ナノマシンの紋様

   

 

第3話   「ゲキガンガーには冷房を」

                             

 

                             ドドンパQ

 

 

 ナデシコは第四防衛ラインのミサイルを食らっていた。と、いってもそれはディストーションフィールドのせいでほぼ無力化していたが、振動まではふせげずにいた。

「ゲキガンガー」

 そんなことはお構いなしにアキトとガイはゲキガンガーのビデオを見ていた。最初はガイのことを避けていたアキトであったが共通の趣味、つまりゲキガンガーのおかげで彼らは結ばれていた。イツキも先ほどまで見ていたのだが、あまりの暑さによって戦線を脱出、食堂にアルバイトに行ってしまった。

 

 

 その頃ブリッジでは振袖を着たユリカが地球連合軍との話を決裂させていた。問題は山積みであった。

 

 

「イツキ、良い腕してるじゃないか」

 ホウメイはチャーハンを作っているイツキに言った。

「そうですか?これでも腕は二流だって言われていたんですけどね」

 イツキは少し照れながら言った。

「二流なもんか、これなら客に出せるよ」

「いやあ、でも、アキトのチャーハンや、ラーメンの方がおいしいんですよ」

「アキト?あのテンカワとか言うパイロットのことかい?」

「ええ」

「あの人って何者なんですか?」

 横からホウメイガールズのサユリが入ってくる。

「何者もなにも、彼は彼よ」

「だって」

 と、言いながら、サユリはアキトがこの前一撃で破壊したドアを見つめた。

「昔からああなのよ」

「でも…」

「はいはい、それまで」

 言いかけたサユリをホウメイが止めた。

「話題を変えよう、あんたとテンカワはどういう関係なんだい?」

「そうですね、彼と出会ったのは火星の軍隊学校でした、私は希望してはいったんですけど彼は小さいころ両親が亡くなっていて中学卒業して金の工面のために入ったらしいです。そして卒業、私たちは士官候補生として戦闘機のパイロットになりました、そのあとネルガル重工の新型兵器エステバリスの開発のために共に出向、そして火星大戦のときには二人で月に旅行に出ていたので無事でした。それから1年間私たちは小さな食堂で働きながら二人仲良く幸せに愛し合いながら暮らしていましたとさ」

 イツキの話が終わる、うそも多かったが。

「う、うーーーー」

 サユリが泣く。

「あんたも顔に似合わず苦労したんだねえ」

 ホウメイがしみじみと言った。

 

 

「いつまで我々を軟禁するつもりだ、これは明らかに国際法に反しているぞ」

 兵士Aが叫ぶ。第一テロリストに国際法も何も関係無い、下手すれば処刑の対象だ。

「がたがた言ってると脳みそだけ残して体改造しちまうぞ」

 本気でやりたがっているウリバタケが目を輝かせながら言ってドアを閉めた。

「どう?」

 キノ…いやムネタケがたずねた。

「ええ、いまどき縄なんてチョロいもんですよ」

 兵士Bが後ろ手を動かしながら言う。

 ムネタケは立ちあがった。

「私は火星まで行く気なんてないわ、戦闘が始まったらおさらばよ」

 

 

「火災発生」

 ルリが言う。

「なにっ、どこでだ?」

 ゴートがたずねる。

「テンカワ、ヤマダ両名の部屋です」

「えっ、アキトの部屋?」

 ユリカが少し戸惑いながら言う。

「モニター出します」

 そこに映っていたのは…

ジョー!!

 そしてアキトとガイが抱き合いながら、アニメゲキガンガーを見ていた。

 今のシーンは仲間をかばって海燕ジョーが死んだシーンである。

「部屋の温度が100度を越えています」

 ルリが言う。

 それから彼らにはゲキガンガーを見る際、冷房をつけることが義務づけられた。

 

 

 

 そのころユリカに見事に置いてきぼりにされた目立たない、台詞が少ない、影が薄いと三拍子の揃ったジュンはターミナルコロニーサクラにいた。

「アオイ君やめたまえ、君は士官候補生なんだぞ」

 ミスマルコウイチロウがコミュニケを通して言う。

「どうってことありませんよ、パイロットならみんなやっていることですし、第一これが無ければIFSを使用できません」

 アオイジュン、彼は少しやけになっていた。

「だがナノマシン処理は…」

 コウイチロウも必死に止めようとする。

「そうですよ、あなたがこれをする必要はありませんよ」

 脇役Aがナノマシン注入装置を持ちながら言った。

「貸せ!」

 ジュンは脇役Aからナノマシン注入装置を奪い取ると自分の動脈に刺して引き金を引いた。

 激しい頭痛が襲う、ナノマシンが補助脳を形成しているためだ。

 

 

「少尉、このデルフィニゥムは基本的に思ったとおりに動きます。ゾースを付けておきましたんで、1時間は確実に飛べます」

 無重力空間で脇役Bがジュンに説明をする。

「いろいろありがとう」

「ではご無事で」

 脇役Bが親指を立てて、コックピットを閉めた。脇役B、個人的にはかっこいいと思う

「さようなら」

 彼は呟いた。

 ゲートが開く、目の前に広がるのは蒼い地球。

「目標、機動戦艦ナデシコ!」

 

 

CM中

 

 

「よっしゃー」

 ガイが自分の頬を叩きながら、気合をいれた。

 ウリバタケとゴートが作戦と機体スペックについて説明をしていたが、彼にとっては馬の耳に念仏であった。

「博士―、研究所の扉開けてくれ」

「誰が博士だ、それよりテンカワとイツキはどうした?」

 ウリバタケがたずねる。

「イツキは食堂でバイト、アキトはべそかいてたぜ」

 

 

 アキトは冷房をよく効かせた部屋でゲキガンガー27話を何度も見なおしながら泣いていた。

 

 イツキはラーメンのだしを取るために鍋の前でぶつぶついいながら青い火をずっと見ていた。

 

 

「ゲキガンガー」

 カタパルトダッシュでガイのエステバリスがナデシコから飛び出す。

 向かいからはステーションサクラから発ったデルフィニゥムが来ている。

「行くぜー」

 空戦フレームのブースターが動き出す、ガイは敵に向かって行った。

「アタ――ック」

 ジュンの命令と共にデルフィニウムのミサイルがエステバリスに向かって行く。

 

 

「あの馬鹿ッ」

 ウリバタケが格納庫で叫ぶ。

「大丈夫だって」

 ガイは簡単に言う。

 

「あらよっと」

 ガイはミサイルをよけ、加速をして行った。そのあとを敵が追う。

「よーし、今だ、ウリバタケ、スペースガンガー重武装タイプを落とせ」

 ガイが言う。

 

「山田さん何か言ってますけど」

 整備班員Aがウリバタケに言う。

「あんな馬鹿ほっとけ」

「だからスペースガンガー重武装タイプだって」

 ガイが通信を通して叫ぶ。

「うちにはスペースだかアストロだか知らねぇが、ガンガーなんてモンは置いてないんだよ!」

「1−Bタイプじゃないですか?」

「そうそれそれ」

 整備班員A、彼はなかなか鋭かった。

「ちっ、わかったよ、落とすぞー」

 ウリバタケは立ちあがり射出ボタンを押した。

 

 

 ナデシコから砲戦フレームが飛んでくる。

「フフフフ、完璧だ。俺が敵をひきつける、敵は俺に武器が無いと思ってる、そこで射出された砲戦タイプと合体、一気に敵を殲滅する、名づけてガンガークロスオペレーション」

 ガイがクレヨンで書かれた紙で説明をする。

 砲戦フレームと空戦フレームが平行になり、ドッキングプログラムが作動する。

「ガンガークロス!!」

 彼の目の前の砲戦フレームが爆発する。デルフィニウムのミサイルによるためだ。

「あのー、作戦失敗ですか」

 コミュニケでユリカがたずねる。

「な、何の」

 ガイのエステバリスが敵に向かって行く。

「ガー―イ、スーパーナッパ―」

 エステバリスの腕に収縮されたディスト―ションフィールドによって、敵が一機爆発した。

 しかし、超スーパーウルトラグレート必殺技を一発目から撃つとは良いサービスぶりである、これからどうなるやら。

「こいつはいけるぜ、ワハハハハハ」

 ガイの周りをデルフィニウムが囲む。

 

「山田さん、完全に囲まれています」

 ブリッジでルリが冷静に言う。

 

 

「頼むぞ、テンカワにカザマ」

 ゴートによって作戦が二人に説明された。

「たくッ、あいつ何やってんだか」

 アキトはサングラスをかけながら言った。

 アキトのはサレナの中身だけに空戦フレームを付け、カノン砲を持たせてあり、イツキのは空戦に白いアサルトピットを乗せたものだ。

 

 

 デルフィニウムの数体がミサイルをナデシコに当てた。

 

 

 ブリッジが揺れる。

「ユリカ、最後の警告だ、ナデシコを地球に戻して」

 ジュンがコミュニケを通して言う。

「ごめん、ジュン君、私戻れない」

 

 

 ガイはデルフィニウムに一機ずつ超スーパーウルトラグレ−ト必殺技を放っていたが一機のデルフィニウムに捕まってしまった。

 

 

 ブリッジではユリカがジュンに説明をしていた、そして、

「ここが私のいる場所なの」

 ジュンもこう言われるとどうしようもない。

「やっぱりあいつのことの方が良いのかい?」

 話題を変える。

 

 

 準備の整ったエステバリス2機がナデシコから射出される。

 

 

「ならば、あのロボットから破壊する」

 切れに切れたジュンはガイのエステに照準を合わす。

「くそ―、離せ」

 ガイは必死に暴れるがどうしようもない。

 ロックが完了する。

 その瞬間、ガイをつかんでいたデルフィニウムが爆発する。

「なにっ」

「契約違反はいけねえな、副長さん」

 アキトはジュンに言った。

「僕と勝負だ、テンカワアキト!!」

 ジュンは完全に吹っ切れていた。

「行け―アキト、男と男の一騎うちだ」

「んなことやってられるか」

「戦わずして逃げるというのか」

「だって、俺が勝つに決まってんじゃん

ブチッ

 宇宙空間に音がした、そしてジュンの機体がアキトに向かっている。

「ちっ」 

 これに対してアキトは回避行動が取れず、後方に飛んでいった。

「少尉!」

 ジュンの部下たちが追おうとする、だが、そこに立ちふさがるものがあった、その名はガイ。

「男と男の戦い邪魔したら、野暮ってモンだろ、ええ?」

 ガイがなぜか泣きながら言う。

 目の前のデルフィニウムが爆発する。

「ちょっとガイ君、武器ぐらい持ちなさいよ」

 そう敵を倒したのはイツキであった、彼女はナデシコに攻撃していたデルフィニウムを破壊していたのだ。

 イツキはガイにライフルを渡した。

「行くわよ」

 

 

「どうしてジュン君アキトに突っかかるのかな?」

 ユリカの一言にブリッジがざわめく。

「だって、アオイさんは艦長の…」

「大事なお友達よ」

 アオイジュン、彼はあまりにも哀れだった

 

 

「副長、あんた絶対勘違いしてるよ、俺と艦長はそんな関係じゃない、ただの幼馴染だ。それだったらあんたと同じだろう」

「うるさい、そんな個人的なことは関係無い」

 アキトはジュンの攻撃をよけていた、あくまでも攻撃はしなかった。

「だったらなんだっていうっだよ」

「僕はずっと正義の味方になりたかった。連合宇宙軍こそその場所だと思っていたんだ」

「軍学校のがきじゃあるまいし何を言ってるんだ、それたんなるエゴだ。軍なんてもんは正義の味方ごっこしてるだけなんだ」

「僕は違う!」

 ジュンがアキトに特攻を仕掛ける。

「もう終わりだ」

 アキトは敵の攻撃に合わせてカウンターを放った。

「何をするんだ!」

 ジュンのヘルメットのガラスは割れてしまった、自分から特攻しておいて何をするんだもない

「副長さんよ、あんた惚れた女の敵になるつもりかい?愛してるんなら本気で守りきれ!!」

 そう言うとアキトはジュンを残し、ガイたちのもとに向かって行った。

 

 

「大丈夫かガイ?」

「こっちはあらかた片付いたぜ」

「でもさあ、エネルギーフィールドから完全に離れてるのよね」

「「へっ?」」

 エステバリスがフリーズ状態に入る、ガス欠だ。

 

 

「エステバリス三機ともエネルギーフィールドの範囲外です」

 艦内では状況確認が行われていた。

「第二防衛ラインからミサイルの発射確認」

 

 

 衛星からミサイルが放たれる。

 ジュンのデルフィニウムはナデシコの前に立った。

「あの野郎、盾になる気だ」

「止めなさい!」

 イツキとガイが止めようとするが、バッテリーが無い。

「テンカワ君、ありがとう、惚れた女は守らなければならない」

「無駄死にはかっこ悪いぞ」

 ジュンはアキトに後ろから腕を取られた。

「動けないんじゃなかったのか?」

「ナデシコが追いついてきたんだよ」

 

 

「相転移エンジン出力最大」

 ルリの報告。

「四人を収容、みんな衝撃に耐えてください」

 ナデシコのディスト―ションフィールドがミサイルを弾く。エンジンは本調子のようだ。

 

 

「正義の味方ごっこだって楽しい、これをどう悟るかは自分次第だ、艦長のナイト役は副長さんにしかできないと思うぜ」

て、いうかあなたが何とかしなさいよ

 イツキが半ば本気で言う。

「ナデシコならそれも自由と言うことか」

 ジュンも少し悟ったらしい。

でも俺が主役だぞ

 ガイはもう悟りきっている。

 

 

「こうしてナデシコは第一次防衛ラインの核融合炉を搭載したビックバリアを破壊しながら抜けました。ちなみに大気圏外で核爆発が起きた場合、それにともなう電磁波で地球の電子機器は全部だめになってしまいます、みんなためになったかな」

 誰かに向かって、ルリが説明する。

「ユリカごめん」

 ジュンがユリカに謝る

「謝ることなんてなーんもない、アキトありがとう、私のお友達を救ってくれて」

 ユリカがアキトの手を握りながら言う。

「いや、私はあなたの友人というわけで助けたのでは…」

「まあまあ、いいじゃねえか。生きてりゃ良いこともあるって」

 ガイがどこからともなく現れて、ジュンに何かを見せびらかすように言った。

「何ですか?それ」

「おお、それはゲキガンシール!!」

 アキトが思わず叫ぶ。

「ああ、五機も倒したんだぜ、俺のスペースガンガーに貼らなきゃな」

 

 

 

「ふんふんふんー、どこに貼ろうかな―」

 ガイはエステバリスの前で鼻歌を歌いながら考えていた。

 その時、格納庫の中で物音がした、それはガイにも確認できた。

「おい、あんたたち!」

 ガイは呼びとめようとした。

 だが、銃声。ガイは倒れた、流れる血。

 シャトルは去って行った、格納庫の中は静かだった。

 

 

「おーいガイ、俺も三機落としたんだから、三枚くれよ」

「ガイ君私も七機倒したんだから、七枚頂戴」

 アキトとイツキは格納庫にやって来た。そして発見した。

「ガイ!」

「ガイ君!」

 彼らは血を流しているガイに駆け寄った。

「ガイ君、ガイ君」

 イツキは泣きながらガイを起こした。

「やばいな、血が黒い、貫通はしているが肝臓をやられてるぞ」

「早く医療室に!」

 イツキは少し取り乱していた。

「もう間に合わん」

「そんなこと言ってもアキト」

「いいから任せろ」

 そう言うとアキトはナイフで自分の両手の平を傷つけた、そして顔に映るはナノマシンの紋様。

「何するつもりアキト?」

 アキトは何も言わずガイの二つの傷口に手を当てた。

「む、むう」

 ガイは目を覚ました、そしてアキトは手を離した、そこには傷などはなかった、もちろんアキトの手のひらにも何もなかった。

「俺って、撃たれたんじゃなかったのか?」

「ああ、撃たれた、血をいっぱい流してな、でもちょうどいいじゃないか

 そう言ってアキトは立ちあがった。

(アキトあなたはいったい何者なの?)

 イツキはそう思った、1年以上共に暮らしながらこんなこともわからない自分に苛立ちは隠せなかった。

 

 

 

 筆者の戯言

 イツキってさ、TVでは一分も出演してないよね。台詞は多かったけど。

 

 

 

 

 

 

代理人の感想

 

・・・・どう誤魔化すつもりだよ、オイ。

どう考えても只事ではないぞ、これ?

(ま〜、百度の熱の中で生きてる時点で既に気にされないかもしれないが)

流れた血は残ってるから言い訳も難しいだろうし・・・・・。

 

はっ

 

それはこっちにおいといて、
そうするとガイにも「紋章」が!?

 

ガイのこの手が光って唸り、

おまえを倒せと輝き叫ぶのか!?

 

 

イイ、スゴクイイィィィ(核爆)!