第五話後編







黒と紅の巨人は互いにぶつかっては離れ、離れてはぶつかる事を幾度となく繰り返していた。


激しいGがテンカワ・アキトと北辰を襲っていた。


北辰は、激しいGが襲う夜天光のコックピットで愉悦の笑みを浮かべていた。


それは、この戦闘そのものに快感を感じているかのように。



『フッ、どうしたのだ?、主の力はこんなモノではあるまい。

それとも、これが限界だとでも言うのか?

怖いのか?

悔しいのか?

やはり、いくら鎧を纏おうとも心の弱さ迄は守れぬのか?』


北辰はテンカワ・アキトを挑発するかの様に嘲笑った。




『ガアアアアアアアア!!』


テンカワ・アキトは獣の如く吼えた、これが答えだと言わんばかりに。
ブラックサレナは装甲が拉げるのも構わずに夜天光に頭から体当たりを喰らす。
だが、この攻撃は夜天光のディストーションフィールドによって阻まれ決定的な一撃にはならなかった。



『それで良い。もっと、もっと我を楽しませろテンカワ・アキト!』


北辰は叫ぶと夜天光で蹴りを放ち、間合いを空けると、
夜天光の両腕部からミサイルランチャーを放った。



『チィ!』


テンカワ・アキトは舌打ちをすると、ハンドガンとテールバインダーで
ミサイルを打ち落とし、ブラックサレナは夜天光に迫ろうとした。
だが、しかし、打ち落としたミサイルの爆煙がブラックサレナの視界を覆ってしまい夜天光を見失った。



『何処だ!』


ブラックサレナはテールノズルを逆噴射して空中で立ち止まってしまった。



『主は甘い、うろたえてどうする!。もっと周囲に気を配れ!』


北辰の叫びが立ち止まってしまったブラックサレナの真上から聞こえてきた。
視界をふさがれ立ち止まったテンカワ・アキトは、その声に一瞬反応が遅れてしまった。



この程度の反応の遅れは一般のパイロットを相手にするならなんの問題もないが、
相手はあの北辰が駆る夜天光だった。



その為、この一瞬の反応の遅れは夜天光が再び距離を詰め得意の接近戦に持ち込むのに十分な遅れだった。
爆煙を掻き分け現れた夜天光は、拳を何発もブラックサレナに叩き込んだ。
ブラックサレナのディストーションフィールドで夜天光の拳を弾いてはいるが、
徐々に地表へと押し込まれていった。



『どうした、主の女が封じ込まれている遺跡が気になるのか?

あの時の様な鬼気が全く感じられぬぞ。言った筈だこの首欲しくば人を捨てよと。』


『・・・・・・・・・!!』


ブラックサレナはテールノズルを最大まで噴かして夜天光を押し上げようとしていた。
そんな衝撃で揺れるコックピット内で、テンカワ・アキトは歯を食い縛っていた。
それは北辰の言葉にテンカワ・アキトが何も反論できなく、
戦いに集中している筈が時折り、極冠遺跡の方向を気にしている自分がいたからだ。



『主はどちらを選ぶのだ?、我の首か?、女か?。

女が欲しいのならさっさと遺跡に向かうのだな。

人のままの貴様を夜天光の錆にする気も起きんわ。

我は修羅の貴様を血の海に沈めたいのだ!』


夜天光はブラックサレナを更に厳しく攻め立てた。
この攻撃は、ブラックサレナがテールノズルの噴射で夜天光を 押上げようとする事などものともしない程激しかった。
そして、振りかぶった一撃はブラックサレナを地表に叩きつけた。
地表の上を覆っていた厚い氷が飛び散るほどに。



『グッ!』


テンカワ・アキトはコックピットのシートでも吸収しきれなかった衝撃に激しく襲われた。


衝撃によって気を失う直前、北辰の残念そうな声が聞こえてきた。



『この程度か・・・・・・・期待はずれだったな。』


テンカワ・アキトはこの声を聞いた直後、意識は闇に包まれた。




・・・・・・・・・・・・・・・『ユリカ』




俺の脳裏に、彼女と初めて唇を重ねた時の光景が浮かんだ。


・・・・・・・・・・『ユリカ』




俺の脳裏に、指輪を渡した時の、はにかみながら嬉しそうに笑った彼女の笑顔が浮かんだ。


・・・・・『ユリカ』




俺の脳裏に、シャトルの中で恐怖と絶望に歪んだ彼女の顔が浮かんだ。


・・『ユリカ』



俺の脳裏に、遺跡と融合された彼女の光景をが浮かんだ。


・『ユリカ』




俺の脳裏に、全てを奪われ絶望した事など何も知らずにただ幸せな夢を見ながら眠り続ける彼女が浮かんだ。


『ユリカ』



彼女は愛しい存在、何故なら俺の愛情への飢えを満たしてくれるから。



『ユリカ』



彼女は憎い存在、何故なら俺の希望と夢が奪われた時、彼女はただ眠っていたから。



『ユリカ』



だから俺は、彼女を求める事をやめにした。



そして俺は、変わりに求めた、狂おしいまでに殺したい男。














『なあ?、北辰!』










テンカワ・アキトの意識は急速に覚醒した。
時間にして一、二秒の気絶だったのか覚醒したテンカワ・アキトが目にしたものは、
北辰の駆る夜天光がブラックサレナに止めを刺そうとする瞬間だった。



『さらばだ、復讐人よ。』


夜天光の抜き手がブラックサレナのコックピットを貫こうとした。
その時、テンカワ・アキトの鬼気が凄まじい程に膨れ溢れ出した。


ブラックサレナは機体を捻る事によって可動範囲の狭い左腕の可動範囲を広げた。
何故なら、左腕を差し出し犠牲にする事によって夜天光の一撃を防ごうとしたのだ。
この左腕の犠牲で、夜天光の右手から放たれた抜き手は、
ブラックサレナの左腕を突き抜けただけに止まりコックピットまでは到達しなかった。



『なに!?』


北辰は驚きの声を上げた。ブラックサレナが再び動くとは予想だにしなかったのか、
慌てて突き刺した右手を引き抜こうとしたが、ブラックサレナの左腕の内部で挟まった
らしく中々、引き抜けなかった。



『ウオオオオオオオオ!、北辰、殺してやる!』


ブラックサレナは、テールノズルが火花を激しく飛び散るまで噴かして体制を整えながら起き上がると
右腕のハンドガンを零距離から打ち込んだ、装甲の一部が反動でダメージを受けるのも気にせずに。




夜天光とブラックサレナを濛々とした煙が包んだ。






ナデシコCのクルーやエステバリスのパイロット達はこの緊迫した光景に魅入られていた。
六連をたいした苦もなく撃退する事に成功し、
やる事のなくなったスバル・リョーコ、アマノ・ヒカル、マキ・イズミ、タカスギ・サブロウタ
の四人はナデシコCの防衛をしつつ、ずっと夜天光とブラックサレナの戦いを見詰めていた。



『ねぇ、リョーコ、手伝わなくていいのかな?』


アマノ・ヒカルは何か辛そうな表情でスバル・リョーコに話しかけた。



『バカ!、男のタイマン邪魔する奴は馬に蹴られて三途の川だ!』


スバル・リョーコは、怒鳴り散らしながらも視線をウィンドウから外せなかった。




すげぇ、これがテンカワの実力なのか。

俺等じゃ、あの紅い機体とやり合っても絶対勝てない。

・・・・・・・・でも、すげぇ悲しくなってくるよ、テンカワ、お前を見てると。

・・・・・・・・それに、すげぇ、悔しいよ、何にも出来ない自分がさ。






煙が晴れる頃、黒と紅の二機はいつの間にか距離を取り静かに佇んでいた。
夜天光は引き抜けない右手首を自らの左手で叩き壊し、距離を取った。
ブラックサレナは零距離からの射撃中、自らにもかなりの被害をだした為、
被害を少なくしようと距離を取った。



『良くぞここまで・・・・・・・主の執念見せてもらったわ。』






『ハア、ハア、ハア、・・・・・・勝負だ!』




テンカワ・アキトは着けていたヘルメットを脱ぎ捨てると叫んだ。
ブラックサレナは、残っている右腕からハンドガンを外した。
コックピットのテンカワ・アキトは、浅い呼吸を何度も繰り返したいた。




バッテリーは限界、装甲の耐久度も限界、使えるのは拳のみ。

勝負は一撃!



『抜き打ちか、笑止!』


夜天光は左手を回転させると、同じように抜き打ちの構えに移った。




残った左も奴の攻撃で思うように動かんのか・・・・・

フン、だが面白い!。

これこそが我が求めた戦いなり!。



二機の周りには、不可侵な領域が出来上がっていた。


時間が止まっているかの様な錯覚を起させるほどに。


だが、やがて、少しずつだが、時が動き出す感覚が二人に戻ってきた。
それは緊張と集中力が極限までに高まったからだ。
後は少しのキッカケを与えるだけで、
膨らんだ風船が破裂するかのように二機は、動き出すだろう。



そのキッカケはほんの些細な出来事だった。
ブラックサレナが地表に叩きつけられた時に、飛び散った氷の塊の一つが
二人に触発されたかのように、軋みながら真っ二つに割れた。
それが合図かのように黒と紅は動き出した。










勝負は一瞬だった。









先手を取ったのは夜天光だ。
夜天光は思うように動かない左腕を防御に回し、
右手首が無くなった右腕でブラックサレナの装甲を貫く。


だが、夜天光の攻撃はブラックサレナのコックピットを貫くまでに至らなかった。
ブラックサレナはこの夜天光の攻撃をカウンターで合わせて、
右の拳を夜天光の左腕ごとコックピットまで貫いた。









『ゴフッ!・・・・・・・見事だ・・・・』






押し潰されたコックピットの中で、北辰は激しく吐血するのと同時に
夜天光もまた静かに崩れ落ちた。





『ハア、ハア、ハア、ハア、ハア。』




補給されなかった酸素を一気に取り込むようにテンカワ・アキトは深呼吸を何度も繰り返した。




・・・・・・・勝った・・・・・・・・





ブラックサレナはその鎧を脱ぎ捨てた。
中から傷ついた桃色の機体が現われた。
煤にまみれた桃色のエステバリスは歓喜の涙を流すようにオイルを滴らせていた。

















それから・・・・・・・・


















ナデシコCは遺跡に囚われたミスマル・ユリカの救出に成功し、

火星の後継者首魁、草壁春樹以外の首脳部を逮捕して火星を去っていった。

黒の王子がいずれ帰って来るのを信じ続けて・・・・・・・


そして黒の王子は、一つの復讐を終えた満足感、達成感など微塵も感じられずに

その心に飛来したのは何故か、虚無感だけだった。

黒の王子はユーチャリスに戻りバッタ達にブラックサレナのパーツを回収させると

ボソンの粒子を纏い静かにジャンプしていった。



火星極冠遺跡周辺は再び元の静寂に包まれた。


そんな中、崩れ落ちるように倒れている夜天光の近くにボソンの粒子が集まり始めた。
光の中から現れたのは、白を基調とし朱色の牡丹が見事に刺繍された着物を着ている烈辰だった。
腰に差してある刀をカチャリと鳴らすと、烈辰はただ静かに夜天光を見上げた。


だが、烈辰の瞳は微かに濡れて揺れていた。




貴方の飢えは満たされましたか?

私は貴方が言った言葉の意味が少しだけ分かった気がします。

強い者と戦う喜びを知ることによって、私も一歩進む事が出来ました。


それにしても・・・・ラボはもぬけの殻・・ヤマサキの姿はなかった。

私の体を弄くった報いを受けて貰おうと思ったのですが。



しかし、着る物がない為、仕方なく着物を着ましたが寒いですね・・・・


倒れている夜天光を暫しの間見上げていた烈辰が、何を思ったのかゆっくりと口を開いた。



「前にも言った筈ですよ、暗殺が目的の時は殺気を抑えろと。ねぇ、烈波。」


「ハハハ!、やはり、アンタには敵わないなぁ。オイ!」


巨大な氷の塊の後ろから烈波と呼ばれた男が四人の編み笠を引き連れ現れた。
そして五人ずつ、三組みに組み分けされた編み笠達が、烈波の掛け声によって烈辰を囲むように現れた。
これによって、烈辰は四方を囲まれた事になった。



「六人衆の候補達が一体何のようですか?」


囲まれようともまるで動じずに、烈辰は淡々とした口調で烈波に声をかけた。



「今日からこいつ等は俺が統括する事にさせて貰う、こいつ等も納得したしな。

あんたを生死問わず連れて来いって、新しい雇い主の命令でね。」


数を揃えている自信の表れか、烈波は下卑た笑みを浮かべて楽しそうに話した。



「新しい雇い主?、それは、私を裏切るという事ですね。」


「北辰が倒れ、他の六人衆が全滅した今、あんたの下にいる気は毛頭ないんだよ。

大体、俺等はなぁ、火星生まれのあんたが昔っから気に食わなかったんだ。

そうそう、雇い主だったな。冥土の土産に教えてやるよ、俺等の新しい雇い主はクリムゾンだ。

仲介はヤマサキ博士だがな。」


「・・・・・ほう、ヤマサキですか。」


烈辰の顔に喜びの表情が浮かんだ。



「まぁ、そう言う事だ。

それじゃあ、あんたには死んで貰おうか。

生かすつもりはないんでね。」


烈辰の周りを囲んだ編み笠達は、烈波の掛け声に全員小太刀を抜刀した。



「愚かな・・・・・、力量の差も理解できないとわ。

幾ら人数を集めようとも、所詮四対一・・・・・」


「だまれ!。おい、やれ!」


烈辰に向かって、編み笠達は一斉に襲い掛かった。














地面は、血で真っ赤に染め上げられた。


烈辰の周りにはもの言わぬ骸が幾つも倒れていた。





「ばっ!、バカな!、十五人をものの数秒でだと!」


烈波はあまりの予想外な光景に、声を荒げた。



「無駄な事を・・・・・・」


烈辰は、鮮血が滴る刀を振り払うとゆっくりと烈波に向かって歩き出した。



「おっ、おい!。お前達、どうした、早く行け!」



烈波の焦りながらの命令を、生き残った五人の編み笠達は誰も聞こうとはしなかった。



いや、聞けなかったのだ、烈辰と自分達の力量の差に身が竦んでしまったのだ。



「しっ!、しかし、れ、烈波様、格が違いすぎます。逃げまグワッ!」


一人の編み笠の反論は、烈辰が袈裟懸けに斬りつける事によって遮られた。



「一つ、言い忘れましたね。私は私に牙を向く者に対しては容赦はしませんよ。

よって、貴方達が選べる選択肢は二つ、私を殺すか、貴方達が滅ぶかのね。」


烈辰の顔には禍々しい笑みが浮かんでいた。



この言葉を聞いた編み笠達は、恐怖に駆られ我先にと烈辰に対して小太刀を振り上げ向かっていった。



「愚かな、」


烈辰は、体ごと突っ込んできた最初の編み笠の小太刀を半身になって避けると、柄で顎を砕いた。



「恐怖に駆られ、統制を乱すとは」


次の編み笠は、いきなり小太刀を投擲してきた。それを弾くと編み笠は烈辰の目の前から消えていた。
烈辰が上を見上げると、編み笠が刀の鍔に足をかけ一直線にこちらに向かって落ちてきていた。
烈辰は足元の地面に突き刺さっていた小太刀を引き抜くと、上空にいる編み笠に投擲した。
編み笠は逃げ場の無い空中にいた為、小太刀を避ける事が出来ず喉に突き刺さった。



「だから、貴方達は」


三番目の編み笠の攻撃は、ただ我武者羅に小太刀を振り回すだけの単調な攻撃だった。
簡単に避けた烈辰は、刀を編み笠の胸に突き刺すとすぐさま引き抜こうとした。
だが、編み笠は突き刺さった刀を素手で掴み、引き抜けなくするとそのまま絶命した。



「候補者」


四人目が襲ってきた。烈辰はすぐさま刀を手放すと編み笠が小太刀と共に突き出した右手を、
烈辰は左手で編み笠の手首を掴み、右手を肘の下に置くと一気にへし折った。
そして、そのまま流れる動作で烈辰は自分の肘で編み笠の喉を潰した。



「止まりなのです、以上。」



・・・・・・・かっ、勝てるわけがない。

実力が違いすぎる、・・・逃げるか。


烈波は動揺しながらも、頭を激しく回転させると

すぐさま、退却に移った。



「逃がしませんよ。」


それに気づいた烈辰は、先ほど肘をへし折った編み笠が落とした小太刀を掴むと
一気に投げつける。それは右のふくらはぎを斬りつけ、烈波は転がりそして倒れこんだ。
それを見届けた烈辰は刀が突き刺さったままの編み笠に近寄る。
そして、刀を引き抜くと再び烈波に目をやった。



「無様ですね・・・・・・」


烈辰の目には、ズルズルと這いずっている烈波が映った。
そして、ゆっくりと迫ると烈波の横顔に刀を突き刺した。



「烈波、貴方には訊きたい事があります。」


「なっ、なんですか?、筆頭。」


振り向いて答えた烈波の口調は、媚を売るかの様に丁寧だった。



「ヤマサキの居場所を教えなさい。教えれば命は助けてあげましょう。」


「はっ、はい。ヤマサキ博士は地球のクリムゾンの研究じょ「チッ!」


烈辰は舌打ちすると凄い勢いで後ろに下がった。
烈辰のいた足元には、ナイフが地面に刺さっていた。
そして、烈波の胸にもナイフが突き刺さっていた。 ふくらはぎが斬られている為に逃げれなかったのだ。















「あれ〜、おかしいなぁ?。ちゃんと狙ったんだけどなぁ。」





声は、北辰の夜天光が倒れている方向から聞こえてきた。



その声が聞こえた方向へ顔を向けた烈辰が見たものは、夜天光の上に佇む三つの人影だった。


一人は金髪おかっぱ頭で瞳は金色の十二、三才の男の子だった。


そして後ろの二人は金髪と銀髪を腰の辺りで赤と青のリボンで結んでいる。
顔は目の部分だけをくり貫いた仮面を被っていた為よくは判らなかったが、
胸の膨らみが服の上からでもわかる為、女性だという事は烈辰にも判った。



「何をしている!」

「ねぇ、どう思う?。僕はちゃんと狙ったのにさ、当ったのは一本だけなんておかしいよね〜。」


烈辰の言葉は無視して、男の子は後ろの仮面の女性達に声をかけた。



「「・・・・・・・」」


二人は声を出さず、ただ頷くだけだった。



「チェ、これだからさ、マインドコントロールは止めようってパパに言ったのに。」


男の子は、さもつまらなそうに口を尖らせた。



「何をしてると言っているのです!」


「えっ!、ああ気づいちゃったの・・・って僕がナイフ投げたんだから、普通気づくよね。クスクスクス」


そう言って笑いながら、男の子はかなりの高さから音も無く着地した。


「あっ、二人は作業を続けてね。」


男の子は見上げてると仮面の二人に声をかけた。



「「・・・・・・・・」」


二人は再び声を出さずに、ただ頷くだけだった。



「さて、初めましてお兄さん♪。僕の名前はナイトメアって言います。

年は十三才、好きなものはパパです。

で、後ろの金髪の方がエオス、銀髪の方がセレネだよ。」


男の子ナイトメアは楽しそうに自己紹介した。


だが烈辰は子供だからといって警戒は解かなかった。
刀を持つ手には力が込められたままだ。



「目的はなんです?」


「ん〜とね、パパがあの機体を回収してこいって。」


そう言って、ナイトメアが指差したのは北辰の夜天光だった。



「何故、そのパパは回収しろと?、それにパパとは誰ですか?」


「ん〜、理由はしらないんだ。パパは別に言わなかったし。

それとねぇ、パパはヤマサキ・ヨシオって言うんだよ。」


ナイトメアはニコニコしながらヤマサキ・ヨシオの名を呼んだ。
それを聞いた烈辰は、銀色の瞳を輝かせ、ニヤリと笑った。



「ほう、丁度いい烈波も死んでしまった事ですし、貴方に聞きましょう。

ヤマサキは地球の何処にいるのです?」


「パパの居場所?、教えても良いけど。パパに何の用事?」


ナイトメアは小首を傾げて訊ねた。



「ええ。ヤマサキには報いを受けてもらおうと思いまして。」


「報い?。それってパパを傷つけるの?」


「当然です。あの男には死の報いを与えねばなりません。」


烈辰の言葉を聞いたナイトメアは俯くと、急激に殺気を溢れ出させた。







「・・・・・そう、パパを傷つけるんだね。

そんな事は、そんな事は絶対許さないよ。

そうか、お兄さんは悪い人なんだね。

だったら・・・・・・・・・・、悪夢を見せてあげるよ!


「なっ!」


烈辰は驚きの声を上げる。それはナイトメアが光の如き速さで烈辰に襲い掛かったからだ。






鮮血が火星の大地に飛び散った。







そして一つの物語は終わりを告げ、新たな物語の幕が上がろうとしていた。

















後書き



どうも、道雪です。夜叉と戦神の第五話後編をお送りします。

今回で劇場版は終了です。やっと、北辰さんとアキトの決着がつきました。

そして、新たに登場したナイトメアとエオスとセレネは、ヤマサキが創り上げた闘人形ですが、

一体、どんな活躍をするのでしょうか?

次回は数ヵ月後から始まります。次回も皆様方が読んでくればこれ幸いです。

そして感想をくださる読者の方には御礼を申し上げます。

では・・・・・・・・・



管理人の感想

道雪さんからの投稿です。

いやぁ、金髪と銀髪と聞いて一瞬サラとアリサを思い出しましたよ(苦笑)

それにしてもその正体は、ヤマサキの作り上げた人形ですか?

でも、マインドコントロールって言ってたから、元は普通の人間なんですよね(仮面で顔を隠してますし)

う〜ん、正体は誰だろう?

 

劇場版完結、お疲れ様でした!!