復讐の彼方へ

 

CHAPTER 6

「黒の襲撃者」

 

ドドンパQ

 

 

「だめです、突破されます」

 防壁を張っている兵士からの悲痛な報告。

「なんて奴なんだ」

 襲撃者の動きを見ている兵士も叫んだ。

(相変わらずやるわね)

 ムネタケは胸の中で呟いた。

 襲撃者、テンカワアキトはブリッジにまっすぐ進んでいた。

 

 

 

 銃声が日常であった彼にとって戦闘で最もリアルに聞こえるのは床と共鳴する排薬莢であった、その音だけを楽しみにしながらテンカワアキトは前に突き進んだ

 弾切れになれば銃ごと捨て、懐から新しい銃を取り出す。これが最も安全な対策であった。

 引き金を引き、弾丸は敵の体に吸い込まれていくように入っていく、あくまでも急所ははずしている。相手はサブマシンガンで応戦してくるために連射された中の何発かは体に当たってくるが、防弾のスーツはちゃんと機能している。あくまでもそれは貫通を阻止するためのものなので着弾のダメージは体に伝わる、だが彼にとっては関係ない。引き金引き、排薬莢の音を楽しみ、弾切れになった銃を捨て、すぐさま新しい銃に代える。

 黒い襲撃者、テンカワアキトは楽しんでいた。

 

 

「各員、銃を持ちなさい、そしてドアを物理的にシャットアウト」

 ムネタケは限界を感じ、ついに決断をした。相手は並ではない、早めの決断がものを言うと彼の軍人としてのカンが言っていた。

 兵士たちは各々銃を持ち始めると、ドアの近くの者達はドアに錠をする。ナデシコのドアはすべて自動だが物理的に錠をすれば外側からは開かない。

 

 

 左腕の銃の弾が切れた。だが案ずることはない、残っている兵士は目の前の三人、右腕の銃にはまだ五発もの弾丸が残っている。

 相手は最後の防衛線を守ろうと連射を仕掛けてくる。アキトは壁に隠れながらタイミングを見計らった。

 この瞬間、そう相手の弾丸が切れてマガジンを交換する少しの時間をアキトは見逃さなかった。壁から半身乗り出し、照準を定めるとすべての弾丸を放った。それと同時に彼は走った。弾丸は敵の銃に当たり、相手の体勢を崩した、それに合わせて敵まで一気に突っ込み首筋に手刀を放った。相手が崩れ落ちる。

 空になった銃を放る。そして彼は懐から愛銃であるリボルバーを抜いた。この銃は使い捨てにはしない。

「後はブリッジか……」

 彼はそう呟くと走り出した。

 

 

 ムネタケは懐から銃を取り出すとチェックをした。遊底を引き、安全装置をかけてある。ふと、部下のほうを見ると、彼らは完全に動揺している。たった一人にここまで追い詰められているのだから無理はない。

「気合入れなさい、もうすぐくるわよ」

 いくら激を飛ばしても無駄だろう。だがいわないよりかはましだ。

 その時だった。突然ブリッジ内の電気が消えた。

 兵士たちに動揺が走る。

(やられたわ……)

 ムネタケは思った、この状態で攻められた場合確実に相手の勝ちだ。だが、おとなしくしている場合でもない、安全装置をはずした。

「無断しないで、バックアップがもうすぐつくわ」

 そうムネタケが叫んだ瞬間、ドアが吹き飛んだ。

 

 

 

 アキトはカメラアイの死角に入りながら、スーツのポケットから先ほど食堂のドアを吹き飛ばしたプラスチック爆弾の残りを出した。そして壁を軽くたたく。

「ここか……」

 アキトは少し音の違う壁の位置を探し当てるとプラスチック爆弾をつけた。壁の向こうにはブリッジへ電気を送っている電気ケーブルがある。

 そして彼はブリッジのドアをチェックした、やはり物理的にロックがかかっている。このブリッジの特徴はブリッジ内で停電などの非常事態が起きた場合ドアを自動的に開くシステムになっているが、この状態では無理だ。

 彼は懐から今度は火薬ペーストを出した、それをドアにつけていく。

「いくか……」

 彼はそう呟くとプラスチック爆弾の雷管を押した。爆音と同時に爆発煙が流れてきた。

 少しずつ煙が晴れてくる、ブリッジ内は動揺が走っているのが壁越しに伝わってきた。そこにムネタケの気合の入った声が聞こえた。だがもう遅い。

「悪いな……。この勝負俺の勝ちだ」

 アキトは笑みを浮かべながらそう呟くと銃をドアに張りついている火薬ペーストへ向けた。

 

 

 暗視モードに入っているバイザーは目の前で起こっているすべてを映し出した。混乱に混乱を重ねている兵士の足に向かって銃を向ける。

 アキトの銃は弾速を亜音速にまで落とすことによって音を消している、スピードが落ちると命中力が下がるものだがそこは精密なライフリングによってつく回転力がカバーしている。

 とはいっても、相手に位置を知られてしまう薬室からもれる炎はカバーできないので撃つごとに位置を変える。

 相手の動きはまさしくプロの兵士のものだが、先手を取ったアキトの有利は変わらなかった。

 そして敵は後、一人。いるのは艦長席、ムネタケサダアキ。

 

 

 停電。ドアを破壊させ進入。そしてバックアップがつくまでにすべてを終わらせるつもりらしい冷静な射撃。

 もう立て直しなどはできるはずがない。敗北の理由、それはテンカワアキトという最強の男と対峙したこと。

 だがこちらもただで終わるわけにはいかない。

 神経を研ぎ澄ませる。その時だった、一定の間隔で放たれていた銃声がおさまった。

(次はここね……)

 そう感じ取ったムネタケは銃を抜いた。

 

 

 バックアップが作動し、ブリッジ内は明るさを取り戻した。

「相変わらずやるわね」

「あんたもな」

 アキトとムネタケはお互いの顔に銃を突きつけたまま立っていた。

 あの瞬間アキトは艦長席に飛び、ムネタケを仕留めようとしたが、さすがは特殊部隊出身、アキトの動きを読み、銃を突きつけてきた。

「さてこれからどうするの」

 相変わらず銃を突きつけたまま、ムネタケが言う。

「もう格納庫も占拠されたはずだ。今回の戦い、あんたと俺の勝負は相打ちだが、総合的にはこちらの勝ちだ」

 そう言うとアキトは左手でムネタケの首筋を打った。それによってムネタケが倒れる。

 アキトの勝ちであった。

 

 

 

 

 

 作者の感想

 ムネタケがちょっとカッコ悪かった。もっと強く書きたいな。

 

 

 

 

 

 

代理人の感想

 

いやいや、普通のムネタケと比べればよほどカッコいいでしょう(笑)