機動戦艦ナデシコ

虚空の城

〜 Dead person’s requiem 〜

 

 

 

                       プロローグ

 

 

 

 元木連中将草壁春樹を筆頭に、「火星の後継者」と名乗る者達の反乱。それは今まで一番残酷だった。ボソンジャンプのナビゲーターの誘拐と、彼らA級ジャンパーに対して行われた人体実験。結果、誘拐されたA級ジャンパーは二名を残し他は死亡。生き残った一方も人体実験のせいで五感を失い、半死半生の状態。唯一健康体で救い出されたのは、一人だけ。と言っても、長い間ジャンプユニットに融合させられていたため著しく体の機能が低下している。命に別状は無いが、しばらくは病院で入院。そして体を動かすためのリハビリが必要。

 一時期ボソンジャンプを独占した「火星の後継者」達による奇襲のせいで、政府はガタガタ。ネルガルのシークレットサービス・月臣元一朗の活躍もあって壊滅には至らなかったようだが。

 それから一年。あの火星の「遺跡」はネルガルと統合軍の管理下に置かれた。一応ネルガルと統合軍は手を組んだということになるが、実際はお互いを監視し、遺跡が取られないようにしているだけ。でも遺跡を研究している科学者たちはあまり気にしていない様子。そこら辺を見ていると「火星の後継者」のヤマサキとあまり違わないような気がする。

 

 

「「「火星へ?」」」

「そうだ」

 サリーちゃんパパと密かに言われている総司令官ミスマル・コウイチロウは、自分の言葉を復唱する三人に頷いた。

「何でまた火星に?」

 連合宇宙軍少佐ホシノ・ルリは、もっともな事を訊ねた。

「また『火星の後継者』の残党ですか?」

 ルリの横で、黒い髪を整えたマキビ・ハリ少尉ことハーリーが嫌そうに言う。

「残党なら他のヤツに頼んでくださいよ」

 ルリをはさんでハーリーの反対側に居るタカスギ・サブロウタ大尉が眠そうに言う。

 そこら辺がナデシコクルーっぽい。

「うむ。別に『火星の後継者』の残党と言うわけではないのだが……正直分からんのだ」

「分からない?」

 ハーリーがキョトンとする。

 机に両肘を置いて手を組み顎をのせ、コウイチロウは疲れたようにため息をつく。

「まあ、順を追って説明しよう」

 その時、ナデシコCで待機中のとある人物が反応したかは定かではない。

「実は三週間ほど前、火星に調査班を送った。『火星の後継者』が何を残していったか分からないからな。それに遺跡以外になにかがあったらまた戦争が起こり、そこに住んでいた人々がまた死ぬ…という事に成りかねない」

「はあ」

 相槌はサブロウタ。

「しかし、調査班が火星についてから一週間しても何の連絡も無い。こちらから連絡を取ろうとしても何の反応も無い。ということで、もう一度班を組んで送ったが、帰ってきたのは物言わぬ屍となった彼らと、彼らの血で赤く染まった艦だった。しかも艦はボソンジャンプで現れた。誰かがやったとしか思えん」

「「うげぇ」」

 顔を青くして素直な反応をするハーリーとサブロウタ。

 ルリも心なしか顔色を変える。

「……また面倒ごとを押し付けられたって事ですか」

「ふむ……申し訳ない」

「いえ。別に良いです」

 ルリは微かに笑った。

 それを見たコウイチロウは複雑な顔をした。

 ルリが笑うようになったのは、一年前の「火星の後継者」が現れた時から。強いて言えば、復讐鬼となったテンカワ・アキトと再会してからだ。確かに、息子と認めたアキトが生きていたことを知った時はコウイチロウも嬉しかったが、変わり果てた彼を見ると、その気持ちがしぼんでしまう。

 今では彼は罪も無い人々を殺した重要殺人犯として全宇宙に指名手配されている。そしてそれを命じたのは総司令官のミスマル・コウイチロウ本人。

「アキト君に会えると良いな」

「…………はい。おじさま」

 ルリは満足そうな笑みを浮かべて頷いた。

「あ、それとな。明日新しいパイロットが来る」

「新しいパイロット?」

「ああ。明日プロスペクター君から紹介してもらいなさい」

 

 

「いやしかし。また火星に行くとはねえ」

「火星にはあんまりいい記憶は無いです」

 サブロウタが三度目の火星行き決定に少し驚いていた。ハーリーは一年前のことを思い出して複雑な顔をする。

「私は嬉しいです」

「「え?」」

 ルリの言葉に驚いてルリを振り返る二人は、ルリの浮かべている表情に驚いた。普段は人形のように無表情な彼女が、憂いを感じさせる笑みを浮かべていた。

「あの人の生まれた場所だから」

「………………」

 あの人――今となってはただの殺人犯のテンカワ・アキト。ルリの大切な想い人。

 ルリに想いを寄せるハーリーにとっては恋敵。だが彼の強さは尋常じゃない。しかも惚れたのはルリの方だと言うから尚悔しい。所詮は片思いだ。

 テンカワ・アキトはミスマル・ユリカと結婚し、籍を入れている。ルリも養女として籍を入れるはずだったが、その前に新婚旅行へ向かった二人は、シャトル墜落で死んだと思われていた。実際は「火星の後継者」の北辰によって連れ去られていたのだが。

 その後ネルガルのシークレットサービスに救い出されたのはテンカワ・アキト一人だった。救い出したはいいが五感を失って半死半生の状態。そして次に助けられたマシンチャイルド――ラピス・ラズリとのリンク処置により味覚以外の感覚はだいぶ回復したが、それはリンクを切ってしまえば逆戻りするだけで一時的なものでしかなかった。

 テンカワ・アキトは月臣元一朗から木連式柔を伝授され、ゴート・ホーリーから銃を教わった。かくして彼は機動兵器ブラックサレナを完璧に使いこなし、最強の男となった。

 その時まだ捕らえられていたミスマル・ユリカを救い出すため、彼はヒサゴプランの四つのコロニーを落とし、たくさんの人間を殺めた。

 イネス・フレサンジュの偽の墓の前で直に彼と再会したルリは拒絶を受けたらしいが、まだ諦めていないらしい。

 実際ユリカを救い出した後、ユーチャリスと共にボソンジャンプで消えていくのを見た後、ルリは言ったのだ。

『あの人は大切な人だから』

 と。

 ハーリーにとっちゃかなりショックだった。

「さて、明日に備えて各自解散です」

「う〜っす」

「はい……」

 サブロウタは気楽に、ハーリーは何故か背後に重たい物を抱えて返事をした。

 

 

 

「ナデシコが動きを見せました」

「ほう……最強と称えられるあの戦艦か。電子の妖精が乗っている」

「はい。まあ、あんな派手なことやれば動き出しますけどね」

「それを見越してのことだ。面白いではないか。あのナデシコと戦えるのだから。そうそう。“アレ”の様子はどうかね?まだあまり安定していないと聞いたが」

「聞いての通りです。ですがボソンジャンプ時に薬を飲ませて一時でも安定させればなんの問題も無いでしょう。しかし、やはりもうしばらくしたら使えなくなるでしょうね。やはり天然のヤツでないと…。新しいの補充しますか?」

「そうしてくれ」

「ではあの人にして見ましょうか……一年前のアレでだいぶ痛んでますけど」

「……ふむ。それが良いだろう。さーて、電子の妖精はどう出るかな」

「悪趣味ですね。もし出迎えるなら私に行かせてください」

「何故だ?」

「今回のナデシコにはあのコも乗るそうですから。“彼女”にあのコの死体を見せたらどんな反応をするか見てみたいです」

「君のほうこそ悪趣味じゃないか?」

「そうですか?」

「楽しみだな……」

「ええ。本当に……」

 

 

 

 

 

代理人の感想

 

うわ、なんかダーク(爆)。

 

「あのコ」っていうのはおそらく補充パイロットとして・・・「彼女」って誰でしょう?

むう、引きますねぇ(笑)

・・・・・まあ、イネスさんという可能性もないではないんですが(^^;

 

 

それはともかく、丁度百九人目の(どこがちょうど?)新井千鳥さんには

「投稿百八星・玉麒麟 盧俊義」の地位をプレゼント! (どんどんぱふぱふ〜)

発表はもう暫く待って下さいね。なお、前後賞はありません(笑)。