「いやぁ、ココはどこだろうね」

「って、アキトさん、さっきボ、ボ・・・・・・なんとかさんに帰り方教わったじゃないですか!」

 ・・・アキトとマイ、そしてフィーリアの三人は洞窟を彷徨い続けていた。

 ヌボリアンの王、ボランゴボンババ18世と会った後、この洞窟の出口までの道筋を教わった。

 なぜか外へ誰かが出るたびに部屋の配置や、数までもが変わるこの洞窟だったが、ここ最近出た者はいないため、ヌボリアンは道筋を把握していた。

 そして、洞窟の中で完全に道に迷っていたアキトは彼らに道を教わった。

 それにも関わらず、迷っていた。








蒸気王国の王女

Presented By E.T

Second Story:脱出 〜Encounter〜











「う〜〜ん・・・・・・どうしてだろうね?

 (北斗や枝織ちゃんの方向音痴でも伝染ったのかな?)」

 マイはその言葉に「はぁッ」と溜息を付いた。

 だが、次のアキトの言葉で、固まった。

「マイちゃんは覚えてなかったの?」


 閑話休題


 テクテク、テクテク歩いていると、突然アキトが立ち止まった。

「・・・? どうしたんですか、テンカワさん」

「かっ、彼女達の気配がする・・・・・・!」

 アキトが感じたのは、二つの大きな殺気と、それをも凌ぐ、更に巨大な一つの殺気。

 その殺気の大きさと気配から、その持ち主を割り出す。

「・・・・・・北斗とリョーコちゃん、それとアリサちゃん、か・・・・・・」

 先程撒いた三人だった。

 しかし、どちらも道に迷っているため、いつ出会ってもおかしくはなかった。

 そして、その殺気はどんどんと近付いてくる・・・・・・

「これは・・・・・・参ったな。

 マイちゃんだけならともかく、フィーリアちゃんもいるとなると・・・・・・」

 暫く考え込み、

「仕方がない。

 殺気を感じる方向とは真逆に行くか」

 答えは、泣きたくなるほど安易だった。



 ところで、一つ。

 この洞窟は、迷宮状になっている。

 道がどうなっているか、予想は付かないのだ。

 つまり、何が言いたいかというと。



「アキト、見付けたぞぉっ!!」

「ここであったが百年目だぁ!!」

「アキトさん・・・・・・もう、逃がしません・・・・・・!!」

 北斗、リョーコ、アリサとエンカウント!

 アキトは、何となく悟ったように、

「フッ・・・・・・、所詮オレの人生なんて、こんなモンなのさ・・・・・・・・・」

 その背中に、マイは深い哀愁の念を感じた。

「って、アキト!」

「一体どういうことだ?!」

「何で一人増えてるのよーっっ!!」

 フィーリアを見るなり、三人はシャウトした。

 フィーリアは肩口まで伸びた桃色の髪の、白い肌の美少女だった。

 顔に何の表情も浮かんでいないが、整っていて、とても美しい。

 その美少女とアキトが手を繋いでいるのだ。

 怒りもひとしお、と言うものだ。

「とっ、とりあえず逃げーるっ!!」

 言うなり、マイとフィーリアを小脇に抱えて、今来た道を戻った。

 ・・・・・・そう、どこがどうなっていたのか、三人の殺気と真逆の方向に向かっていたら、三人が目前にいたのだ。

「「「待てっ、アキト(さん)っーー!!」」」



 ・・・・・・(アキトの)命(もしかしたらマイとフィーリアのも)を懸けた鬼ごっこが始まった。



 視界が大きく縦に揺れた。

 アキトが突如眼前に空いた大穴を飛び越えたのだ。

「ひゃあぁぁーーっ!!」

「・・・・・・・・・」



 自分のすぐ横を、銃弾が飛び交った。

「きゃあぁああーーっ?!」

「・・・・・・・・・」



 横から赤毛の女性が飛び出てきて、拳を突き出してきた。

 マイの鼻先紙一重を打ち抜いた。

「いやああぁぁ!!」

「・・・・・・・・・」



 今度は視界が大きく横に揺れた。

 頭上から振ってきた槍の雨をサイドステップで回避したのだ。

「うえぇぇぇっ?!」

「・・・・・・・・・」


 どんどん加速し、視界が魚眼レンズ状になっていく。

「止まってえぇぇぇっ!!」

「・・・・・・・・・」


 目の前が真っ暗になった。

「きゅう・・・・・・(気絶)」

「・・・・・・・・・(気絶・・・?・・・)」





 マイが気が付くと、そこは白い月の光が上空から投げ込まれる空間だった。

 部屋、というほどの広さではないが、ちょろちょろと綺麗な水が流れる空間。

 目の前には、朽ちたロープと木製の桶。

 間違いなく、昔井戸として使われていた場所だ。

「ここは・・・・・・?」

「あ、気が付いた、マイちゃん」

「大丈夫? お姉ちゃん」

 微笑みを浮かべるアキトと、心配そうな顔をする・・・・・・フィーリア・・・?・・・

「え・・・・・・? フィー、リア?」

「うん。 マイちゃんより少し前に目が覚めて、なんか、ボランゴボンババ18世にもらった『白ボラボラの花』をあげたら、ね」

「あ、そうなんですか」

 何となく納得する。

「それと、ここは多分古井戸の底だね。

 ムチャクチャに走ってたらここに来たから、ここがどこら辺にあるかは分からないけど、とりあえずここから上がろうと思う」

「分かりました。

 でも、どうやって上がるんですか?」

 壁は乾いた土で、とても手を掛けられそうにはなかった。

「大丈夫。 オレだったら、一っ飛びだから」

 ウインク。

「じゃ、マイちゃんも目が覚めたことだし、行こうか。 マイちゃん、フィーリアちゃん」

「はい」

「うん、お兄ちゃん」

「あうあう」

 どうも、マイの目が覚める前から「お兄ちゃん」と呼ばれるたびに、背筋に何かが走る。

「(オレって、妹属性だったのかな・・・・・・)」

 などと思いながら、

「じゃ、まずはフィーリアちゃんから」

 フィーリアをお姫様抱っこすると、軽く蒼銀の光を纏って、ジャンプした。

「うわぁー、お兄ちゃんすごい!」


 ゾクゾクッ


 と背筋に感じながら古井戸らしき場所から飛び出て、着地する。

「ちょっと待っててね、フィーリアちゃん」

「うん!」

 フィーリアに軽く微笑みを残し、マイを迎えに行く。



 タッ


 小さな着地音を立て、マイの目の前に飛び降りた。

「それじゃあ行くよ」

「はい」

 今度はマイをお姫様抱っこし、また昂気に身を包んで古井戸を飛び出た。



「ああ・・・・・・太陽の光が眩しいや・・・・・・・・・」

「あの・・・もう、夜ですよ」

「それは言わないでくれ、フィーリアちゃん(さめざめと泣く)」

「それにしても基地の裏山にこんな所があるとは知りませんでした」

 この古井戸は、パッパラ隊の裏山に存在しているらしかった。

 ここから、廃墟と化したパッパラ隊基地がよく見える。

 月の光が、妙に眩しかった。










後書き
 と、言うわけで、一話二話で洞窟から脱出するまでの期間が補完されました。

 ・・・・・・一部がばり手抜きなのは突っ込んじゃだめです(爆)


 ところで、皆さんなにか属性持ってますか?

 これではアキト君に勝手に妹属性付けちゃったりしましたけど・・・・・・。

 ちなみに、僕は『妹属性』少し入ってます。

 でも、やっぱり実妹はダメネ。 義妹がいいアルヨ(←アンタ誰よ?)。


 それではこのへんで。

 

 

代理人の感想

「萌え」と言う物は幻想の産物である…と考える私は醒めてますか(笑)?

いや、私にも妹はいるんで(苦笑)。