もう一度、あの日々を。

 

第四話


[ルリ]

 

 

私たちが過去に戻ってきて三ヶ月がたちました。

この三ヶ月の間、遊んでいたわけではありません。私たちは様々な行動を行いました。

 

それは、戻ってきた次の日から始まります。

 

その日、私たちは集まって計画について話し合いました。

 

 

「ねえ、ネルガル・・・・と言うよりアカツキさんにどこまで話すの?

見返りとして技術を渡すとしても、どの程度にするの?」

私としては、あまり歴史に影響を与えないようにした方がいいと思うんだけど」

「そうだな、その方がやり易いか。そうすると、ボソンジャンプ実験の協力くらいか」

「私は、できる限りの手を打った方がいいと思います。私たちが知っているのと同じ歴史をたどるとは限りませんから。

私たちがここに存在することで、歴史は、ずれていきます。ですから、どのような状況にも対応できるようにした方がいいと思います」

「でも、前と同じ行動をすれば、歴史は同じにならないの?」

 

「いいえ、ならない可能性が高いです。

私たちが、ここに存在する時点で、すでに歴史は変わってしまっています。

これからの私たちの行動がきっかけとなってどのような変化が現れるかは予想できません。

例えば、こういう可能性もあります。

『前』の歴史で食堂から出た後、交通事故のためになくなった人がいたとします。

ところが、『今度』は、私たちが『前』には行かなかった、その食堂で食事をします。

すると、私たちが食事をしたため、その人は『前』よりも五分だけ店を出る時間が遅れ、事故に遭わずに済みました。

つまり、私たちが食事に行っただけで、死んでいたはずの人が助かるわけです。

これは極端な例ですが、人の行動は、どんなきっかけで変わるかわかりませんから、予測は難しいです。

たとえ全く同じ行動を取ったつもりでも、微妙な差が、後に大きな変化となって現れる可能性があります。

それに、現時点でも『前』と違いがあります。・・・・・・・私の先生『鋼』はこの時間に存在しません」

 

「それって、すでに歴史は変わっちゃってるってこと!?」

ユリカさんが驚いた目で私を見ます。

「ええ、少なくとも、『前』に先生が使っていた戸籍や連絡コードは存在しません。それに、『鋼』という名も知られていません。

先生という人そのものが存在しないのか、『鋼』の名が使われていないだけなのかはわかりませんけど」

「結局、未来を知っているからといって安心できないわけか。

大まかな流れと、あとは、それぞれの陣営及び個人の考え方・・・・・それくらいが、わかっているだけと考えた方がいいな」

「そうすると、私たちの知ってる『未来』は、先を読むための情報。そして、技術を渡してできるだけ多くの力を得ると。

・・・・・これは、情報収集と戦力の増強ね。それを使って、目的のための戦略をたてる・・・・こう考えるべきね」

 

ユリカさんの言い方は、士官学校出身者らしいです。・・・・主席で卒業した才媛なんですよね。

「それなら、手持ちの技術データは渡してしまうか。そうすれば、ジャンプ実験で余計な犠牲を出すこともなくなる」

「私たちのことはどうする?未来からきたってことを話しちゃう?」

「それは止めておこう。信じるかどうかもあやしいしな・・・・・・少なくともボソンジャンプについて理解するまでは無理だろう」

「そうだね。それに、少しくらい秘密があった方がいいよね」

そう言いながら、ユリカさんは悪戯っぽい笑みを浮かべました。

 

 

 

 

 

 

 

この後、私たちはネルガルと交渉を行い、そして、行動を始めました。

 

 

まず、身体の検査を行いました。

何しろ、リンクやジャンプ能力など、わからないことが多すぎましたから。

さらに、私たちの体の状態を調べる必要もありました。

この時間に来て、感覚の異常はなくなったとはいえ、私とアキトさん、そしてユリカさんの身体には大量のナノマシンが存在しているのですから。

もちろん、検査結果を人に知られるわけにはいかないので、自分たちで行いました。・・・・・その設備は無断借用しましたが。

 

その結果は驚くべきものでした。

私たちの体内には相当な量のナノマシン・・・遺跡のものがほとんど・・・が存在しました。

骨格や筋肉の中にかなり量が入り込んでおり、これらが身体能力の向上に寄与していると思われます。・・・でも、これ自体は『未来』とあまり変わりません。

 

大きな変化があったのは、脳や神経系です。

ナノマシンが存在しているというよりは、組織がナノマシンに置き換わっていると言った方がいいくらいです。

 

CCなしのジャンプやリンクは、このナノマシンのせいと見て間違いなさそうです。

ナノマシンの挙動は制御されたもので、身体を蝕んでいる様子は有りません。・・・やはり遺跡により最適化されたのでしょうか。

 

「私たち、もう人間として見てもらえませんね」

私はふと呟きました。

普通の人は、改造人間としか見ないでしょう。軍や科学者などが知れば実験体として扱うでしょう。

私のことはいいんです。人としてみてもらえない・・・・作られたものとして扱われる・・・・ことには慣れています。でも・・・・。

「他の人がどう思ったって構わないじゃない。どんな姿になったって、私たちは私たちだよ。それに、このことを知っても、ちゃんと人間としてみてくれる人はいるよ」

私の心を知って、ユリカさんが明るく、そして優しく語りかけてきます。

そうですね。ナデシコの人たちなら、私たちを人としてみてくれるでしょう。実験体として生まれた私を人として扱ってくれた人たちですから。

「世界中が認めてくれなくても、ルリちゃんとユリカが認めてくれればいい。例え、人外の存在だとしても、二人が俺をテンカワ・アキトとして見てくれればそれでいいさ」

「そうだよ、ルリちゃん。ユリカもそう思う。それから、ルリちゃんは・・・・アキトもそうだけど・・・・・・人のことばかり考えすぎ。一人で抱え込まないで。辛いことも楽しいことも全部三人で分け合わなくちゃ」

私はそっと微笑を返しました。二人の心が嬉しくて。

 

 

 

 

三ヶ月間で一番時間を取って行っていたのは訓練です。

ユリカさんの頼みというのもありましたが、それ以外に私もアキトさんも、以前とは体・・・・身長や体重、だけでなくその能力・・・が違っているので、それに慣れる必要もありました。

二人とも・・・特に私は・・・身長や体重は減少していましたが、筋力や反応速度は以前より高くなっていました。

『未来』では、骨格等が丈夫になって耐G能力が上昇した程度だったのですが・・・・・・これも『最適化』のおかげでしょうか。

 

「私は間合いが短くなっているので、気をつけないといけませんね」

「でも、身のこなしは速くなっているから、それを生かせばいいさ。どっちもどっちだ」

「それにしてもユリカさん、上達しましたね。たった三ヶ月で」

「二人の記憶を使わせてもらってるから。でも、技の組み立てとかがね・・・・こればっかりは慣れるしかないし」

 

 

 

 

 

そして、もう一つはクリムゾンの非合法な研究所の襲撃です。

これはアキトさんと私の二人で行いました。

アキトさんは、私がこの類の仕事をすることにいい感情を持っていません。

でも私は、アキトさんだけに、させるつもりはありません・・・・・・アキトさんが手を汚すなら私も汚します。

特に今回は、マシンチャイルドである私の『仲間』を助けるためでもあるのですから。

 

研究所を壊滅させ、実験体にされていた人を救出しました。

しかし、ネルガルの研究所より、もっと非人道的な実験が行われており、生きていたのは数人しかいませんでした。

試行錯誤して、手当たり次第の実験を行っているようで、被験者の死亡率は非常に高く、まるで火星の後継者の研究所のようでした。

実験をする方は、される側のことなど考えません・・・・・・・・その痛みも苦しみも。

このような相手には、私もアキトさんも容赦するつもりはありません。

必死で命乞いをする研究者たち・・・・・人の命など考えず、実験を行うくせに。

 

「助けてくれ!嫌だ、死にたくない!!」

「私たちはただ命令されただけなんだ!!」

黒いバイザー、黒い戦闘服に身を包み刃を向ける私を恐怖の視線で見ています。

今まで、被験者たちの苦痛と恐怖を無視してきた者たち。それが今、逆の立場にたたされて懇願している。

 

「『死にたくない』そう言った人たちに、あなたたちは何をしました。一度でもその願いを叶えた事がありますか?

実験体にされた者たちの無念を思い知るといいです。苦しみながら死になさい」

静かな声で私は告げる。微笑を浮かべながら・・・・・侮蔑を込めた凄惨な嘲笑を。

私は刃を閃かす・・・・・急所を外して。

「ぎゃーー!!!」

「い、痛い!!やめてくれー!!!」

「私たちがここを立ち去るまで苦しみなさい。たいしたことはないでしょ?被験者達が受けたものに比べれば」

私は苦痛にうめく研究者達を捨て置いて、次の目的に移りました。

 

人体実験をするような相手には、私は殺戮衝動を押さえられない。・・・・ヤマサキの時ほどではないにしろ。

私の中の狂気。・・・・・・それは決して消えることはないでしょう。

 

「ルリ・・・・・」

こんな時、アキトさんは名前を呼んで、そっと抱きしめてくれます。

<ルリちゃん。私はどんなルリちゃんでも大好きだから>

リンクを使って見ていたユリカさん。

私の所業をすべて見ていて、それでも私を受け入れてくれる、好きだといってくれる。

私を、私の狂気ごと受け入れてくれる私の大切な人たち。

ここが私の居場所。

 

 

 

私たちの手により、いくつもの研究所が、地上から消え去りました・・・・・その人員も含めて、すべて。

 

救出した人はネルガルで保護してもらいました。

アキトさんが無断で起こした行動・・・・・アキトさんが一人で実行したと、ネルガルは考えたようです・・・・の結果を押し付けられる形になって、エリナさんはあまりいい顔をしませんでしたけど。

「技術的にも見るものはないし、実験体にしたりしないから、安心していいよ」

アカツキさんは、とても『らしい』言い方で引き受けてくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな様子で、三ヶ月を過ごしてきましたが、いよいよナデシコは出港となります。

私はオペレーターシートに座って出航の準備をしています。

 

ナデシコは前回と少し違いがあります。

私たちの持ち込んだデータによって、ナデシコの相転移エンジンがチューンされ、それに伴ってディストーションフィールドの出力も上昇しています。

しかし、強度の問題もあるので、それほど大きく上昇したわけではありません。

もっと出力を上げるには作り直すしかないのですが、三ヶ月ではとても間に合いませんでした。ブラックサレナの方も全然です。

エステバリスは少しチューンされた程度ですが、武器としてフィールドランサーが積まれています。

そのため、エステバリスでも戦艦の相手が可能になりました。

 

ブリッジも少し変わっていて、艦長席にIFS端末が設置されている(普段は収納されていますが)他に、サブオペレーターシートが備えられています。

サブオペレーターシートは、私が大量の情報の処理に追われた際に、補佐できるようにするために作られました。

 

 

 

 

以前にも経験があるし、システムの効率も上がっているので、出港前の準備は簡単に済みました。

後は時間がくるのを待つだけです。

ユリカさんと副長のアオイさんはまだ来ていません。どうしたんでしょうか。

ミナトさんは、さっきからメグミさんとお話をしています。

未来ではミナトさんにはお世話になったのに、散々心配をかけて、悲しませただけでした。

今度は、そんなことをしないと決心しています。

これはただの代償行為だとわかっていますが・・・・・ここにいるミナトさんはあのミナトさんとは違うのですから。

 

「艦長ってどんな人かな?優しくて、かっこいい人だといいけど」

「そんな都合よくいくわけないわよ。だいたいブリッジに女ばかり集めるなんて怪しいじゃない」

「えー、セクハラとかされたらどうしよう」

平和ですね。とても戦艦のブリッジとは思えません。さすがはナデシコです。

「ルリちゃんも何かされたら言うんだよ。我慢することないんだから」

「たぶん、その心配はないと思いますよ」

 

ミナトさんやメグミさんには、と心の中で続けます。

私には・・・・・・ときどき抱きついたり、ほお擦りしたりしますから。

ユリカさんは『スキンシップだよ』と言ってます。

私は嫌ではないので、セクハラとは言いませんけど。

ただ最近、エスカレートしているのが気になるのですが・・・・・微妙なとこを触ってきたりしますし。

「艦長に会ったことあるの?」

「艦長は二十歳の女性です」

年齢はいらなかったかな。

 

 

 

 

とかなんとか、たわいのない会話をしていたら、警報が鳴りました。

「なにこれ、避難訓練?」

メグミさんのんきですね。

「敵襲です。連合軍が迎撃に出ていますが、戦況は不利です」

「ちょっとなにしてるのよ。反撃しなさいよ。これだから民間人に戦艦を任せるなんて反対だったのよ」

副提督が騒いでいます・・・煩いです。

「彼女達は各分野のエキスパートです。民間人とはいえ、その資質は軍人に勝るとも劣りません」

ゴートさんの言葉も無駄でしょう。副提督は人の話を聞いてませんから。

「だったら、とっとと反撃しなさいよ」

「無理です。マスターキーがありません」

その後も副提督は騒いでいますが、放っておくことにしました。

プロスさんとゴートさんが相手をしています。・・・・・・・・・・・ご苦労様です。

 

<ユリカさん。どうしたんですか>

リンクを使って呼びかけます。

<それが、せっかく早く家を出たのに、途中で事故で渋滞しちゃって・・・・>

はあ、運が悪いというか、なんと言うか。結局ユリカさんは遅刻するわけですね。

<私一人だったら、跳んでいくこともできたんだけど>

アオイさんが一緒では無理ですね。今回はアオイさんがいるために遅刻すると・・・・本人に責任はありませんけど。

<とにかく急いでくださいね>

<うん、もうすぐつくよ>

「艦長はすぐにきます。現在、艦内を移動中」

とりあえずブリッジのみんなに報告しておきます。

 

 

 

 

「お待たせしました。私が艦長のミスマル・ユリカで〜す。ぶい

ユリカさん、またやりました。

とびっきりの笑みを浮かべて、ブイサインまでかましてくれました・・・・しかも、ハートマーク付です。

おかげでブリッジが凍り付いています。

この非常時に、こんな脳天気な態度を取れば無理もありません。しかも自分たちの命を預ける艦長なのですから。

それにしても好きなんですね・・・・ナデシコCの艦長に就任した時もやってましたから。

 

周りが脱力しているのにも構わず、ユリカさんはマスターキーを差し込みました。

【マスターキー確認】

【相転移エンジン始動】

【ナデシコ発信準備完了】

【たいへんよくできました】

マスターキーさえあればいつでも発進できるように準備をしていたのでいつでも発進できます。

 

「とにかく反撃よ。ナデシコの主砲を上に向けて敵を打ち落とすのよ」

「そんなことしたら上に残ってる軍人さんを巻き込んじゃいますよ」

「それって非人道的ー」

副提督のあんまりな作戦(作戦とはいえないかも)にメグミさんとミナトさんが非難しています。

もう少し考えて発言して欲しいです。

 

「艦長の意見は」

フクベ提督が尋ねます。

普段はあまり存在感を感じませんが、こういうときの発言は皆を落ち着かせる貫禄があります。・・・ユリカさんとは別の意味で非常の人と言えます。

「海底ゲートを抜けていったん海中へ。その後浮上して、背後より敵を殲滅します」

「でも、ユリカ、あれだけ散らばっていては主砲の射界に収まらないよ」

アオイさんの発言は初めてのような気がします。・・・・・そんなはずないですね着任の挨拶をしたはずですから。

相変わらず、ユリカさんに押されて存在感がうすくなっていますね。

未来でも『出来る男なんですが、いわゆるいい人すぎて』なんていわれてたみたいですし。

 

「エステバリスにおとりを勤めてもらいます。メグちゃん、パイロットに連絡を」

「メグちゃんって・・・。はい、回線開きます」

パイロットのヤマダさんはまた骨折しています・・・私もアキトさんもすっかり忘れていて、止められませんでした。

 

だからパイロットはアキトさんしかいません。

ウインドウが開いて、アキトさんが写りました。アキトさん、今は普通のパイロットスーツを着ています。

「アキト!囮お願いね」

アキトさんの姿を見て、開口一番にこれです。

ユリカさん軽すぎます。ブリッジの人たちがまた脱力しています。

「ユリカ、もう少し言い方ってものがあるだろう・・・・・。はあ・・・・テンカワ・アキト、囮は了解した」

「ちょっとユリカ、あいつ誰なの?」

「アキト。十分もあればいけるから。よろしく」

ユリカさん、アオイさんの声が聞こえてませんね。

結果的にアオイさんは無視された形になっています。お気の毒様。

「でも、一人で大丈夫なんですか!?」

メグミさんが心配そうにしています。

あれだけの数の中に単騎で飛び出していくのですから、心配するのもあたりまえです・・・・普通なら。

でもアキトさんなら大丈夫です。この程度の相手なら敵ではありません。

<まあ今回は囮に徹するさ。ナデシコの初陣だし>

ユリカさんの能力を皆に示しておくと言う意味もあります。ユリカさん、優秀なんですけど、少し言動に問題が・・・・。

それでも前よりは、ましなんですけど。

 

「ルリちゃん。グラビティーブラストの発射タイミングを知らせてくれ」

「判りました。データを送ります。アキトさん、大丈夫だとは思いますけど、気をつけてくださいね。

ユリカさん、ゲート注水完了いつでも出られます」

「よーし、機動戦艦ナデシコ発進!!」

【発進します】

【安全確認】

【家内安全】

オモイカネ、ずいぶんお茶目になってますね(汗)。何ですか、家内安全というのは。

 

 

 

 

 

 

 

「見事だ」

「さすがですね、見事な囮っぷりです」

「たいしたものだ。」

「・・・・・・・・・・・・・」

フクベ提督、プロスさん、ゴートさんはアキトさんを誉めています。

この人たちはそれなりの心得がありますから、動きを見てパイロットの腕を理解できます。

でも、なぜ副提督は無言なのでしょう。さっきまであんなに騒いでいたのに。

 

「大丈夫なの!?あ、危ない!」

対してメグミさんは不安そうです。戦闘とは縁のない生活をしていたのですから無理もありません。

「んー、でもきれいな動きよね」

ミナトさんは冷静です。操舵士であるミナトさんはアキトさんの機体が、計算された機動を取っていることに気付いているのでしょうか?。

 

「ナデシコ、浮上地点に到達」

「ナデシコ浮上。アキト、下がって!」

結局、アキトさんは一機も撃破せず、囮役をこなしました。

「敵、全てがグラビティブラストの射界内に収まっています」

「目標、敵まとめてぜーんぶ。てぇー!!」

グラビティブラストの一撃で敵は全滅。ナデシコは初陣を飾りました。

 

 

戦闘終了後、ブリッジは気楽な雰囲気に戻りました。

戦闘は終わったばかりだというのに、皆さん気持ちの切り替えが早いです。

副提督は何か騒いでますが誰も相手にしていません。

他の人はアキトさんの話題でもちきりです。

「すごいですね。敵はあれだけいたのに、かすりもしませんでしたよ。」

メグミさんが感心しています。・・・・・その眩しいものを見ているような目が気になるのですが。

「ホント、たいしたものね。・・・・・艦長と知り合いみたいだけど」

戦闘時の会話を聞いてればわかりますね。

「ねえ、ルリルリも知り合いなんでしょう?」

ミナトさんがこちらを見てきます。それにしても、もうルリルリですか。

年下の子に愛称をつけるのが癖みたいなものですね、ミナトさんは。

ナデシコBのオペレーターをしていた、ええと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう、マキビ・ハリ少尉なら、さしずめハリハリでしょうか・・・・・・・可愛くないですね。

 

「そうだよユリカ!いったい誰なんだ!!」

アオイさんが、戦闘中に(結果として)無視された問いをもう一度しました。

「ほえ!?」

でも、やっぱりユリカさん聞いてなかったみたいです。・・・・・・アオイさん泣いちゃってます。

間が悪いというかなんというか・・・・まだ故意に無視されている方が救いがあるかもしれません。

 

「彼はネルガルが誇る優秀な社員です。艦長は打ち合わせのためによくネルガルにみえまして、その折テンカワさんとお会いになりました。それに、お二人は幼馴染でもあるそうです。ルリさんともネルガルで会われてます」

正確には契約社員・・・・みんなと同じ・・・・です。

嘘は言ってませんが、本当のことを言っている訳ではありません。・・・・・・プロスさんらしい言い方です。

 

「そうなんですか。でも、かっこいいですよね」

やっぱりそうなんですね、メグミさん・・・・・。

ユリカさん、これにはすぐ反応しました。

「ダメ〜!アキトはユリカの王子様なんだから!」

得意の台詞を放ちます。

アオイさんはそれを聞いて固まっちゃいました・・・・・さっきから見てると面白いです。

・・・・・・・・・・なんか私、意地悪になってますね。反省しましょう。

 

「こういうのって自由だと思います!」

「ダメったらダメ!!アキトは私の王子様なの!!」

「そんなの艦長が決めることじゃありません」

舌戦が続きます。・・・・・・・・・・・・・メグミさんはもう決まりですね。

何でこんなに、アキトさんに惹かれる女性が多いのでしょうか?・・・昔から。

私も人のことは言えませんけど・・・・・・・私はもっと重症ですから。

 

「でも、艦長、それってアキト君が決めることでしょ」

ミナトさんの言葉は正論です。でも、『今回の』ユリカさんは、わかってて言ってます。

 

でも次の台詞には驚きました。

「わたしも、アキト君、ちょっといいなあって思うもの」

ユリカさんも私も、思わずミナトさんを見てしましました。メグミさんは予想してましたけど・・・・・ミナトさんまで。

「ミナトさん、それホントですか?」

「うーん、今は弟みたいな感じかな?でも先のことはわからないわよ

 

「ミナトさんもダメです!。アキトは・・・」

ユリカさん、そこで一旦言葉を切りました。そして、私をチラリと見ました・・・・なにか嫌な予感がします。

「ごめんね、ルリちゃん。アキトはユリカとルリちゃんの王子様だよね」

ユリカさん!私を巻き込まないで下さい!!

「ルリルリ、それって・・・・・」

「ひょっとしてルリちゃんも!?」

ユリカさん、私を見て楽しそうに笑っています。・・・・・何か性格悪くなってませんか?

「えっと、アキトさんは・・・・」

「ルリルリ赤くなってる」

「可愛い!」

ミナトさんたちが囃し立ててきます・・・・・・・・・・勘弁して。

 

「でも、ルリちゃんじゃ年が離れすぎてません?まだ小さいし」

メグミさん、余計なお世話です。

「恋愛に年齢は関係ないわよ。ルリルリなら応援しちゃおかな」

ええ、ミナトさん、お願いします。

「王子様ってどういうことさ!」

これはアオイさん。

「あんたたち!話を聞きなさいよ!!」

これは言わなくてもわかりますね。

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・

などなど。戦闘直後のブリッジとはとても思えません。

これでは会社のオフィス・・・・と言うより、話に聞いた学校の休み時間ですね。

はあ、もう言わないでおこうと思っていた台詞ですが、やっぱり言わせてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バカばっか。

 


あとがき

 

こんにちは、無色です。

今回ようやくナデシコが出港しました。

 

それにしても、前半のシリアス・ルリ(ダーク・ルリ)と後半のルリのギャップが・・・・。

 

それに、ルリもユリカも性格が悪くなってる・・・・・・・・。

割烹着の悪魔に侵食されているのだろうか?

・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・

まあ、これからもシリアスとコメディが急に入れ替わったりすると思います。でも、見捨てないで下さい。

 

それではまた。

 

追伸

 

代理人さんが言われた、三人の方針決定の理由ですが、この話でするつもりでした。

ナデシコ出港までの三ヶ月間の行動をこの話の頭で述べるつもりでしたので。

もっとも、三人の会話と言う形にしたのは、代理人さんの感想を見てからです。

それまでは、ルリの説明という形でした。

これだと説明文が長すぎるかなと思ったので変えてみました。(といってもあまり変わってないかもしれませんが)。

 

 

 

代理人の感想

ま、人間シリアスだけで生きてるわけじゃありませんし(笑)。

人生には息抜きは必要ですよ。

(あんたは息抜きの合間に人生やってるんでしょう、というツッコミはお約束(笑))

 

しかしルリはともかくとしてユリカまで「割烹着の悪魔」の影響を受けているとは・・・・

どっちかというと「あーぱー吸血姫」の方かと思ったんですが(核爆)。

 

 

それにしても。

・・・・・・・・・・・・副長とかサブと言うのはつくづく報われないんだなぁ(貰い泣き)。