300万ヒット記念SS

 「俺は…お前を……」

 

ドドンパQ

 

 

 長い長い廊下を俺は歩いていた。

 この道はいつまで続くのか?体がだるく、重い。普段は気にしないが、マントが妙にうっとうしかった。

 おまえはどこにいるんだ?

「ユリカ……」

 どこに…、どこにいるんだ。ユリカ……。

 

 

 どれだけ歩いただろうか?長い廊下から、小さなホールに出た。

 そのとき俺の目に何かが見えた。

 誰だ……?まさかユリカ?

「キエエーーーーー」

 俺の視界に見えていたものは北辰の部下の一人だった。そいつが刀を手に突っ込んでくる。

 銃を握る。だが、体が重い。

 銃を構える、だが目の焦点がうまく合わない。いったいどうしたんだ?俺の体は。

 銃の引き金を引く。だが、北辰とその部下たちのマントは防弾使用だ、頭を狙わなければ意味がない。

 俺の体はどうにもならなかった、重く、何かに取り付かれているようだ。引き金を引いても敵には致命傷を与えない。

 そして弾切れ、敵はもう俺の目の前にいた。刀が俺を捉えようとする。

「クッ」

 銃のトリガーガードで敵の斬撃を何とか止めた。

「テンカワアキトもこの程度か!」

 敵は挑発するように俺を笑った。

 ユリカ…、俺は……。

 その時、体が自然に動いた。銃のレーザーサイトを敵の目に向ける。

「ギャーー」

 敵は目を押さえ、刀を落とし、悶えた。その刀を拾い、胸に刺した。

「はあ、はあ、はあ……」

 息が上がっている、なぜか体が興奮していた。

 北辰の部下の一人は月臣が地球で一人殺した、と、いうことは北辰を含めて後五人。

「もうすぐだよ、ユリカ……」

 俺は静かに呟いた。

 刀を強く握る。

 

 次の廊下は前回のものに比べるといささか短かった。だが、体は元に戻り、重かった。

 ユリカ……。俺はおまえを求めている。

 ユリカ……。おまえを必ず助けてやる。

 ユリカ……。そしてまた…いっしょに……。

 俺の考えはここでとまった。次の部屋についたのだ。

「待っていたぞ」

 そこにいたのは北辰の部下4人、一人では俺と相対することができないと踏んだのだろう。

「4対1とは、卑怯だな」

 俺は刀を強く握ると言い放った。

「我々は人の道を踏み外し外道、そんなことは関係ない」

「そうか、来い!」

 敵4人が一気に俺に攻撃をしかけてくる。俺は迷うことなく後ろに避けた。ここで敵の一人一人に違いが出てくる。次に攻撃を仕掛けてきた奴のもっとも早い奴に刀を突き刺す、胴体ではなく頭に。それを一気に引き抜くと薙ぎ払った。敵は一気に後方に退いた。

 一人を殺されて落ち着いたのか、敵達は冷静な連携攻撃を仕掛けてきた。俺はさっきの敵から奪った脇差を抜くと長刀とともに守りに入った。

 三点同時の斬撃、俺は何とかそれをかわし、刀で受け止めてきた。だが、体がもちそうにもなかった。斬撃をいくらかくらう、幸いなことにそれは致命傷ではなかった。

 その時俺にチャンスがおとずれた、敵の一人が退き、二人が俺の前方と後方から同時に攻撃をしかけようとしたのだ。俺は落ち着いて二人同時に体を突きぬいた。前方のには長刀、後方の奴には脇差を。安心していた二人を殺すのはたやすかった、いや、簡単すぎた。

 そして二人が同時に殺され動揺した一人は動揺した、そんな油断を見逃す俺ではない。長刀が突き刺さったままの敵ごと一気に押しやり、敵を突き刺した。

 二人を刺した刀を抜く、血がこびりついている、血が……血が………。

 

 後の敵はおそらく後一人、北辰。

 傷ついた俺の体は血を流し、さらに重くなっていた。はたして奴に勝てるのだろうか?

 ユリカ……、一緒に帰ろう、すべてが終わったら。いや……、だがしかし……。

 ユリカ……、ここまで来るのに色々とあった、血に汚れ、骸の上を歩いてきた。

 ユリカ……、俺はおまえのために……。いや、それだけか?俺の今までしてきたことはただの自己満足じゃなかったか。俺は何をしてきたんだ。いったい。

 ユリカ……、すべてが終わったら俺はおまえのそばいていいのか?

 ユリカ……、俺は前の戦争で人殺しを拒否しつづけた、現実を無視していた。だが、自分のために俺は………。

 ユリカ……、俺はおまえにふさわしいのか。

 ユリカ……。

「遅かりし」

 俺の前には北辰、その後方には銀色に輝き、遺跡と同化したユリカ。

「ユリカ!」 

 俺は叫んでいた、そして泣いていた。涙が頬を伝う。

「フハハハハハハ」

 北辰は笑っていた。腹が立つ、その顔が。

「うおおおお!」

 体が動いた。刀を両手に強く握った俺は北辰に向かって突っ込んでいった。

 長刀を左からなぐ、だがそれは空を切った。

「ちっ」

 北辰は……後ろ!

 激痛が走った、北辰が背中に一撃入れたのだ。

「うおおおおおおーーー」

 刀が追いつかなかった……。俺は我を忘れていた。

 気づいたときにはもう刀が弾き飛ばされていた。そして体には無数の傷。

「弱いのう」

 北辰は笑う。俺は奴の体にしがみついた。

 死んでたまるか…、死んでたまるか……、死んでたまるか………!!

「終わりだ」

 そう言うと北辰は笑みを浮かべ、刀を振り落とそうとした。

 だが、それが俺の頭に刺さることはなかった、俺が奴にしがみついたときに奴の脇差を抜き、取り刺したからだ。

 倒れる北辰、俺は奴を見下していた。体中に奴の血が俺の血と混ざり気持ちが悪かった。

「見事だ…」

 奴は口から血を出しながら、俺を見ていた。どうやら苦しいらしい。俺は奴の落とした刀を拾うと、奴に突き刺した。

 北辰は動かなくなった。

 

 体中が血だらけだった、俺はゆっくりユリカに向かっていった。

 ユリカ……。

 俺は彼女を抱きしめた、愛しい愛しい自分の妻。

 だが、その時彼女が崩れ始めた。パラパラと。

 俺はその姿を呆然と見ていた。

「ユリカ…、ユリカ……、ユリカ!!

 

 

 その時俺は叫んでいた。そして気がついた、そこがユーチャリスの自分の部屋であり、ベッドの上ということを。

 俺は息を落ち着けた、夢か……。隣にはラピスが寝ている。おそらく彼女が俺の上に乗っていたせいで、夢の俺の体は重かったのだ。

 俺は窓に映る、宇宙を見た。そして呟く。

「もうすぐだよ、ユリカ……」

 

 遺跡奪還作戦、10時間前の出来事であった。

 

 

 

 作者の叫び

 

 

 イツキが出てねえ!!

 なにはともあれ、300万ヒットおめでとうございました。

 

 

 

代理人の感想

あ、夢オチ(爆)。

とは言え綺麗にまとまった短編でした。

記念投稿ありがとうございます。

 

>イツキ

・・・・まぁ、こういう話で出してど〜する、と言う説はありますが(笑)。