第一話 会合









日本の長崎県に位置する佐世保市。

今その港の工業区に多数の無人兵器の姿があった。

その無人兵器に囲まれるように存在するピンク色の人型の機体―ネルガル重工の開発したエステバリスである。

そして今そのエステバリスのアサルトシートに一人の青年―テンカワ アキトが座っていた。

アキトは迫り来る無人機の攻撃を全て紙一重で避けながら時折無人機にエステバリスの拳を叩き込み

着々とその数を減らしていった。

彼にとってはこの程度の戦闘など遊びの内にも入っていなかった、その証拠に彼は汗ひとつ掻いていない。

それほど彼の戦闘力は桁外れだった。

なぜ彼がこれほどの力を有しているのか。

それを説明するために少し時間を遡る事になる。







雄大な火星を背後に2隻の戦艦が激しいチェイスを繰り広げていた。

復讐を終えかつての仲間達と心から愛する者の許より姿を消そうとする者と

その者に人の思いと人のぬくもりを教えられた者。

互いに譲ることのできぬ物をその胸に抱きながら・・・・・・

両者の思いはすれ違うだけなのだろうか・・・・・・・


「アキトさん!! ・・・もう直ぐユリカさんが退院されるのですよ!!

 せめて、せめて顔を出すくらい良いじゃないですか!!」


ナデシコCの艦長ホシノ ルリが必死にモニターに映る艦に向けて声を上げる。

しかしその声は前方の艦―ユーチャリスに乗るアキトには聞こえていなかった。

彼の五感はもうすでに一人の少女の必死な叫びを聞き届けることができないほどにぼろぼろだった。


「ラピス・・・・ジャンプスタンバイ」


「解かった、アキト」


アキトの声に桃色の髪をした少女―ラピス ラズリが少しの間アキトの顔を見つめ返事を返す。

そしてアキトやラピスの乗るユーチャリスの周囲にジャンプフィールドが徐々に形成される。


『ジャンプフィールドの形成、終了しました』


ユーチャリスのオモイカネ級AIダッシュからの報告がアキトへ入る。


「いっそ遥か遠くの誰も知らない宇宙へ跳んでみるか・・・・・・・」


アキトは自らの考えを自嘲気味に口にしながらイメージを開始する。


「よし、ジャンプ先は・・・・」


「そうはさせませんよ・・・・アキトさん!!」


      ガシャァァァァァァァァァ!!!


アキトの言葉を遮る様にルリの声が響きナデシコCの強襲用ビームアンカーがユーチャリスに打ち込まれる。


「くっ!何だ!?」


『アキト!ジャンプフィールドの制御装置にナデシコCのアンカーが直撃!制御不能!!』


ダッシュからの報告を聞きアキトの顔に動揺の色が浮かぶ。


「ルリちゃん!アンカーを切り離せ!!さもないと・・・・・」


アキトの言葉を遮るかのように辺りが虹色の光に包まれそして彼らは意識を手放した。

その後アキトが意識を取り戻したとき失ったはずの五感が戻っていた。

そしてアキトとリンクしていたラピスから連絡が入りアキトは全てを悟った。

ボソンジャンプの暴走―ランダムジャンプによって2196年の世界・・・・・つまり過去に跳んでしまったことを・・・

そして彼はひとつの計画を開始する。

愛しい者と散っていった仲間達を守るために・・・・・・・

そのために彼は再び仲間の許へとやってきた。





そして今彼は再びエステバリスに乗っている。

しかし彼にとって計算外のことが起きようとしていた・・・・・・


「何だ・・・・・レーダーに反応?
 
 何だこの異常な反応は!?」


『アキトさん空間が歪んでいます』


ルリからアキトへと通信が入ったその直後空が裂け白銀の流星が姿を現した。







『クロスドライブ完了、座標確認・・・・・地球・・・・日本の工業地域、佐世保ドック』


「クリムゾンからの情報にあった地球の新造艦があるのはここだったな・・・・・

 どうやら機動兵器が出撃しているようだな」


モニターに映るエステバリスを見ながら彼―レイが呟く。


「レディ、あの人型に通信を入れろ」


『了解』


レディの返事があった直後通信ウインドウが開き相手―アキトの顔が映る。


「お前がその機体のパイロットか?」


『そうだが・・・・・お前は?』


「自己紹介は後でする、それより雑魚の掃除なら手伝うぞ?」


レイの言葉に相手のアキトは少し考えるような素振りを見せた後解かったと一言答えた。

レイはアキトの答えを聞くのとほぼ同時にヴァイパーのレーザーブレードを抜き無人機に斬りかかる。

無人機もすぐさまヴァイパーに反応しバルカンを撃ち迎撃する。

だが撃ち放たれた弾丸はヴァイパーに掠りもせず次の瞬間には迎撃に出ていた無人機がヴァイパーの一撃で真っ二つになる。


「他愛ないな・・・・・この程度ならレナの相手をしていたほうがマシか・・・・・・・

 といっても比べるだけ失礼だな・・・・・・・・・・・」


レイはそんなことを呟き苦笑しながらヴァイパーの両腕のガトリングを連射し無人機たちを蜂の巣にする。


「ちっ、ディストーションフィールドで多少威力が削られるか・・・・・・」


予想以上に弾丸を消耗したことにレイが舌打ちをする。


『おい、雑魚の一掃はナデシコがする、この地点までおびき寄せれば良い』


アキトから通信が入りデータが送信されてくる。

そのデータは周辺の地図で海岸の一点が赤く点滅している。


「了解した」


レイはアキトに答えながら機体を反転させガトリングを撃ち、無人機を牽制しつつ目的地へとヴァイパーを急がせる。

そして目的地へ到着した直後海底からナデシコが姿を現し強力な一撃で無人機は全て跡形もなく消し飛んだ。





戦闘が終了しアキトはモニターに映る機動兵器のことを考えていた。

彼の知っている過去にはあのような機動兵器は存在しなかったのである。

アキトがそんなことを考えているとウインドウが開いた。


『悪いが行く宛が無くてな、お前の船に同乗させてほしいんだが?

 ネルガルにとって有益な情報を提供する・・・・・・どうする?』


レイの言葉を聞きしばらく考えた後アキトはナデシコへと通信を入れた。


「――――という事なんだけど如何かな?」


アキトはレイの言葉をナデシコのブリッジクルーに伝えた。


『かなり怪しいですね、信用しないほうが良いかもしれません』


最初に意見を言ったのはオペレーターのルリだった。

彼女もアキト同様この時代へと跳ばされた一人で登場しないはずの役者に対してかなり警戒しているようだった。


『でも手伝ってくれましたよね、私は信用しても良いと思いますよ?』


次に意見を述べたのは通信士のメグミ・レイナードだった。


『私の方としても会社の利益につながるようならばあの機体を調査したいですな』


『無害だという保証が無い、俺としては反対だ』


ネルガル重工社員のプロスペクターと同じくネルガル所属SSのゴート ホーリがそれぞれの意見を述べる。


『私は別にかまわないわよぉ〜、それに最終決断は艦長の仕事だし〜』


操舵士のハルカ ミナトがあまり興味がないといった風に答える。

そしてブリッジクルーの視線が艦長であるミスマル ユリかに集まる。


『解かりました、そのパイロットさんに着艦許可を出してください』


ユリカは少し考えた後アキトにそう指示を出した。

副官であるアオイ ジュンの意見を無視して。



『許可が出たぞ』


レイがヴァイパーの状況確認をしているとアキトから通信が入った。


「そうか、礼を言う・・・・・・だが意外と早かったな、何か考えがあるのかただのお人よしか・・・・・・」

レイは思っていたよりも早く決断が下されたことに少し苦笑していた。


『どっちかと言えば後者だよ』


アキトの顔も苦笑いだった。


『だがこれだけは言っておく・・・・・ナデシコクルーに少しでも危害を加える様であれば容赦はしない』


アキトの言葉を聞いた瞬間レイの背中に冷や汗が流れ鳥肌が立つ。


「疑われても仕方の無い登場だったからな・・・・・・だが一つだけ信じてほしい

 お前の仲間には決して危害は加えない」


レイは真剣な眼差しでアキトを見る。

アキトはその目を見て表情を緩め通信を切った。


「計画の第一段階は終了か・・・・・・後はどれだけ事をうまく運べるかが問題だな・・・・・・・」


『先ほどの青年の戦闘能力は計算外のものです』


レイの言葉にレディが意見を述べる。


「そうだな・・・・・嬉しい誤算になれば良いが」


レイはそんなことを呟きながらナデシコへと向かった。





























後書き

B「1話目っす!」

R「ナデシコとの接触か・・・・・いきなり伏線を張ったな」

B「伏線は読者に先を楽しみにしてもらおうという昔ながらの手だからね〜」

R「確かにな、先のよめる話など詰まらなくて読んでもらえんだろう」

B「うっ・・・・・が、がんばるぞ〜、お〜」

R「覇気が足りないな・・・・・・・・」

 

 

代理人の感想

残念ながら、思いっきりありがちな導入だと思います。

できれば意表を突いてくれることを期待したいのですが。

冒頭で「ナルガル重工」という文字を見たときには、

「おおっ! よくある逆行の振りして実はパラレルワールドだという事をさり気に示しているのか!」

と感心したんですが・・・・・誤字でしたし。(爆死)