『時の流れに』アフターストーリー

 

                            平和な1日

 

木星と地球、この両者で行われた不毛な戦争は一人の英雄の活躍によって終結を迎えた。




……其の名は、テンカワ・アキト。またの名を『漆黒の戦神』…。



彼の活躍により『大戦』は終結し…世界の人々は一応とはいえ平和を謳歌していた…。

…それでも、それに迎合しない者も少なからず存在する。


『火星の後継者』


かつては強大な力を誇っていたこの組織も…初代総帥・草壁春樹亡き後、南雲義政らの無謀な連戦によってその力を失いつつあった…。

…それでも諦める気は全く無いようだったが…。


そして…今日もまた…無謀な『革命』を起こすべく、秘密の会合を持つ…。


−火星にある小さなタバコ屋


「…今回…飯田は参加できないと連絡がありました…。」

「…そうか。」

「南雲中佐!…良いんですか…!?」

「アイツの娘さんもそろそろ年頃だ…これ以上巻き込む訳にも行くまい…。」


…余りに無謀な作戦が過ぎた為に賛同者も減り、

遂にはこんな片田舎のタバコ屋で会合を持たなければいけないまでに落ちぶれた火星の後継者…。

新規加入者が来なくなってから既に十年以上が経過していた…。

…それでも諦めない南雲を誉めるべきだろうか?

それとも…。


…。

「さて…今回の議題だが…今度こそ…今度こそ時は来た!!


オオ…!!


…会場がざわめく。

と言っても、たった10人弱では大した事にもならないが…。


「…久しぶりにクリムゾンが金を出してくれたのだ。」

「本当に久しぶりですね…三年ぶりですか?」

「いや、三年前はたったの300円(古銭)だった…数には入るまい。」


「…これでカトンボ3隻しかない現状からもオサラバですね!」

八年ぶりにバッタの補充も出来ます!」

「…いや、その前にカトンボ留めてるドックの延滞料を払わねば!」


「その前にするべき事が有るだろう!」

「何ですか!」

「…借金の……返済だ………!」

「「「…………ううぅ。」」」


…ここまで落ちぶれられると、かえって同情してしまいそうになる…。


「…だが、どちらにしても今回が最後のチャンスだ…!」


…南雲の言葉に頷く一同。


「…来年には正式にネルガルとクリムゾンが合併するからですね?」

「その通りだ…長らく交渉が進められていたが、昨年…。」


「はい、クリムゾンの主力工場が例の『姉妹喧嘩』で壊滅しましたからね…。」


…アクアさん…シャロンさん…。

一体…何をした!?


「そうだ…つまりこの金は…手切れ金。」

「…撃ち止めですな…。」

「そうだ、我々に次など無い!!」


…ドン!


叩かれる机!

…遂に…最後の大勝負に出る気だ!!


「そこで…此方としても全てを賭けねばなるまい…!」


どさっ…


「こ、これは!」

「…このタバコ屋の権利書だ…!」


「ですが、ここは中佐の最後の財産!

「…そうです…無謀です!!」


「…だが、男には全てを賭けてでも立たねばならん時がある!!」


ピシャー−ーン!!


…背後に雷を背負って気合十分だ!


だが、大戦時から20年…。

…止めようよ…もう若くないんだしさ…。(爆)


…。


「中佐がそうまで仰られるなら!」

「我々も…!」

地獄の底までお付き合い致します!!」


どさどさどさっ…


「こ、これは!」


「家屋敷の権利書…!」

「…先祖伝来の家宝を売った小切手です…。」

「女房を質に入れました…!!」


…!?


ちょっと…怖い台詞が混じってなかったか?

…いや、多分幻聴だな…。(汗)


「お、お前達…!!」


…南雲…漢泣き!!


「中佐…良いんです!」

「今回で、最後ですから…。」

「負けたら生きて帰る気は無いですしね!」


嗚呼、熱き男たちよ…!!


…。


…それは無責任って言わないか!?


…。


そして、各自で持ち寄った私有財産すら質に入れ

最後の戦いに向かわんとする火星の後継者達!!


…。


「よし!行くぞ…最後の戦いだ!!」


…だが…、


「「ちょいと待った…南雲さん?」」


…謎の二人組が突然現れた!!


「誰だ!?」


「…ネルガル金融の者です。」

「同じくクリムゾン・キャッシングサービス!」



「…ま、まさか!」


「「そう…、我々は!」」

「「人呼んで『地獄の借金取り』!!」」


…どうやら借金の返済を迫りに来たらしい…。


「ま、待て…この革命が終わったら…必ず…!!」


「困りますねぇ…何時もそうじゃないですか…。」

「…それに…今ならお金…有るんでしょう?」


ピキーン!…南雲の頭に何かが閃く!!


「…まさか…クリムゾンめ!!


「…そうです、取り立ての為に幾ばくかお渡ししたんです…。」

「そうすれば、勝手に資金を集めるでしょうしね…。」


「おのれ…卑怯な!!


「まさか、企業が『義』で動くとでも思いましたか…?」

「…あ、そうだ…取りたて協力の謝礼は1割でしたよね?」


「何!?」


「…ネルガル側への借金も溜まってたでしょう?」

「協力してもらう代わりに取りたて額の1割を渡す事になってるんです。」


「…ぬぅ…!!」


「…大丈夫、貴方達が集められた額は把握してますからね…。」

「何と!…丁度返済額ピッタリなんですよ…良かったですねぇ。


「ち、チョット待て…それは老後の…!!」


…彼らの私有財産を含め、火星の後継者が集めたなけなしの資金を容赦なく取りたてていく借金取り×2。

因みにクリムゾン側が渡した資金は、足りない分を丁度穴埋めできる額。

…シャロン曰く、


「まあ、長い付き合いですしね…返せない借金まで残させるのも酷かと思いまして…。」


だ、そうです。


…こうして、最後の戦いにすら赴けなかった勇者達(笑)は…、


カァー…カァー


カラスの鳴く丘の上で暫く放心してましたとさ…。


…。


「チョット南雲さん!」


…おや?


「あ、貴方は貸しドッグの…!!


「…溜まってたドッグの延滞料金…払ってくれ!

「…え?」

16年分…延滞料込みで…こんなもんだな!」


…。(謎の空白)


「…がはっ!(吐血)」


…。


「…ち、チョット!…勝手に死なないでよ金返せ−っ!!


…どうやらドッグの代金はまったくの別物だった様だ…。


…。


そして、南雲の戦いはまだまだ続くのだった…。

…但し、相手は膨らみつづける借金だけど…。

…。

−ナデシコH−


お馴染みの3人がブリッジで何やら喋っている。


「…南雲さんが借金を返したって?」

「はい、ハリ様…珍しい事も有る物です。


「…明日はだな。」

「いいえ辰斗…きっとが降ります。」

「…それだけで済めば良いけどね…。」


…実際はネルガル・クリムゾン関係の分だけを返済させられただけだが…。


「…にしても、昔のハーリーみたいだよな…不幸でさ。」

「そうですね…不幸が束になってかかってきてますし…。」


「…そうだね…運勢が逆転したのは何時なのかな?」


…実はルリを完全に諦めた時だったりする。(爆)

彼の不幸は、ルリに固執した事に起因するのは間違いない所だから…。


…そのぶん、周囲に不幸が蔓延しているが…。(汗)


…え、何時諦めたかって?

それは勿論、夫婦の夜の営み無理やり見せ付けられた時。


…3回ほど首を吊り臨死体験をした後で悟りを開いたらしい。

…無論ゴートとは違う意味で。


…。


「しかし…平和だね…。」


「はい、今日はキョウカさんも来ませんし…。

「うんうん、昨日は追い返すのに手間取った!


…。(沈黙の時)


「…キョウカ…来てたの?(汗)」


「あ…。」

「…ち、違う!・・・違うんだハーリー!

「ホントは殺す気だった(ボソッ)」
「あの人…しぶといですよね…。(ボソッ)」



「え…なんか言ったかい?」


「いーえ!」
「何も言ってないぜ!!(汗)」


…ピピッ!


「…おや、通信?」


『毎度ーっ…お届け物です!!』

「…じゃ、倉庫に置いといてよ。」

『ハイっ…そうだ、先方から…生物だから早めに開けてくれとの事です!』

「…ふーん…分かった、じゃあね。」

『了解…今後とも御贔屓に!』


…。


「生鮮食品ですかね?」

「カニかな…それとも鮭か…。」


「辰斗は食いしんぼだなぁ…。」

「…あ……!(赤面)」


…メノウが横で笑ってたので、取りあえず裏拳で黙らせて倉庫に向かう辰斗。

…やはり食い意地は張っているらしい。(笑)


「は、ハリ様…。(泣)」

「大丈夫かい…メノウ?」


「はい…ところで…ラピス母から通信が入ってますが…。」


…。


「居ないと言ってくれ!(即答)」


「…いいんですか…後が怖いですよ。」

「ラピスが通信入れてきて、良い事が有った例があるか?

「無いです。(即答)」


「…じゃあ、宜しく。」

「はい、ハリ様。」


…ガチャン


『…ハーリー!…何で切っちゃうのよ!


…それでもラピス登場!


「…げっ?…切ったはずなのに!?」

『甘い甘い!…オモイカネは私の友達だもん!』

「…下僕の間違いじゃないかい?」

『…最近はそうとも言うね。』


…流石に幼馴染…息がピッタリだ。

多分両方とも、それを絶対に認めないと思うけど…。


「…で、何の用?」


…極めてぶっきらぼうに聞くハーリー。

ラピスに対して下手に出たら、何処までもエスカレートする事を一番知っているのは他ならぬ彼なのだ。

因みに強気に出ると槍で刺されます。

…不死身には関係無い事だけど。


『うん…最近アキトが構ってくれなくてさ。』

二人目生んだばかりなんだし、暫くは子育てに専念したら?」

『…駄目…そしたら忘れられちゃうかも知れないでしょ?』


…もて過ぎる旦那を持つと色々苦労が絶えないらしい。

だが、それを心配する事は無いのではないだろうか?


…相手がアキトだし…心配しても無駄の様な気がする…。

…色んな意味で。


「…幾らなんでもラピスを忘れる事は無いんじゃない?」

『…とにかく…子供が居ちゃアキトに近寄れないから、暫く預かって!


…少しの間考えて、ハーリーはある答えを出す。


「了解…まあ、長い付き合いだしね。」

『ありがと…やっぱりハーリーって便利♪

「…それに…どうせもう向かわせてるんだろ?」

『…何で分かるの?』


「何時もの事だからね…。(悟りの境地)」


『…でも、もう着いてるはずだよ?』

「いや?…まだ来てないよ。」

『あれ…おかしいなぁ?』


…。


…ギャアアアアアアァァァァァァッ!?


「な…香織!?」

『あ、分かった♪…じゃ、宜しく〜。』


プツン…ラピスの通信が切れる音を背に、ハーリーは倉庫に急いだ!

そこには!


「…は、ハーリー…い、妹が……。」

「…。(硬直)」


氷付けの女の子を抱えた辰斗とメノウの姿が…。(汗)


「…ラピス…君は鬼かい?」


…チョット引き気味のハーリー。


「とにかく早くしないとな…辰斗…解凍!」

「…分かった!」


…だだだだだっ


「辰斗…電子レンジに向かって如何するんだよ!!」

「エ…あ、そ、そうだな!」


「…ほら、メノウも急いで!」

「……え…あ、は、はい!!」


…。(数時間後)


今…3人の前には幼女と赤ん坊が居る。

幼女は、トパーズ・ラズリ…6歳
赤ん坊は、オパール・ラズリ…0歳


…両方ともラピスの子供である。


…へくちん!


あ、くしゃみした…。


「…ううううううう…母さん…怨むヨ…。」

「……大丈夫?」


「…あ、ハーリーおいちゃん!」

「…トパーズ…災難だったね。」


「うん、いきなり母さんに箱詰めされてネ…。」

(ヲイヲイ…ラピスってば…。)


「抵抗したら、液体窒素のプールに沈められテ…後は覚えてなイ。」


…冷や汗をかく、『良識ある人達』。


「悔しいから、母さんのパソコンに仕込んだウイルス起動させておくノ。」

「…え?」

「こんな事も有ろうかと…予め仕込んでおいタ。」


…目の前の『末恐ろしい子供』に冷や汗をかく一同。


…。


この日のハーリーの日記にはこう記されている。


《本日の事件は以上の二つだけ…平和な1日だった。》


…これでもかい!!


おしまい


::::後書き::::

最近アフターが疎かになってたんで書きました。

BA−2です!


…20年後の世界は、これで日常なようです。

まあ、この世界観で大変なことと言ったら、某同盟の内乱ぐらいの物でしょうし…。


…こんな駄文ですが、応援して頂ければ幸いです!

では!

 

 

 

代理人の感想

 

くうっ・・・・・(男泣き)。

 

落ちたな・・・・南雲。

こ・・・ここまで哀れだと泣くしかない(貰い涙)。

普段なら強烈なインパクトであろう「氷漬けの少女」が完全にかすんでしまった(苦笑)。