(涙)


「サフィーの第3の眼が、何処撃てばいいか教えてくれるの!」

「ならコガネも石ころ付けてみよっかな…。」

「あ…テンカワさんの殺意を感じる…。(汗)」


「どうでも良いですが…これじゃあ大赤字ですよ、とほほほほ…。」


…その後、リョーコ達パイロット3人娘の手により更に赤字が膨らんだのは言うまでも無い。

今後暫くプロスの眠れない日々は続くのだろう…。


…。


そして…その日の夜。


「…さて、財政赤字家計簿も付けた事ですし…寝ますかね。」


最近赤字続きの会計記録を付けたプロスは真っ赤に腫れた目を擦りながらそう一人ごちた。

…明日にはナデシコの修復も終わる…と、整備班からの報告も来ている。


取り合えず、宇宙空間なら被害も少なくなるだろう…。


今はただ…耐えるだけ。

そう自分に言い聞かせて、プロスはただ耐えるのであった…。


が、そう簡単にいかないのが世の中と言う物で。(爆)


…ピピピッ


「…はい、プロスペクターですが…。」

「あ、プロスさんですか!?」


「…おや艦長?…申し訳ないですが今から休むところでして、用件は後ほど…。」

「緊急事態です!…至急ブリッジに来てください!!」


…ユリカの様子はかなり焦っていると言える。

これは何事かとプロスは部屋を飛び出すのであった…。


「これ以上被害を出させて
…たまる物ですかぁぁっ!!」



…確かに。(汗)


…。


「あ、プロスさん、大変な事になってるんです。」

「ハァハァ……おやおや、一体何事ですかな…。」


…夜中だと言うのに、ブリッジにはメインクルーの殆ど全員が集まっていた。

例外はお子様達(ルリ含む)…いや、ハーリーは居るようだが。


「ええ、実は格納庫にあった0G戦フレームの一機が…。」

「ああ、木星蜥蜴に乗っ取られたんですな…。」


…思わずほっとするプロス。

それくらいなら予定通りだ…被害には入らない。


ついでに言えば、格納庫と言ってもサツキミドリの格納庫だ…。


ナデシコ自体に被害が出る可能性はない上に、史実を考えた結果、

あの格納庫から余計な物は撤去されているので安心だ。


…と、一安心したのもつかの間。(爆)


「ええ、だけどその中に…アキトのお友達閉じ込められちゃったらしいんです!!」

「…はいぃっ!?」


『うぇえええええっ…アー君、
…助けてェぇぇッ!!(涙)』



…。(沈黙)


「…その、それは一体どういう事ですかな?(汗)」

「なんか…この間から艦に居るコガネちゃんの親族の方が迎えに来たらしいんです…。」


「…それがどうすればエステの中に?(泣)」

「…道に迷って、何時の間にやらアサルトピットの中に迷い込んだらしいんですよ…。」


流石は枝織ちゃん、方向音痴も筋金入りだね!!

…とか何とかいっている場合ではない!(滝汗)


「…あのエステ…体のあちこちにバッタが取り付いてコンピュータを乗っ取られてる…。」

デビルエステバリスだーっ♪」

「ヒカル…なんか嬉しそうだな。(汗)」


「…とにかく、救出を行いたい。…艦長、許可をくれ。」

「うん、アキトのお願いだから張り切っちゃうね!」


…ダダッ!

アキトは返答すら聞かずに走り出ていった。(汗)


「俺たちも行くぞ、ヒカル…イズミ!!」

「OKOK!」

「お仕事お仕事…。」


リョーコ達も走り出ていく…。

そして。


「私も出撃します。…そこそこ自信はありますので。」


…黄金の騎士…コウもまた出撃していくのであった。

これだけの戦力なら、デビルエステの一機や二機…物の数ではない…筈だった。


だが…彼らは失念していた。(知らない者も多数)

木連人である枝織が悲鳴をあげていると言う事実の意味する事に…。



…。


「…メグちゃん、状況を報告して。」

「はい、敵機体…これよりデビルエステと呼称します…は…ああっ!!


…突然、素っ頓狂な悲鳴をあげるメグミ。


「…何々!?」

「…デビルエステ…居住区のVIP用ホテルに向かってます!…あそこにはカグヤさん達が!!」


「「「ええーーーっ!?」」」


…状況は…確実に悪化の一途を辿っていく…。

コロニー内部の居住区を…避難すら終わらないうちにデビルが疾走していった…!


そしてそんな中…遂にアキト達がデビルエステに追いつく!!


「待って下さい…無力な一般人を襲うのが木星のやり方では無い筈だ!!」

「…コウだっけ?…無人兵器に何言ってんだよ。…第一、何時もの金ぴかの奴はどうした!?」


「リョーコさん、ネモフィラは調整中です!…それに…ランサーはある!」


そう言ったとおり、コウの機体は今は亡きガイの物だ。


…彼はアキトからガイの死を聞かされたとき…意外に冷静だった。

悲しさはあるようだが…何処か、それを予知していたようですらあった…とアキトは後に言う。


「まあ、何にせよ…枝織ちゃんを助けないと…。」

「…そうだね。あのちっちゃい子、お姉さんいなくなったら寂しいだろうしね。」


そう言いながら、ヒカルがラピッドライフルを撃つ!

だが、デビルはそこいらに止めてあった自動車を投げつけて盾とした!


…ガスゥッ!


「嘘ッ!…結構賢い!?」


驚きながらも、横っ飛びで自動車をかわすヒカル。

…そして、そのまま個人商店の屋根の上に飛び乗る。


…みしっ(嫌な音)


「あちゃ…少し潰れちゃった。」


…この区域は地球と似た環境を再現している為に、立ち並ぶ建物もそれなりだ。

因みに、大きなドーム内に街が一つ丸ごと入っていると思っていい。


結論として、今彼らは市街戦をしているに等しいと言うわけであるが…、

同時にそれは、被害=賠償の方程式が成り立つと言う事でもある。(爆)


…ジリリリリ


「はい、ナデシコですが…。」


『俺のクルマをネルガルのロボットがブン投げて壊した!…弁償しろ!!』

『私のお店に何の恨みがあるの!?…店を直してちょうだいな!!』


彼らは街が大変な時でも自分の固有財産を死守しようとした。

人間とは全くもって救い難い(正直な)生き物なのである…。


「…ぁぁぁぁ…。」


…プロスの髪の毛が一本抜けた。

そして…そのままプロスは気絶し、床にキスをかます…。


…頑張れプロスペクター…。

だが、物語は彼の願いとは裏腹に進む。(笑)


…。


…ガシャァァァァン!!


「なに!?…今度は何なの!?」

「…艦長!…ホテルに一室に敵が腕を突っ込みました!!」


…がばっ!!

飛び起きて狂乱するプロスペクター!


「被害は!?…被害はぁぁっ!?」

「…そ、それが…。」


「幾らの損害が出たんですかぁぁぁぁあああっ!?」

「…ヒィッ!!…か、カグヤさん達の…お部屋なんです…!」


…ぴたっ!


突然復活し、最高のハイテンションで飛ばしていたプロスだが…、

その報告を効いた途端停止し…、


…ぽてっ…。

…そのまま泡を吹いてまた倒れるのであった…。(汗)


(…ネルガルのコロニーで明日香インダストリー社長の一人娘が戦死?…しかも滞在理由はナデシコ…ネルガルの戦艦に追突されたから…あ、あの時ブリッジに誰も居なかった…もしや業務上過失?…しかも、殺したのは操られているとは言えネルガル製のエステバリス…その上あれ…どうせ操られるからって完全に手抜きして作ってありましたねぇ…製造物責任!?…あはは…参りましたねぇ…賠償にお見舞金…なんですかそれは?…しかもネルガルの信用も…地に落ちますな。…あ、裁判も民事と刑事の両方がありそうですな…もう、これは首ですかね?…つーかネルガルが傾きかねませんな実際…あはははは…本当っにまいりましたねぇ…ハイ。)


…この間コンマ一秒。(爆)

因みにそこまで考えている人物はナデシコに彼のみ。(ヲイ)


だが、神は彼を見捨てなかった!!

…尻尾に悪魔っぽいのが付いてたけど。(爆)


「あ、カグヤさんです!…どうやら無事みたいで壁の穴から呆然と外を見てます!!」

「…え、あ…ホントだ。」


…確かにカグヤは無事だった。

でも、デビルエステの手には小柄な人影が一つ。(爆)


「…ヒスイィィィィィッ!?」


…一言で言うなら黒ルリ(劇場版)といった感じの美少女である。

そう、今回の歴史で何故か現れたルリ達の義姉…ヒスイである。


アキトの取り乱しっぷりは相変わらずだが、危険な事には変わりない。



「これはっ…恐らくルリさんと見間違えたんですな!…かなり似ておられますし!」


…カグヤが無事と知り、取り合えず復活を果たすプロス。

…結構現金であると言えよう。(笑)


「る、ルリさん!?」

「…コウ、違うぞ!…アレはヒスイ…って貴様、ルリと何処で知り合った!?(怒)


いきなり激怒するアキト兄さん。(笑)

…だが、本当に何で知っているのだろう…?


「…え…あ、ああ…何時もテンカワさんが自慢げにされてるじゃないですか!」

「…そうだったか?…悪い虫がついたら大変だから、お前らの前で話した事なんか無い筈だが?」


…これに関しては仲間すら信用できないのだろう…。


「…えーと…さ、酒の席ですよ。(汗)」

「…そうか。…今後は気をつけねばならんな…。」


…結構神妙に言うアキト。

…なお、余談だが彼らが酒の席を開いた事は無かったりする。(爆)


…。


「…どっちにしろ、やることは変わらん!」

「そうですね、それに広い場所ではデビルエステの機動性は発揮できない!」


…デビルエステは総重量の増加こそあるが、腕についたバッタをワイヤー代わりに

枝を伝うサルのごとく移動できる。


だが…広い場所では掴まる物が無い。

…ここはだだっ広い高級ホテルの中庭…条件的にはこちらが有利!


「バッタ全機の一斉射撃には気を付けて下さい!…まず私が牽制します!!」

「…コウ、相変わらず指揮官っぽいな…まあいい、俺のは重装甲だ…前面に出るぞ!」


…そう言うとコウはエステをデビルの側面に回りこませ、ナイフを投げナイフのように構える!

だが…デビルは捕らえたヒスイを盾のように突き出してきた!!


「…!!」

「…ヒスイッ!!…人は石垣…とでも言うか!?」


5対1という圧倒的な戦力差にも拘らず、デビルは何故か互角以上に渡り合っている。

…背面から隙を見てイズミがライフルを撃ちかけるが、これは空しくフィールドに阻まれる…。


「…コイツ…俺ら3人には目もくれやしないぜ!?」

「…どうしてぇ?」

「…なめられてる。…いや、ダメージを与えられない武器しか装備してないんだろうね。」


…そうして横を見ると、ごつい体格のブラックサレナと槍を持つエステ…。

対して、自分達はノーマルエステ。


「あのデカブツはともかく…やっぱあのか。」

「…ランサーはフィールドを無効化します。…知っているんですよ彼らは…!」


…だが、それ故に隙を見つけられない事も事実。

第一、機械に死角はあっても隙など存在しないのだ…。


「…さっそく…切り札を使わねばならないとは思いませんでしたね。」

「…あるなら早く出せコウ!!」


…基本的に、切り札を最初に使う奴はまず居ない物だが…?

まあ、アキトにそんな余裕は無かったと言う事だろう。


「…じゃあ行きます。…が、暫く通信を落とします。」

「おいおいオオサキ…だっけ?…それじゃあ通信とかはどうすんだよ?」


「リョーコさん、準備が出来たら機体の片腕を上げます。…そうしたら」

「…敵の注意を引き付けろってんだな?…基本だな…まあいい、了解。」


…そうして、アキト達が敵に向かうのを確認したコウは通信を切るとポケットから何かを取り出す。


「…残りはこれ一つ。…まあ、仕方ないですね…。」


…そして、コウはその「何か」を握り締めた…。


…。


ザッ!

コウのエステが片腕を上げる!


「…おい、ヒカル・イズミ…合図だぜ!」

「はいはーい。」

「…ふふ…ふふふふふふ…。」


「…俺も派手に行くか!」


…そして、全機で一斉掃射…!

…流石に通常ではガードしきれないのか…デビルエステが腰を落としガードの体勢を取る…。


…ゴオッ!!


そこに、コウの機体がショルダータックルを仕掛けた!!

だが…足払いで軽くいなされてしまう…。


「…お前なぁ!…切り札がただのタックルとはどういう事だ!?」

「…あーあ、体勢を立て直す事もしねぇから転がっていってるぞ…?」


…だが…その時イズミが気付く。


「待って。…パイロットがコクピットに居ないみたいだね。」

「…あれぇ…デビルエステバリスの腕に…あの子が居ないよ?」


「「ええっ!?」」


…。


すたっ!


「…テンカワさん、ただのタックルが切り札の筈が無いでしょう?」

「…コウ?…ひ、ヒスイも…無事か!」


…コウは何時の間にやら電柱の上に、ヒスイをお姫様抱っこで立っていた。(爆)

先程のドサクサに敵からヒスイを奪い返し、電柱に飛び乗ったのだろう…。


「…けどよ…助けてる時間なんて無かったんじゃねぇか?」

「…そうだねぇ…どう考えてもタックルで敵をかく乱するのは数秒が限界だし。」


「ま、良いじゃないですか。…私も彼女も無事だったんですし。」


…因みにエステは無事ではない。(笑)

またプロスの胃痛の種が一つ増えたわけだ。


「…えー、ヒスイさん。…ご無事ですね?」

「え?…あ!?……は、はい!」


「…ね、大丈夫だったでしょテンカワさん?」

(…み、見つけた…早速見つけましたよォォォォ!!)


…ついでに言えば、助け出されたヒスイが『恋する乙女の目』でコウを見つめていたりする。

アキトの頭痛の種ももう一つばかり増えそうである。(爆)

…尤も、『獲物を見つけた肉食獣の目』にも見えない事は無いが…。(ヲイヲイ)


…だがまぁ…今の所アキトはそれに気付かない!



「ふっ…ヒスイが無事なら
恐れる物は何も無い!!

「じゃあ、行くぞ…ヒカル!イズミ!!」


…アキトの咆哮に応えるかのように3人娘達が飛び出してく…。

そして、ヒカルとイズミがラピッドライフルを構えた!!


「「ダブルアターーック…なんちゃって。」」


…バタタタタタタ…メキィッ!!


二人がライフルで牽制した隙をつき、リョーコがディストーションフィールドを纏って突入する!


…バチッ


「…好機!!…食らえぇぇえっ!!」


…敵は受けきれず、ボディのあちこちがショートする…。

そして…それを見逃すアキトではない!!


…バシュバシュバシュ!!

次々とハンドカノンが敵の方向に放たれていく…。


…次々と起こる爆発音と弾け跳んでいくバッタたち…。

ついでに街も燃え上がる。(爆)


…ドゴォォォォオオオオオン!!


…遂には燃え上がるデビルエステ!!

今回の歴史でも何とか撃退に成功したのだ…。


…。


「…よしっ!…ヒスイを人質などにするからこうなる!!」

「…あの…テンカワさん?(汗)」


…敵機を撃破して上機嫌のアキト。

そして…そんなアキトの肩を冷や汗浮かべたコウが突付いた。


「…し、枝織さんは?」

「…あ。(汗)」


「…アー君…酷いよ…。」


…木っ端微塵のデビルエステから、黒焦げの人影が一つ立ち上がる。

…そう、激動の中忘れ去られていた彼女だ…。


「…いや、枝織ちゃん…その、俺は別に忘れてた訳じゃなくて…。」

「…忘れてたんだねアー君…。(怒)」


…じとーっ(周囲からの冷たい視線)


「…ごめんなさい。」

「分かれば宜しい。」


「「「あははははははは…。」」」



…何処と無く流れる大団円風のんびり雰囲気。

だが…かれらが気付かないうちに次なる危機は迫っていた。


…ズシー…ン


突然響く地響き…。

…いや、今までは戦闘中で気付かなかっただけだ…!


「…え?」

「…向こうから…何か来るよ…。」

「…イズミ、今日は随分マジ・イズミが長続きするな…。」


…ひっ

息を呑む音が聞こえる。


「…あ、アー君…あ、あれ…敵だよ…!」

「枝織ちゃん…敵?…木星のメカじゃないのか…?」


「…違う…アレは…私達を襲ってるヤツ!!」

「…な…何だと!?」


…アキトの機体のコクピットに同乗する形になった枝織が怯えたように言う。

幸か不幸か…通信が切れていて周囲にこの話が伝わる事は無かったが…。


…ふわぁっ

今まで地響きを立てながら身を隠すように歩み寄ってきた「それ」が突然宙に浮いた…。


…これで、下の階層への被害も収まった事だろう…。

が、エステバリスのおよそ2倍はあろうかと言うその巨体に…アキト達は驚きを隠せない。


…見た感じは巨大な土偶…。

だが、それは確実な敵意を持ってこちらにゆっくりと進んでくるのだった…。


「…あ、アレは遮光!?」

「…コウ…知っているのか?」


…通信機越しにコウの焦りを帯びた声が聞こえる。

そして、もう一つの声も。


「お兄様…見た目が遮光器土偶のようでしょう?」

「…ヒスイ!…無事か!?(色んな意味で)」


アキトの声には色々な意味合いが含まれているように感じる…。

が、ヒスイ自身は余り気にしていないようだ。(慣れたとも言う)


「ええ。…とにかくアレは危険です。…木星蜥蜴などと一緒には出来ません。」

「ああ…お前達と出会った時出て来た…アレの仲間だな?…雰囲気が同じだ。」


…かつて、ただ一機のバッタに苦戦した時の記憶がよみがえる。

通常の機体とは一線を画したその機体は、通常一撃で落ちるはずのバッタを怪物へと進化させた。


但し普通ならバッタに勝てる生身の人間など存在しないが。(爆)


「…テンカワさん!…気合で負けたら決して勝てない相手です。…強気を崩さないで下さい!!」

「大丈夫です、貴方が負ける訳が無いですよ…!!(真っ赤)」


…何故かヒスイはコウの方のみを向き、その顔は耳まで真っ赤だ。

この場合、アキトのことは完全に思考の枠外にある。(爆)


そしてその時…コウは誰にも聞こえないような小さな声でポツリと呟いた。


「…ルリさん。私は…私は再び貴方と出会う…それまで…死ぬ訳には行かない…!!」

「…!!!!(驚)」


…ヒスイはそのコウの台詞に何故か顔を赤くしてイヤンイヤン(死語)をした後、

自らの黒髪を、はしっ…と掴んでマジマジと見つめ…、


(しまったぁぁぁぁぁぁぁぁあああああっ!!)


…驚愕の表情を浮かべる。

因みにその叫びは最早声にもなっていない…。(汗)


それが何故なのか…知るものは殆ど居ないが…。


…。


「あーあ、偽ルリさんやってた時、正体ばらさないでこの世界に来るから…。(呆)」


…その時、ハーリーはアキトのハンドカノンマガジンの中で、そんな事を呟いていた。

因みにアキトは害虫抹殺のため、ハーリーを弾倉の中に詰め込んでいる。(爆)


…の、割りにハーリーに余裕があるのは何故…?


「…艦長…いや、コウさんは…ルリさん狙いでくるのかな?…一波乱起きそうだなぁ。」


ハーリーの独り言は続く。

…内容は結構洒落にならないが。


「…にしても艦長…なんで名前が違うんだろう…前回の世界では、トー…ま…関係ないか。」


…ガチャコン


その時、自動装填装置が働いた。

ハーリーが射出される番は着実に近づくのであった…。(笑)


…。


…かつての世界で(第77,7話参照)…第2次火星の後継者蜂起…、

通称『南雲の反乱』を静めた一人の艦長が居た。


彼は金色のスーパーエステバリスに乗りパイロットとしても獅子奮迅の活躍を見せ、

反乱勢力を一網打尽にしたと言う…。


彼は今『オオサキ・コウ』を名乗り、ナデシコに乗り込もうとしていた…。


…。


そして…ルリが逆行し飛び去った後の世界で、ルリの影武者を務めた少女が居る。

…何かを探して彼の世界に現れた彼女は…崩壊する世界より脱出し、この世界に流れ着く…。


…胸に残る懐かしき想い人との思い出。

彼女は新たなる世界で、元の目的と同時に思い人の姿を捜し求めていた…。


…彼女は『ホシノ・ヒスイ』を名乗り今を生きる。

だが、捜し求めた想い人は本当の彼女を知らず…偽りの面影を追い続けている…。



…。



そして…アキト達は今再び戦闘体制をとる…。

宙を行く巨大土偶型機動兵器『遮光』


…「大和」の尖兵であるこの機体は…一体何のためにこの地に現れたのであろうか…?


「…アー君、エステを操ったのは、こいつが連れてた奴…まだ居ると思うから気をつけて!」

「…ちっ…あの化け物バッタが潜んでるって言うのか!?」


…そして今、サツキミドリ2最後の戦闘が行われようとしていた。
(注:沈むとは一言も言ってません!)


続く

::::後書き::::

どうも、BA−2です。

世紀を超えて97話完成。


…遂に100の大台が見えてきました。(苦笑)


さて、そろそろバレバレなのでコウの正体をばらしておきます。(一部ですが)

…最も、今までで御分かりの方も多数おられる様ですが…。(汗)


DC版主人公も物語に参加させたくて登場させた彼。

今後も誠実に波乱を起こしてくれる筈なので、宜しくお願いいたします。


…こんな駄文ですが、応援していただけると嬉しいです。


さて…連載が長くなってきて新規の読者様では訳がわからないかも知れません。

…そんな時はメールで気軽に質問してくださいね。


…では!

 

代理人の感想

誠実に・・・ねぇ(笑)。

 

それはともかく、「訳がわからない」のは作品の長さ自体もさる事ながら

第二部にはいってから展開の流れ自体が複雑になっていると言うことも挙げられるのではないでしょうか。

第一部でもオリキャラの多さだの伏線の流れだのの量自体はさほど変わりませんが、

火星だの月だのピースランドだの、で話に一段落をつけていた第一部と違い

第二部ではそう言った明確な区切りがなく最初から現在まで流れが複雑に絡み合っている為、

読者が設定その他を整理・認識するチャンスがないのではないでしょうか。

長い話の場合、途中での適度な「区切り」はどうしても必要のように思われます。