――う〜〜ん、使用人らしき人に、ここで待っているように言われてから、もう十分になりますが………
  こんなに立派だと落ちつきませんね………

パタパタパタパタ――

――おや、さっきのお爺さんでしょうか?

ガラッ――
すみません、お待たせしてしまいまして。

――いえいえ、あなたがお話の?

はい、あらあら権爺ったらお客様にお茶もお出ししないで……

――ああ、お構いなく。
それよりも、この度は私どもの取材に応じて頂いてありがとうどざいます。
早速ですが、自己紹介からお願いできますか?

はい、もちろんです。
じゃあ名前からですね、始めまして私、真宮寺若菜と申します。

機動戦艦ナデシコSS

「漆黒の戦神アナザー」真宮寺若菜の場合
競作企画・さくら戦神シリーズ

encyclopedia

――しかし、立派な御屋敷ですね。

そうですか?

――ええ、ここまで立派な日本家屋は今時ではチョット見かけませんよ?

そうなんですか?
この真宮寺家は古くから代々剣術を伝承してきた由緒ある家で、仙台でも有数の旧家です
から……

――へぇ……
それは、凄いですね、歴史ある名家ってことじゃないですか?
  あれ?でも……

どうしましたか?

――いや…『真宮寺』…それに『剣術』………
  最近どこかで…聞いたような気がして………
ああっ!!

きゃあ?!ど、どうしたんですか?

――ああ、驚かせてしまって申し訳ありません、やっと思い出せたもので……

はあ?

――いえ、以前、取材に応じてくださった方のことなんですけどね、東京の帝国歌劇団と言うところで女優をなさってる方なんですが、この方も家に代々伝わってると言う剣術の使い手なんだそうなんですよ、まだ若い娘さんなんですけどね。
いやあ、偶然ってあるもんなんだなって思いまして。

帝国華撃団?女優?すいませんが、その方のお名前は分かりますか?

――え?あ〜、ええと…確か、真宮寺さくらさんとか言ったような……

娘です。

――へ?

だから、娘です。

――ええ〜!!む、娘さんですか?

はい、それがなにか?

――ああ……
  いえ、とてもそんなに大きな娘さんがいるようには思えなかったので……

あらあら、こんなおばさんを捕まえてお上手ですね(喜)。

――そんな、まだまだ十分おきれいですよ。

そうかしら…ウフフフ(照)。

――くうっ!清楚な大和撫子の娘さんに、成熟した色香を漂わせる人妻ですか?
  美人親子の
親子丼なんて羨ましすぎるぅ(血涙)

どうしました?ドンブリが何か?

――い、いえ、こちらの話ですんで。

はあ、そうですか?

――え〜〜それでは、彼との出会いからお願いします(汗)。

はあ、分かりました……
あの方と始めて出会ったのはここ仙台ででした。

――仙台ですか?あの人は本当に何処へでも通りがかりますね……
  女性の窮地を感知する第六感を備えているという噂も満更、嘘でもなさそうですね。

まあ、そんな噂が?

――まあ、流石に彼の話を拾い集めて世界各地を飛び回っていますとね(涙)

はあ……(困惑)

――それに、その先々で彼と甘〜い惚気話を事細かに聞かされていると……(涙)
ううっ、こっちはその所為で彼女を作る暇さえないっていうのに……(滝涙)

それはそれは……(困惑)

――漆黒の戦神のバカヤロッーー!!!!!

……………(困惑)

――ハアハアハア……
  すいません、取り乱してしまって……

……お疲れなんですね。

――ええ……(滝涙)
  ………本題に戻りますね?

え、ええ、あの方には義母ともども命を助けてもらったんです。

――義母?

夫の母です。夫は随分前、娘が小さい頃に病気で亡くなりました。

――そうでしたか……

ご存知と思いますが、ここは前線となっている地方から大分離れている所為か、あの機械の蟲も滅多に現れません。
きっと油断していたんですね、戦争戦争と騒いではいるけど、ここ最近は平和そのものでしたから……
その日、私は用事を済ませるために母と一緒に街に出ていたんですが、そこに例の蟲が現れたんです。

――パニックになりませんでしたか?

なりましたわ、人通りの多い街の中心部でのことだったので大変な騒ぎになりました。
力の強い者が逃げる為に弱い者を押し退け、大人が小さい子供を踏みつける、辺りには怪我を負った人の呻き声と子供の泣き声があちこちから聞こえていました。

――……地獄のような光景ですね。

はい、あんな光景は二度と見たくありません。
気づいた時には私と義母も人の波に巻き込まれてしまいました……
それでも、何とか人の流れから抜け出た時には、私の目の前にはあのバッタとか呼ばれてる例の蟲が見下ろしていたんです。

――それは怖かったでしょう?

ええ、それはもう……
その上、人波から抜け出る際に足を痛めてしまったらしく、動くことすら出来ませんでしたし……
今こうして無事なことが奇跡みたいなものです。

――そしてそこに彼が現れたんですね?

はい…あの方は風を纏って現われました……
あの方は光る剣を振い一刀のもとに蟲を両断すると振りかえって私に怪我はないか尋ねてくれました、私が義母とはぐれてしまったことを伝えると少し考えていたようでしたが、私のことをその……お姫様だっこで抱き上げると安全な場所まで運んでくれたんです。
その後、私に少し待つように言ってどこかに行ってしまったんですが、暫くしてから戻ってこられたあの方の背には義母が背負われていました。

――彼が「漆黒の戦神」その人とは、その時にはもう?

いいえ、その時はまだ……
それに、あの方は私の足の応急処置を済ませると、その後、軍の部隊が来たことを確認するとそのまま名も告げずに立ち去ってしまったんですから……

――ふあ……
  まさに、ヒーローですね……

一言お礼が言いたくて基地を訪ねても見ました、結局のとこあの方にお会いすることはできませんでしたが……
あの方のふたつ名と素性を教えてもらったのはその時です。

――彼はあのナデシコのクルーですからね、基地で会うことは出来ないでしょう。

ええ、そのこともその時に知りました。
教えてくれたのは女性の軍人さんでしたが、あの方のことを嬉しそうに、そしてここに居ないことをとても残念がってたのを覚えていますわ。

――う〜〜ん、基地の男性が血の涙を流してる姿も目に浮ぶようですね(笑)。

それで、あの方と再会したのはそれから暫くしてのことでした。
切っ掛けは娘からの手紙でした、それには一枚のチケットが同封されていたんです。

――チケット?

はい、それは帝国華撃団の特別講演「シンデレラ」の舞台のチケットでした。
舞台での娘を一度見たいと思っていた私は、まようことなく東京へと向うことにしました。
そこで私はあの方と再会したんです。

――え?では劇場に彼が?

ええ、理由は分かりませんが劇場の食堂でコックされていたんです。
娘が連れてきて私に紹介してくれた時には、本当に驚きました。

――そうでしょうね、まさか今話題の「漆黒の戦神」とコックはちょっと結びつかないですからね。

始めてあった時と全然違うのに、不思議と私には直ぐ分かりました。
あの方も暫くして気がついたのか驚いた顔をしていました、そして私が以前のことでお礼を言うと、あの方は小声で自分のことは内緒にして欲しいと頼んできたんです。

――へえ?何でなんでしょうね?

さあ?私には詳しいことは分かりませんが……
私が承知するとホッとしたように笑顔になって、その時の笑顔はまるで子供みたいでしたわ。
それで、あの方の手料理を食べて、舞台を見物して本当に楽しい一日でした。

――彼も一緒だったんですか?

ええ、忙しいのに娘の我が侭に付き合ってくれて……
私とさくらのことをほんの少しだけ寂しそうと言うか、羨ましそうに見られてましたね。

――ははあ、それはもしかして

もしかして?

――ええ、彼は両親を早くに亡くしてるそうなんです、親戚もいなかったようですし、この両親はふたりとも科学者で共働きだったようですし、誰かに甘えた記憶なんて殆どないじゃないでしょうか?

まあ……

――小さい頃は孤児院に居たようですし、家族や母親に憧れるのも仕方ないのかもしれませんね……

そうだったんですか……

――……どうしました?いきなり、考え込んで?

……決めました。

――何をです?

私が……

――はあ……

私が甘えさせてあげます!!

――はい〜!?どどどどういうことですか!!?

だから私があの方を甘えさせてあげるんです!!!

――ええ〜と、それは彼とさくら嬢が結ばれて、彼の義母になるってことですよね?

私、そんなこと言いましたか?

――ち、違うんですか?

私は
『あの方を甘えさせてあげる』と言ったんです、さくらと結ばせてなんて言ってませんよ。

――そ、そう言えば……(汗)

さくらもあの方とは十分面識もあるようですし、やはり男親は必要だと思いませんか?

――で、でも、娘さんは?

フフフフフフフ……
こと恋愛に関しては親娘でも遠慮はしませんわ。
それにイザとなれば、お若いことですし
ふたりまとめてでも可愛がってもらいます!!

――え,ええと、最後に彼に伝えたいことがあればどうぞ。

はい、では。
アキトさん、一度目は偶然の出会い、二度目は幸運な再会でした、でも三度目は必然ですよ
(はぁと)。

――やれやれ、煽ってしまいましたね……
  トホホホ……私達は果たして五体満足で明日の太陽を見ることができるんでしょうか(涙)

民明書房刊「漆黒の戦神その軌跡」B28氏特別企画号より抜粋

 

 

「ふう、取り敢えずはこれでよしっと……」

ひと仕事終えた『私』はそう言いながら、手に持ったカップに口をつけた。
紅茶の芳醇な香りが私の鼻腔をくすぐる、凝り固まった精神が解きほぐされて行くのが分かる。
ワンルームマンションのある一室で『私』は午後の優雅なティータイムのひとときを楽しんでいた。

はあ……

リラックスの余りに思わず息が漏れる
心地よいゆったりとした時間が静かに流れる。
これぞ、まさに至福のひととき。

香りとその深い味わいをひとしきり楽しんで、カップをソーサーの上へと戻したその時だった。

ジリリリン!ジリリリン!

黒電話の無粋な呼び出し音がけたたましく鳴り響いた。

誰からだ?こんな時に……

折角の時間を邪魔されて不機嫌になる『私』。

ジリリリン!ジリリリン!

しかしそんな『私』の気分にお構いなしで鳴り続ける黒電話。

「はいはい、今、出るよ」

手を伸ばし、受話器を取る。

『はい、もしもし?』

内心不愉快に思いながらも電話に出る。

『おう!俺だ』

中年の男の声が受話器から洩れる。

『なんだ、あなたでしたか…それで、何の用ですか?』

『へへっ…そう言うなよ、黒い男の情報だ……(ニヤリ)』

受話器の向こうで男がニヤリと邪悪に笑うのが分かる。

『ほほう、それで?(ニヤリ)』

『私』も笑う、我ながら邪悪な顔をしていることだろう、鏡を見ないでもやすやすと想像できる。

『ああ、ヤツは巨人を奪って逃亡中だ』

『へえ、あの彼女達から良く逃げられましたね』

『まあな、それだけヤツも必死なんだろ?夜の内に逃走したらしくってな、朝には既に居なかったらしい』

男の愉快そうな笑い声を聞きながら、彼の予想以上の素早い動きに軽い驚きを覚える。

『取り敢えず、情報はこれだけですか?』

『……ああ、それと少し気になったことがあってな』

『……何です?』

電話の声に合わせてこちらも声を抑える。

『あの雑誌編集者が消えた……』

男の声がさっきまでと一転し真剣なものに変わる。

『……どういうことです?』

男の言葉が理解できず、『私』は問い返した。

『どうもこうもねえ!彼女達だ!彼女達の同盟が動いたに決まってるだろ!!』

声を荒げる男、その声は恐怖の為か引き攣り、語尾はどことなく震えている。

『いいか?取り敢えず、気をつけるんだ!こっちも周囲には気をつけ……プツッ』

その声が前触れもなくブツリと途切れる。

『どうしたんです?!もしもし!!もしも〜し!!』

プーーー

『私』の呼びかけに返ってくる垂れ流しの電子音。

そう言えば…静か過ぎる……
いつもこの時間になれば聞こえてくる筈の、ご近所の皆さんから最も野生に近い座敷犬と評判のお隣さんちのジョセフィーヌ(チワワ・雄)の遠吠えどころか、虫の声すら聞こえてこない。
この異常事態に『私』は窓から外を窺った。
壁に背をつけ、外から見られないように万全の注意を払いながら素早く周囲に目を走らせる。

何もない……?

そこに広がるのは、何時もと変わることのない平和な風景。
その日常の光景こそ歓迎すべきだが、今はその変化のなさが不気味でしょうがない。

いいか?落ちつけ…落ちつくんだ……

自分に言い聞かせるように呟きながら、室内をグルグルと歩き回る。

「そうだ!!気分転換にテレビでも見よう!!」

我ながら名案と思いリモコンのスイッチを押す。

しかし――

「あれ?映らない?」

リモコンどころかテレビ自体の方も弄繰り回して見るが一向に映る気配はない。

諦めかけたその時。

ブゥン

僅かな音がしてブラウン管に画が浮かぶ。

「なっ?!!」

そして『私』は息を飲んだ。

テレビに映っていたのは、抜けるように白い肌、杏形の小さな顔、吸い込まれそう金色の瞳、そして長い瑠璃色の髪をツインテールにした、ひとりの美少女のバストショット。
慌てて他のチャンネルに回すが、全てのチャンネルに彼女の姿が映っている。

『あなたは既に包囲されています』

そうこうしているうちに、そのサクランボのように瑞々しい唇が言葉を紡ぎ出す。

『今から五分の間に出てきてください、もし出てこなければ
殲滅することにしたいと思いますので。
ああ、それと抵抗は無意味ですのであしからず』

『私』の顔から血の気が引き蒼白となり、思わずコンセントを引っこ抜く。

な、何が起こってるんだ?

少しでも情報を得ようと『私』は震える手でラジオのスイッチを入れた。

『ザザーー…あな…たのナカ…間である…某……組織の面々は……既にショ…分済み……です、救援…は…あり……ません……ガーーピッ』

無言でスイッチを切る。

この分では既に電話回線も切断されたことだろう、しかし何故……?

少し冷静になった頭で考える。

如何考えても『私』は某同盟全体を敵に回す覚えはない、唯一の懸念であるお仕置きの対象からも外れているはずだ、このことについては彼の御仁本人からお墨付きを貰ってるのだから間違いない、だが、そうならば何故私はこんな目にあっているのだろう?

思考に沈んでいた『私』の頭に閃くものがあった。
思い出される、先ほどの切れる前の電話でのやり取り。

『あの雑誌編集者が消えた……』

なんでこんな重要なことを忘れていたんだろうか……
おそらく、あまりのことに脳の方が認識することを拒否したに違いない、ああ…『私』の馬鹿……

思わず天を仰いだその時だった。

プシューー

玄関のドアに備え付けの新聞受けから、曰く形容し難い色をした、見るからに「私、毒持ってます(はぁと)」とでも言ってそうなガスが、まことに勢い良く噴き出して来ているではないか。

「うわあ?!」

慌てて窓に駆けより、開けようとする、だが……

「あ、開かないぃぃ?!!」

鍵を開けたにもかかわらず、何故だか窓はビクともしない。

プシューー

その間にもガスの勢いはますます強くなっていく。
既に室内はガスが充満し最早逃げ場もない。

死して屍拾うものなし……

何故だか意識を手放す前にそんな言葉が頭に浮んだりした。





「フフフフフ…私達を挑発した報いです……」

ガスのなくなった部屋で、瑠璃色の髪の少女が静かになってしまったソレを見下ろしながら呟いていた。

チャチャチャ〜チャ、チャチャ〜ラ、チャチャチャ〜〜

突然、軽快なメロディが流れる。

少女が携帯を取りだし耳に当てる。

『もしもし?』

『ルリちゃん?どうだった?』

携帯から良く通る豊かな響きの美声が洩れる。

『成功です、メグミさん』

『そう?上手く行ったのね?』

『はい、確実な包囲網を敷き、五分と言う時間を与えることで、精神的に追い詰め、自らの所業を後悔させる…流石ですね……』

『フフフフフ…誉めても何も出ないわよ……』

恐ろしいことをサラリとのたまうふたり。

『それで後始末なんですが……』

『うん、イネスさんが洗脳した構成員を何人か行かせるって』

『では、やっぱりラボに?』

『ええ、みっちり教育するんだって……』

『そうですか……』

『『ウフフフフフ……』』

この時、梢にとまって羽を休めていたカラス達が一斉に逃げ出した。

『それじゃあ』

ピッ

電話を切し、スカートのポケットにそれを仕舞う。

「あれは……」

その際、少女は何気なく向けた視線の先に、一台のノートパソコンを見つけた。

ピィポ

何の躊躇いもなく起動させる少女。
幾つかのファイルを開いて、中身を確認する。

「そう言うことですか……」

少女の目があるひとつのファイルで止まる。

「こんなに大勢で…大物も何人か絡んでいるようですね……」

そのファイルのタイトルには「競作企画・さくら戦神」の文字が。

「ウフフフフ…狩の時間です……」

そのファイルをドラッグさせ「ゴミ箱」に放り込みながら、少女は冷たく呟くのでありました。





いやあ、遅くなりましたencyclopediaです。
この「さくら戦神シリーズ」真宮寺若菜さんで名乗りを上げた『私』でしたが、予想以上に書き難かったです。
やっぱり、強烈な個性を持った他の面々と比べて、貞淑な妻である若菜さんは印象が薄かったですからね、まあ今回は対応策として少々壊れてもらいましたが(笑)
さて後半部分ですが、身に覚えがある方も多いと思います(爆)、今回は固有名詞が出ていないということでご勘弁ください。
他の方々が色々と趣向を凝らした作品を次々と発表するのを見て、ない知恵を絞った結果なのですから。
尚、ここでアキトが両親と死に分かれた歳についてですが、六歳としました。
これについてはもともと六歳と八歳のふたつの説があるとか、そして掲示板で自分の都合のいい方で構わないのでは?という助言を頂き、六歳と決定させてもらいました。
後、katanaさんの「真宮寺さくらの場合」とリンクする部分がありますが、事後承諾となってしまったことをこの場でお詫びしたいと思います。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。
では。

 

 

 

代理人の感想

 

オカアサンガコワレテシマッタ。

encyclopediaサンガコワシテシマッタ(爆)。

モウモトニハモドラナイ(核爆)。

 

 

 

・・・・・ジョークですからね、ジョーク(汗)。

 

 

 

ちなみに・・・・私もですか(恐)?