復讐の彼方へ

 

CHAPTER 7

「再会・1」

 

ドドンパQ

 

 

 アキトは煙草を吸いながら一息ついていた。

「さて……、どうするか」

 そのときアキトのコミュニケに通信が入ってきた。

「テンカワか?」

 そこに映ったのはゴートだ。

「そっちはどうだ?」

「あらかたかたづいた、ところでどうする」

 アキトは少し考えた振りをすると、

「艦長を奪取しよう、俺がエステでトビウメに行く、ウリバタケ班長に発進準備の要請を…」

「わかった」

 ゴートは軍人らしい、はっきりとした言葉で答えた。

(やな再会にならなきゃいいな)

 アキトは少し考えるとタバコを押し消した。

 

 

「お父様、正直に答えていただけますか」

 トビウメの来賓室、ミスマルコウイチロウ、ユリカの親子はケーキを挟んで向かい合っていた。

「なんだい?ユリカ」

「テンカワアキトくん、覚えていらっしゃいますか……」

 その言葉を聞いた瞬間、コウイチロウの顔から娘に向けていた、微笑が消えていた。

「あ…ああ」

「お父様、アキトに何かあったか知っていらっしゃるんですね?」

 戸惑い、コウイチロウの顔にはそれが浮かんでいた。

「お父様!」

「おまえは知らんほうがいい」

「どうしてですかお父様!?」

 ユリカがテーブルに手をつきながらコウイチロウに顔を近づける。

「くどいぞユリカ!!」

 コウイチロウは今まで娘に見せたことのない表情で怒鳴りつけた。ユリカはそんな父親の剣幕におびえた。

 コウイチロウは目の前の娘を見て正気に戻った。

「す、すまない。ユリカ。お父さんどうかしてたよ。さあ、ケーキでも食べなさい」

 コウイチロウは目の前のケーキを娘に勧めた。

「で、いったいどうしたんだね、ユリカ。死んだ…いや、亡くなったお友達のことなど……」

 コウイチロウはそう言うと紅茶を一口、口に含んだ。

「彼…テンカワアキトくんは生きています、そして今ナデシコに乗っています」

「なにっ!まさか…そんなことが」

 コウイチロウはあの時のこと思い出した。

   

 

 テンカワアキトの父親とミスマルコウイチロウは親友であった。最初は偶然的な隣人であったが、二人は親友になった。その理由は同じ年ぐらいの子供を持ったため、そしてなにより科学者と軍人という形は違えどリアリズムを追求するという職業を持っていたため。ただ、それだけだ。

 そんな友人という関係が崩れたのは一人の利得者のせいだった。アカツキアキラ、前ネルガル会長。すべては彼の計画だった。前ネルガル会長は目先の利益を狙う馬鹿ではなく先の先を読む天才であった。その知略ゆえに殺された人間の数も多い。

 コウイチロウはすべてを知っていたのだ。あの事件がおきる二ヶ月ほど前、コウイチロウは上官とともにネルガル火星支部の重役との会食に出席した。ネルガルの代表の筆頭にいたのは忘れもしない、プロスペクター、火星副司令。謎の男だ。そしてコウイチロウが用を足しに席を離れ、戻ってきたとき聞いてしまったのだ、連合軍火星撤退の計画を。

 なぜだ…。火星独立の過激派の動きが激しい時期になぜそんなことを。何より軍事生産が目的だけのネルガルがそんなことを知っているのか。

 それからは勢いのある歯車のようだった。一ヶ月後、地球連合安全保障委員会で火星の軍縮が決議された。コウイチロウは月への移動、火星の主力部隊も解散となった。

 そしてあの事件が起きた。表向きは火星独立運動のテロ、だが実際はネルガルによる内部粛清。

 親友テンカワ夫妻は自分を見送りに来た空港の爆破で死んだ。息子アキトは行方不明。

 そうコウイチロウはわかっていたのだ。わかっていたのに何もできなかったのだ。

 

 

 そのとき来賓室に二人の男が入ってきた、ネルガル本社と協議していた、ジュンとプロスペクターである。

「き、貴様ー」

 コウイチロウは叫んだ。

「お久しぶりですミスマル閣下」

 プロスはなんの気劣りもせず礼で返した。

「あ、あのナデシコは民間のものなので受け渡さないということに決まりました」

 ジュンが迫力に負けつつもなんとか言った。

「そんな事はどうでもいい!」 

 コウイチロウは何とか息を落ち着けると、

「ユリカ、ジュン君。ここでケーキでも食べていなさい」

 そしてプロスのほうを向くと、

「ついてきてもらおうか……」

 

 

「なぜだ?なぜテンカワ君は死ぬ必要があった」

 コウイチロウは別室でプロスに向かって叫んだ。

「ボゾンジャンプ、ご存知ですか?」

 プロスはゆっくり口を開いた。

「?、木星蜥蜴が使っているワープのことか?」

 コウイチロウは言った。

「ええ、テンカワくん、いやテンカワ夫妻はそのボゾンジャンプ研究の第一人者でした」

 プロスはそう言うとテーブルに出されていた紅茶に手をつけた。

「だから殺された?」

「ええ、彼らはボソンジャンプのネルガル独占を懸念していました」

「だからおまえらは殺したというのか!!」

 コウイチロウは立ち上がり、テーブルのに手をついて叫んだ。

「おまえら?」

 プロスはコウイチロウを下から見つめるとメガネを光らせた。

「この期に及んで何を言う!ネルガルが彼らを殺したのだろう!!」

 プロスはその言葉を聞くと紅茶を一杯口に含んだ。

「それは違います」

「なんだと?」

「テンカワ夫妻は私が殺したんです」

 

 

 

 筆者の言葉

 なんだか久しブリブリのドドンパQです。

 イツキ組合は今でも組員(なんかおかしい)を募集中です。

 

 

 

 

代理人の感想

おおう。

プロスさんが・・・・ねぇ。

これは正直意外な展開でした。

 

後何故コウイチロウがボソンジャンプなんて単語を知っていたのかと言う所が引っかかりますね。