木連 某所。

「お初に御目にかかります、天川カイトです。そして、こちらは」

「水原麗香です」

畳みが敷かれた和風の部屋に3人の男女が居た。

2人は紺を基調とするスーツを着込んだ天川カイトと水原麗香。そして、もう一人は

「お話しは伺っています。

 私は、まさかあのアルビオングループの総帥が自ら乗りこんでくるとは思ってもみませんでしたよ」

「私達が本気で和平を考えているということですよ、陣内議員」 

陣内と呼ばれた、スーツ姿の男だった。

その男は、実年齢は50代前半だと言うのに、その姿は若々しい。

無駄な贅肉がほとんどついていないのが、服の上からでもよくわかる。

髪はまだ黒々としており、顔に皺が殆ど見当たらない。

なにより、人を惹きつけて止まない魅力があった。

(・・・草壁が彼を暗殺した訳がわかるような気がする。

 確かに、彼のような政治家、しかも和平派の議員がいたら脅威以外のなに物でもないからな)

そんなことを考えつつ、カイトは切り出した。

「私達としては、この馬鹿げた戦争を一刻も早く終らせたい。

 その為には、いかなる手段も問わないつもりです」

「私もそれには同意いたします。

 しかし、私は木連の国会議員です。

 言わば、木連市民を代表する者の一人。

 私を信頼して投票してくれた彼らを、売り飛ばすような売国奴的なことは出来ません」

そう断言する陣内。

「勿論、そのことは承知しています。

 我々としても、出来うる限り対等に近い和平を望んでいます」

 陣内は、露骨には示さないがやや安心したようだ。

だが次の瞬間、冷静な声で尋ねる。

「だが、連合政府は和平を受け入れますか?」

「受け入れさせます。彼らだって今の地位を失いたくは無いでしょう」

遠まわしに、脅迫してでも『受け入れさせる』とカイトは明言した。 

「そうですか・・・。

 しかし、そうなると問題はこちらのほうですな」

「確かに、草壁を筆頭とする強硬派は厄介な存在です」

陣内は渋い顔をして黙り込む。

「ですが我々にはその強硬派を黙らせる秘策があります」

カイトが、自信に満ちた声で言う。これには陣内も興味を誘われ尋ねた。

「それは、『ボソンジャンプの凍結』です」

それがカイトの答えだった。

だがこの時、彼らは知らなかった。既に草壁派と政府上層部は魔女の傀儡になっていることを。

そして、木連の軍事力が史実とは比べ物にならないほど強大なものに成って行きつつあることに。




          時を紡ぐ者達  第14話




 3人の会談の数日後、それは起こった。

「大変です!! 跳躍門が機能しません!!」

彼らから見れば悪辣非道な敵、地球連合軍に何時もの様に痛打を与えるべく無人兵器を送りこもうとした担当者は耳を疑った。

だが、何度試しても跳躍門は機能しない。動揺しながらも、その担当者は上司にことを報告する。

 総司令部は後日、別の跳躍門で実験を試みたが上手くいかなかった。

この事実は衝撃として総司令部を通じて、他の多くの機関にも伝わった。

何故ならこのまま跳躍門が使えなくなれば、彼らは地球に対して直接攻撃を行なう手段を失うばかりでなく、

下手をすれば迅速な兵力の投入が出来ないために、今まで制圧した地域を奪還される危険性も出てくるからだ。

多くの幹部が狼狽している中、一部の幹部は冷静さを保っていた。

「やはりね」

新城博美、いや草壁仁美は自分に与えられた部屋で呟いた。

彼女は政府上層部を掌握すると共に、彼女は極秘に草壁の養女という形で戸籍を得ていたのだ。

「さて、月基地の例の施設はどうなっているかしら・・・」

彼女は、山崎を通信で呼び出した。

『はいはい。草壁大佐、なんでしょう?』

「山崎博士、例の施設はどうなっている?」

『勿論、順調です。

 すでに『ゲート』の設置は終了し、試運転も開始しています』

「そう。ということは次の段階の」

『地上設置用の『ゲート』の建造も順調です。

 それにしても凄いテクノロジーですよぉ、これは。見ていて惚れ惚れしちゃいますよ。

 夜天光に組み込んだAIや新型戦艦の技術、どれもこれも10年先の技術と言っても良い品物です。

 今度、これらの技術に関して詳しく聞きたいのですが』

「まぁ、機会があったらそうするわ。

 それより今は、新兵器の開発と製造に全力を傾けなさい。

 それと、人体実験の被験者達は?」

『はい、すでに大半は病院に収容しています』 

「そう、なら良いわ」

『後、人体実験の関連施設の大半は閉鎖させました』

「関連データは破棄しておきなさい」

『わかっていります。

 それでは、作業が立てこんでいるので』

そう言うと山崎は通信を切った。

「彼も大分変わったようね」

満足げに言う。

(苦労して洗脳した甲斐があったわ。さて、当面の問題は対地球連合戦争ね。)

そのために必要となる駒、優人部隊の掌握が彼女の急務であった。

彼女が考えにふけようとしている時、

コンコン。

ドアを叩く音がした。

「どうぞ」

「失礼します」

入って来たのは、白鳥九十九だった。

「どうしたの?」

微笑みながら尋ねる仁美。

この微笑みにやや顔を赤らめながら博美の机の正面で直立不動の体勢をとりつつ、九十九は言った。

「は、はい。

   報告にもあったと思いますが、現在、我が軍は跳躍門が使用できません。

 そこで今後、如何にするのかを草壁中将に」

「尋ねようと?」

「は、はい」

「まぁ、だいぶん動揺しているからね」

「・・・・・・」

「大丈夫。今、私たちには跳躍に代わる技術があるの」

「え!!?」

九十九は驚きの声を上げる。

「今まで黙っていたけれど、その技術はすでに実用段階。

 跳躍では出来なかった生身の人間を送ることも出来るようになったわ。

 だから跳躍が使えなくなっても問題にはならない」

「・・・新たな遺跡でも見つかったのですか?」

「いいえ、これは私が開発した技術よ」

無論、これは嘘である。

だが彼にそれを知る由もないし、彼女の言う技術、ワープ航法を木連に持ち込んだのは彼女である。

「・・・あなたは本当にすごい方ですね」

「そう?」

「そうですよ」

彼女は草壁の養女として戸籍をえるのと同時に草壁の補佐官として軍務に励んでいた。

最初は親の七光りと侮っていた連中も、彼女の能力の高さが発揮されていくと次第に敬意を払わざるを得なかった。

まぁ、彼女を左遷できるような権力を持った人間はいなかったし、上層部はすでに傀儡となっていたが・・・。

「お世辞でもうれしいわ」

「う、嘘では」

「ふふ」

仁美は九十九の言動に笑みを浮かべる。

その笑みは女性撃墜率200%を誇る『天河スマイル』にも勝るとも劣らないものだった。

この笑みを前に熟れたリンゴみたいに真っ赤になる九十九。

「そういうことだから安心して」

「わ、わかりました。皆に伝えておきます」

「いえ、伝えるのは艦長クラスだけにしておいて」

「なぜです?」

「それは秘密。ともかくそういうことだから」

「は、はぁ」

九十九は部屋を後にした。

「さて、あとは和平派の動きね」

少し、考えると彼女はとある人物を呼ぶ。

五分後。

「呼んだか」

北辰が入ってくる。

「ええ。新たな任務を与えるわ」

「また暗殺か?」

「そのとおり」

「標的は?」

「この人物、『陣内 久』」

彼女は写真を見せ、細かく指示する。

「ふむ、わかった」

そう言うと北辰は部屋を後にした。

「まぁどうせ失敗するでしょうけど、健闘を期待してるわ。
 さて、それより例の作戦の準備、すすめておかないとね」

そう言って、彼女はいそいそと机の引き出しから一冊のファイルを取り出す。

そこには大きく黒字で『星の屑作戦』と言う題名がかかれていた。(爆)

彼女はおもむろに電話をかける。

『こちら、『紅月』司令部です』

「わたしよ」

『お、御姉様ですか。一体どうなされたのですか』

「星の屑作戦の進捗状況、どうなってる?」

『は、はい。命令書にあった規模の隕石の確保は終了しています。

 今から、これに相転移エンジンを取りつけるところです』

「順調のようね」

『はい。1ヶ月半後の作戦発動には間に合わせます』

「期待して待ってるわ」

彼女は電話を切る。

特殊部隊『紅月』、名目上は優人部隊の補佐のために作られた組織であるが、実際は仁美に忠誠を誓った私兵集団であった。

この『紅月』のメンバーはほぼ全員が統和機構から彼女と共に脱走した兵達である。

装備ごと脱走した者も多くいるので、戦力としては優人部隊のそれを凌駕する。

無論、この中には第24潜宙戦隊や第35巡航戦隊も含まれている。

「さて、次は天川カイトとの会談ね」

不敵にわらう仁美だった。




 その頃、九十九は総司令部の優人部隊司令部にいる月臣に会いに行っていた。

「おい、どうだった?」

月臣は九十九に尋ねた。

「どうやら跳躍に替わる技術があるらしい」

「本当か?」

「証拠は無いが、間違いと思う」

「そうか」

「それにしても、あの人は本当に凄い人だな」

「全だ。聡明で美しく、気立ても良い。まったくもって素晴らしい。

 あれぞまさしく理想の女性だ」

陶酔した表情で言う月臣。はっきり言って少し怖い。

だが周りにいた他の軍人達もしきりに頷いた。

彼女は親睦を深めると言うことで、多くの軍人と付き合いを持った。

彼女はまだ知る由も無いが、その時に見せた様々な仕草や態度、そして比類無き能力が彼らを虜にした。

勿論、その絶世の美貌も理由の一つに含まれるが・・・。

まぁ虜と言っても、恋愛感情を持つ人間や、彼女を神格化して崇拝する人間と色々いる。

ちなみに彼女は自分を神格化している人間には気付いたが、恋愛感情をもった人間に気付いてはいなかった。

そう、彼女も天河アキトの同類なのだった。

まったくもって罪深い女である。




 一方、軍からの動揺が伝わってきている陣内は自分の事務所でカイトの言葉が事実であったことを認識していた。

(彼らの言っていたことは事実だったようだな。

 どうやら、彼らは跳躍を制御することに成功したようだ。

 確かにこれを使えば強硬派を黙らせることも出来る)

彼はこの戦争を終らせることが出来るかもしれないと考えるようになっていた。 

(他の和平派に協力を請わなければ)

そして、彼は動き出した。

無論、この動きにあわせるようにカイト達の行動も本格化していった。

だが、その中で不確定要因がひとつ現れた。

そう、草壁仁美の存在であった。

「彼女は一体、何者なんだ?」

カイトのこの疑問は尤もであった。

普通、いくら草壁の娘だからと言って、いきなり20代の女性に大佐の地位を与え、直属の特殊部隊を編成させるのは不自然である。

それに加え、彼女の出現と共に木連の動きが少しずつ変わり始めたことも彼らを不安にした。

そして、活動を開始してから1ヶ月後、彼らの不安は的中することとなる。

その報は、和平派の軍人からのものだった。

「どうやら、研究部が跳躍に替わるあらたな空間移動の技術の開発に成功したらしい。

 そして、その技術を組み込んだ新兵器の開発が進められているようなのだ」

彼のこの報にカイト達は仰天した。

「一体、木連になにが起こっているんだ?」

この報を受け、和平に向けての活動は鈍り始める。

そして、その活動にとどめをさしたのは、その数日後におこったある事件だった。

カイトは、疲れて自室でぐっすり寝ているところを緊急連絡でたたき起こされた。

それは、

「陣内さんが北辰に襲われたって!!?」

カイトは麗香に大声で尋ねる。

「ええ、でも命には別状は無いらしいわ。でも治療の為に当分政治活動は無理よ」

「くっ。こちらが派遣した護衛は?」

「見事に出しぬかれたみたい」

「なんということだ」

「でも、彼は治療が終ったらすぐにでも政治工作を再開したいっていっているらしいわ」

「・・・いや、一回出直す」

カイトの決断に麗香は確認するように言う。

「本気?」

「すくなくともこれ以上滞在しても、大したことはできない。

 一旦、体勢を整える」

「和平派に派遣した護衛は?」

「そのままだ。出しぬかれたとは言え、命を守ることには成功したんだ。

 俺達が一旦木連から離れていても彼らの命を守ることは出来るだろう」

「そう。じゃあ香織達にも伝えておくわ」

「頼む。

 ああ、それと俺達が離れている間に草壁仁美の身辺調査を強化しておくように工作班の連中に言っててくれ」

「分かってる」

「俺は陣内さんに会いに行って来る」




 カイトは陣内が収容されている病院に足早に歩いていった。

そして、約30後、カイトは陣内の病室の前にたどりついた。

コンコン。

カイトはドアを叩く。

「どうぞ」

室内からの声を聞き、カイトは部屋に入った。

「大丈夫ですか?」

カイトは心配そうにベットの上に横たわっている陣内に様態を尋ねる。

「大丈夫だ、命に別状は無い。

 まったく、君達には感謝しているよ。君達が派遣してくれた護衛がいなかったら私は間違い無く

 この世にはいなかっただろうからね」

心から感謝していると言わんばかりに礼を言う陣内。

「いや、感謝をいわれるようなことはありませんよ。

 それどころか私はあなたに謝らなければならない」

「あなたが気に病む必要はありませんよ」 

「しかし」

「それより、今後のことを考えるべきでしょう」

怪我をしているにも関わらず、陣内は。

「・・・そうですね」

「今後、どうするつもりです?」

陣内が尋ねた。

「私達は一回、地球圏に帰還します。

 そして、一回態勢を整えるつもりです。現状のままでは和平工作は進まないでしょうし」

「そうですか。

 では私達は、出来うる限り和平派の勢力を保持しておきます。来るべき和平に備えて」

「頼みます」

カイトはそう言って頭を下げた後、病室を後にした。

だが、カイトは部屋を出た後声をかけられた。

「天川カイト様ですか?」

カイトが振り向くと、そこには黒い髪をポニーテールにした、女性の軍人がいた。

「そうですが、なにか?」

「はじめまして、草壁仁美と言う者です。多少お時間を頂けますか?」

その軍人は礼儀正しく言った。

カイトにすれば、全く予期せざるイレギュラー、しかも殆ど情報を得られなかった人物と直接会えたのである。

絶好のチャンスと言って良かった。

「わかりました」

「ありがとうございます」

そう言うと、仁美はカイトを連れて歩き始める。

「何処へ?」

罠かもしれない、カイトはそう思った。

「私の家です。あそこなら多少込み入った話でも大丈夫ですから」

そう言うと、彼女は意味ありげに微笑んだ。

その後、カイトと仁美は公用車に乗りこみ、彼女の家に向った。


 カイトは仁美の自宅、純和風の作りの豪邸の中に招き入れられた。

「すごいな」

カイトは思わず感嘆する。

「広いだけですよ」

苦笑しながら仁美は言う。

だが、その広さは尋常ではなかった。

(東京ドーム数個分はあるんじゃないか?)

そうカイトが思っていると

「私の部屋に着きました、ってどうしました?」

「いえ、ちょっと考え事をしていて」

「・・・そうですか」

カイトは仁美の部屋に入っていった。

その部屋はも屋敷と同じく広かったが、家具の数は少なく殺風景であった。

仁美はカイトに座布団に座ることを勧めた。

「では、座らせてもらう」

そう言ってカイトは座布団に座り、仁美は向い側に座布団を敷いて座った。

「・・・で、用件はなんだ?」

カイトは切り出した。

「単刀直入ですね。まぁいいでしょう。

 私としては、あなたを通して火星政府と交渉したいのです」

「火星の実情を知っているのか!!?」

これにはカイトも驚いた。

「ええ。それにあなたが未来からの介入者ということも」

「なんのことです? 未来から来たなんてそんなSF映画じゃあるまいし」

やや冷や汗を流しながらも、カイトはとぼける。

「まぁ、その話題はここまでにして、話を戻しましょう。私としては火星と貿易をしたいのですよ」

「・・・(彼女の素性を詳しく調査する必要があるな。それと情報の出所を)」

「この国は戦争をしている御陰でだいぶん民需産業が圧迫を受けてます。

 ですから私としては貴方達が火星で建設した工場等で生産されている民間向けの工業用品、食品や薬品などが

 どうしても欲しいのです」

「だったら戦争を止めれば良いじゃないか」

「それは無理です」

「何故?」

「それだと、地球連合はその強大な軍事力を残したままになります」

「・・・まさか、あなたは地球連合を壊滅させるつもりなのか?」

「壊滅させるほどではありませんが、ある程度連合軍にダメージを負ってもらいます」

「連合軍に?」

「ええ、10年ほどは立ち直れないぐらい徹底的に叩き潰すつもりです」

さらっと言う仁美。これにはカイトも唖然とした。

「そんなことが出来ると」

「思ってますよ。私にかかれば地球連合軍を潰すのは赤子の手をひねるより簡単なことですから」

「・・・・・・」

「でも、安心してください。私は和平はするつもりですよ。出来うる限り対等なものを」

「そんなことが可能なのか?」

「すでに木連政府上層部は私の指揮下にあります。私が承諾すればあとはどうにでも成ります。

 それに和平をするつもりがないのなら、とっくに和平派の人間を一掃していますよ」

自信たっぷりに言う仁美。カイトは信じられないという思いで一杯だったが、自分の素性を知り様々な新技術を持ちこんだ

と思われる人物の言を無下に否定は出来なかった。

「連合軍を潰せるなら、何故あえて対等な和平を行う必要がある? 降伏勧告でも良いと思うが?」

「国家の規模が違います。例え降伏させても後々、反乱が多発すれば国力が疲弊し最終的には国は滅びます。

 それなら、対等な和平を行いパートナーとして存在する方が良いでしょう。

 ですが今のままだと軍の規模があまりに違いすぎ、最終的にはこちらの軍は単に吸収されるだけになります。

 ですから私は連合軍を壊滅に追い込むことでこの規模の差を縮めようと思うのですよ」

「・・・あまり賛成できる考えではないが筋は通っているな。

 まぁ、そう言う俺も軍人はあまり好きじゃないし、

 見ず知らずの人間の死を本気で悔やんでやるほどの人格者でもない。

 対等な和平が成立し、史実よりましな戦後がくるのなら多少の死人の増加は目をつぶろう」

苦々しく言うカイト。だが、彼の頭には別の考えがよぎっていた。

「ですが、あまり連合にあっさり降伏してもらっても困りますから

 そちらも活躍してもらわないといけません」

「それは分かっている。

 だが、それだとそちらにも多くの犠牲者が出るが」

「構いません、例え優人部隊が全滅しても替わりはありますから」

非情なことを言う仁美。優人部隊の人間が聞いたらなんと言うことやら・・・。

「なら俺から言う事は無いな。

 ・・・だが、春日井さんや麗香ちゃんがなんと言うことやら」

「大丈夫ですよ。火星を和平の仲介役とするために木連と国交をもたせると言えば問題無いでしょうし、

 彼らも木連の大幅な国力の低下は望まないでしょう」

「そうかな(連合軍を叩き過ぎるのも問題があるのでは?)」

カイトはその後、麗香達の元に戻り、ことの粗筋を話した。

麗香達は不信を露わにしたが、春日井の『いざとなったら火星防衛軍を参戦させる』という発言とカイトの考えを聞き、

しぶしぶだがこれを了承した。

こうして、火星政府は木連政府と不可侵条約と通商条約を結ぶこととなった。

また、ボソンジャンプに関する条約としては『人体実験』と『戦争への利用』が禁じられた。

両陣営から見れば時間移動はともかく、空間移動に関してはすでにボソンジャンプより安全な技術があるので

大した意味がなかったが。

「おそらく彼は連合軍の壊滅を阻止するとするでしょうね。

 まぁ良いわ、戦争が長期化すれば問題ないし。さて、彼が地球圏に戻る前に『星の屑作戦』の発動を急ぐとしましょうか」

条約調印の報をうけた仁美はそう呟いた。

こうして、連合軍の悪夢は始まる。









 後書き

時を紡ぐ者達第14話をおおくりしました。

駄文にも関わらず最後まで読んでくださってありがとうございました。

・・・う〜む、蘭と香織の出番がない(笑)。おまけに話が短い。(核爆)

まぁ彼らは戦闘員ですから、あとあとに活躍してもらいましょう。あとナデシコも。

ナデシコは第4話後編で沈没してしまいましたが、いずれ再登場させます。

ちなみにカキツバタ、シャクヤク、コスモスも登場させるつもりです。

史実どおりに運用されているとは限りませんが・・・。

『星の屑作戦』、聞いただけで多分何するかお分かりでしょう。

ふふふ、連合軍には史実よりはるかに大きな損害を負ってもらう予定です。

それでは第15話でお会いしましょう。では。










 

 

 

代理人の感想

いきなり不可侵条約・・・どころか同盟関係!?

むぅ、これは意表を突かれました。

どう考えても敵対関係だと思っていたんですが・・・。

 

ま、それはそれとして。

 

ちょっと気になるんですが「星の屑」のネーミングからすると

軍より一般人のほうに多大な被害が出るような(爆)。

 

 

>ちなみに彼女は自分を神格化している人間には気付いたが、恋愛感情をもった人間に気付いてはいなかった。

>そう、彼女も天河アキトの同類なのだった。

今回の文章でちょっと気になったのがここ。

「〜〜だった」「「〜しなかった」という完了形を重ねて用いるのはくどいというか、

文章のリズムを崩しますので気をつけたほうがいいかと思います。