ナデシコ外伝 第6話

〜力 集う日後編〜

 

 

地球の平和

世界の平和

真実は嘘?

現実は嘘?

全ての収支を合わせる為に世界は動きます。

真実は人の数だけあるのだから

 

 

 

―ネルガル会議室―

 

薄暗い会議室にモニターの光が灯る。

「木星より来たりしたりし者、予想されたこととはいえ被害は甚大だな。」

「百年前のツケさ。

災いは突然訪れるものだよ。」

「幸いとも言える。

我々の先行投資が無駄にならなかった。」

「役に立たなければ無駄とおなじだ。」

「トカゲの処理、情報操作、物事は的確にね。」

薄暗い部屋の密談は続く、世界の薄闇に響くように・・・。

 

―アマツシマ研究所 ダイスケ自室―

 

窓から外を見あげる。

アマツシマは元々、ネルガル職員の保養所の一つを改造したモノであるから職員の寮室は、寂れたホテル風味で文句は無い。

格納庫や実験棟は新造の組み立て式倉庫作りであるから、港の倉庫街のような景色を作り出している。

「いい空だ。

今日もいい天気になりそうだ。」

部屋の中からは、焼き魚の良い匂いが漂っている。

「ところで、なんで?

人の部屋でメシをくってんだ?」

ヤマダとナカムラは箸を止め茶碗を見つめる。

そして、ヤマダが意外そうな顔でこたえる。

「そりゃあ実家の方から米が送られてきたからに決まってるじゃねえか?」

「そうゆう事じゃなくて、な・ん・で・俺の部屋でメシを食っているんだときいているんだ!」

「いいじゃねえか、パイロット同士飯ぐらい一緒に食っても。」

口に一杯メシを含んだナカムラと頷きあっている。

「そもそもどうやって、俺の部屋にいるんだ!」

「合鍵があるからにきまってるじゃねえか?」

ヤマダの言葉を少し検証する。

「俺の部屋、1人部屋だぞ?」

「熱血と友情に不可能は無い。」

「やまだああぁぁぁぁ」

「俺はダイコウジ・ガイだぁぁぁ」

そのとき俺は第一ラウンドのゴングを聞いた。

 

―アマツシマ研究所 医務室―

 

「知らない天井だ。」

いや、知ってるけどなんとなく・・・。

「ヤマダのやつは?」

たしか、クロスカウンターで沈んだはずだが?

ちょっとした疑問に医務室長のニイミヤ・カオルさんがこたえてくれた。

「ヤマダ君ならすぐ元気になって出ていったわよ。

所長に呼ばれたみたい?」

あいつ・・・不死身だな。

「人外?・・・・・」

「そうね、興味ぶかいわ。」

暫しのあいだ医務室に沈黙につつまれる。

 

「というわけで新人をむかえに行ってくれ。」

俺の名はダイコウジ・ガイ地球をを救うヒーローだ。

「わかったぜ博士!

その新人と共にキョアック星人と戦うんだな。」

「いや・・・そうじゃなくて・・・・・。」

「わかっている。

キョアック星人も新人を狙っているんだな、危険な任務だ。

だが任せておけ、俺が皆を救ってみせる。」

そう言って走り去っていく。

『ほ〜〜〜んと』

「ばかばっか。」

ルリちゃんとパールちゃんのコンビネーションアタックが胸に突き刺さる。

怨みますよプロスさん。

 

―統合軍極東司令部―

 

整然と並ぶコントロールパネルに光が灯り、電話の音と怒鳴り声が司令部に響く。

「ジョロ、バッタ総数400、戦艦2、駆逐艦20、依然、町に向けて進行中。」

上座の方に座る将兵から指示がでる。

「アツギ、イルマもあげろ。

町に入れるのを連合の威信にかけて防げ!」

映像の中では、圧倒的に不利な戦況が映し出されている。

最新の対空レーザーは弾かれ、ミサイルは戦艦を傷つけられない。

「なぜだ?

直撃のはずだ!!」

「戦車大隊壊滅!

戦闘機損耗率30パーセントを超えました。」

 

『こちらイツキ・カザマ、第8小隊聞こえますか?』

戦闘を始めて30分がたっています。

もう、いくつもの小隊から連絡が途絶えています。

このエステバリスという機体・・・。

ディストーションフィールドと機動性の良い機体なのですが、活動範囲が狭すぎます。

これでは、数を頼りに包み込む戦法をとる木星トカゲに対抗しきれません。

ドカッ

ワイヤードフィストでバッタを殴り飛ばします。

「イツキ・カザマ突貫します。」

イミディエットナイフを抜いてアイドリンク状態のスラスターを一気に全開までもっていきます。

目指すはフリーになっている駆逐艦!

目的に気ずいたジョロやバッタから散発的にミサイルやバルカンが飛んできます。

「遅い!!」

エステバリスと駆逐艦のフィールドが干渉を起こし赤い光の波紋が生まれ、私はそれを突き破ります。

「しずめぇぇぇぇ」

駆逐艦の装甲を切り裂き、爆炎に包まれます。

 

―極東本部 司令長官室―

 

「戦況は、思わしくないか・・・。」

政務机のモニターを見ながら、ミスマル提督は決断を迫られている。

「提督いかがしますか?」

ムネタケ・サダアキは落ちついた声で指示を仰ぐ。

「機動兵器の数が少なすぎる。

現状の火力では、話にならん。

戦闘区域近隣の町に避難勧告をだせ。」

「はい!本日12:30、近隣の町に対し避難勧告を通達します。」

サダアキは、そう報告すると足早に部屋から退出していった。

 

―アマツシマ研究所―

 

『ジョロ、バッタの目標は、進路から考えて当研究所と見て間違いありません。』

「いままでの統計学的分析からみても間違いないです。」

パールちゃん、ルリちゃんからの報告にキタガワ所長は眉をしかめる。

「やつらめ!

ここに気がついたな。

ウリバタケ班長、いま使えるエステバリスは何機ありますか?」

コミュニケのウインドウが開き、眼鏡をかけたオジサンが写る。

「そうだな・・・ベンケイフレームが2、クロウフレームが3といった所か。」

「やはり、パイロットが足りない。

 ベンケイとクロウを一機ずつアザレアに乗せて、ガイと新人のシズカさんを迎えに行こう!

ミヤビ、行ってくれ。」

「はい、はい運転手は運転がお仕事ってね!」

ミヤビはおどけながら答える。

「で!

どうやって2人を見つけるの?」

「コミュニケの電波をたどっていけばいい。通信は混乱していても電波の波長は変わらないからね。」

「オウッ〜ケ〜じゃあ準備が出来次第行ってくるよ。」

 

―街角 にて―

 

「場所はここでいいはずですよね?」

非難勧告がでて人気の無くなった街でホウジョウ・シズカはどうするか迷っていた。

『この回線は現在、連合軍が優先的に使用しています。シェルターへ非難してください。』

「電話もだめ、・・・しかたないですね、一番近いシェルターはと」

シズカが周りを見渡すと道路に人影が・・・・。

「すみませ・・・・・」

「ついに現れたなキョアック星人たちめ!

しか〜しっ、このダイコウジ・ガイが居る限りおまえ達の好きにはさせない。」

「・・・・やめておきましょう。」

反対側に振り返れば連合軍の戦闘ヘリがビルの陰から後退してくる。

バルカンやミサイルでジョロやバッタたちと戦っているが、どう見ても旗色は悪い。

前門に敵

後門にバカ

まさに進退窮まる状況!

バッタにやられたヘリが火を噴きながらシズカの傍のビルにつっこんで爆発する。

「きゃあぁぁぁ。」

シズカに迫る火炎をエステバリス輸送機アザレアの白い機体が遮る。

『おまたせ〜研究所からきました〜。

遅くなっちゃって、ごめんね〜。』

アザレアのスピーカーから能天気なミヤビの声が聞こえてくる。

アザレアの起こした風圧で吹っ飛んだガイはとりあえず無視!

「はっ・・・はじめまして、ホウジョウ・シズカともうします。」

『ボクはメルヴィル・ミヤビ、よろしく〜〜。

まっ、いいから早く乗りなよ。』

ガイは、看板や瓦礫のしたからうめく。

「まっ・・・まて、上手いぐあいに脇腹に・・・・」

 

―アマツシマ研究所―

 

『戦艦二隻が研究所上空に待機しています。

駆逐艦8隻、ジョロ、バッタ総数150機、散発的に攻撃してきています。』

「地下ハンガー、5番と3番カタパルトリフトを使用して、ベンケイエステバリスとクロウエステバリスを地上にあげる。」

地下ハンガーでは、牽引車に引かれてエステバリスが発進台に固定される。

「いいか地上に出た所が一番危険だ止まるんじゃねえぞ!」

ウリバタケが地上に出たときの注意点をインカムを使い伝える。

「ラジャー」

『了解!』

ダイスケとナカムラはそう答えると、カタパルトで地上へ打ち出された。

クロウは空に飛びあがるとラピットライフルを構えて、そのまま上昇し、ジョロの相手をし始める。

「月での借りは、きっちり返させてもらう。」

ベンケイは、地上をローラーダッシュで駆けながらイミディエットナイフとソードを抜きすれ違いざまにバッタを切る。

「火星での落とし前をきっちりつけさせてやる。」

爆音と共に戦いの狼煙があがる。

 

『ダイスケ機、イミディエットブレード喪失、スピアに武装を変更します。

ナカムラ機、フィールド負荷60パーセントを突破!

敵機、機動兵器98、駆逐艦2、戦艦2』

「やはり、ソードなどの長い武器は、応力のかかり方が激しいから長くはもたないか・・・。

ナイフを複数装備するほうが物もちはよい。

強度でいえばトマホークは有効的だったが少々かさばりすぎるか・・・。」

戦況をみながら、試作武器の性能を分析する。

『どうするんだよ!

このままだとジリ貧だぞ!』

ウリバタケから通信が入る。

「ウリバタケさん、あれは使えないんですか?」

「研究所に張ってあるディストーションフィールドを弱めなけりゃ出力を確保できない。

それに今だしたんじゃ狙われて使い物にならねえ。」

「くそ!」

クロウエステバリスはワイヤードフィストで掴みとったバッタをジョロにぶつける。

爆炎にまぎれて、駆逐艦に突撃する。

「みっつぅぅぅ!!」

イミディエットナイフが根元から折れ駆逐艦は火炎につつまれる。

 

ベンケイエステバリスはナパーム弾で辺りのバッタをなぎ払う。

両足の爪で機体を固定すると180ミリキャノンを構える。

ドン・・ドン・・ドン・・

立て続けに3発の弾丸を駆逐艦に打ち込み打ち落とす。

「あと、二隻!!」

 

「おまたせ〜」

ミヤビさんの明かるい声と、

「ホウジョウ・シズカ参ります。」

凛とした女性の声が戦場に響きます。

自由落下などより遥かに速い速度で雲を切り裂きながら戦艦に向けて突撃するエステバリスが一機、戦艦もジョロ達も予想していなかった方向からの攻撃に対応が遅れています。

シズカ機の持つエステバリスサイズの斬馬刀が戦艦を貫き爆発します。

「これで、あと一隻!」

 

巻き込まれるのを恐れて、戦艦残り一隻と機動兵器達が移動します。

 

―アマツシマ研究所 オペレートルーム―

 

『敵、機動兵器、戦艦、射界にはいりました。』

研究所の屋根が開きます。

屋根からは剥き出しのアンテナの様なモノが二本伸び、その真ん中には大昔のアニメにでも出てきそうなレーザー砲っぽい砲身が挟まれているものがせり出してきます。

「よし!

いまだ、フィールド解除!

試作グラビティーブラスト  発射!」

研究所から放たれた黒い帯が、敵の全てを飲み込んでいきます。

「やったー」

「成功だ!!」

グラビティブラストが実戦で初めて使われた日、研究員たちの歓声がオペレータールームに広がります。

後に残るのは天気予報どうりの青い空です。

『ミッションコンプリート通常モードに移行します。

おつかれさまでした。』

「ところで、ミヤビ?

ヤマダくんは?

気まずい沈黙は走る。

「あ・・・・ぁっ、何だコー。忘れてきた。」

「こらぁぁぁぁぁ」

 

今日もいい天気です。

 

 

次回

ナデシコ外伝 第7話

〜海の厄日〜

 

研究所に正式採用版エステバリスのサンプルと補給物資がやってきます。

何かありそうな予感がします。

あくまでも予想ですが・・・。

「ここがエステバリスの墓場さ。」

「早く届かねえかな〜おれのゲキガンガー!」

「これが、オリジナル・・・・」