海鳴病院が襲撃された同時刻、木連軍総司令部では春日井と仁美が長距離通信で密談していた。

「・・・ネルガルが買収された?」

『ああ、間違いないようだ。アルビオンからも同様の情報が伝わってきた』

「最高法院の差し金のようね。連中、ネルガルを使って代理戦争をするつもり?」 

『そうだろうな。正規軍はまだ使えんし、何より彼女からの掣肘がある。

 法院とは言え、彼女の意向には逆らえんよ。逆らえばどうなるかは日を見るまでも無く明らかだしな』

「・・・他には?」

『法院の親衛隊に動きがみられる。

 それに取り込んだ反統和機構組織を正規軍に組み込み始めた。連中、本気のようだ』

「機構軍の決起は?」

『作戦部の調整が終わり次第だ。まぁ時間との競争になるな』

「そう」

『ちょっと待ってくれ』

ここで春日井は待ったと言うジェスチャーをして、しばし画面から消える。

そして、だいたい30秒ほどして再び、画面に姿を現した。

『・・・機構経由の情報だ。どうやら、北斗がそちらの世界に向かったようだ』

「彼女が?。向かった先は?」

『わからないそうだ』

「わからない?。案内人をつけたんじゃないの?」

『いや、どうやら勝手に向かったそうだ。

 案内人もつけずに、地図だけをもって愛機とともにそちらへ』

「・・・そう。面倒なことになりそうね」

『彼女にも連絡して探させるつもりだ。まぁそう時間は掛からないだろうが』

「・・・そう言えば、彼女って方向音痴だったと思うけど?」

『・・・・・・』

「・・・・・・」

『まずは、うまくこの世界に辿り着いているかどうかを先に確かめなくてはならないか』

「・・・そうね」



      時を紡ぐ者達 第27話




六連と恭也との間では動きは無く、唯睨み合いによる牽制が行われいた。

数で勝っている六連だが、恭也の瞳が自分達の心を貫き、恐怖と言う感情を呼び起こさせている。

そのために一歩を足を踏み出せないでいるのだ。

逆に恭也は、自分の持つ装備が心もとなく、一対一でならまだしも六人同時に向かってきたときは、

どう対処するかで悩んでいた。本来なら逃げるのが最良の策なのだが、周りにいる六人なら撒くことが出来ても、

真ん中に立つ男が相手では、逃げることはまず不可能だと理解している。

つまり逃げることは出来ず、戦って勝ち残るのは難しい。まさに八方塞な状態なのだ。

その中で唯一北辰だけが笑みを浮かべている。それは久しぶりに感じる高揚から来る物だ。

「ふふふふふふ・・・・」

「・・・何が可笑しい」

「良いぞその目。まるで昔の我のような目だ。鞘から抜かれた真剣の様な触れたら切られるような鋭い輝き」

「・・・それで」

「その輝き、さらに高めてやろう・・・烈風!」

笠をかぶった男の1人が北辰の指示を受け、抜刀して恭也目がけて突進してくる。

しかし、その行為に対し恭也は冷静だった。

相手がある一定の距離まで近づいた所で、恭也は全体に放っていた殺気をピンポイントで向かってきた相手に放つ。

「くっ」

そのあまりに収束された殺気に、いや殺意に一瞬体の動きが鈍る。そのほんの一瞬の好機を恭也が見落とすはずも無く、

自ら相手に近寄り胸に肘を叩き込む。その勢いの乗ったそれは簡単に烈風の胸骨を砕く。

それに追い討ちをかけるかのごとく、嘗底を顎に叩き込むとすかさず後方にさがり、再び距離をとる。

烈風はその場に倒れるとピクリとも動かない。最初の肘で折れた骨が内臓に突き刺さったのだろう。多分即死だ。

「はははは、素晴らしい。実に素晴らしい。その殺気、その戦い方、我と通ずる物があるな」

北辰は実に嬉しそうに笑っている。

「どうだ、今からでも遅くは無い妖精共々我と共に来ぬか?」

「それは・・・こっちから願い下げだな」

「何故に?」

「俺は御神の剣士として、自分の大切と思える人を護るためのみに力を使う」

「奇麗事だな」

「ああ。だが例え奇麗事でも俺はその信念を曲げるつもりは無い」

「・・・そうか、なら仕方が無い」

北辰が手を挙げると残りの五人が一斉に抜刀する。

同時か、あるいは時間差で分けてか、どちらにしても次は五人を相手をしなければならない。

これに勝つには奥義でもある「神速」を使用する以外選択肢は残っていない。

だが、神速は諸刃の刃。これを使用すれば必ず少し動きが鈍くなる。

そうなってしまったら、刀なしの恭也で北辰に勝つには難しくなる。

つまりは、ルリを守り通すには神速を使用しないで五人を倒した後、北辰を相手に勝利を収めないといけない。

(これは・・・正念場だな)

多分生きて帰ったとしても、五体満足にはいられないだろう。

そして、また皆して自分を説教するに違いない。

もっとも忍なら意気揚揚として俺の体を改造するだろうな。



「あ〜〜はははは、その通り!!」

シリアスぶっこいていた場面にいきなりその雰囲気を吹き飛ばすかのような明るい声が響き渡る。

「この声は忍か!、と言うか何でモノローグに突っ込みを」

「気にしちゃ駄目だよ」

その声と共に、近くの割れていた窓から、2つの人影が病院に飛び込んだ。

このあまりの展開に、さすがの北辰も付いていけなかったのか呆然としている。

そんな醜態をさらしている彼等を無視するように、飛び込んできた2つの人影が動き出した。

「やっほー、恭也」

「忍、お前どうして」

「ふふふ、恋する乙女の前には空間も時間の隔たりも関係ないの」

「有るだろう・・・」

この恭也の反応に、忍は眉をひそめる。

「もう、せっかく人がピンチに駆けつけたのに。

 少しは感激するとか、感謝するとかするもんでしょう?」

「・・・感謝する」

「もう。まぁいいわ。ノエル」

「はい。どうぞ、恭也様」

ノエルと呼ばれたメイド服姿の女性が、恭しく恭也に2本の小太刀を手渡す。

「・・・忍、一つ聞きたい、このノエルの格好はなんだ?」

だが直ぐには受け取らず、恭也は頭をかかえて尋ねた。
何故なら、ノエルはまるでエステバリス空戦フレームのような装備をしていたのだ。

「ふふふ、よくぞ聞いてくれました。これこそ、あたしが開発したノエル空戦仕様『空戦フレームノエルバリス』!!。

 あ、ちなみに砲戦フレームや陸戦フレームもあるから」

「・・・・・・」

ちなみにノエルは、忍が復元した自動人形で、感情があると言う優れもの(?)の自動人形だ。

ちなみに彼女は滅多に感情を表には出さないが、恭也はこのときノエルが少し落ち込んでいるように思えた。

だが、何時までも漫才をしていられない。恭也は気を取り直し、愛刀を受け取るや否や抜刀し構えを取った。

「得物を得たか・・・」

辛うじて精神を再構築した北辰達も全力を出すべく、構えをとったその時、

「隊長、増援です」

「何?」

北辰が視線を向けるとそこには、病院に突入していた完全武装の黒尽くめの特殊部隊が恭也達を挟撃するような配置で

展開していた。

「誰の差し金だ?」

「鍋田隊長だ」

「奴か、もう少し待っておれば良い物を」

「お前達が遅いからだ。相手はたった一人だ。全員、いくぞ」

あまりの拙速な判断に北辰は苛立つ。だが、時間がそう無いのも確かだった。

「(くっ、相手の実力も計れぬのか!?)仕方あるまい、行くぞ」

「「「「「御意」」」」」

六連と黒尽くめの武装集団が襲い掛かる。

「恭也、後ろの敵は任せて!!」

「わかった、後ろの連中は任せた」

そう言って2本の小太刀を構えた恭也に向かって、何人もの敵が発砲してくる。

だが、この直前恭也は静寂の世界に飛び込んでいた。

恭也には自動小銃を発砲してくる戦闘員、それに六連の動きが緩慢に見える。

大人数を相手にしているのにも関わらず、彼らの動きが手にとるようにわかる。

彼らの放つ銃弾を次々にかわしていき、まずは一番近くに居た戦闘員2人のうち1人を一瞬で切り伏せた。

そしてその近くに居たもう1人の放った銃弾を一刀の小太刀で弾き、もう一刀の小太刀で喉下を切り裂いた。

吹き上がる鮮血。

だが、彼はそんなことには気にも留めず、ほかの戦闘員に襲い掛かる。

さらに数え切れないほどの銃弾が彼の近くを掠めていく。

いつのまにか彼の視界からは、色も消え、知覚からは音も消え、彼の知覚する世界は無音の白黒の世界になる。

その中で六連、戦闘員は彼からすれば、間抜けなほどゆっくりと動いる。

恭也が小太刀を振るうにつれ、彼らは面白いように薙ぎ倒されていった。

「何と言う奴だ・・・」

「ほぉ」

狼狽と感嘆、ふたつの反する声を合図にするかのように、恭也の世界に色と音が返ってきた。

「訓練された戦闘員、それに木連最高の戦闘員、六連をたった一瞬で倒すなんて」

戦闘員のリーダーが狼狽するのも無理は無かった。

彼の目の前には、僅か数秒前には部下だったものの慣れの果てが転がっている。

大半が即死、生き残っているものも虫の息。

他のノエルや忍と戦っていた戦闘員も狼狽し、後退した。

「くそ、増援は?」

「無理だ。もう時間が無かろう。・・・奴の相手は我がする」

「勝てるのか?」 

「さぁな。死にたくなければさがっておれ」

「くっ」



 恭也は一気にけりをつけるべく、奥義と神速の組み合わせで仕掛けた。

「小太刀二刀御神流・裏・奥義乃参『射抜』」

恭也は再び、音と色の無い世界に突入した。

小太刀二刀御神流・裏・奥義乃参『射抜』とは、長い間合いからの高速連続突きである。

その速さは並みの剣士ではおそらく太刀筋さえみえないものである。

だが、

「面妖な」

「!!」

あらゆるものがゆっくりと見えてきた神速の中で、北辰は機敏に動いたのだ。

恭也の連続突きを錫丈でさばく北辰。

だが、二撃、そして三撃目で、北辰の錫丈が折れた!。

「ぬお!!」

恭也の放った突きが北辰の顔めがけて突き進む。

北辰はかろうじて顔をそらすことで直撃はさけたものの、頬に傷を負う。

(くっ、あれで倒せないとは)

恭也の額に汗が流れる。

「・・・我の血を戦いの中で見るのは久しぶりだな。くくく」

北辰は頬の傷を指でなぞり、その傷口から流れた血をなめる。

「ひさしぶりだな。ここまで高揚するのは」

北辰の笑みが深まる。だが、ここで聞き慣れない女性、いや少女の声が入る。

「楽しそうだな、俺も入れてくれ」

決して無視できない力を持った声に振り向いた恭也達、そして、北辰の木連の兵士は紅い髪をもった少女を見た。

だが、ただの少女ではないことはその場に居た誰もが推し量ることが出来た。

なぜなら彼女が身にまとっていた雰囲気は紛れも無い戦士、それも幾多の修羅場を潜り抜けてきた歴戦のものだったからだ。

その雰囲気に思わず押される恭也。

「お主、何者だ?」

「・・・遺伝子上はお前の子供だそうだ」

「我に子は居らぬ」

「詳しいことは帰って仁美とか言う女に聞け。俺をこの世界につれて来たな」

「ぬう、おぬしは紅月の関係者か」

「紅月?、ああ、あの女が関係するならその通りだな」

(紅月?。何だそれは?)

恭也は聞き耳を立てた。

「まぁ良い。天河アキトと戦うためにこちらに来たんだが、

 まぁ奴とやりあう前にこの男と遣り合ってみるのも悪くは無いか」

だが、この時ルリは天河アキトと言う言葉に反応する。

「アキト・・・ってあの天河アキトのことですか?。北辰を倒した?」

「ルリちゃん?」

何を言っている?と言わんばかりに眉をひそめる恭也。

「ああ。この糞親父を倒した相手と聞いたら、居ても立ってもいられなくてな。

 仁美とか言う女と契約したんだ。この世界にいる天河アキトと戦わるかわりにちょっと仕事をするというな」

「・・・と言うことは死んでなかったんですね、アキトさん」

ルリは嬉しさのあまり、泣いた。

「まぁ奴は今、アキトとは名乗っていないらしいがな」

「え?」

「詳しいことが知りたければ自分で調べろ。俺はこいつと」

だが、この時圧倒的な格を感じさせる言葉が発せられた。



「今はそのときではないしょう」



木連の人間は聞き覚えのある声、そして恭也達には初めて聞く声。

ある意味、この世界の戦争の惨禍の拡大をもたらし、いやもたらし続けている人物。

そして、現在木連の最高指導者であり、地球連合政府、そして最高法院に苦渋を舐めさせ続けている人物。

「・・・草壁仁美少将」

北斗が不機嫌そうに言った。

「なぜその時期ではない?」

「・・・今、戦ってもそれは単なる勝ち、負けで終わるだけでしょう?」

「勝負に勝ち負けを決める以外に何の価値がる?」

「あるのよ。あなたはそれを知らないだけ。それに・・・」

「それに?」

「もうそろそろ時間よ。このままだと連合軍はここに駆けつける。

 連合軍第6艦隊は智将、倉田中将の率いる艦隊。あまり揉め事をこの場で拡大するのは好ましくない」

「だったらどうしろと?」

「一旦は引きなさい。あなたには望み通り、天河アキトや其処にいる高町恭也と戦ってもらうわ。

 でもそれはちゃんとした舞台を整える必要があるから」

「だから一旦、この場を引けと?」

「そう」

2人はにらみ合った。お互いの殺気が膨れ上がる。

恭也や北辰のとき以上の殺気が放出され続ける。

「ひっ」

忍やルリは思わず、震えた。それほどのものだった。

恐らく、一般人だったら気絶してもおかしくなかっただろう。

2人の視線が、空中で激突し火花を散らせる。

「「・・・・・・」」

30秒足らずの沈黙。だが、そこに居合わせた者にとっては永遠とも言える時が流れた。

そして、窓が何処かで起こった衝撃で割れる。

それを合図にする様に北斗の姿は消える。

「なっ、神速?」

恭也が驚いたのも束の間。次の瞬間には、北斗の拳は仁美の掌で受けとめられていた。

「お前もやるな」

「・・・・・・」

北斗はにやりと笑うと、身を翻した。

「ここは引き上げる」

「・・・感謝します」

「・・・あとで付き合ってもらうぞ」

仁美は北斗が去るのをみると、北辰の方に向き直り命じた。

「総員撤収」

「・・・御意」

「・・・彼女のことはあとで」

「・・・・・・・」

ルリは去ろうとする彼ら、いや仁美を呼びとめる。

「待ってください、アキトさんは、アキトさんはどこに居るんですか?」

「・・・・・・」

「お願いです」

「・・・すべての鍵はアルビオンが握っています」

この仁美の発言に恭也は驚き、仁美に尋ねた。

「アルビオン?。何故、あの企業が出てくる?」

「私は星野ルリと話しをしているのであって、あなたとではありません」

「くっ」

「・・・星野ルリ、アルビオンに彼はいます。

 この余りにも史実から逸脱した歴史が現出した理由を知りたければそこへ行きなさい。

 それとこれから起り得る新たなイレギュラーを知りたければネルガルを調べなさい。

 私が言えるのはそれだけです」

「・・・それでは、皆さんごきげんよう」

「待て、お前達は一体、何者なんだ!?」

「知りたければ自分で調べなさい。それではまたお会いしましょう」

そう言うや否や仁美は光に包まれ消えた。 

「・・・星野さん、君は彼らのことを知っているのか?」

「はい・・・」

「教えてくれないか?」

「いえ、今は」

「・・・そうか、じゃあその気になったら話してくれ」

「はい」

(アルビオンか・・・彼らは一体、何者で何をしようとしているんだ?)

恭也はこの戦いでアルビオンに対する疑念を深めていった。




「そうか。そんなことを」

『ああ、海鳴病院が襲われたのと同時に、市街地が蜥蜴による攻撃が行われている。

 彼らは間違いなく木星蜥蜴と繋がっているに違いない』

連合宇宙軍総司令官の執務室で、士郎は電話の向こうの恭也に尋ね返した。

「・・・彼女は間違いなく草壁仁美と名乗ったんだな?」

『ああ』

「そうか・・・わかった、こちらもネルガルとアルビオンに探りを入れてみる」

『わかった』

士郎は電話を切ると、接待用の椅子に座っている秋子に顔を向けた。

「すべての鍵はアルビオンにあると言う、彼らの言葉、どう思われます?」

「こちらの協力関係を壊す為の狂言、とは一概には否定できません。

 彼らが木連と何らかの関わりを持っている以上、恐らく何か重要な秘密を握っているのは確かでしょう」

「『史実から逸脱した歴史』・・・まるで未来から来たような言いぐさですね」

「彼らの技術力は確かに現在のものを遥かに凌駕していますが」

現実主義の軍人からすれば、未来から来たなどと言うことは世迷言にしか聞こえない。

「それと最後の鍵は天河アキト。

 記録では、佐世保で死亡したことになっていますが、この報告からすると違うようですね」

「・・・そして、これから起こるであろうイレギュラーの鍵はネルガルが握っている」

「・・・探らせますか?」

「色々、当ってみるとしましょう」

(この戦争では一体、何が起こっているんだ?)

士郎はこの戦争の裏側で何が起こっているのかに考えをめぐらせる。

一方で、秋子は

(この戦いはあくまでも何かの一部、この世界を大きく変えようとするなにか

 大きな流れの一端に過ぎないのかもしれませんね。

 この流れの源泉を突き止めない限り、我々は後手に回ったまま。

 そして、この流れを作り出しているもののなかにアルビオン、そしてあの草壁仁美がいるのでしょう。

 ・・・確たる証拠はありませんが、そんな気がしてなりません)

士郎とは別に、この戦争を流れの一端と捉え考えていた。

だが2人の考えで一致するのは、地球側でこの戦争の秘密の一端を知っているのはアルビオン。

天川カイトと、その取り巻き達であろうということだった。

「彼等と話をしてみる必要がありますね」




『話したのか?』

士郎と秋子の会話が行われているころ、仁美の執務室の中では春日井のやや不満に満ちた声が響いていた。

「詳しいことは話してないけど?。

 まぁアルビオンが持っている情報なんてあくまも表向きだから問題無いでしょうし」

『そうかな?。彼等が仮にこのことを知ったらどう動くかはまだわからんぞ?』 

「下手に動かないでしょう」

『だがやりづらくなるのも確かだ』

「大丈夫。手はあるから」

『・・・まぁいい。最高法院から赤毛の暗殺者に対する討伐隊が派遣されるそうだ』

「へぇ〜、正規軍?」

『いや、そうではないらしい』

「・・・ネルガルの艦を使う気のようね」

『・・・そうだ』

「大丈夫、歓迎の準備は出来てるわ。

 まぁ、彼等が着たらナイスでグットな歓迎レセプションをするつもり」

『・・・そうか』

「じゃあね」

そして通信が切られる。

「・・・・・・」

何か口の中で呟いた仁美は、ある施設に向かった。




 仁美は総司令部から離れた場所にある施設の、比較的奥の部屋に入った。

「彼の調子はどう?」

「はい。腕の組織が大分、痛んでいます。あのまま戦っていたら不味かったでしょう」

研究者と思わしき人物の前には培養槽に入った北辰の姿があった。

「そう、あの高町恭也とか言う人物、強敵になりそうね」

「ですが、この程度でへこたれるようでは話になりません」

「・・・確かに、再強化は?」

「これ以上強化すると、彼の体がもちません」

「持たなかったら、コピー3号に移行させなさい。こいつは破棄しても構わない」

「はい」

「魂の転写は気をつけるように。それと、影護北斗のことだけど」

「順調です」

「もう一つの人格、枝織をコピーに移すように」

「・・・了解しました」

彼女が向き直った先には、2つの培養槽の中には眠る同じ姿をした2人の赤毛の少女の姿があった。

「・・・痛たた。まったく彼女、いえ彼も手加減を知らないわね」

よくみると、仁美の腕には包帯が巻かれている。

「そして、それがもう1人増えるか。

 ・・・まぁ彼女はそこまで好戦的ではなさそうだけど」

「閣下、無茶は控えてください」

「わかってる。でも、多少はストレスの発散も重要じゃない?」

「あれが適度ですか?」
 
「達人と素人では基準が違う。大丈夫、自分の体のことはよくわかってる」

「なら良いのですか・・・。休暇も取られたほうが良いですよ」

「それもそうね。彼女の処置が終わったら、また付き合ってもらおうかしら?」

「閣下!!」

そのやりとりが聞こえているのかいないのか、培養槽の中の少女。

北斗と名づけられた少女は満足そうに微笑んでいた。














 あとがき

 時を紡ぐ者達第27話お送りしました。

・・・う〜ん、とらハ3キャラのオンパレード(笑)。



さて、この作品ではまったく影が薄いナデシコキャラですが、もうそろそろ本格的な出番が回ってきます。

彼等が如何なる活躍をするかは・・・お楽しみに。

それでは第28話でお会いしましょう








管理人の感想

earthさんからの投稿です。

・・・無事に辿り着いたみたいですね、北斗(笑)

登場時は、偶然居合わせたのかと思いましたが、草壁少将が裏にいましたか。

それにしても、枝織と分割するって・・・どうなるんだろ?(苦笑)

 

ちなみに、とらハのキャラではゆうひが一番好きです(笑)