「えぇーーーん、えぇーーーん」

 

 

 

             「ヒィィィィッ!?ちっ、血がぁっ!?」

 

 

 

            「ヒック・・・お母さん、何で動かないの?」

 

 

 

 

「ウッ、ウッ・・・腕がぁっ!オレの腕があぁ――――っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2186年、火星、ユートピアコロニー空港にて大規模なテロ勃発。

 

 

空港のいたるところに配置された爆弾は、逃げ惑う人々の退路を確実に塞ぎ、恐るべき勢いで屍の山を築きあげていく。

まるで、空港の爆破というより、空港内の人々の爆殺を目的としているかのように・・・

 

咽かえるような血と肉の焼ける臭い・・・

四方から現れ、そして消えていく悲鳴・・・

 

もし、この世に地獄があるとすれば・・・間違いなくそこは地獄だった。

 

 

 

 

 

廃墟と化した空港で1人の少年が歩いていた。

 

 

「・・・・お母さん、お父さんがどっか行っちゃったよ?」

 

 

少年は致命傷こそ無いものの血まみれだった・・・

靴、服、手、髪の毛・・・そしてその目に映るものも・・・

 

 

「あはは、なんか・・・みんな真っ赤だよ・・・・」

 

 

少年の瞳は流れ滴る血で真紅に染まっていた・・・

 

 

「ねぇ、お父さんどこ行っちゃたんだろね?」

 

 

胸に抱えた女性の首に話し掛ける。

 

 

「・・・・・ねぇ・・・どうして何も言ってくれないの・・・・お母さん?」

 

 

少年の問い掛けに、帰ってくるのは沈黙ばかり・・・

 

 

「・・・・・・・・ウッ・・ウッ・・・・ウワァァ―――――ッ!!!

 

 

 

 

 

その日、少年は全てを失った・・・

そしてそれは・・・少年の中で、何かが壊れた日でもあった・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数年後・・・

第一次火星戦争勃発。

 

 

 

 

 

空を飛び交う数え切れないほどの無人兵器達。

それを次々に撃ち落しているのは、満身創痍の00、01のナンバーをつけた2体の人型兵器。

 

 

「2号機大破!3号機4号機、共に応答なし!!」

 

「くっ、結局残ったのはオレとお前の2人だけか・・・」

 

 

一瞬の隙を突いて00号機に襲い掛かる無人兵器。

 

 

「隊長、危ないっ!!」

 

 

無数の銃弾を00号機の盾となって浴びる01号機。

 

 

「何故オレなんかをかばった!!」

 

「へへ・・・隊長が帰らなきゃ・・アイちゃん・・・悲しむ・・じゃ・・・ないですか・・・・」

 

 

ノイズの混じった映像は赤く染まっている・・・

それはまるで、幼い頃に見たあのヴィジョンに似ていた・・・

 

 

「オイッ、しっかりしろ!!」

 

「・・・・アイちゃん・・・かわいいからなぁ・・・・・」

 

「もういいっ!もう喋るな!!」

 

 

男がもう助からない事は誰の目にも明らかだった。

 

 

「ウッ・・ぐはぁっ!

・・・・・へ、へへ・・・オレ、ロリ・・コン・・・だった・・か・な・・・・・・・

 

「オイッ、どうした!?

貴様はオレの部下だ!勝手に死ぬことは許さん!!

オイッ!!聞いてるのか!!」

 

 

それっきり返事が返って来なくなる。

 

 

「・・・ウ・ウゥ・・・うおぉぉぉっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・

くそっ!ジョー、ケン、ナナコ・・・みんな死んじまった!!」

 

 

片腕を失い、ところどころ配線が剥き出しになりながらも何とか周りにいた無人兵器を撃退する。

何故か敵は徐々に後退して行ったようだったが、今の彼にそのような事を考える余裕は無かった。

 

 

「結局オレには何も守る事は出来ないのか!?

あの時のように黙って全てを失うしかないというのか!!」

 

 

膝を折りそうになり、ふと一緒に暮らしていた女の子の顔が脳裏に浮かぶ・・・

 

 

「いや、まだだ・・・

あのコロニーにはまだアイがいる!

あいつを・・・せめてあいつだけは守ってみせる!!」

 

 

 

 

しかし、運命を弄ぶ神はどうしようも無いほどに悲劇を好むようだった・・・

 

空から降って来たのは絶望のカタマリ・・・

 

大切なもの、守りたいもの・・・

全てが一瞬にしてこの世界から失われていく・・・・

 

 

「ちくしょぉ――っ!!何故だぁっ!?

何故いつもオレは失わなければならない!?

何故オレばかりが奪われなければならない!?」

 

 

狂った獣のように叫び続ける・・・

そして彼の心は幼き日のあの惨劇の瞬間へとフラッシュバックする。

 

 

「・・・・・は、ははっ・・・あははは・・・・」

 

 

やがて絶叫は乾いた笑い声に換わる・・・

 

 

「・・・・・くっくっく・・・・要らぬ・・・このような世界など要らぬ!!

今度は貴様らが何もかもを失う番だ!!

オレが全て奪い尽くしてやる!!」

 

 

 

 

 

この日、少年は再び全てを失った・・・

引き換えに得たものは・・・決して消える事の無い深い傷と・・・狂気と言う名の牙・・・・

 

男は牙を研ぎ澄ます・・・

やがて、全てを噛み砕くために・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時代は、ある人には穏やかに・・・

 

そしてある人には激しく流れていく・・・

 

それでも人は、その流れに逆らうことは出来ない・・・

 

 

今はただ・・

 

 

時の流れに・・・

 

 

身を任せて・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時の流れにif

 

果て無き闇の果てに・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


【あとがき】

どもです。

さて、無謀にも新連載を始めてしまいました。

連載がすでに1つあるにもかかわらずです(汗)

しかも180度方向の違う超シリアス&ダークものです。

ちなみにバックは血の色をイメージしています(汗)

はたしてラストで何人無事生き残れるか・・・

いっそのことエリナは登場させないかとさえ考えています(オイオイ!)

・・・・・だってどう考えてもハッピーになれそうに無いですもん(笑)

 

何故こんなのを書くことになったのか?

おそらく他の作品の反動・・・だと思いたいです(汗)

 

なにぶんシリアスはほとんど書いたことが無いですので、感想や『こうしたらいい』というメール等は大歓迎です。

・・・・・・・・しかし、『なにかあったのか?』という質問には一切応答しませんのであしからず。

 

ではでは。

 

by. Chobi

 

 

 

 

代理人の感想(純白)

 

う〜〜〜〜〜む。

この前振りと言い、背景の色と言い・・・・なんて精神衛生に悪そうな話だ(核爆)。

確かにギャグばかり考えていると思いっきりシリアスで重い話を書きたくなりますからね〜。

良い例が某管理人氏(爆)。

まあ、それはさておきシリアスを書きたいならなにより大事なのは「緊張感」であると思います。

文章表現で緊張感を出す事もそうですが、話を間延びさせない事。

そしてショックなシーンの前にはほのぼのとした部分を入れて(ギャグは不可)、衝撃を倍化させること。

私にわかるのはこのくらいでしょうか。

それでは続きを期待してます・・・なんて管理人みたいな事を言ってみたり(笑)。

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

Chobiさんからの投稿です!!

ダークですね・・・

って、代理人、俺の事を君がどう思ってるか良く分かる台詞だな(苦笑)

まあ、ダーク&シリアスとなると色々と下準備が必要になります。

前振りが主にそれに当たるんですけどね。

Chobiさんが何処までそれを活かせるのか、楽しみにしていますね!!

 

 

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