第五話中編






「・・・・・・・・・わかりました、五分程待ちます。ですが、この状態は維持しますのでお忘れなく。」



ホシノ・ルリは、草壁春樹の懇願に渋々ながら答えるとウィンドウを閉じた。



『いいんですか?、艦長。』


ホシノ・ルリの目の前に、新たなウィンドウが現れ、
そこにはエステバリスで待機していたタカスギ・サブロウタが映っていた。



「構いません、もう抵抗する力は無いでしょうし。

でもタカスギ大尉、警戒を怠らないで下さい。

何が起こるか分かりません。」


『リョーカイ、中尉達にも伝えときます。』


タカスギ・サブロウタは返事をするとウィンドウを閉じた。
その会話をハーリーはジッと見つめていた。自分にも声をかけて欲しいみたいだ。
それに気づいたホシノ・ルリはハーリーにも声をかけた。



「ハーリー君、彼方も警戒を怠らないで下さいね。」


「ハッ、ハイ!。・・・・艦長の為なら


それに元気良くハーリーは返事をした。だが最後の呟きはホシノ・ルリには聞こえなかった。
全ての指示を終えたホシノ・ルリは、一つ大きな溜め息を吐いた。



ユリカさん・・・・・・もうすぐです。みんなも来てるんですよ。

それに・・・・・・・・きっと、きっとあの人も来てくれますから待ってて下さいね。

そうですよね?、アキトさん・・・・・・・



ホシノ・ルリは姉にも等しい存在のミスマル・ユリカに思いをめぐらせ、
そして、アキトの顔を思い浮かべようとした。
その時、五分が経ったのかウィンドウに草壁春樹の顔が現れた。



その顔を見たホシノ・ルリは再び能面のような表情に戻り、冷酷に草壁春樹に話かけた。



「時間です。元木連中将草壁春樹、貴方を逮捕します。」


『ああ・・・・・・だが、部下の安全は保障してもらいたい。』


草壁春樹の顔には生気が戻り、更に瞳には力強さが戻っている事にホシノ・ルリは疑問を感じていた。




一体、この五分間に何があったというのです?

それにこの嫌な感じは・・・・・・・・・



嫌な感覚が拭えないまま、ホシノ・ルリは答えた。



「草壁春樹、貴方には火星の後継者の全部隊に降伏した事、更に武装解除を告げて下さい。

それが終りしだい、首脳陣と共にナデシコCまで出頭して貰います。」


現在、火星周辺では火星の後継者の部隊しか存在せず、首謀者、草壁春樹が降伏勧告に応じたとはいえ、
システム掌握による強襲によって現状把握の出来ない部隊は多数存在した。
その部隊が掌握を解いた途端、ナデシコCに対して攻撃を行わない様に通告をしたのだ。


更に、連合宇宙軍の総司令ミスマル・コウイチロウが火星に向けて援軍を向けてはいるが、
火星に辿り着くまでには暫しの時間がかかる。
ホシノ・ルリのシステム掌握は、長時間行なうには自身の負担が大き過ぎた。
その為、先程の通告に従わない輩を出さない様、待っている間の保険として出頭要求もおこなったのだ。



『・・・・・了解した。』


ホシノ・ルリの言葉に草壁春樹は怒りで顔を歪めたが、それは一瞬ですぐに元に戻った。
その表情の変化にホシノ・ルリは気にもせず淡々と話した。



「では、火星の後継者全部隊の通信機能だけを復活させます。」


それと同時にウィンドウに映る草壁春樹は手にマイクを持ち、静かに口を開いた。



『全将兵の諸君・・・・・・・・単刀直入に言おう。私、草壁春樹は・・・・降伏勧告に同意した。

だが、私の大義、理想が敗れたわけではない!私の後を継ぐ者が必ず現れるだろう!

さぁ、我が屍を乗り越えていけ!』


「!、草か「ナデシコ上空にボソン反応六つ!。来ます!」


草壁春樹の演説を聞いたホシノ・ルリは、慌てて止めようとしたその時、
通信士の真似事をしていた白鳥・ユキナの慌てた声が聞こえてきた。



その声と共にナデシコCに、激しい衝撃が襲った。



「かっ艦長!、しっシステム掌握率が下がっています。」


ハーリーの声は動揺が隠せないくらい上擦っていた。
ホシノ・ルリにもこの声が聞こえていたが返事はしなかった。
いや出来なかった。ホシノ・ルリも又、内心激しく動揺し自分の迂闊さを後悔していた。




くっ、こういう事ですか!。迂闊でした・・・・・・



だが、ホシノ・ルリは、動揺を顔には出さず的確に指示を出していた。



「・・・・システム掌握を再構築します。」


『ホシノ艦長・・・・いや、魔女よ!、私は敗れたが、私の思いが敗れた訳ではない。』


システム掌握の再構築を開始しようとしたその時、草壁春樹のウィンドウがホシノ・ルリ前に現れた。




『草壁死すとも、大義は死せず!』




草壁春樹は叫ぶと銃を腰のホルダーから抜きこめかみに当てた。







そして・・・・一発の銃声が、草壁春樹を見ていた全ウィンドウに響いた。




草壁春樹は鮮血と脳髄を撒き散らしウィンドウの画面から崩れ落ちるように見えなくなっていった。



草壁春樹の存在していたウィンドウからは、部下達の絶叫が聞こえてきた。



「現状は!?」


ホシノ・ルリは草壁春樹の自決の瞬間を目の当りにし、呆然としていたが
直にナデシコCが受けている脅威は取り除かれていない事に気づき状況把握に努めた。



「現在、タカスギ大尉達が迎撃に当たっています。ですが・・・・・」


ハーリーが現状の報告を行なった。最後の言葉はどこか言いずらそうだった。
その時、新たなウィンドウが開いた。それはオモイカネがハーリーが言いずらかった
部分の情報が表示されていた。それを見たホシノ・ルリが口を開いた。



「そうですか、火星周辺の部隊は撤退しましたか・・・・、

では、極冠遺跡周辺の部隊に対する掌握維持を最優先にします。

ハーリーくん、ナデシコCは頼みますよ。」


「はっ、はい!」


「新たにボソン反応一つ!」


白鳥・ユキナは新たにボソン反応が現れた事を継げた。



「ルリルリ!」


ハルカ・ミナトもホシノ・ルリに声をかけた。



「構いません・・・・・」


ホシノ・ルリの答えに周りにいたクルーはざわついた。



「あの人に・・・・・・あの人に任せます。」


そう言ってホシノ・ルリは視線をボソン反応のあった方向に眼を向けた。










話は少し前に遡る。地球連合総会議場では、火星の後継者奇襲部隊が突撃を開始していた。
だが、総会議場出席者は誰も存在せず、アイドル、メグミ・レイナードとホウメイガールズの六人と
暇人数名のバックバンドによるコンサートにすりかわっていた。



「総会は!?地球連合の総会はどうした!?」


奇襲部隊の隊長が困惑の叫び声を上げる中、部下達はアイドルのコンサートに夢中になっていた。
何時の間にかコンサートは、バックバンドの紹介を始めていた。




「「「「「「アカツキ・ナガレ〜」」」」」」



そして、最後に紹介されたのはネルガル会長アカツキ・ナガレだった。
アカツキ・ナガレはバックに火花を出しながら徐々に上って来る。
そして上り終わると頭にタライが落ちてきた鼻血を出しながら振り返り、放ったセリフには緊張感の欠片もなかった。


「金持ちを舐めんなよ〜」


それを聞き、カチンときた火星の後継者の将兵達は、一気に正気を取り戻し銃をアカツキ・ナガレに向けた。




「天誅ぅぅぅぅぅ!」



隊長の合図と共に一斉に射撃を開始した。
だが、その攻撃はアカツキ・ナガレの周囲に張り巡らされたディストーションフィールドに阻まれた。



その光景に将兵達は唖然とした。



「ディストーションフィールド!」


「だから言ったでしょう?、金持ちを舐めるなって。」


隊長とおぼしき男はその言葉に、激しく噛み付いた。



「貴様!、どういうつもりだ!」


「どういう?、無理な事は止めろって教えさ。

総会出席者を人質に取るような組織じゃ、天下は取れんよ。

汝、死にたもう事なかれ。」


アカツキ・ナガレの最後の言葉と共に総会議場の天井をブチ破って二機の積尸気が現れた。



「ならば貴様が死ねぇぃ!。姦賊アカツキ・ナガレ、天誅ぅぅぅぅぅ!」


二機の積尸気はアカツキ・ナガレ達に向かってハンドガンを構え、発砲しようとしたその瞬間、
二体の積尸気の目の前にボソンの粒子が現れ、その中から一機の白い機動兵器が現れた。
白い機動兵器・アルストロメリアは、右腕のクローで瞬く間に二機の積尸気を戦闘不能にした。



「久しぶりだなぁ〜、川口少尉。」


アルストロメリアのコックピットが開くと、その中には月臣源一郎がニヤニヤしながら



奇襲部隊の隊長に声をかけた。



「つっ月臣中佐ぁ〜!?」


奇襲部隊の隊長川口は驚きの余り口をあんぐりと開けた。



「川口少尉、外もあらかた鎮圧した、大人しく降伏しろ。」


「何故です!。月臣中佐、貴方ほどの忠義の士が姦賊などの下に付いているのですか?」


「確かに、会長は姦賊かもしれん。」


月臣源一郎の肯定の言葉にアカツキ・ナガレは涙しながら小さく呟いた。



「酷い、傷ついちゃうなぁ〜、僕。」


「ならば何故!?。あれほど正義に燃えた貴方は何処に行ったのです。

今ならまだ間に合います。我々と共に草壁閣下の正義の戦いを行ないましょう!」


その言葉に月臣源一郎は呆れながら声を出した。



「草壁の正義の戦い?、奴が影に隠れて行なってきた人の道を踏み外す行為を少尉は知っているか?

君達を次元跳躍で自在に送る事出来るのは火星の人々を誘拐し、非人道的な数々の実験を行った成果だという事を。

草壁に徳など存在しない。それに少尉思い出して欲しい、白鳥九十九はこんな事は望んでいない。

平和を愛した白鳥九十九が泣いているぞ。」


この説得に奇襲部隊の将兵達はうな垂れ武器を降ろす者も出てきた。
川口少尉もうな垂れ、武器を降ろすと口を開いた。



「・・・・・・判りました、月臣中佐。我々は降ふ『お待ちなさい。』


降伏を承諾しようとした川口少尉の言葉を遮る声が聞こえてきた。
そしてアルストロメリアと同じようにボソンの粒子が再び空間に現れた。
粒子の中から現れたのは灰色の夜天光だった。ゆっくりと地面に降りると、
夜天光のコックピットが開き、徐々にコックピットの中に光が差してきた。



「・・・・・・烈辰。」


その姿、声を見てアカツキ・ナガレは苦い顔つきで呟いた。



「薄汚い暗部が何のようだ!」


川口少尉の言葉には拒絶と嘲りが含まれていた。
だが、烈辰は気にも留めず話を続けた。



「おや、嫌われたものですね。ですが、貴方達はこの男に騙されているんですよ。

なにせ、この男は「止めるんだ!」


烈辰の喋ろうとしている内容に気づいたアカツキ・ナガレは、慌てて止めようとした。
また、月臣源一郎の顔にも先程の余裕は無くなっていた。だが、烈辰はそのまま言葉を続けた。



「白鳥九十九を死に追い遣ったのは、そこにいる月臣源一郎なんですよ。」


烈辰のこの言葉に周囲は静寂に包まれた。火星の後継者の将兵達は動揺を隠し切れなかった。



「バカな!、月臣中佐が友であった英雄白鳥九十九を殺すわけがない!」


  その動揺の中、烈辰に真っ先に噛み付いたのは隊長川口少尉だった。



「おや、信じられませんか?」


「当然だ!、貴様等のような薄汚い連中が我々と轡を並べているだけで吐き気がするのに、

あまつさえ、中佐を中傷する言葉を吐くとは万死に値する!私は、中佐の言葉を信じる!」


「では、閣下への忠義を貴方はどうするのです?。月臣源一郎の言葉を信じると言うのならば

火星の後継者を裏切るという事ですよ?」


「・・・・・・構わん。中佐に聞いた事が事実なら草壁閣下には最早ついては行いけない。

それに言った筈だ、貴様等の言葉を信じる気はない!」


「どうしてもですか?」

「くどい!!」


川口少尉は完全に烈辰を拒絶した。その言葉を聞いた烈辰は溜め息を吐き、そしてすうっと目を細めた。



「・・・・・ふう。愚者は愚者でしかないのか。ならば貴方達は離反者として処分します。

・・・・・・・・・・・さぁ、滅びなさい。」


夜天光のコックピットが閉じると、夜天光は腰に差してある刀を抜き放ち、
将兵達が集まっている場所目掛けて振り下ろした。


叫び声を上げる者、眼を閉じる者、銃を夜天光めがけて発砲し抵抗する者、逃げ出す者など
が入り乱れ将兵達は大混乱に陥った。そんな中、一人川口少尉はずっと夜天光を睨み続けた。
だが、睨むだけでは状況は変わらず、川口少尉は死を覚悟し目を瞑った。


しかし、何時まで経っても衝撃がこないのを不思議に思い恐る恐る目を開けてみると
そこには、両腕のクローをクロスさせ刀を受け止めているアルストロメリアだった。



「つっ月臣中佐!?」


「何をしている!。お前達は早く逃げないか!」


「・・・・ですが」


「早くしろ!」


月臣源一郎の声には苛立ちと殺気がこめられていた。何故なら、夜天光の方がパワーが上なのか
アルストロメリアは徐々に片方の膝が地面に着きそうになっていた。



「はっ、はいぃぃぃ〜!、撤退だ!。兎に角、一目散に脇目も降らず駆け出せ!」


言うより早く他の将兵達はとっくの昔にいなくなっていた。



「待ってくれぇぇぇぇ〜!」


川口少尉は時折コケながら逃げ出した。



『何をするのです?』


『元部下を殺させる訳にはいかんな!』


アルストロメリアはバーニアを一気に吹かして、崩れた体制を整え刀を押し返し夜天光と距離をとった。



『烈辰、貴様も投降しろ、じきに火星にナデシコが辿り着く。火星の後継者は負ける!!』


月臣源一郎の声と共に、アルストロメリアはローラで先程とった距離を一気に縮めクローを繰り出した。



『そうですね。最早、火星の後継者に勝機は無きに等しい。ですが私にとっては勝ち負けなど今更どうでもいいのですよ』


烈辰もまた月臣源一郎の言葉に答えながら夜天光は紙一重で全てかわしていた。



『何!ならば何故だ?、離反しょうとしたとはいえ殺す必要はない筈だ!』


アルストロメリアのクローと夜天光の刀は、ぶつかり合い甲高い金属音を響かせ鍔迫り合いの状態になった。



『裏切り者には滅びを、それが私の流儀です。例え表の人間でも裏の人間でもそれは変わりはありませんよ。

ふふふ、ですが、実際は私の話を信じなかった腹いせの方が強いかもしれません。

どうせ、貴方が止めに入ると思っていましたしね。』


烈辰の言葉を聞いた月臣源一郎は驚きで目を見開いた。



『貴様、本当に烈辰なのか?』


その間にも夜天光とアルストロメリアは鍔迫り合いを続けていた。



『ええ、私の名は烈辰、北辰様の片目にして六人衆筆頭。

変わったといえば・・・・いや、別に貴方に喋る必要はありませんでした。』



私を縛る鎖はもう存在しないんですよ。

・・・・・月臣源一郎、いい素材です。

さぁ、私が知らない武人の喜びを味あわさせて貰いますよ!


その時、鍔迫り合いを続ける夜天光とアルストロメリアに変化が起きた。
夜天光は前蹴りを放ち、距離をとった。
そして、夜天光は刀を鞘に戻し抜刀術の構えに移った。



『そういえば、墓では暗部の抜刀術が貴方の柔に勝てないと仰いましたね。

丁度いい、この場で私の抜刀術と貴方の柔どちらが強いのか決着をつけましょうか?』


『烈辰、貴様が何を考えているかは知らんが

今まで、幾度となく戦い決着はつかなかった。

いいだろう、これで最後だ!』


アルストロメリアもまた柔の構えを移った。
夜天光、アルストロメリア両機は互いにジリジリと距離を詰めていた。
一定の距離にきた時両機はピタリと動かなくなった。


辺りはこの雰囲気に呑まれたように静寂に包まれた。
その時、積尸気がブチ破った天井の破片の一部がゆっくりと落ちていった。



『いざ!』


夜天光は柄に込める力を更に強めた。



『尋常に!』


アルストロメリアは両手のクローを伸ばした。



『『勝負!!』』








夜天光とアルストロメリアは一気に間合いを詰める。




『『うおおおおおおおお!!』』





烈辰と月臣源一郎の二人は獣の如く吼えた。



先に仕掛けたのはアルストロメリアだった。



『十手の内の一手、円斬孤』


夜天光のコックピットを貫こうとアルストロメリアは、半回転させ威力を増した左腕のクローを突き出した。



『チィ!』


この攻撃を、夜天光は左足を下げ体さばきでかわした。
だが、夜天光の胸の一部分が避けきれずに、アルストロメリアのクローによって吹き飛んだ。
夜天光は構わず更にアルストロメリアの懐に踏み込み抜刀した。



『抜刀術二の太刀、桜陣』

烈辰の叫びと共に、鞘走りによって神速にまで高められた刀で切り上げ、
その勢いを殺さないうちに夜天光は体を捻り、もう一撃を加えた。



この二撃によってアルストロメリアの左腕は付け根から吹き飛び、
そして右肩から上は袈裟懸けに一刀両断された。



アルストロメリアはゆっくりと崩れ落ちた。



『ふう、私の勝ちですね、月臣源一郎。』


烈辰は一息吐くと、月臣源一郎に語りかけた。



『ああ・・・・・・・・さぁ、殺せ。』


月臣源一郎も、又、静かに答えた。



『良き戦いでした。では・・・・・・』


アルストロメリアのコックピットに向けて、夜天光は右腕で刀を構えた。



突き刺そうとしたその時、夜天光の右腕が突然止まり、小さな爆発と共に右腕が地面に落ちた。



『おや?、どうやら耐え切れなかったようですね。動かなくなりましたし。』


夜天光のコックピットから出てくると烈辰は、微かに微笑みボソンの粒子を纏い始めた。



『何故、止めを刺さん!?』


月臣源一郎は声を荒げた。



『夜天光が動きません、ジャンプ装置も壊れたようですし。

それに、私は貴方に何時までも構ってはいられませんよ。

では・・・・・・・』


烈辰は優雅に一礼すると単独のボソンジャンプしていった。



「最早、格下か・・・・・しかし、一体奴に何があったというのだ?

今までで一番強く感じたが・・・・」


その様子をアルストロメリアのコックピットから見詰めながら月臣源一郎は呟いた。



『月臣君、大丈夫かい?』


その時、コミニュケが開かれアカツキ・ナガレのウィンドウが現れた。



「会長、私は大丈夫ですが、新型を・・・・申し訳ありません。」


『ああ、気にしない、気にしない。また直すなり、造るなりすればいいし。

君の様な優秀な人材を失うよりはずっと良いさ。

それじゃあ、降りてきてくれないかい?。月臣君には説得の役割があるからね。』


「・・・・・・はい」


月臣源一郎は苦い敗北感を味わいながらゆっくりとコックピットから降りていった。







時は再び元に戻る。



火星の大地にボソンの粒子が飛び交う。その中心から鮮血の如く鮮やかな赤に染め上げた夜天光が降り立った。



「草壁は自決したか・・・・・・」


夜天光のコックピットの中で北辰は一人、先ほどの光景を思い出していた。



「無様だな、写しよ、最早、狂っていたか・・・・・・。

うぬは草壁の存在に拘り過ぎだ、草壁であろうとし過ぎたのだ。」


その時、一陣の風が吹いた・・・・・・・



「んっ、来たか・・・・・・・・」


北辰は視線を先に向ける。


その視線の先にはボソンの粒子が集まり出した。


そこには、純白の戦艦ユーチャリスとその艦首にはブラックサレナが立っていた。


夜天光は大地に錫杖を突き刺し、ゆっくりと上昇していった。


それに合わせて、ブラックサレナも、またゆっくりと上昇していった。





「さあ、決着をつけよう・・・・・・・・」






北辰は静かに口を開いた
















後書き



どうも、道雪です。夜叉と戦神の第五話中編をお送りします。最初は前半後半で分ける予定でしたが・・・・・

予定は未定と言う事が良く分かりました。今回の内容は烈辰くんと月臣くんの決着です。

烈辰くんは幾度となく月臣くんとぶつかっていますので、主役のアキトくんよりも多く戦っています。

その為、コントロールの抜け出た烈辰くんが最初に決着を着けるのは月臣くんが一番と思ったのが、

今回の話を書きたかった理由です。

次回こそ、北辰さんとアキトくんの決着です。

それでは、管理人さん、代理人さん、読んでくださる読者の皆さん、今年もよろしくお願いします。

では・・・・・・・



管理人の感想

道雪さんからの投稿です。

おお、月臣の戦闘シーンをこの場面で見れるとは思いませんでした。

それにしても、負けが込んでるな・・・月臣(笑)

烈震は何処に向かったのか、気になりますね〜、ジャンプユニットは壊れてるらしいし?

個人的な目的があるんでしょうか?

アキトは本当に最後の最後にしか出番無いし(苦笑)

次はアキトと北辰の決着ですね、