ポートレート

氏   名

年 齢

性 別

保護者OR後見人

音無マリア

16歳

東 舞歌・海神 伝七郎

前 世 名

身長

体重

スリーサイズ

第七使徒イスラフェル

165cm〜95p

49s〜17kg

86/56/87〜測定意味無し

職   業

血液型

生年月日

戦闘スタイル

アイドル

A型

7月4日

具現系特化型

特殊能力

威力評価

最大射程

備  考

第三階梯の生命体(身体強化・ATフィールド展開能力他)

ATC苦手/ATF広域展開苦手
ソリタリー・ウェーブ・サウンド(超音波による原子崩壊攻撃)

予めATFで触れる事で固有振動数を調べ、それに同調させた超音波を放ち特定対象のみを破壊する。
ジャイアン・リサイタル(別の意味での超音波攻撃)

剛○武君(CVたて○べ和也)の声で例のアレを歌う。
イミテーション・ヴォイス(声紋レベルでの声帯模写)

音声媒体を問わず、一度でも聞いた音は何でも完璧に模倣出来る。
セパレート・ノート(実体を伴った分身を(最大7人)作り出す技)

分身の数が増えるごとに頭身と体力が減少。

「次は、マリアちゃん。
 今、最も木連で有名な少女であり、この計画の本命の双璧。絶対に取りこぼせないターゲットね」

「ええ。万が一にも失敗の許されない。最悪でも絶対に地球には渡せない娘だわ。
 何しろ(認めたくはないけど)どう贔屓目見ても、首相である私より知名度が上なんだもん』

勢い込んでそう断言するキョウコと舞歌。

ちなみに、舞歌の言った知名度だが、これに関しては謙遜も良い所。
少なくとも軍事関係者ならば、この太陽系において彼女の勇名を知らぬ者など居る筈が無い。
万一居たとしたら、それはとんでもないモグリである。
もっとも、好感度という意味ではその限りでは………
まあ、現役時代は熱狂的に支持されていた司令官が、政治家になった途端に嫌われ者になるというケースは、人類史史上幾らもあった、さして珍しくも無いありふれた話。
これを舞歌個人の責任と呼ぶのは些か酷だろう。

「今やゲキガンガーと並ぶウチの旗印の一つとも言うべき、あの歌姫に亡命でもされた日にはもう大問題。
 某ガ○ダムS○EDおける某歌姫の事例以上に、ウチが受ける打撃は計り知れないものに。
 ついでに、私の政治家生命もソコで終わりになるでしょうね』

「そうなの? 貴女やシュン提督から聞いた限りでは、もっと強固な政権だと思っていたのだけれど」

「ソレとコレとは話が別。これは政治力学以前の問題なの。
 そう。何だかんだ言っても、政治家というのは、人気を取ってナンボの商売ですもの。
 一旦、国民の支持を失ったら、過去のどんな実績も無意味。
 ましてや、今後も更なる活躍を期待出来る。
 芸能関係の屋台骨を支える稼ぎ頭とも言うべき娘を逃がしたりしたら、もう言い訳のしようが無い。
 とゆ〜か、誰よりもまず西沢さんが黙ってはいないでしょうね」

「なるほどねえ」

生前は典型的な学者肌だった事もあり、良く知らない。
所謂、舞台裏の本音話に興味深げに耳を傾けるキョウコ。
舞歌にしてみれば、千沙とはまた違うタイプの得難い聞き役である。
また、対等の友人であるが故に、偶にチョッと部下の前で言えない類の愚痴を零す事も。

「まあ、こんな俗な話が、仮にも首相の進退問題に絡んでくるのも、
 先の大戦で草壁殿がヤッちゃた不祥事の所為で、政治家の権威が大失墜した今だからであって、一昔前だったらあり得ない事なんだけどね。
 実際、昨今の若者の政治離れって言うか、内閣への支持の低さは深刻なのよ。
 そりゃ勿論、かつての様な独裁色で『さあ皆、レッツ・ゲキガイン!』って感じにする訳にいかないし、
 生まれながらにソッチ系のプロであるマリアちゃんに及ばないのはまあ仕方ないと思うんだけど、
 それでも、今の人気の低迷は頂けないわ。何せ、最近はもう京子にさえ後れを取る始末だし」

冗談めかした軽い口調ではあるが、目が笑っていない。
かつての部下にまで人気で負けてしまっている現状は、流石に面白くないらしい。

尚、蛇足ではあるが、木連芸能界のトップを走るマリアとて万人より人気を博している訳ではない。
彼女を支持しているのは十代二十代の若い男子が中心であり、女性からの受けは全般的に余り芳しくない。
また、40代以上の中年層となると、その大半が近年の芸能ブームを苦々しく思っており、数少ない理解者も演歌系に。主に天津京子のファンだったりする。

「いっそ私も歌手に。いわゆる『歌って踊れる首相』っての目指そうかしら?」

「(フルフル)駄目よ、舞歌さん。
 アイドルっていうのはね、見た目こそ華やかだけど自由の無い。
 24時間仕事漬けになる、貴女には最も向かない職業なの」

「あっ、やっぱり?」

「当然でしょう。何より、それをやったら最後、今度こそ本当に千沙さんに愛想を尽かされるわよ」

「ふみゅ〜」

いつもの戯れながらも、ルックスと話術には。
所謂、アイドルとしての資質には自信があっただけに、正面から論破されチョッピリ凹む舞歌。

その後、マリアの御相手候補について。
或いは、アイドルとしての商品価値を落とさぬ様、○○才位まで独身のまま活躍して貰うというケースも想定した。
チョっぴりブラックな部分も含んだそれを話し合った後、次の娘の検証に移る。

「………って、駄目じゃない舞歌さん。この娘に手を出すのは反則よ」

「あっ。やっぱし」

「当然でしょう。彼女をペテンに掛けるなんて、幼子からアメ玉を取り上げる様なもの。人として失格よ」

前言撤回。諸般の事情により、胎動アカリをスルーし次の次に移る。

ポートレート

氏   名

年 齢

性 別

保護者OR後見人

雨宮カスミ

17歳

無し

前 世 名

身長

体重

スリーサイズ

第九使徒マトリエル

177cm

65kg

89/68/86

職   業

血液型

生年月日

戦闘スタイル

闇の仕置人(と本人だけは思っている)

A型

7月22日

変化系万能型

特殊能力

威力評価

最大射程

備  考

第三階梯の生命体(身体強化・ATフィールド展開能力他)

ATC可能/ATF広域展開可能
偽・真刀荒鷹流小太刀術

ガイとの対戦中にコピーした技。技のキレは彼よりワンランク下。
偽・白戸○平流忍者殺法

B〜E

ガイと戦う為に後天的に身に付けた技。使徒としての能力もコレに当て嵌める事で安定化を計っている。
春花の術(溶解液を霧状に散布して風下の敵を一網打尽にする技)

その気になればC位までは威力を上げられるが無差別広域攻撃なので最低レベルに自粛。
火遁の術(可燃性の溶解液を口から霧状に吐いて火炎放射と成す技)

D〜B

右の手袋に仕込んだ火打ち石により着火。溶解液の濃度により威力レベルの調節が可能
水遁の術(右手よりのジェット水流)

C(E)

ウミの能力の劣化版。彼女同様、地上では目晦まし程度の効果しかない。
地遁の術(地表に溶解液を染み込ませ、即席の落とし穴を作る技)

地肌が剥き出しの所でしか使えない。
光遁の術(ATフィールドによる重力制御によって飛行する技)

全ATフィールドを雲に注ぎ込んでいるので、飛行中は無防備。
蜘蛛の術(粘着性の液体を手足から出して道無き道を走破する技)

空気に触れると十数秒で気化するので壁等が汚れたり凝固して動けなくなったりはしない。
瞬動の術(ATフィールドによる重力制御によって高速移動する技)

光遁の術の応用による瞬間的な超加速。

「次は、最も武闘派であるが故に他の娘達とはチョッピリ毛色の職業に。所謂、裏家業に従事しているカスミちゃん。
 と言っても、その能力の方は兎も角、性格的に向いていないと言うか、仕事の内容に拘るものだから、その手の業界からの需要は、ほとんどゼロ。
 全く無名の新人と言うか、そういう世界の人間だと認知しているのは、彼女の身内の娘達だけだったりするのだけれどね」

「ええ。ドウ間違っても北辰殿の様にはなれない娘よね。
 まあ、だからこそ、コチラの付け入る隙があるんだけど」

と、カスミが聞いたら声も無く泣き崩れそうな事を語りあうキョウコと舞歌。
実際、当人的には、縁故筋からとは言え、最近は仕事が入ってくる様に。
今の商売が軌道に乗ってきたと思っている所だけに、そのダメージは計り知れないものとなるだろう。
正に、知らぬが花の裏事情である。

「それで、どうするの?
 本命である大豪寺君はもう売約済みなんでしょう、貴女的には?」

と、何気なく。それでいて、虚偽を許さぬ芯の通った声音で今後の展望を尋ねるキョウコ。
その内容によっては、この話は此処で終らせる事も視野に入れた質問である。
そう。自身がそれで散々苦労させられた事もあって、彼女としては、不倫を唆す様な企てならば断固阻止するつもりだった。
だが、舞歌から帰ってきた答えは、そんな思惑を根底から引っ繰り返すものだった。

「大丈夫。温い多角関係に持ち込んで、あと五年は結論を引き延ばす予定だから」

「はい?」

「だって、ガイ君を中心に、万葉とヒカルちゃんとカスミちゃんで、少年漫画系の恋愛物語に。
 所謂、『くっ付きそうでくっ付かない』ていう状態でしょう、現状って。
 おまけに、真面目に最終回を。所謂、結婚を焦っているは万葉だけですもの。
 引き伸ばそうと思えば、幾らでも長期連載に持ち込めると思わない?」

「う〜ん」

暫し考え込む、キョウコ。
無論、舞歌の言の意味が判らない訳では無い。
良く言えばフェアーに。万葉ちゃん個人に肩入れする気はない。
悪く言えば、それぞれにメリットがあるので、敢えて誘導する必要が無い。
ぶっちゃけ、彼女にしてみれば、大豪字君とくっ付くのが、三人の内の誰でも構わないのだろう。
正直、あまり深入りしない内に身を引いた方が傷口が少なくて済むという気もするが、所詮これは第三者視点からのおためごかしな忠告だろう。

何より、彼等は皆、二十歳そこそこの年齢。
この辺で派手に失恋をしておくのもまた良い人生経験なのかも知れない。

とは言え、この策には重大な。
某人物の存在が無ければ、思いつきもしなかった様な一つの懸念があった。

「本当に それで良いの?
 ひょっとしたら、アキト君みたいに、モラトリアム期間が長引けば長引くほど不味い状況に。
 具体的に言えば、更に候補者が増える事になるかも知れないわよ」

「そ…その時はその時よ。どの道、決定権はガイ君にあるんだもの、問題ないわ」

流石にそういったケースは想定していなかったらしく、
口では断言しつつも、チョッピリ引き気味と言うか、背中に嫌な汗の伝う舞歌だった。

ポートレート

氏   名

年 齢

性 別

保護者OR後見人

空条ミオ

14歳

影護 北斗

前 世 名

身長

体重

スリーサイズ

第十使徒サクハィエル

165p

54s

81/60/81

職   業

血液型

生年月日

戦闘スタイル

第一中学校の二年生

B型

9月4日

操作系万能型

特殊能力

威力評価

最大射程

備  考

第三階梯の生命体(身体強化・ATフィールド展開能力他)

ATC苦手/ATF広域展開苦手
超重圧拳(重力操作によるG攻撃)

D〜A

最大10Gの負荷が掛かった拳による攻撃。
重力落下拳(瞬間的に自分の周囲の重力方向を変化させる)

同時にGを増減させる事は出来ない。
飛翔脚(自分の体重を1/6にしてのスーパージャンプ)

ジャンプし過ぎな為、(今の所)上手く蹴り技に繋がらない。
以下、鋭意創作中

 

「次は、カスミちゃんとは別の意味で武闘派なミオちゃん。
 所謂、格闘家タイプの娘で、その実力も、決して低くは無いんでしょうけど………」

と、此処で、目で続きを促すキョウコ。
それを受け、舞歌が専門家の見地から解説を。

「使徒娘の特典で、身体は最初から出来上がっているんで、このままでもソコソコ強いでしょうけど、只それだけの事。
 ハッキリ言って、心技の双方が未熟の一言。
 北斗殿では無いけど、先天的な才能に溺れ、自分が強いと勘違いしている傾向が見られるわね。
 それだけに、今回の武者修行での成長に期待大って所かしら?」

「そうね。その辺の事は門外漢だから良く判らないけど。
 そんな私の目から見ても、彼女はまだまだ発展途上にある娘。
 結婚の話は、例の空条流重自在拳とか言う格闘技が形になるのを待ってからでも遅くはないんじゃない?」

「う〜ん」

キョウコの言に、今度は舞歌が考え込む事に。
友人の言った事は、確かに正論である。
実際、ミオちゃんに関しては、焦る必要は全く無い。
あの底抜けな甘さが抜けた後に、それなりに名の有る武芸者をぶつけてやれば、今のガイ君とカスミちゃんの様な関係に持ち込む事も………
否、上手く立ち回れば、いきなり結婚させる事さえ可能だろうし。

これは決して暴論ではない。
何故なら、コレまでの傾向から見て、使徒娘達は、最初に感銘を受けた人物にそのまま惚れる可能性が高いからだ。
つまり、最初から『当って砕けろ』だった北斗との試合は、その前提条件故に効果無しだったが、
本当の意味での対戦で彼女を下せば、そのまま一直線という事さえ充分あり得ると思われる。

「んじゃ、取り敢えず、この娘については長い目で見るとして。次の娘なんだけど………」

と、気持を切り替え、先日入ったばかりの最新の使徒娘の検証に移ろうとするも、

「ええ。彼女はもう確定済み。ピースランドで永久就職でしょうね」

そんな舞歌に、“しれ”とそう宣うキョウコ。

「そう…遺憾な事にそうなのよ。
 酷いと思わない、私に何の相談も無しにそんな重大事を決定するなんて。
 ああいう特異技能の持ち主こそが、特に欲しい娘だったのに〜」

地団駄を踏み悔しがる舞歌。
実際問題、遺跡のオーバーテクノロジーの流用によっでハードでは優位に立っているものの、
ソフト面では数世代分は遅れているのが木連の実態なのだ。

もしも、テレサの助力を得る事が出来ていれば、そういった弱点を大幅に改善し得る。
ソフト面での飛躍的な発展を約束する魔法の妙薬となっただろう。
だが、それは同時に、地球との軍事バランスを崩しかねない劇薬とも言える。
だからこそ、シュン提督は、最も波風が立たない所を。
マシンチャイルドのリーダたるルリの顔の効く、ピースランドを安住の地に選んだのだろう。

その理屈は判る。判るのだが………やっぱり超オシイ。

「オオサキ殿の馬鹿〜!」

窓から見える夕日に向かって、思わずそう叫ぶ舞歌だった。




「さて。次は大本命、シンジ君の考察ね」

数分後。キョウコが、夕日を映し出す窓を元の地下室の壁に戻す所を眺めながら、舞歌もまた、何事も無かったかの様に話しを進める。

「う〜ん。確かに、貴女にしてみれば絶対欲しい人材でしょうけど、無理強いは感心しないわね。
 特に、結婚話は当分NGよ。だって、彼女のメンタリティは、まだまだ男の子ですもの」

これまでよりも険しい。
まるで獲物を狙う鷹の様な目をし始めた舞歌の矛先を和らげるべく、そんな正論を口にするキョウコ。
だが、その程度の懐柔策では焼け石に水とばかりに、

「それも判るけど、やっぱり伏線は早い内に張っておくべきだと思うの。
 それにほら、シンジ君てば『北斗の拳』が上映されて以来、コッチ(木連)じゃチョッとしたスターだだもの。
 悪い虫が付く前に名目上の婚約者だけでも………ね?

「それは、彼女が此方に来る決心をしてから考えるべき事でしょう?」

「その点に関しても抜かりは無いわ。
 この前、枝織ちゃんから緊急の連絡があってね。
 まあ、それ自体はチョッと荒唐無稽って言うか、苦笑するしかない様な内容だったんだけど………
 記憶と魂とを共有する彼女がみた夢ともなれば、それが北斗の深層心理にある不安の発露と受け取る事も出来る。
 つまり、此方が手を下すまでも無く、北斗の方で勝手に連れて来てくれる事さえ期待出来るじゃないかと………」

「(フゥ)敢えて可能性がゼロとは言わないわ。でも、甘い考えなのも確かよね」

溜息混じりに、そう評すキョウコ。
だが、当然の如く、舞歌の策にはまだ先があり、

「まあ確かに、コレはチョッピリ夢を見過ぎかもしれないけど。
 それでも、シンジ君達を強くする糧となる事であれば、聞く耳くらいは持ってくれる筈よね、今だったら。
 そこで、一発、これまでだったら『面倒臭い』の一言で却下されそうなネタを。
 修学旅行って名目で、この間のミルクちゃんの洗礼(外伝参照)にもメゲなかった活きの良さそうな子達を20人ばかり送ってみようと思うの。
 ついでに、その中に、チョッと刺客を………じゃなくて、彼女の気を引きそうな子を混ぜておいて、さり気無く運命の出会いを演出。
 うん。まぐれ当たりくらいは期待しても良い、わりと良く出来た脚本だと思わない?」

「だから、まずソコから離れなさい。
 そんな事より、彼女に『自分が女性である』という自覚を促す方が先でしょう?」

「う〜ん。ソッチは、まあボチボチと。
 実際、その辺の事は零夜が上手くやってくれるでしょうから、そんなに心配する必要な無いと思うわよ」

かくて、普段であれば止め役を務める千沙が不在だった事もあって、
二人の妙齢の美女達の悪巧みは、その後も延々と続いた。



   〜  同時刻。2015年では午前7時、中国のとある砂丘 〜

朝食に手持ちの乾パンを幾つか齧った後、鈴音は再び砂丘を歩き始めた。

既に三日以上も道無き道を歩き詰めな。
いまだ幼い。それも、利き腕が効かない身には過酷な旅路だった。
だが、彼女は少しも怯んでは居なかった。
何故なら、その目的はシンジ小姐との再会。
そう。この辺りで、桃色のチャイナ服を着た少女が、再び盗賊狩りを始めたとの噂を聞き、居ても立ってもいられなくなり、
院長である老婆の目を盗んで、鈴音は此処までやって来たのだ。
それも、着替えの類を初めとする自身の身の回りの物の総てと、庫裏に納められていた非常食の幾つかをリュックに詰めて。

七歳児とは思えない、実に用意周到な家出である。
おまけに、僅か三日で、孤児院から遠く離れた、この地へ。
所謂、危険地帯への潜入に成功したのだ。
幼くして地獄を見せられ、それを劇的な形で救われた経験を持つ。
『諦めずに頑張れば、何時か必ずお姉ちゃんが助けてくれる』という刷り込みがなされている鈴音ならではの不屈の精神が生んだ、
ある意味、賞賛に値する偉業である。

だが、彼女の血の滲む様なこの努力は正しくは報われなかった。





「荒野を駆けるか〜ぜが、巻き上げ〜る赤い砂〜、見上げた空のか〜な〜たに、操る〜歴史が待つ〜」

数時間後、ついに現れた待ち人。
それは、後ろにダンボール箱を引き連れつつ、良く判らない歌を口ずさみながら砂丘を闊歩する。
出来れば御近づきになりたくない感じの少女だった。

暫し、呆然とその行軍を眺める鈴音。
正直、声を掛けたくない。
だが、他にシンジ小姐に繋がる手掛かりは無い。
いや、無くは無いのだろうが、そこまで院長や黄司令に我侭は言えないし、また、簡単に聞き入れて貰えるとも思えない。

「あ…あのう」

そんな悲痛な覚悟の下、鈴音は恐ず恐ずとミオに声を掛けた。

「えっと。ゴメ〜ン、私、この辺の地理って良く知らないの。
 今、相棒を呼ぶから、改めてソッチに聞いてくれる?」

と言いつつ、ミオは振り向きつつ手招きを。
そんな彼女の、先走りなカン違いに。
『こんな物騒な所で暢気に道を尋ねる者など居ない』という発想が無い事に驚きつつも、
話の接ぎ穂を求めて、

「あの。相棒って、ソコでダンボール箱を被っている人の事ですか?」

そんな鈴音の言に驚きつつ、ミオは眼鏡を外した近視の人間が良く様に目を細め睨みつけ、目当てのダンボールの位置を確認すると、

「えっ? キミ、アカリちゃんの姿が見えるの?
 スゴ〜イ。同族である私でさえ、かなり気合入れないと全然見えないのに」

かくて、本来ならばあり得ない。彼女に取っては二度目となる奇跡の出会いを果した、鈴音。
この事が何を意味するのか? それはまた別のお話である。




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