全てが、嘗て自分と同じ時を過ごした者達が次々に炎に包まれ死に絶えていく。

彼女にしてみれば、悪夢の祭典。彼女に嘗て、心を与えてくれた者たちが次々に消えていく。

「ミナトさん、ユキナさん、ホウメイさん!!」、

だが、その叫び声も虚しく、ただ彼らは消えていく。

「高杉さん、ハーリー君!!」

絶望に苛まれる中、遂に全員が消え去る。

「・・・いやーーーーーーーー!!」

その声と共に彼女は目覚めた。

「ここは・・・」

時に天川艦隊が出撃の翌日、高熱でうなされ続けた星野ルリは目を覚ました。

「あれ、私は確か、ナデシコCに乗っていたのに・・・」

彼女は確かに自分が最後に見た光景、核の業火により自分が乗っていたナデシコCがボソンジャンプ直前に消滅した事を覚えていた。

「ああ、先生、患者さんが」

近くにいた看護婦が担当医を呼んだ。

「気付きましたか、星野さん」

「あの、ここは?」

「・・・ここはネルガルの総合病院。あなたは三日前から高熱で倒れていたんです」

「はぁ」

「ですが、安心しました。ああ、それと後で精密検査をするので」

「・・・わかりました」

彼女は自分が小さくなっているのを見て、近くに居た看護婦に尋ねる。

「すいません、今日、何年何月ですか?」

「え?、今日は2197年の8月2日だけど」

「・・・そうですか」

(・・・ひょっとして過去に戻ったんでしょうか?。でも、今のこの時期私はナデシコに乗ってたはず)

「どうしたの?、ひょっとして何か」

「いえ、何でもありません」

「そう、何かあったら言ってね。・・・全く、ネルガルは何考えていたのかしらね。こんな子供を戦艦に乗せるなんて」

「はぁ」

その後は、彼女はルリの個室から出ていった。その際、ルリは端末を持って来てほしいと言い、看護婦は快諾した。

彼女は約束を履行し、その数時間後端末を持ってきてくれた。

「一体、何が」

ルリは端末を用いて、この世界について調べ始める。そして、この世界が史実と全く違う世界だと言う事を知る。

「・・・ナデシコが沈んでる」

この驚愕の事実に行き付くまでさしたる時間は掛からなかった。




          時を紡ぐ者達 第22話




そのころ、月基地では歴史を歪めた人物の一人、仁美が本国への帰還を前に押し問答を繰り広げていた。

『ぜひ、私に復讐の機会を』

「・・・任務に私情を挟むわけにはいかない。それにあなたの部隊は再編成中でしょ?」

『ですが、戦艦クラスは動けます。是非!!』

「あなたの部隊は戦力が落ちている。でも彼らは逆に大幅に戦力を増強している。この状況での出撃は自殺行為です」

『・・・』

「あなたにはそれなりの舞台を与えるつもりです。それまで待機しなさい」

『了解しました』

悔しそうな南雲を一瞥して通信を切る。

「彼も困ったものね」

「全くです」

「・・・でも彼にはそれなりの舞台を与えなくてはね」

「どこの戦線を任せるおつもりですか?」

真奈美の問いに仁美は地図のある一点を指差した。

「・・・なるほど」

「彼には相応しい舞台よ。まぁちょっと大げさ過ぎるかもしれないけど」

この時通信が入る。

『司令、欧州方面軍が連合軍の東欧軍集団司令部の制圧に成功したとの報告が』

「早いわね」
 
『当地域の連合軍の指揮系統は麻痺状態ですから』

「・・・西欧方面は?」

『連合軍西欧軍集団はすでに壊滅。辛うじて生き残った部隊はドーバー海峡を渡ってイギリス本土へ脱出した模様です』

「イギリス本土攻略作戦の準備は?」

『すでに虫型兵器16000、無人戦艦700の出撃準備が終了しています。

 これに加え、優人部隊から150隻、紅月から80隻が参加する予定です』

「準備が整い次第、作戦を開始するように」

『了解しました』

「・・・さてと、後は頼むわ」

「了解しました」

仁美は司令室を後にした。真奈美はそれを見届けた後、自分の副官に連絡を取る。

だが、この時思いも寄らぬ報告が入った。

「ナデシコが復活する?」

『はい。一ヵ月後に佐世保ドックから発進する予定だそうです』

「・・・不味いわね」

真奈美は唸る。彼女は史実におけるナデシコの活躍ぶりを知っていた。

独立愚連隊のような戦艦であったが、その戦闘力は連合軍でもずば抜けて高かった。

そして、史実における蜥蜴戦争を終焉に導いた戦艦。

仮に史実における役割の半分でもされたら、彼女達のシナリオに何かしら影響が出る。

(・・・問題はクルーね。ナデシコを沈めてもクルーが残っていたら)

『どうされました?』

「・・・細かい予定はわかる?」

『いえ、そこまでは』

「・・・急いで調査させなさい」

『それだと、アルビオンに対する調査が遅れますが』

「構いません」

『了解しました』

「それと可能ならば主要クルーを抹殺しなさい」

『暗殺任務なら北辰達にやらせたほうがよろしいのでは?』

「無論、彼らにも命じます。確実に仕留める為に」

『・・・わかりました。諜報部にそう命じます』

通信が切られる。

「ナデシコ・・・、残念ながらあなたに活躍してもらうわけにはいかない。

 早々に退場してもらうわ。私達のシナリオの為に」



「暗殺か・・・面倒だな」

暗殺の指令を受けた紅月の諜報部長は頭を抱えた。唯でさえ人手不足なのにこれ以上面倒な仕事を増やしたくはなかったのだ。

「しかし、何であんな戦艦のことを気に止めるんでしょうね?」

「さぁな」

副長の疑問に素っ気無い答えを返し、部長は考えた。

「・・・極東地区の担当者を呼ぶか」

彼は担当者に電話をかけた。

『はい、鍋田です』

「鍋田か、平見だが」

『何かご用ですか?』

「ちょっとな。そちらに暗殺任務にも投入可能な人間はいくらいる?」

『・・・14〜18人といったところです』

「そうか」

平見は少し躊躇った後、真澄の命令を伝えた。

『はぁ、難儀ですな』

「やってくれるか?」

『・・・やってみます。ですが失敗しても』

「無論、文句は言わん。彼女は<可能ならば>とは言ったが、絶対殺せとは言っていないからな」

『その言葉を聞いて安心しました』

「健闘を祈る」



   迫りつつある危機を知らず、精密検査後ひたすら星野ルリは情報の収集にあたっていた。

「そんな、アキトさんも」

ルリが見つけ出したその資料には天河アキト、2196年佐世保で死亡と記されていた。

「うう、そんな・・・」

ルリは泣いた。彼女は自分がジャンプして来たのならアキトも、と言う淡い期待を持っていたがゆえにショックも大きかったのだ。

「アキトさん、アキトさん・・・」

ルリは泣きながらアキトの名を呟き続ける。

「どうしたの、星野さん!?」

端末を持ってきてくれた看護婦が駆け付ける。

「いえ、何でもないです」

「そう?。私にはそうは思えないけど」

「いえ、本当に」

そう言ったところで、ルリはふと思い出したかのように言う。

「あの、他のナデシコのクルーは?」

「他のクルー?」

「はい。ユリ、いえ艦長や副艦長は?」

「ああ、ミスマルユリカさんね。彼女はこの間、意識が戻ったんだけど」

「どうかしたんですか?」

「まだ立てる状態ではないの。ああ、副艦長、葵ジュンさんが付きっきりだったわね」

「他の人は?」

「フクベ提督を含めてかなりの人数が意識不明。他にも精神に異常をきたした人物も多いわ」

「・・・そうですか」



 その後、ルリは黙りこんだ。いや時々アキトの名を口にするが、それだけであった。

この症状を見て、担当医はルリは精神に傷を負ったとして精神科に移すことを決める。



 だが、このルリの明らかな異常は、アルビオン本社に詰めている真澄の耳に届くようになる。

「星野ルリが?」

執務室にいた真澄は驚きの声を上げた。

「はい。詳しいことは報告書に書いてありますが」

そう言われ、真澄は報告書を見る。

「・・・なるほど、確かに異常ね」

このとき真澄は先刻の火星基地から春日井からの連絡を思い出した。



「新たな逆行者?」

『そうだ。本部にも確認した。どうやら何者かが干渉したらしい』

「・・・正体は?」

『・・・不明だ』

  「何か影響は?」

『特に無い。だが、アトラスは渋い顔をしていたな』

「・・・」

『まぁ細かいことは、解り次第連絡する』

「・・・わかった」



 春日井との会話を思い出した真澄は1つの可能性を思い浮かべる。

(星野ルリが逆行した?。そんなことがありうるの?。でもだとしたら謎はすべて解ける)

「・・・星野ルリに対する監視を強化しなさい。あと諜報部にネルガルの監視強化を命じなさい」

これを聞いたHFRは尋ねる。

「木連に対する諜報活動に支障が出るかもしれませんが」

「構いません」

「わかりました」

HFRが執務室から出ていくのを見て真澄は考えにふける。

(このことを彼に伝えるべきかしら?。彼の性格だったら間違いなく星野ルリを守ろうとするだろうけど

 この局面でナデシコに関わっておけるほど戦力に余裕はない。かと言ってそう言っても彼が納得するとは思えないし)

しばし悩む。

「・・・何か策をうつべきかな」

 彼女は今、アトラスの計画を支援しつつ、カイトの後方を支えなければならないと言う立場にあった。

はっきり言えば、彼女はカイトを利用しているようにしか見えないのだが、真澄から言えば、このアトラスの計画に参加するのは

カイトの為でもあるのだ。

 彼女があえて裏切り者の汚名を着る覚悟をしたのもすべてはカイトのためである。

だが、これが後にいかなる結果をもたらすかはまだ誰にもわからなかった。




 そのころ、当のカイトはユーチャリスU内の鍛錬上で、トレーニングに励んでいた。

時に激しく、時にゆっくりと体を動かす。そのたびに彼の顔に汗が浮かび、見た目以上にハードな鍛錬に勤しんでいるということがわかる。

「ふ〜、疲れた。こんなもんかな」

「お疲れ様」

「お疲れ様です」

「あれ、麗香ちゃんに香織ちゃん、どうしたの?」

「様子を見にきたのよ」

「はい、私もです」

「俺の鍛錬なんか見て楽しい?」

この問には香織が答える。

「私としては、あの世界で最強クラスを誇った天河アキトの鍛錬とやらを見てみたかったんですよ。

 同じ戦士としてはやはり興味を誘われますし」

「そうかな、香織ちゃんの方が強いんじゃ」

「そんなことないですよ、本気で殺し合いをしたらカイトさんに勝てるかどうか自信ないですし」

「ははは、俺としてはそんなことあって欲しくは無いもんだ」

「はは、そうですね」

言ってることはかなりあれだが、陽気に会話は進む。

「そう言えば、祐一は何をしているんだ?」

提督を呼び捨てにするカイト。客観的には変だが本人が要望したので全員が今では提督ではなく、祐一、もしくは相沢と呼んでいる。

「彼は今、艦橋に居るわ。蘭と一緒に」

「何か気があうらしいみたいですよ」

「へぇ〜。あの無口な蘭が」

そう、確かに彼らは気があった。女に苦労させられていると言う点で。




「そうなんだ、何時も何時も皆俺におごらせるんだ。おかげで給料の三分の一が消えるんだ」

「苦労しているんだな」

蘭は同情したかのように、肩に手をかける。

そう、彼らは鬼(?)が居ない間に、愚痴を言い合っていたのだ。

「まったく、あいつら人の金だと思ってばかばか食いやがって」

「確か、従兄弟の水瀬名雪にイチゴサンデー。それに美坂栞にアイス。沢渡真琴に肉まん。

 あとはあゆに鯛焼きで、川澄舞に牛丼だったな」

「ああ。まぁ近頃舞はあまりたからなくなったが」

「酷い話だな」

「分かってくれるか」

「わかる。よ〜く分かる。俺もかなり苦労させられてきてからな」

「へぇ〜」

「・・・名前は出さないが、ある女は重要な仕事中に、こともあろうに買い物にいこうなどと行ってつき合わされ散々奢らされた。

 おまけに変なコスプレをさせられたり、この世の物とは思えない液体を飲まされたりした」

「そうか・・・お前も苦労してるんだな。そう言えば変な液体って?」

「・・・本人は酒と言っていたが俺はあんなのを断じて酒とは認めん。

 あれを酒と認めることは、酒造メーカーに勤める人間を侮辱するどころか、酒に関する定義を書き換えなければならない。

 俺はそう思っている」

「そ、そこまで酷いのか。なんか秋子さんの謎ジャムみたいだな」

「謎ジャム?。何だそれは?」

「・・・宇宙艦隊司令長官水瀬秋子大将のことは知っているだろう?」

「ああ。ん、水瀬・・・と言うことは水瀬名雪の?」

「母親だ」

「・・・到底、一児の母親には見えないのだが」

確かに、秋子の外見は20歳代で通じるものだ。そのうえ、外見も名雪に結構似ている。

「確かにそれが普通の反応だろう。だが変わっているのは外見だけではないぞ」

「どういうことだ?」

「・・・あの人の年齢、何歳だと思う?」

「見かけで判断できないからな。・・・30代中盤か?」

黙って首を振る祐一。

「40代か、まさか50代とも思えんが」

「・・・√(−1)歳だ」

「は?」

さすがの蘭もこれには呆けた表情を見せた。

「もう一度言ってくれ」

「√(−1)歳だ」

「・・・祐一、一つ言っておくが平方根の中にはマイナスは無いぞ」

「事実だ」

「・・・つまりあり得ない数字の歳だと?」

「そうだ」

「色々確認したのか?」

「勿論した。でも全て」

「・・・(何なんだ、この世界は)」

蘭はこの世界にきたことを少し後悔した。

「・・・まぁ話を元にもどそう」

「そうだな。で、謎ジャムと言うのは?」

この問に祐一は顔を蒼白にして震え出す。

「・・・どうした?」

「・・・蘭よ。もしこの世に甘くないジャムがあるっていったらどうする?」

「甘くないジャム?」

「そうだ」

蘭は早速これまでの人生を振り返ってみるが、彼の経験した限り甘くないジャムというのは聞いたことが無かった。

「すまんが、想像できん」

「確かに、普通の人はそうだ」

「・・・ひょっとして、謎ジャムとのはその甘くないジャムの範疇に入るのか?」

「そうだ」

「・・・まさかそれを作っているのが水瀬秋子大将だと?」

祐一は黙って頷いた。

「普通の奴ならいい。死にかけはしないから。だが、秋子さんの秘蔵クラスのものになると・・・」

「・・・どうなるんだ」

この問に、数時間後、蘭がひさしぶりに純粋な恐怖を見たと語ることになる、そんな雰囲気を身にまとった祐一が答える。

「この世のものとは思えない感覚が脳を直接刺激し、意識が跳ぶ」

「・・・(香織の酒と同類か)それは大変だな」

「分かってくれるか」

「分かるとも」

この時、彼らは心友、いや真友となった。

まぁ単に似たような境遇を囲っていた二人が意気統合しただけかもしれないが。




 ちなみに、この会話の最中に香織、秋子、そして名雪はくしゃみをしていた。

「ハクション。風邪かしら」

「水瀬司令、大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ」

心配そうに尋ねた参謀に軽く言うと、秋子はふたたび執務にとりかかった。

(誰か噂でもしたのかしら?)



 戦艦Kanon、と言っても星の屑作戦で初代は大破してしまい、今はアルビオンから提供された量産型ユーチャリスUを

Kanonと命名していた。また第6艦隊旗艦を兼ねている。ちなみにトライガーも同様に名前を襲名した。

「ハックション」

名雪は訪れた食堂でくしゃみをした。

「名雪さん風邪ですか?」

同じく食堂にいた軍医である美坂栞が尋ねた。

「風邪だったら隔離しないと」

「風邪じゃないよ。多分、祐一が私の噂をしたんだよ」

「それはないです」

「どうして?」

「祐一さんは私だけをみているはずですから」

「それも無いと思うけど」

「・・・名雪さん、新しい薬があるんですけど。飲んでみます?」

「え、遠慮するよ」

「そうですか、残念です」

何やら物騒な会話をしている傍では、

「祐一・・・」

「あ〜、舞泣かないで」

目に涙をためる少将の階級をもった女性を慰める中将の女性がいた。第6艦隊司令官倉田佐祐理中将と副官の川澄舞少将である。

ちなみに副官である舞は異例だが機動兵器のパイロットも兼ねる。

「ふふふ、相沢君、今度あった時は覚えてらっしゃい」

そして不気味な笑みを浮かべるのは参謀長の美坂香里少将。

他にもおばさん臭いと評判(?)の天野美汐大尉や、鯛焼き食い逃げ常習犯であり、MP(憲兵)の頭痛の種である

月宮あゆ大尉などがいた。

全員に共通していたのは一様に雰囲気が暗いということだ。

この雰囲気のせいか、食堂全体が暗い雰囲気に包まれる。

「それにしても祐一さん酷いです。私達に黙っていくなんて。

 それにお姉ちゃんも何でどこに配属されるか聞かなかったんですか!?」

「聞いたけど、言ってくれなかったのよ」

確かにあの時の祐一は口が硬かった。

「それにしても、何で祐一さんは黙って行ったんでしょうか?」

美汐が疑問を口にする。

「そうね」

これには他の人間も首を傾げるだけだった。

彼女達のたかりが(佐祐理、香里、美汐除く)が如何に彼を追い詰めていたのかを知らない。

如何に愛されているからと言っても祐一の境遇には涙を誘われるものがある。



 さて、祐一は出向先で安息の日を得ることが出来るのだろうか?。







 そのころ、木連本国では、あらたな動きが見られた。

「・・・星野ルリが?」

『可能性が高いらしい』

仁美は春日井の答えに考えこむ。

『君の部下は独断でナデシコ抹殺のために諜報部をうごかしているようだが』

「・・・真奈美が?」

『ああ』

「・・・まぁ結果がでればそれで良いわ。それにナデシコが如何に動こうとももはや歴史に対して大きな影響を与えられるとは思えないし」

『そうかな?』

「如何に星野ルリが逆行者だと言っても協力者がいなければ大した障害にはならない」

『まぁ歴史がこれだけ違っていれば史実の話など信用されないだろうし、協力者になりうる人物もネルガルにはいない』

「そういうこと」

『だが油断は禁物だぞ』

「分かってるわ」

通信が切れる。

「・・・・・・」

仁美は執務室にある地球の地図をみて呟く。

「計画を前倒ししてアジアに戦線を広げるべきかしら」

すでに連合軍西欧軍集団最後の砦、イギリス本土にたいして木連は攻略作戦の準備を完了していた。

だが最後の砦と言っても、すでに軍事基地の大半は壊滅状態。都市部も大きな被害を被っている。

おまけに海上封鎖を受け、イギリス本土は無縁孤立。

このせいで資源がまったく入ってこなくなり、イギリス国内はすでにガタガタ。

軍の再建どころか、一般市民の生活すら維持できなくなりつつあった。

放置しておけば勝手に自滅するだろうが、仁美としては反撃の拠点になりうる場所を放置しておく訳にはいかなかった。

彼女としては欧州戦線をさっさと切り上げ、アジア、太平洋地域の制圧に乗り出したかった。

この地域ではまだ多くの金融、工業都市が存在していたからだ。

「・・・中国は東シナ海沿岸の地域は壊滅しているから問題無いけど、東北部の工業地帯が生きてるし

 いささか没落したとはいえ、日本の経済力も健在。北米も西海岸は生きてる」

仁美の言った地域では軍の再建が急ピッチで進められている。

だが実際には装備は生産できても、熟練の軍人が少ない為、戦力的にはやや不安があるのだが。

「やっぱり先制攻撃を敢行するべきか」

そう決めるや否や彼女は増設したり、新設したプラント、それに加え冥王星基地から送られてきた艦艇の表と

あらたに配属可能な軍人が書かれた書類をみて考えた。

そして暫くしたのち彼女は決断した。

太平洋戦線で攻勢に出ることを。







 だがその一方で、彼女のシナリオを大きく狂わしかねない事態も進行していた。

「はい。・・・そうです。間違いありません」

『そうか。・・・ネルガルとやらは使えるか?』

「正面決戦でナデシコ級は大して役には立たないでしょう。しかし、ゲリラ戦では」

『・・・わかった。こちらも何かしら手を打とう。そちらのことは任せたぞ』

「はい」

『しくじるなよ』

そう言って老人の映っていたウインドウが消える。

「・・・棺桶に半分、足を入れた老人が」

老人と会話をしていた人物は憎々しげにそうつぶやくと己の任務を遂行すべく準備を開始した。









 後書き

ルリ逆行。ナデシコは彼女の視点から見てもらいます。

・・・それにしてもとらハ3メンバーの出番がなかったなぁ。

まぁ良いか、彼らはあとで。それにしても今悩んでいるのは北斗ですね。

彼女は神速を使える恭也に勝てるのかなぁ〜?。つーか、とらハ3の主人公高町恭也、事故で膝がやられてなければ最強だし、

まぁ北斗が昂気が使えれば話はべつですが・・・。

どうでしょう?。

それでは駄文にもかかわらず最後まで読んでくださってありがとうございました。第23話でお会いしましょう。




代理人の個人的な感想

そーいやアカツキは解任、エリナは左遷されて今ネルガルは社長派が実権を握ってましたね。

再起不能と診断されたガイとともに、沈みこんだルリちゃんがいつ復活するのか、期待しています。

つーかガイ、復活しますよね? ね? ね?(爆)

 

>北斗

とらハは存じませんが、”神速”高町恭也の常識外の強さはよく耳にする所です。

(「第一部終了時の時ナデアキトと互角」と仰る方もいます)

北斗も出すなら、お約束としては強敵・高町恭也に挑む中で昂気に開眼する、

とかそう言った展開がベタでよろしいかと(笑)。