「いや〜、わざわざすまないね〜

ボクもこんな時間に君を呼び出すつもりは無かったんだけどね」

 

「・・・能書きはいい、何の用だ?」

 

「だから怖いよ(

もう少し笑顔をさぁ・・・・」

 

「・・・殺されたいのか?」

 

「わかった、わかったから・・・

実は君が連れてきた”妖精”さんの事なんだけど・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

果て無きの果てに・・・

 

第二話 『交差する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女は夢を見ていた・・・

 

 

「ラピス・・・今度の戦いが終わったらオレとのリンクは切るんだ」

 

「そんなっ、どうして!?」

 

「・・・ラピスには普通の子達と同じよう生きて欲しいんだ・・・・

幸いにもエリナが面倒を見てくれると言っている・・・

オレはラピスの事を戦争の道具として使うようなどうしようもない奴だ・・・

オレなんかといたら幸せなんて絶対にありえないよ・・・・」

 

「違うよっ、私はアキトの目、アキトの耳、アキトの手、アキトの・・・

私の普通はアキトのそばにいる事!

私の幸せはアキトといつまでも一緒にいる事!

私は今でも幸せだよっ!!」

 

 

そう、少女にとってはその男こそが全てだった。

例え自分の事を道具としか見ていなくても。

 

 

「・・・ラピス・・・・・」

 

・・・・・アキトは私の事が要らなくなったの?」

 

「そんな筈があるもんか!

ラピスはオレの大切な家族だ!

・・・すまない・・・・オレはそばにいるよ・・・だから泣かないでくれ」

 

「・・・ホント?」

 

「・・・・ああ・・・」

 

 

 

 

 

場面が変わる。

何かの実験室のようだった。

自分は割れたカプセルの中にいて何者かが引きずり出されようとしていた。

 

 

「イヤァッ、アキト助けて!!」

 

 

少女はとっさに自分を守ってくれる者の名を呼ぶ。

すると、何者かの顔は少女が良く知っている者の顔になった。

 

 

「何を言っている・・・

アキトならここにいるじゃないか・・・・」

 

「イ・・イヤァァッ―――」

 

 

 

 

 

 

 

2人は少女を寝かせている部屋の前へ来ていた。

 

 

「実はねぇ、すごくうなされてるんだよ・・・

しかも君の名前を呼びながらね・・・・」

 

「ほう?それは面白い」

 

「でしょ?」

 

「さ、入って入って」

 

 

殺風景な部屋だった。

その中にぽつんと置かれたベッドの上で少女は眠っていた。

 

可愛そうに、よほどの悪夢なのだろう・・・・

体は汗だくで顔色は悪く、恐怖・悲しみ・・・そういったものがごちゃ混ぜの表情をしている。

必死で何かをつぶやいているようだった。

 

 

「・・・・ア・・・ト・・・・・・アキト・・・・・」

 

「ほらね?」

 

「・・・・・・起こせ・・・」

 

 

急に機嫌が悪くなったように声のトーンが下がる。

 

 

「はぁ?」

 

「起こせといっているんだ・・・」

 

「わかったよう・・・」

 

 

濡れた冷たいタオルを少女の顔にかぶせる。

その突然の冷たさに思わず飛び起きる少女。

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

状況が理解できずにいるのだろう、きょろきょろと辺りを見回す。

そして、その視界にアキトを捕らえる。

 

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 

喜びか・・・それとも安堵だろうか、先程までの表情が和らいでいく。

 

 

「アキト!!」

 

 

あらん限りの力で飛びつく少女。

 

 

「アキト、良かった・・・迎えに来てくれたんだね!!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・・アキト?」

 

 

黙ったままのアキトにいぶかしげな視線を送る。

 

 

「・・・・・・・じゃれつくな・・・」

 

「・・・・・え?」

 

 

突然、手を伸ばして少女の胸倉を掴み自分から引き剥がす。

そしてそのまま宙吊りにする。

 

 

「うっ・・く、苦しい・・・・・」

 

「ちょ、大事な実験体に何するんだい!?」

 

「下がっていろ!」

 

 

空いてる片方の手で跳ね飛ばす。

 

 

「・・・ア・キ・・・ト・・・・・」

 

 

少女は必死で手を解こうとするがそれは不可能だった。

 

アキトがそのまま投げ飛ばそうとした瞬間、不意に電流を受けたような衝撃が全身を走る。

 

 

「うっ!?」

 

 

アキトの動きが一瞬止まる。

 

 

「・・・・・・・・・くくくっ・・・・ふふっ・・・・」

 

 

次の瞬間・・・アキトは笑っていた。

 

 

「テンカワ君?」

 

「あーはっはっは!!

貴様、差し詰め『異邦人』といったところか?」

 

「・・・・何を言ってるんだい?」

 

「うるさいっ!」

 

 

事情を聞こうとしてまたも跳ね飛ばされる。

 

 

「そうか・・・貴様もまた奪われし者か・・・・・・ならば奪え!

生きるという事は奪うという事・・・・

金・名誉・人生・・・そして命・・・・・・全てを奪え!!

それが出来るのであれば・・・オレが飼ってやろう・・・・・”ラピス”

 

 

少女はぐったりとしながらも、最後の”ラピス”という部分に敏感に反応する。

そしてそのまま力なくうなずいた。

それを見ると、アキトは掴んでいた手を持ち直し、今度は苦しくないように腕の中に抱いた。

 

 

「山崎、気が変わった・・・・こいつはオレがもらっていく」

 

「な、何を言ってるんだ!

その子を調べればネルガルに匹敵するマシンチャイルドも作れるかもしれないんだよ!!」

 

「・・・・自力で作れ・・・」

 

 

もはや話す事は無いといった感じで部屋を後にする。

 

 

 

 

 

「・・・・・ふっ・・・・面白くなりそうだ・・・」

 

 

いつのまにか自分の腕の中で眠っていた少女を見ながらそうつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


【あとがき・・・という名の懺悔

ども、Chobiです。

 

・・・・・・すみません!

自分で書いてて彼女が可哀想になりました(

でもここは外せない部分なので書かないわけには行かなかったんです(汗汗

 

アキトは昔のトラウマのせいで子供が大嫌いです。

それがラピスを引き取ったのは何故?

おそらく自分の役に立つと思ったか、その境遇に自分と似たものを感じ取ったのか・・・・・もしくはその両方かですね。

 

ようやくここで『時の〜』とクロスしてきました。

次かその次あたりからナデシコに乗り込むと思います。

 

アキトが言う『異邦人』とは?

何故あそこで”ラピス”と口に出たのか?

アキトはいったい何者なのか?

上手く伏線がはれていると良いのですが・・・・

 

それでは、感想・アドバイス・etc・・・待ってます。

ではでは。