機動戦艦ナデシコ  アナザーストーリー


世紀を超えて

第99話 崩壊の序曲…高らかに





…サツキミドリでの戦闘から丸一日が経過した。

今は時折襲ってくる無人兵器たちが居る事を除けば平穏そのもの。


…因みに、お約束の葬式の方はと言うと、


「…んな事、本社に任せろ。」


…の、アキトの一言で全てネルガル本社の方に任せる事となったのでナデシコは暇である。


…。


…余談だが、「史実」においてナデシコ館内で葬式が行われたのは不可思議な気がする。

あの戦いで…ナデシコの死者はゼロの筈だ。


幾ら同グループ企業内とは言え、ナデシコで葬式をやる必要はあったのだろうか?

…しかも戦時に…。(汗)


サツキミドリの葬式はネルガル本社側でやるべきだったのではないのだろうか。

…まあ、終わった事をどうこういってもしょうがないが…。(私見)



…。


そして…ナデシコが暇だと言う事は…当然この人達が動き始めると言う事だ。


「…アキトぉ!…お部屋に居るんでしょーっ!?」

「艦長!…その手にもった謎の物体を何処に持っていく気ですか!?」


ユリカ&メグミのでこぼこコンビ。(暴言)

アキト奪取の為、行動開始である!


「アーキト!…ユリカの愛のこもった手料理を召し上がれ!」

「させません!…アキ君には私のスタミナドリンクを飲んでもらうんです!」


アキトの部屋のドアの前で、押し問答を続ける恋する乙女が二人。

…但し、通りかかったほぼ全員が吐き気を訴える程に周囲の空気はよどんできているが。(爆)


…キシャー…!


…二人の料理(?)から、異様な鳴き声が聞こえる気がするが、
絶対気にしてはいけない!(爆)


…。


そして、押し問答の結果。


「判りました、じゃあアキトに決めてもらおう…!」

「そうですね艦長…これで勝負は決まったような物です。」


…くっくっく


怪しいほくそえみを浮かべつつ、二人がアキトの部屋のドアを開ける。

…鍵がかかっているが、そこは艦長権限でフリーパスだ。


…どうやらアキトにプライバシーは無いらしい…。(苦笑)


…。


…プシュン…

艦長命令によってドアが開く。…そしてそこでは…。


「…アー君、凄い…。」

「枝織ちゃん…もう一回…どう?」


…詳しく描写すると、18禁間違い無しの行為が現在進行形で進んでいた。

…昼間から何やってるんだか。(汗)


「…ねぇアー君…あのね…枝織、お願いがあるの…。」

「…なんだい?」


ドアの前で硬直したままの二人を無視して、ベッドの中で二人の話は続く。(爆)


「…既成事実があるんだから…責任とって。」

…いやだ。」


…ヲイ待てアキトっ!!(滝汗)


「…なんで?(涙目)」

「既成事実の一回や二回で責任問題になるんなら…、」


「なるのなら?」

「俺、ミナトにも責任とってやらなきゃならないからな。」


























…はい?


























「…アー君、ミナトって…誰?(汗)」

「ナデシコの操舵士さ。」


…アキトちょっと待てぃ!!
一体何時の間に!?


「…なんで…?(泣)」

「…ルリ達の姉役が必要だった。…それが出来る人は…ナデシコに彼女だけだ。」


情操教育係?…その為にたらしこんだのかい!!

…全く油断も隙も無い!(汗)


…因みにホウメイさんだとお母さん代わりというランクになってしまうらしいが。(爆)


…。


顔面蒼白になる枝織ちゃん。(と、ユリカ・メグミコンビ)

…いそいそと服を身に付けると、ダダダッ…と走り出す。


「…アー君のばかぁ!…浮気者ぉっ!!」

「俺は誰とも付き合ったつもりは無いが…?」


…下衆な…。(毒)


「…でも、でも…枝織、絶対諦めないからね!!」

「…そうだ、枝織ちゃん。…子供出来てたら連絡くれ。


…ぴたっ


「…えっ?(赤)」

「…費用はきっちり送るからさ。(何の?)」


…パチィィィィン!!

枝織ビンタ炸裂!!…アキトの首はあらぬ方向に曲がった!!


「アー君のぶぁかぁああああああっ!!(怒泣)」

「…ジョークだってば。…そんな事より。」


…ジョークで済むのか!?(汗)

…しかもそんな事…って…。


「…なによ…ぐすっ。

「…北斗の奴は…元気か?」


…ピキッ

枝織の身体が固まる。


「…ほ、北ちゃん?」

「ああ、随分前は『組み手に付き合え』とかいきなり現れてたんだけど…最近見なくてな。」


突然空から降ってくる小型チューリップを想像してみる。

…さぞかしご近所は腰を抜かしただろうが…。



「…あ、ああ…そうなんだ…あはは。」

「丁度その頃だよな。枝織ちゃんが北斗の妹だ…って俺の前に現れたのは。」


「うん、そうだったね…そう…だった。」

「…元気か?…いや、もうどっかでのたれ死んだのかもしれないけどな。(苦笑)」


何処となく楽しげに語るアキト。


枝織は視線を逸らしつつ、滝汗かきながらアキトとの受け答えをしている。

…はっきり言って、枝織にとって北斗の事は…禁句だ。


「…いや…そのー…一応元気?で…居る…のかな?(汗)」

「…そうか。…ま、今度遊びに来いと伝えてくれ。」


…枝織は困ったように顔をしかめた後…何かを決意したように一人頷く。


「…枝織…ちゃん?」

「…………ふっ、アキト…まだ気付いてなかったのか…?」


突然、枝織が身にまとう雰囲気が変わった。

…ついでに口調も。


「…は?」

「…俺だ、北斗だ。…俺と枝織は一つ…お前には言ってなかったがな。」


「…何言ってるんだ枝織ちゃん?」

「ふふ、信じられんのも無理は無い。…だがな…」


「…いい加減にしろ。」


…ぞくっ

アキトの声に殺気に近いものがこもる。


「…枝織ちゃん、君じゃあ北斗のまねは無理だ。」

「マネじゃない!…マネじゃあない!!」


その時、アキトの顔が軽く微笑む。

…それは幼子をあやす親の顔に似ていた。


「…どんなに真似ても、アイツの抜き身のような気配には達しない。」

「…。」


…何もいえない北斗…いや…枝織。


「…どう言うつもりかは知らないが…つまり北斗は…死んだんだな?」

「違う!…北ちゃんは死んでなんか居ないよ!!」


涙ながらに反論する枝織。

だが、アキトは信じる気配すらない。


「…なら、枝織ちゃんが北斗のふりなんかする理由はなんだい?」

「…ふ、ふりじゃない!…枝織と北ちゃんは元々一つ、ホントなんだよ!」


…キッ

アキトの殺気が枝織を貫く。


「…北斗は俺の数少ない親友の一人。…侮辱は許さん。…例え君でもね。」

「…アー…君…。」


…ダッ


枝織は泣きながら、無言で部屋から駆け出す。

…そして…残された者はというと…。


「「そう、これは夢…きっとすっごく悪い夢!!」」


見事なユニゾンをかましていた。

そして更にブリッジでは、


「ルリルリ交代よ。…木星蜥蜴のあの子たち、今日帰るっていうから見送りしてくれば?」

「はい、ミナトさん。(今回のミナトさん、前回にも増して優しいです)


何も知らないマシンチャイルドが一人。

最後まで何も気付かない事を祈るのみだ…。(汗)


…。


そして、格納庫。

サフィーとコガネがなにやら別れを惜しんでいる。


「サフィーちゃん、それじゃね。…後は枝織姉が来るのを待つばかりか…。」

「ばいばいなのコガネちゃん。…ピザ焼いたから後で食べて欲しいの。」


「ありがと…にしてもハーソー達、何処行ったんだろうね?」

「…お兄ちゃんが…追い出しちゃったの…。(泣)」


「あー、ほらほら泣かない泣かない。…だいじょーぶ、あいつ等なら殺しても死なないって。」

「…うん。…判るの…。」


…ダダダダダッ!!


「コガネ、枝織…先に行くね!!」

「え?…あー、待ってよ枝織姉!!…もう、挨拶くらいしてけばいいのに!」


「…もう帰っちゃうの?」

「うん、それじゃね…あ、待ってよ枝織姉ー!」


「ばいばいなのー、また来るのー!」


ぱたぱたと手を振るサフィーに見送られ…

…二人を乗せた連絡艇は逃げ出すかのよう旅立っていった…。


…無論、乗り逃げで。(爆)


…そして、その船内で…枝織をコガネが問い詰めていた。

…因みに操舵しているのはコガネちゃん。(方向音痴には任せられないとの事)


コンピュータは駄目でも操縦桿なら良いらしい。(爆)


「ねー、枝織姉…なんであんな急に出てく事にしたの?」

「…アー君…。」


「…聞いてないしさー。(汗)」

「…分かってるんだ…枝織に北ちゃんの真似なんか出来ないって。」


枝織は自分の世界に入ってしまっていた。

…だが、問題はそれだけにとどまらない。


「…おーい、枝織姉?…何処に飛べばいいのかなー?」

「…でも…仕方ないんだよ…。」


…ふと見ると、ビーコンを出していたためか六連が跳んで来て、旗を振っている。

良く見ると、遥か先にチューリップの姿が…。


「…あ、そっちかな…?」

「…だって…だって…。」


…連絡艇がチューリップに消える。

…その時…枝織が誰にも聞こえない小さな声で呟いた言葉があった。


「…だって…枝織の中に…もう…北ちゃんは…居ない…。」


…寂しげに呟かれた言葉。

この時点でその意味を知るものは、殆ど存在していない。


…誰か…本当に彼らの事を心配している者が、誰か一人でもその事実に気付いてさえ居れば…。

…後の悲劇を回避する事も…出来ただろうが…。




…。




それから約2週間。…話はナデシコに戻る。

ユリカ達の手によって大量の盛り塩がなされたブリッジに、メインクルーが集まっていた。


「…もうすぐ火星ですね…。」


そんな事を言いながらも、ルリは


(反乱がおこりませんね?…どうしたんでしょう?)


等と考えていたりする。

…因みに今回反乱が起こらないのは、誰も気付いていないからに過ぎない。(爆)


そんな中、アキトが口を開いた。


「…で、艦長。俺たちをここに集めた理由は何です?」

「あ、アキト?…やっぱりアキトは私が大好き!」


…この期に及んでよくそこまで言えるものだ…。

…しかも、何の脈絡も無い。(汗)


「…艦長、そんな事より早く話をして下さい。(怒)」

「怒らないでよルリちゃん。…えー、実は火星空域に木星蜥蜴の大部隊が駐留してるんです。」


…正直、それぐらいは予測範囲内ではある。

だが、問題はそこではない。


「…攻撃指令か。」

「ううん、違うよアキト。…向こう…攻撃してこないの。」


『…はぁ?(全員)』


…。


「…つまり…こう言う事ですな艦長。…敵の様子がおかしいと…ハイ。」

「そうです。…しかも…皆さん、敵の配置を良く見てください。」


…大型画面に、敵の配置が現れる。


「何これ…ルリルリ?」

「縦一文字が2列…と言えば聞こえは良いですが…はっきり言ってこれじゃあ道です。」

「…花道ですか?」

「メグちゃん、花道にしちゃ仰々しすぎない?」


そう、敵部隊はナデシコの通り道を作るかのように行儀良く並んでいたのだ。

…雰囲気的には赤絨毯でも敷かれていそうな感じすら受ける…。


「…何にせよ、これでは歓迎されてるかのようだな…。」

「いや、中央に追い込んでの集中攻撃もありえる。」


…周囲のざわめきをゴートとアキトが締めた。

まあどちらにしろ、不気味な事に変わりは無い。


…。


「艦長…ご決断を。」

「…このまま…行きましょう。」


…ざわっ


「無茶です!…罠だったらどうするんですか?」

「ルリちゃん。でも、向こうも攻撃の意思は無いみたいだし…それに。」


「それに?」

「いざとなったらアキトが守ってくれます!」


…しーん

痛々しい沈黙が周囲を包む。(笑)


「…あ、あれあれ?」

「アキトさんなら、呆れて自室に戻っちゃいました。」


「…そんなぁ…。」

「…あっ!…艦長…火星から通信です!!」


「ええっ!?…生き残りが通信してきたの?」

「…木星蜥蜴から…という恐れもありますけど。」


…因みにナデシコでの現在の認識は、木星蜥蜴に人間も混じっている…という程度。

しかも、それと戦っている…ということの意味をまだ理解している物が少なかった…。(汗)



「…通信、開いて。」

「…一方的に送ってきて…切れました。…今、通信文を出します。」


『ネルガル製戦艦に告ぐ。…指示に従い、指定のポートに降りられたし。』


「…これだけ?(汗)」

「…はい。…それと、着陸用の誘導ビーコンが来てます。」


「ルリルリ、車庫入れは向こうがやってくれるの?」

「はい、ミナトさん。」


それを聞いたユリカは暫し考え込み…決断した。


「…分かりました。…話が通じない相手ではないようです。…ご招待に応じましょう。」

「…はい、艦長。…念のため、エステバリス隊には待機指示を出しておきます。」


…。


そして…ナデシコはゆっくりと大気圏に入っていく。

…徐々に見えてくる火星の様子…それを見て…一同は驚きを隠せなかった。


「何…これ。」

「…驚きましたなぁ。…戦争前より建物が増えてますよ…?」

「…周囲は荒野のままだ。…主要コロニーのみを急遽改修したのだろう…。」

「にしても…なんで木星蜥蜴の攻撃を受けないんだ…?」

「ジュンさん、それ…洒落にならない問題です。」


…戦乱の傷跡は大いに残っていた。

だが…眼下に広がるのは荒野の中の高層ビル群…。


「…あ、空港がみえます。」

「あそこ…私が地球に行く時に使ったところ…かも。」


「…どうやら…あそこに降りろと言う事らしいですな。…どうなりますやら…。」

「…ところで…なんか下のほうで手を振ってません?(汗)」


…そして…硬直する者が一人。


(どういう事です…私の知っている歴史と…余りにも違いすぎる…!)


ルリは、内心の混乱を表に出さないようにするだけで精一杯だった。

…恐らく、自分の記憶だけを当てにして情報収集を怠っていた事を悔いても居るのだろう…。


…。


同時刻。…降下してくるナデシコを、火星から眺めている人影がある。

…その女性はナデシコの姿を認めると…薄く微笑む。



「…来たわね。アキト…アタシが貴方を…助けてあげる…。」



…。


…既に、崩壊の序曲は鳴り響いていた。


「史実」を知る者たちは、歴史を自分達に都合の良いように操ろうと画策する…。

…世界はその度に代案を考え…大きな流れだけは変えまいとしてきた。


だが、それも限界なのかも知れない。


…遂に、それぞれの思い…そして策謀は歴史の修正力を大きく上回り、

…歴史を根本から変えようとしている。


…今まで、鋭い者しか感じ取る事ができなかった時代の歪み。

それは、遂に鋭利な感覚を持たない者ですらも感じ取れるほどに大きくなっていたのだ…。


崩壊の序曲は…高らかに鳴り響く。

…次に続く悲劇や喜劇…茶番劇の前奏として…。



…百年の時を越え、舞台はまた…火星へと移る。



かつて…アキトはここで、歴史の流れを僅かに歪めた。


結果としては、最終的な結果は変わらなかったものの…、

あちこちで歴史に致命的なダメージを与えた事は歪めた…以外の何物でもない。


…それは…川の源流に大き目の石を投げ落とすような行為だったのだろう。

僅かに生じた流れの変化は、時間が経ち…下流に向かうほどに大きな歪みとなって現れる。


…100年という歳月。


それは、上流で起きた僅かな変化を増幅させ…大河の流れを変えるのに十分な時間だった。

…その歪みが…今、アキト自身に…重く…のしかかろうとしている。


だが…それを『自業自得』と罵って良いのだろうか?


…歪められた歴史を生きたアキト・ラズリ。

…彼は既に『黒帝』とは別な存在と化しているのだから…。


続く


::::後書き::::

どうも、BA−2です。

…気付けば99話。…とうとう100に手が届くところまで来てしまいました。(汗)


…そして、次回より舞台が三度火星に移ります。

いいタイミング…なんですかね?(苦笑)


…現代に舞台が移ってから、一度オリキャラたちに顔見せさせようと思って、

一度に出してみたんですが…どうやら失敗だったようです。


よって、一度ほぼ全員にナデシコから降りて貰い、再登場の時に再度説明する事にしました。

なお、現在ナデシコに残っているオリキャラは、サフィーとコウだけの筈です。(ヲイ)



さて、こんな物ですが応援していただけると幸いです。

今後も頑張るんで宜しくお願いしますね!


では!

 

代理人の感想

ついでに伏線とかも再度説明してもらえるとありがたいかなーと(爆)。

何度も言うようですがごちゃごちゃしてますからね〜(苦笑)。

・・・そう言えばヒスイ(黒ルリ)はこれからどうコウにアタックしてくんでしょう。

「最初は文通から」とか言っていたりして(爆笑)。