第二話後編



ターミナルコロニー『アマテラス』内部の廊下を、一台の見学車両が、
猛スピードで走り抜けていた。



「すみません」


「いいの、いいの。なんか燃えるっしょ!こういうの!」


ホシノ・ルリの言葉に、運転していた見学説明のお姉さんは明るい声で答えた。
この答えに安心したホシノ・ルリは先程感じた胸騒ぎについて考えた。




予感は的中、敵が来た。



アレは暗号?、やっぱりアレは偶然?



自問自答を繰り返すが答えは出ない。



頭の中には、あの時の光景

遺体の無い、遺影だけの葬式

誰もが悲しみに暮れ涙する中で、一人仮面を被り涙は見せなかった

信じられなかった

信じたくなかった



でもあの人は・・・・・



あの人達は・・・・・・・・



「ルリちゃん」




脳裏に映る彼の微笑みは、今も変わらず優しかった・・・・・





ボソンアウトしてきたブラックサレナは人型から黒い鳥に変り、『アマテラス』の防衛網に、
一直線に突っ込んできた。
これに対して『アマテラス』迎撃部隊は一斉に迎撃を開始した。
数百、数千のミサイルと戦艦のグラビティブラストがブラックサレナに、向けて放たれた。



ブラックサレナは、高い機動力と強固なディストーションフィールドで、
防衛網を巧みにかき回す。その結果、徐々に防衛網には綻びが出来始めていた。
だが、『アマテラス』迎撃部隊の人間は誰もがその事に気が付く余裕が無かった。



「コロニーに近づけるな。弾幕をはれ」


シンジョウ・アリトモ中佐は、必死になって部隊に命令を下していた。
その時、彼の目の前にタコヒゲ入道(アズマ准将)の顔一杯のウィンドウが叫んだ。



「肉を切らせてぇ骨を絶つ!」


「なっ、なにを仰るのです。准将!」


シンジョウ・アリトモ中佐の後ろには、タコヒゲ入道(アズマ准将)が憤怒の形相で現れた。
彼はかなり機嫌が悪かった。連合宇宙軍の連中をていよく追い払えたと思って機嫌を良くしていた矢先に、
近頃、巷を騒がせているコロニー襲撃事件の犯人が、自分のいる『アマテラス』に攻撃を仕掛けてきたからだ。



「コロニー内、及びその周辺での攻撃を許可する。」


「えっ、准将。それではコロニーが。」


「飛ぶハエも、止まれば討ちやすし。多少の犠牲はやむをえん。」


『おっしゃあ〜』


その叫び声と共にデカデカと、一人の女性のウィンドウがタコヒゲ入道(アズマ准将)の目の前に現れた。



『野郎共、行くぜ!』


『『『『おう!』』』』

『アマテラス』の一角に陣取った統合軍エステバリス部隊『ライオンズシックル』の隊長、スバル・リョーコは、
威勢の良い掛け声を発すると、隊員全員は、それに対して一斉に威勢の良い返事をした。
スバル・リョーコはそれに満足すると自分の駆るエステバリスを起動させた。
電源が入り、周囲を映すウィンドウが現れた。多数の統合軍の戦艦、機動兵器を相手にたった一機で翻弄する
黒い鳥のような大型の機体がこちらに向かって来るのが映し出されていた。




へっ、どこのどいつだか知らないが、あたしに喧嘩売るとはいい度胸じゃないか。




スバル・リョーコが駆る赤いエステバリスは、黒い鳥、ブラックサレナに対してレールカノンを構えた。
それに気付いたブラックサレナが後退運動に移った。しかし、既にエステバリスの照準には、
ターゲット確認の赤ランプが点灯していた。



「浅い!!」


スバル・リョーコが叫ぶと、エステバリスのレールカノンは幾つもの弾丸をブラックサレナに向けて放った。
だが、ブラックサレナに向かって放たれた弾丸は、強固なディストーションフィールドに阻まれ少しも傷つける事は
出来なかった。ブラックサレナがすぐさま後退運動に移った為、『ライオンズシックル』とスバル・リョーコは
ブラックサレナの後を追った。



これが陽動の為、ワザと後退しているとは『アマテラス』の人間は誰も気が付かなかった。


「敵、第2ラインまで後退!なおも追撃中!」


「ヌハハハハハハ!、見たかねシンジョウくん。これこそ統合軍の力、新たなる力だ!」


「はあ・・・・」


タコ入道(アズマ准将)は血管が浮き出るほど興奮しながら、シンジョウ中佐に統合軍が
いかに素晴らしいかと力説していると、発令所の通信士が新たな変化を伝えた。



「ボース粒子の増大反応!」


「守備隊の側面、グラビティーブラスト!被害多数!」


「質量推定、戦艦クラスです!」


ボソンジャンプによって姿を現れわした白亜の戦艦ユーチャリスは、統合軍の伸びきった防衛ラインを一刀両断するように、
グラビティーブラストを放った。この攻撃は守備隊の大多数に甚大な被害を与え、大混乱を及ぼした。
ブラックサレナは、この隙に強襲ポイント変更し再突入を開始していた。





その頃『アマテラス』内部では、一人のマッドサイエンティストと助手がのんきに休憩室でお茶を飲んでいた。



パリ


「ほん度はジャンプするへん艦はい?」


パリ


「ネ、ネルガルでしょうか?」


ズーズズズーズー


「さぁ。あっ、このお茶、美味しいね」


「アズマ准将からです。先程、お茶菓子と一緒に持って来られたんですよ、この玉露。

すごく上機嫌みたいでしたけど、なにかあったんですか?」


「ん〜、さっきね、ココの臨検に来た宇宙軍の連中を、うまく追い返せたって喜んでたからね。」


「はぁ、でも良いんですかね。外では激しい戦闘が繰り広げてるのに、のん気にお茶なんか飲んで。」


「良いの、良いの。助手A君、ところであの連中は?」


「はい、先程、五分で行くと。」


助手Aは、ノホホンとヤマザキの質問に答えた。



「あぁ、大変だぁ。それじゃあ、そろそろ撤退しますか。後の始末は連中がやってくれるでしょ。

助手A君、研究室に連絡『緊急発令!、五分で撤収!』ってね。あっ、コレ持っていくから。」


そう言って、ヤマザキはスーツの上から白衣を羽織るとお茶請片手に、部屋から出て行った。



「待ってくださいよ、博士。最高級玉露を忘れてますよ。」


助手Aは、ヤマザキの後を慌てて追いかけた。二人が出ていた後の部屋には、急須が一つポツンと置いてあった。





ブラックサレナは、高機動ユニットを切り離した。切り離したパーツと本来の姿に戻ったブラックサレナの
左右のハンドカノンで追ってきたエステバリス四機を一瞬で撃破した。
これを見た隊長スバル・リョーコは激怒した。



「おめぇーはゲキガンガーかよ!」


「えぇーい、砲戦を出せ!」


スバル・リョーコの耳元で、茹でタコ(アズマ准将)の怒鳴り声が響いた。



「おっおい!」


「撃って撃って撃ちまくれぇー。撃てー、撃ちまくれ。撃つんだぁー。撃てー」


アズマ准将の声に呼応するかの様に、ズラリと並んだ砲戦機の群れが一斉に撃って撃って撃ちまくった。
その弾丸の嵐の被害に遭いそうになったスバル・リョーコがキレて、レールカノンごと砲戦機の群れに投げつけた。
砲戦機の群れはその衝撃でワラワラと将棋倒しの駒の状態になり、数十機いた砲戦機の内80%以上が大破し残り20%が中破と
かなりの損害だったが、その事に言い争うスバル・リョーコとアズマ准将、発令所など誰にも気にしてもらえなかった。





スバル・リョーコとアズマ准将が激しい口論をしている頃、テンカワ・アキトが駆るブラックサレナは『アマテラス』
には本来存在しない筈の十三番ゲートに、高速で潜入を開始していた。



今度こそ・・・・今度こそ取り戻してみせる!


テンカワ・アキトの意思を反映するかの如くブラックサレナの両目は妖しく輝き、
さらにその加速を速めた。
ゲート内の防衛プログラムは、ユーチャリスにいるラピスのハッキングによって
既に全てが無力化されており、ブラックサレナは無人の野を行くが如く一直線に目的の場所まで向かっていった。





今、ブラックサレナの目の前には巨大な門が立ち塞がっていた。



『よ〜し、そのまま、そのまま』


ドガ−ン!!!!!

壁をブチ破って、追って来たスバル・リョーコのエステバリスからワイヤーが発射され、
ブラックサレナの遮断していた通信に強制介入してきた。



『俺は、頼まれただけでね。この娘が話をしたいんだとさ。』


ウィンドウにはスバル・リョーコの顔が映し出され、それに続いてホシノ・ルリの
顔もウィンドウに映し出された。



『こんにちは、私は連合宇宙軍少佐ホシノ・ルリです。』


・・・・・ルリちゃんか・・・・・・


テンカワ・アキトは、懐かしさと共に一抹の後悔が己の心に浮かんでは消えていった。



・・・本当は、キミを巻き込みたくは・・・だが!


『あの、貴方は誰ですが?貴方は、』


『ラピス、パスワード解析。』


その声と共にブラックサレナのテールバインダーからマジックアームが伸び、
第五隔壁の扉のパスワードの解析を開始した。



『SNOW WHITE』


パスワードが入力されると扉はゆっくりと開き始めた。



『時間が無い、見るのは勝手だ・・・・』




ブラックサレナが第五隔壁に到達した頃、発令所にいる一匹(人)のタコ(人間)が暴れていた。
今まで自分が、その存在さえ知らなかった十三番ゲートの存在を知っていたシンジョウ・アリトモ中佐に対して、
掴みかかろうとしたら、反対に自分がガッチリ捕まえられたからだ。



「敵、第五隔壁に到達!」


「プラン乙を発動、各員に打電、落ち着いていけ」


「はっ!」


「放せ〜、わしゃぁ、逃げはせん!」


「准将、お静かに。」


「シンジョウくん、何を企んでいる、キミ等は一体何者だ?」


「地球の敵、木連の敵、宇宙のあらゆる腐敗の敵・・・・・

我々は火星の後継者だ!」


シンジョウ・アリトモ中佐は、統合軍の軍服をはぐると、中から火星の後継者の服が現れた。
二枚重ねはかさばると思うが・・・


「アズマ准将、貴方にはご退出願います。」


「何ぃ〜!」


「お連れしろ」


「はっ!、ではアズマ准将こちらに・・・」


屈強な男二人に両手をガッチリ掴まれズルズルと引きずられていた。


「ええ〜い、放せ〜!火星の後継者がなんぼのもんじゃい、アァァイィィシャルリタァァーン」


「哀れな・・・・」


哀れみの目線でアズマ准将を見送ると、シンジョウ・アリトモ中佐はウィンドウに目を戻して、一人呟いた。


「人の執念・・・・見せて貰おう」




『ありゃあ何だよ!、何なんだよ、ありゃあ!!』


先行してゲートを潜ったスバル・リョーコはその物を見て檄昂した。
その叫び声が、ブラックサレナ、ナデシコB両方に聞こえてきた。



無理も無いか・・・・・


テンカワ・アキトの目にもあの忌まわしき物が見えて来た。



『形は変っていても、あの遺跡です。この間の戦争で地球と木星が共に狙っていた火星の遺跡。

ボソンジャンプのブラックボックス。ヒサゴプランの正体はこれだったんですね。』


『そうだ・・・・』


ホシノ・ルリの問いかけに答えたのは、テンカワ・アキトだった。


『ルリ・・・・・』


スバル・リョーコの声には、先程の激しい怒りが無くなっていた。
だがその代わりに、その声には悲痛さが滲み出ていた。



『えっ?』


『これじゃあ、あいつらが浮かばれねぇよ。』


『リョーコさん・・・・』


スバル・リョーコの言葉に、ホシノ・ルリは小さく名前を呼ぶ以外の言葉を持っていなかった。



『何でこいつらが、こんなとこに在るんだよ。』


『それは、人類の未来の為!』


草壁!、奴等が来るのか!


テンカワ・アキトがブラックサレナに身構えさせると、周囲に気を配った。
右側から瞬く間に三機の機動兵器が、こちらに対して攻撃を仕掛けてきた。



俺・・・いや、リョーコちゃんか!


『リョーコちゃん、右!』


テンカワ・アキトの声に反応したスバル・リョーコが慌てて回避運動に移ったが
一瞬にして両手、片足を錫杖に貫かれた。



リョーコちゃんは間に合わなかったか・・・・くっ!


スバル・リョーコのエステバリスを一瞬で行動不能に追い込んだ機動兵器は、
返す刀で、ブラックサレナに攻撃を仕掛けてきた。
反対側からも新たに三機の機動兵器がブラックサレナに向かってきた。



・・・・六連どもが!


ブラックサレナに六機の六連が上下左右から体当たりを仕掛けてくる。
この攻撃をフィールドで弾きながら、ハンドカノンを連射して六連との距離を空けさせる。



リョーコちゃんの機体は限界だな・・・これ以上はリョーコちゃんが危険だ・・・


『お前は関係ない・・さっさと逃げろ・・・』


『今、やってるよ!』




その頃、『アマテラス』発令所ではシンジョウ・アリトモ中佐が、
この宙域にいる全艦隊、『アマテラス』内部に対して通信をおこなっていた。



『占拠早々、申し訳ない我々はこれより『アマテラス』を爆破、放棄する。敵、味方、民間人問わず

この宙域から逃げたまえ、繰り返す・・・・』


この放送は、『アマテラス』内部の廊下を歩いてるヤマザキ達にも聞こえてきた。



「あら大変、ここ爆破しちゃうってさ。助手A君。」


「そうみたいですね。早くシャトルに乗りませんと。」


「でも、まだお迎えが来てないんだよね。どうしよう?」


「何とかなりますよ。ケ・セラ・セラです!、ヤマザキ博士!」


「ん〜、科学者がケ・セラ・セラでイイのか「ヤマザキ博士、お迎えにあがりました」


「何とかなりましたね。ヤマザキ博士。」


「そうだね〜。あっ、お迎えご苦労様」


「ヤマザキ博士、この者達が案内と護衛に付きますのでご安心を。」

ヤマザキの言葉に答えた男は、後ろに控えさせている編み笠の男二人に、
銀色の瞳で目配せすると、銀色の瞳の男はヤマザキ達とは反対方向に向かって歩き出した。



「あれ?、烈辰クンは一緒に行かないのかい?」


編み笠を被らず、すらりとした長身の体を灰色の衣で足元まで覆った
男、烈辰はヤマザキの方を向かず立ち止まった。



「はい、閣下から特命を受けていますので・・・・」


「ふ〜ん、烈辰クンも大変だね。もうそろそろここも爆発するから気をつけてね。」


「はい、では失礼します。しかし、もしもの時はコレが有りますから。」


そう言って烈辰は青い宝石を取り出して、ヤマザキの方を向くと
整った顔に禍々しい笑みを宿して立ち去っていった。



「ん〜、烈辰クンは恐いねぇ。あっ、じゃあ、僕達も行こうか。」


「そうですね、ヤマザキ博士。」


ヤマザキ達も脱出の為に歩き出した。





シャリーン






シャリーン






シャリーン






『アマテラス』の爆破が始まった頃、何処からともなく錫の音が聞こえてきた。
遺跡の眠るこの空間に、ボソンの粒子が飛び交い始める。
そしてボソンの粒子が全て消えると、一機の紅い機動兵器が現れた。



『一夜にて天津国まで伸び逝くは瓢の如き宇宙の螺旋』


紅い機動兵器から聞こえる声が空間に響き渡り、その周りには従者の如く六機の六連が集まった。



『女の前で死ぬか?』


その声に呼応した様に遺跡は花開いた。その中心には一人の女性が遺跡に融合していた。



『アキト!、アキトなんだろ!。だから、リョーコちゃんって、おい!』


・・・・ユリカ・・・


ウィンドウのスバル・リョーコの声もテンカワ・アキトには聞えなかった。
テンカワ・アキトの顔には、感情の昂りによってナノマシンが光り輝いた。



ドガアアアアアン



『久しぶりの登場!』


爆発の炎がこの空間にも迫る頃、壁をブチ破って現れたタカスギ・サブロウタの
エステバリスはスバル・リョーコのアサルトピットを持って、あっという間に入り口から逃げていった。
その後、炎は間髪いれず入り口を覆い、瞬く間に遺跡のあるこの空間にも広がっていった。



『主は逃げぬのか?、遅かりし復讐人よ、今までの様にな。』


紅い機動兵器から聞えてくる声には侮蔑の色がにじみ出ていた。



『・・・北辰、殺してやる!』


ブラックサレナは、ゆっくりと北辰の駆る紅い機動兵器と同じ位置まで上昇していった。



『ほう、心地よい鬼気だ。少しはやるようになったか。だが惜しいかな、この夜天光の錆びにせねばならん。』


『隊長、ここは我々にお任せください。』


六連の一機が夜天光の北辰に向かって話しかけた。



『烈空か・・・主達は引け、奴は我の獲物だ。』


『しかし!』


『引けと言ってる。遺跡は奴を殺し我が回収する。』


北辰は苛立たしげに烈空に言い放った。



『・・・・申し訳ありません。』


青ざめた烈空達が駆る六連は、一機一機姿を消えていった。
六連が全て消えると同時に再びこの空間にボソンの粒子が現れた。



『んっ、烈辰か・・・・・』


『・・・はい、北辰様。』


遺跡の近くに現れたボソンの粒子が消えると、灰色の夜天光が姿を現した。



『主には別の命令を与えた筈だが?』


『はい、しかし閣下から特命を受けまして・・・・』


『特命だと?』


『はい、私に遺跡を回収しろと。ふふ、どうやら、閣下は北辰様にあまり信が置けぬようですよ。』


『ふん、草壁如き輩の信を得ようとは思わんわ。特命を受けたなら、主はさっさと行くがいいわ。』


『では、失礼します。テンカワ・アキト、貴方との決着はいずれ・・・』


灰色の夜天光は遺跡と共にボソンの粒子に包まれようとしていた。



『待て!烈辰、ユリカを返せ!』


ブラックサレナはブースターを最大にして烈辰の灰色の夜天光に向かって行った。
それに立ち塞がったのは北辰の紅い夜天光だった。



『主の相手は我のはずだ。滅!』


ドガ!

紅い夜天光の錫杖の一撃はブラックサレナをフィールドごと壁まで弾き飛ばした。
そして、一気に止めの一撃を放つため、ブラックサレナとの距離を詰めた。



『くっ!』


ブラックサレナは、ハンドカノンを連射して距離を離そうとした。
だが夜天光は、そのまま構わずに接近しブラックサレナのフィールドを突き破って
右胸を両腕で握った錫杖で貫いた。



『この状態で、我に一撃を入れようとするとはな。だが!』


ブラックサレナは右胸を貫いた錫杖にテールバインダーを巻きつけ、夜天光のコックピットめがけて
貫こうとした攻撃は、夜天光の右手に掴まれていた。そして左腕から至近距離でブラックサレナに
ミサイルランチャーを放った。



ブラックサレナは無残な姿になっていた。右胸は貫かれ両手、右肩はミサイルランチャーによって破壊されていた。



俺はここまでなのか・・・・・いや、まだだ!まだ死ねない!


『ほう、先程よりも鬼気が強くなっておるわ。』


そう言うと北辰の駆る夜天光は貫いた錫杖を右胸から抜くと、
段々と無残な姿になったブラックサレナから離れだした。



『どういうつもりだ!北辰!』


テンカワ・アキトは、北辰の行動の意味が分からず苛立たしげに叫んだ。



『悔しかろう、我を殺したいのであろう?。』


『キサマァ!』


『幾人もの血を浴びた主が、まだ人でいるつもりか?

人を捨て修羅にならねば、この首は取れぬぞ

では、我は楽しみにしているぞ遅かりし復讐人、いや、テンカワ・アキトよ。』


北辰の夜天光はボソンの粒子を身に纏いジャンプして消えていった。
その空間に残ったのは無残な姿になったブラックサレナと燃え上がる炎だけだった。



「くっくっくっく、そうだよなぁ北辰。俺はまだ人を捨て切れてなかったみたいだよ。」


ブラックサレナもその傷ついた体にボソンの粒子を纏いだした。



「だが、今度こそ殺してやる。」


テンカワ・アキトの暗く怨念のこもった声がコックピットに響くと、
ブラックサレナと共にジャンプした。


「ジャンプ」



ブラックサレナがジャンプすると同時に『アマテラス』は沈んだ。


この宇宙空間に残ったのは鉄の塊とただ闘いの後の静けさだけだった・・・・・・










後書き


どうも、道雪です。第二話後編お届けできました。前編を出してからチマチマ書いていたら、

ここまで時間がかかってしまいました。早めにお届けできると言っておきながら申し訳ありません。

今回かなり長いです。私の書いた文章の中で最長でした。一瞬、この後編を二つに分けるかと

思ったのですが・・・・・一気に書いちゃいました。読者の方の肩が凝らないか心配な限りです。

皆さんがちょうど良い長さとはどれ位なんですかね?。

さて今回の『アマテラス』後編、シンジョウさんとアズマさんキャラ的に好きでチョクチョク出てもらいました。

今回以外で出番がある事は、まず無く名残惜しいのですがやっぱりサヨナラです、お疲れ様。

私の作品の北辰さんは草壁さんとあまり仲が良くはありません。理由は次回に明らかになるはずです。

烈辰くんも主役キャラなのでここいらで存在を示さないと忘れられそう・・・・・

次回はお墓参りです。段々と劇場版の終わりに近づいてきました。まだまだ皆さんにはお付き合い下さる事をお願いします。

感想、ダメだしお待ちしています。(特にダメだしは私の作品をより良くする為の礎になります。)

でも理不尽なのはやめてくださいね。

それでは皆さんまた・・・・・・・



代理人の感想

「劇場版の終わりに」と言うことは劇場版相当が終わった後も続くんでしょうか、この話?

だとすると楽しみですね〜。

 

 

ちょっと気になった文章

>多数の統合軍の戦艦、機動兵器を相手にたった一機で翻弄する

「翻弄する」は他動詞(「〜〜を」と言う目的語が必要)なので「〜〜を相手に」と加えてしまうと

目的語がなくなって不自然な感じになります。

この場合は「戦艦、機動兵器をたった一騎で翻弄する」と目的語を与えてやるか、

あるいは他動詞から自動詞に変えて「戦艦、機動兵器を相手にたった一騎で喧嘩を売る」とでもした方がよろしいかと。