アキトが誰かと話していた

 

 

「オレだ・・・今すぐ例の場所に来い」

 

『おいおい冗談キツイぜ・・・今何時だと思ってるんだ?

 俺は今からかわい子ちゃんと大人のデートが・・・』

 

「貴様・・・隊長の命令に逆らうつもりか?」

 

『ちょ・・・わかった、わかったからそんなに怒るなよアキトっ!

 20分程で行くから・・・』

 

「・・・10分で来い」

 

『はぁ?無茶言うなよ・・・そんな早くいけるわけ・・』

 

ピッ

 

最後まで聞かずに通信を切る

アキトは黙って立ったままの少女に視線を移す

 

 

「・・・・行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

果て無きの果てに・・・

 

第四話『具現化する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何処をどう来たのかはわからない

少女が連れてこられたのはとてつもなく広い研究所のような所だった

しかし、それにしては人の気配がまったく無い

 

 

「ここだ・・・」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 

案内された場所には何もなかった

ただ大きな空間が広がっているだけであった

 

 

「・・・・・・・・・・・来い、”クライン”・・・・」

 

 

アキトが宙に呼びかける

 

ブウゥン・・・・

 

突然広い建物の中心部分の空間が歪み始める

次の瞬間、七色の光と共に目の前に現れたのは黒い・・・何処までも黒い、巨大な人型機動兵器

 

 

「これは・・・ボソンジャンプ!?」

 

 

光を弾き返す黒き巨人

その姿はまるで、全ての色を塗りつぶす・・・何もかもを覆い隠す・・・・・何処までも純粋な、具現化した闇であった

 

 

「お前の役目はこいつのレプリカ作りだ

 こいつをそうそう人前に出すわけにはいかなくてな・・・・

 まずは半年以内にこいつをマイナーダウンしてくれ」

 

「こんなものが・・・・どうして・・・」

 

「ふっ、バースデープレゼントと言ったところだ・・・・

 それよりも、お前の仕事はそれだけではないのだが・・・・・」

 

 

気がつくと、少女は突然現れた巨大な闇の巨人に怯えていた

 

 

「まぁ、それはまた今度話すとしよう・・・・・

 ・・・もう帰っても良いぞ・・・・・」

 

 

アキトは巨人に声をかける

外見的にはまだまだ幼いアキトだが、その様子はまさしく従者に対する主人のそれであった

 

再び空間が歪む

七色の光と共にその黒い巨人は姿を消した

 

 

「さて・・・後はあいつが来るだけだが・・・・」

 

ガンガン

 

突然ドアが叩かれる

 

 

「ちょうどいいところでお出ましか・・・」

 

ガンガン

 

どんどん音が激しくなっていく

 

ガンガンガン

 

アキトがかなり不機嫌そうな顔をしながら壁のコンソールを操作する

 

プシュー

 

「おい、アキト!!」

 

 

突然大声でアキトの名を呼びながら男が建物内に飛び込んでくる

 

 

「うるさいぞ・・・ナオ」

 

「ふざけんなっ、こんな時間に呼び出しやがって!」

 

 

黒いスーツに黒いサングラスの”ナオ”と呼ばれた男が怒鳴りつける

 

 

「・・・オレに黙らせて欲しいのか?」

 

 

鋭い目でアキトがにらむ

瞬間、男は頭に上っていた血が一気に下がっていくのを感じた

 

 

「うっ・・たく・・・・ん?そいつ・・・この前連れてきた子か?」

 

 

少女は新たにやってきた男をアキトの後に隠れながら見ている

 

 

「ひゅ〜、珍しいな・・・お前が子どもに懐かれてる所なんて初めて見たぜ」

 

「お前の任務はこの少女・・・ラピス・ラズリの護衛と補佐だ」

 

「はぁ?それはまたずいぶんと唐突だな?」

 

 

男は不満を隠そうともせずに言う・・・・が、アキトはまったく気にもとめない

 

 

「ラピス、こいつの名はヤガミ・ナオ・・・今日からお前の召使だ

必要な事は全てこいつにやらせろ」

 

「おい、勝手に決めんなっ!」

 

「・・・・・うるさい、お前は俺の命令だけ聞いていろ」

 

 

真直ぐに男を睨むその瞳からは、およそ感情というものを読み取る事は出来ない

冷たく鋭い・・・研ぎ澄まされた刃を思わせる

 

 

「・・・・はぁ〜・・・・・へいへい、わかりましたよ・・・やりゃぁ良いんでしょ?」

 

 

アキトはそれを聞くと出口に向かって歩き出す

少女・・・ラピスはその少し後をついていく

 

 

「お、おいっ、何処行く気だ?

 オレはどうすればいいんだ?」

 

「必要な事は話した・・・今日はもう帰って良いぞ」

 

 

それだけ言うとさっさと出て行ってしまう

そして男は1人取り残された

 

 

「・・・・・くぅ〜〜〜、何様だあの野郎っ!

 これからようやくお楽しみってとこだったのにィっ!!」

 

 

誰もいない中、心のままに上司の横暴ぶりを叫ぶ

 

 

「ちっ、相変わず何考えてんだかさっぱりわかんねぇぜ

 ・・・・・ま、あいつについてればまず失敗はないんだろうけどよ」

 

 

そこまで言ってふと怪訝そうな顔つきになる

 

 

「・・・・しかし・・・あいつが子どもをそばに置いとくなんて・・・・いや、それだけあの娘が重要だって事か?」

 

 

その疑問に対する答えを知る人物は既に去ったあとだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


【あとがき】

ども、Chobiです

次でようやく序章完了です

 

今回出てきた”クライン”というのがアキトの専用機の名前になります

ある程度の遠隔操作が可能と思われます

わかる人はわかると思いますが”クラインの壷”から取りました

 

ブローディアとブロス&ディアはまったく違う、物語の核の部分として登場する予定です

『時の流れに』のIFのつもりですが・・・すでにかなり別ですね(汗)

ステキな設定をフリー開放してくれているBenさん感謝です

 

 

それでは、感想・アドバイス・etc・・・お願いします

ではでは

 

 

 

代理人の感想

うわ、ヤなヤツ(苦笑)。

ナオさんも哀れな・・・・。

それにしてもラピスにこんな無理難題を押し付ける辺り

アキトの持ってる情報は随分と深いもののようですね?

まぁ、技術者でもないラピスがこんな事をできるかどうかは実は結構疑問なのですが(苦笑)。