「ユリカさん、暇ですね。」

「うん。」

「アキトさん帰ってきませんね。」

「うん。」

「予定だととっくに帰ってきても良いんですけどね。」

「うん。」










劇場版機動戦艦ナデシコAfter                   
星界へ続く道
第4話


























「さて、君たちは何をしたいのかね?」


アカツキはルリたちが何をしたいか分かっているにもかかわらず、問いかけている。

もちろん、答えも分かっていながら。


「アキトがどこにいるか教えて欲しいの。」

「おいおい、この前もいっただろう。僕は知らないよ。道具を貸しただけだし。」

「ネタは上がってますよ。アカツキさん。ここ半年、出入り口のないドッグに二月に1回の割合で物資が

搬入されてますね?食料、水、その他諸々の生活物資。

・・・・・そのドッグにはアキトさんが帰ってきているんですね?」

「やれやれ、そこまで調べが付いているのかい。じゃ、その二月に1回の物資が今日当たり搬入されることも?」

「もちろんです。だから、今日という日を選んだんですよ。」

「へ〜、そうなんだ。ルリちゃんが頑張ってアキトのこと探してたのに私は今まで何やっていたんだろう。」

「いいんですよ。大切な人のためですから。」

「大切な人って私?」

「ユリカさんもそうですけど、どちらかと言えばアキトさんの方ですね。私、気が付いたんですよ。

シャトルの事故でアキトさんがいなくなって。アキトさんのことが好きだったんだなって。」

「うーん、やっぱりそうなのか。うすうす気が付いていたんだけどね。」

「なら話は早いですね。」

「アキトのことは譲らないよ。」

「いいですよ。妻の座はユリカさん、私は2号さんでいいですから。」
軽いぞ、ルリ)
「うーん、仕方ないか。」
(それでいいのか!ユリカ!)


「さて、話は済んだかい?」

「あ、ごめんなさい、アカツキさん。で、アキトはどこ?」

「いや、マジで帰ってきてないんだ。僕たちも心配してるんだけどね。」

「アカツキさん!それってどういうことです!」


ルリがアカツキに迫ってみるが、いつも通りへらへらした顔で「さぁ〜」と答えるに過ぎない。

何かを知っていそうで、本当に知らない。

そんな振りをするのが上手いアカツキであった。

そんなアカツキでもユリカにはあっさりばれるようだ。


「本当に知らないようだよ。ルリちゃん。」

「なんでそんなこと分かるんですか!。」

「なんとなく。アキトが近くにいる感じがしないんだもん。」

「はぁ。」


流石天然艦長。アキトの電波を受信するアンテナはばっちり働いているようだ。

それ故にルリが2号さんで甘んじるわけだ。

ちなみにアキト釈放の要求をしてからとっくに3時間が経っている。

連合政府からナデシコCに着信していたがもともと交渉する気のないルリ&ユリカは接続を拒否したままで、

アカツキの執務室に行っていたのであった。

もちろん連合政府首脳は猛烈に戸惑っている。

ユリカの父親、ミスマルコウイチロウが倒れているのをミスマル家の家政婦をやっているウメさん(当年61歳)が

発見したのもこのときである。

まぁ、それは置いておいて。


そんなこんなでアキトがいないことが分かった二人はナデシコCでうだうだやることになった。

アカツキも女テロリスト二人組と接触しているのが世間にばれると困るので騒がないようにと

言い含めるだけで他は何も要求しない。

ユリカもルリもそういうことは分かっているのか静かなものだ。

時折、エリナかイネスが昔話をしにきて良い暇つぶしになるが基本的に暇なのだ。

イネスの場合はユリカを連れて行くこともしばしば。

遺跡から分離してまだ半年のユリカを心配なのか研究したいのか分からないのが気味が悪いというと

イネスに刺されるので研究したいと言うことにしておこう。



そして一月が経とうとしていた。

アキトが帰ってこない事に関していろいろ会議を開いていたりした。

認めたくないが有力な説明はユーチャリスに何らかのトラブルが発生して帰ってこれない状態になった

というのが一番妥当と言うことになった。

アカツキにしろイネスにしろたかだか半年で可住惑星やその他の文明が見つかるとは考えていない。

と、そうしている内にアカツキのコミュニケに連絡が入った。

ユーチャリス用のドックに反応があったようだ。

「さて、突然だがアキト君たちが帰った来たようだ。詳しい話は後にして出迎えるとするか。

で、エリナ君、ユリカ君とルリ君は?」


5人いるはずの所に3人しかいないことに気が付いてとなりに座っているエリナに訊ねてみた。


「あなたが帰ってきたと言ったとたん走り出したわ。」

「どこにいるのか分かっているのかね。まぁ、あの艦長なら分かるだろうけどね。」

「艦長ってどっちの?」

「あ、そうか。どっちも艦長だっけ。ま、この際どちらの艦長でも良いけどね。」

「それもそうね。ホシノルリはすぐ調べられるだろうし、ミスマルユリカは電波受信してるし。」






さて、場面は変わってユーチャリス艦橋。

「アキト、あと2回のジャンプで着くよ。」


星系から出る際の3回の短距離ボソンジャンプと37回の長距離ボソンジャンプで太陽系の土星付近に着いていた。

最短のコースで帰れるように道順を決めながらの帰郷であった。

ボソンジャンプは距離と精度が逆比例する。

100の距離で誤差が1ならば1000の距離で誤差は10になる。

別の言い方をすれば距離と誤差が比例すると言うことか。

短距離であればだいたい狙ったところにジャンプできるが長距離になると数万km単位で誤差が出る。

この誤差はボソンジャンプの習熟度にも比例する。

アキトなら10光年の距離をジャンプして誤差半径3万kmだがイネスがやればおそらくは数十万kmになるであろう。

太陽系程度の距離のボソンジャンプは数メートルの誤差で済む。

いかな古代火星人の科学力であっても宇宙を解明したわけではなく、宇宙の揺動を計算しきれなかったようだ。


閑話休題


「ここが君たちの故郷か。違う銀河系だけどやっぱり宇宙は宇宙だね。星の位置が違うだけで

 ボクたちの銀河系と何ら変わるところはないね。ここの星系の恒星も安定しているし、小惑星帯のおかげで

 資源にも不自由しそうにないね。」


アーヴの帝都[ラクファカール]を出るときに気が付いたら乗り込んでいたコリュールの言である。

本人曰く、「許可は取ってあるよ。」だそうだがどうだか・・・


「これより月の重力圏内にボソンジャンプする。その後直ちにネルガルの第13番ドッグにボソンジャンプ。

 準備はいいか。ラピス。」

「艦内環境、システム、機関、全てOK。」


軍のレーダーに引っかからないようにするために土星静止衛星軌道上から月面のレーダー網の穴にジャンプアウト。

その後直ちに公式には存在しないドッグ、第13番ドッグに入港する。

いつも通りの手順。


「・・・・・・・ジャンプ。」





「着床完了・・・・・艦外に呼吸可能な大気を確認。アキト、外に出ても大丈夫だよ。」

「ご苦労様。ラピス。」


アキトがそういうとくしゃくしゃっとラピスを撫でる。

よく見るとラピスが少し顔をほころばせている。

テレビ版ナデシコ終了に近いホシノルリを思い出させる。


「さて、アカツキかエリナに連絡取るか。1月遅れだから心配掛けたろうし。繋げてくれ。」

「うん。」

『やーテンカワ君。遅かったね。』

「まぁな。見つけたんでな。」

『見つけた?文明をかい?』

「ああ、そうだ。あちらのトップにも会ってきた。詳しくは直接話す。」

『そうだね。あ、そうだ.......プチッ


話の途中に通信が切れた。

何か起こったようだ。


「アキト、オシホに侵入者。あ、扉空けられた。」

「ちっ、アカツキめ。何する気だ。ラピスとコリュールはここにいろ。俺は迎撃に行く。」


艦長席の脇に置かれている黒のマントを羽織り、装備を確かめ顔をしかめる。

戦闘を考慮した装備でなかったからだ。

24口径オートマチック、予備の弾倉x2。大型ナイフx2、愛刀「葉双」。


「ボクも援護ぐらい出来るよ。」


と、凝集光銃(レーザー銃)を構える。


「それならラピスを頼む。」

「わかったよ。」


そう言って、艦橋から走って出ていった。

艦橋から艦の出入り口まで全力で走って8分。

息を切らせるわけに行かないから10分と言うところか。

元からワンマンオペレーションの実験艦として作られているため、艦橋まで一本道になっている。

3分ほど経った頃、人の走ってくる足音がする。


「(人数は2人、素人だな。着床と同時にハッキング。間髪入れずに乗り込む。この手際はプロだ。

 なのに何故?どうする?)」


考えるより先に体が動いている。敵はもう近い。一番手近な曲がり角に隠れ、敵の近づくのを待ちかまえる。

アキトと敵の距離は10mまで近づいている。

5mとまで近づいたとき、飛び出して銃を撃つ。

タンタンタン

3発。過たず目標を貫いたかに思った。

しかし、目標には当たっておらずなお接近している。

アキトはそのまま転がり起きあがりつつ目標に狙いを付ける。

アキトーーー

目標はでかい声を上げながらアキトに飛びついてきた。

アキトは目標を見て固まり、弾が当たらなかったことに信じてもいない神に感謝した。

だが、それが油断を生んだのか目標の体当たりに耐えきれずに後ろに倒れ込んだ。


「ユリカ・・・・・・」

「アキト、会いたかったよ・・・・」


ユリカはアキトの胸に顔を埋めながら嗚咽を上げている。。

ユリカの後を走ってきたルリははぁはぁと息を切らせながら立っている。


「お帰りなさい。アキトさん。」

「ただいま、ルリちゃん。」



つづく


後書き
さくっと第4話終了!
もう少し先まで書く予定だったけど、なんか上手く落ち着いちゃったので第4話はここで終わり。
ようやくルリ、ユリカとの再会までこぎ着けました。
プロット通り進まないねぇ。
まぁいいか。
素人だし。
頭の中では上手くシーンは出来ているのに上手く文章に出来ない。
もどかしいですね。

で、作中に出てきたアキトの愛刀「葉双」おそらくは今後出てきません。
元ネタでは笛なんですがね。


メモ
1光年≒950000000km(9.5億)
10光年≒9500000000km(95億)
10光年に30000kmの誤差
7200万km(火星地球間の最接近時の距離)では?
9500000000:30000=72000000:X
X=30000×72000000÷9500000000
X≒227
イネスの場合だとその10倍
2270kmぐらいの誤差。
こんなに誤差が出たら火星につっこんじまうなぁ。
火星まで接近してさらにジャンプと言うことにしておこう。



さてさて、恒例の星界豆知識のコーナー。
星界の戦闘艦について書こうかと。

艦種(星界) アメリカ軍 だいたいの全長 主武装
突撃艦(ゲール) 駆逐艦 300mぐらい 反陽子砲
護衛艦(レート) 防空艦 300mぐらい 凝集光砲
襲撃艦(ソーパイ) 巡洋艦 500-1200mぐらい? 電磁投射砲
巡察艦(レスィー) 戦艦 1700mぐらい 電磁投射砲
戦列艦(アレーク) 空母 3000mぐらい? 機動時空爆雷

ものすご〜〜〜〜く簡易的に書きました。
戦闘艦の説明より先に武装について説明せねばならないか。

反陽子砲(ルニュージュ)
ビーム砲の荷電された重金属の粒子ではなくて反物質になったモノ。反物質を一直線に放出するだけ。
威力はそれほどでもない(星界の中では。ナデシコではかなりの破壊力になるでしょう。ディストーション
フィールドが無ければかすれば爆沈ぐらいに。)

凝集光砲(ヴォークラーニュ)
なんて事はない。ただのレーザー。連射性、弾速共に最速でしょう。ただ、飛んでくるミサイル(アーヴに
敵対する人類統合体は突撃艦にミサイルを装備している)とかを打ち落とす程度にしか役に立たない。
大型艦には焼け石に水。

電磁投射砲(イルギューフ)
レールガン。初速が光速0.01(秒速3000km)で発射され、無秩序噴射によって敵艦の防御弾幕を
かわしつつ突進、姿勢制御を済ませると最終加速をして、目標にぶつかる自動追尾機構付。核融合弾頭の
ミサイルをレールガンで打ち出すようなモノ。通常空間戦最強の武装。分間20発以上の連射性があると思われる。

機動時空爆雷(サテュス・ゴール・ホーカ)機雷(ホクサス)
平面宇宙を航行する能力を持ったミサイル。弾頭に反物質を使用。破壊力は電磁投射砲より上。ただ、
平面宇宙を航行するための機関、時空泡発生機関がでかいためあまり搭載することが出来ない。
巡察艦で10発程度、戦列艦で100発程度。弾頭にデリケートな反物質を使っているため、
発射直前に燃料兼炸薬の反物質を搭載している艦から供給。

突撃艦は反陽子砲を艦首に一門装備。そして数で攻める。攻撃力はいまいち。

護衛艦は敵の機雷(機動時空爆雷)を落とすのが役目のほとんど。
だから大型艦を護るための防空艦。防空艦ではなくて対空駆逐艦か。まぁいいや。

襲撃艦は電磁投射砲2門。巡察艦の縮小版であるからまさに巡洋艦。機雷を搭載しないことによって
船体の小型化と平面宇宙での速度の向上と生産の容易性を狙って作られた。かなり新しい艦種。
実験段階ですがうまく運用できれば突撃艦と置き換わっていくらしい。

巡察艦は電磁投射砲を前に4門、後ろに2門装備。さらに機雷を10発前後装備。まさに戦艦。
巡察艦は単独(1戦隊6艦ぐらい)で敵に強行偵察をかけて帰ってくることを望まれ速度と攻撃力を
最大限にまで引き上げられた艦種。その分生産性が悪い。

戦列艦は機雷を発射するための発射台。巨大な船体に100発以上の機雷を積み込んでいる。
巨大なだけに質量も巨大で平面宇宙ではかなり鈍足。空母と言うよりはミサイル艦とかの方が
いいかも知れませんが私的にはやはり空母かと・・・このことを語ると長いので語りませんが。

平面宇宙ですが平面宇宙での速度は質量の2乗に反比例するので軽ければ軽いほど速いのです。
質量が半分なら速度は約1.4倍。
次回にでも平面宇宙について説明しようかと。
星界シリーズではこれが重要なので。


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代理人の感想

フタマタ(ミツマタ?)の構図が完成しましたね(爆)。

まぁ、そこらにゴロゴロしてるハーレム野郎よりかは余程可愛いもんですが(笑)。