「わははははははははは・・・・・・」

 意味無く笑い声を上げながら、アキトは疾走していた。

 電柱の上を、街灯の上を走り抜け、ひなた荘を目指して。

 ・・・・・・光速の約10%という無茶苦茶すぎるスピードは、今は出なかった。

 スットン共和国であそこまで出たのは、恐らく命の危機だったからだろう。

 いわゆる『火事場のクソ力』とか『火事場のバカ力』と呼ばれる類のものだったのではないか。

 と、アキトは考えている。

 まあ、理屈はどーでもいいのだ。

 それよりも、今の問題はひなた荘まで15分以内に戻ることだ。

 問題と言いながら、10分ほど・・・・・・あと2、3分で着きそうな気配だが。



 日向市に都市伝説が出来る日は近いか?








蒸気王国の王女

Presented By E.T

Seventh Story: 〜Murderer With Firlie 〜










「お兄ちゃんってば、ドジなのね」

 などと呟きながら、フィーリアは靴を履くため玄関に来ていた。

 アキトが弁当を忘れていったことに気付き、届けるために外に出ようと思ったのだ。

 道は分からないが、はるかに訊けば何とかなるだろうと思っていた。


 小さな靴を履いて玄関を飛び出したとき、ちょうど人が階段を上ってきた。

 白いよれよれのトレンチコートを着、鹿撃ち帽を目深にかぶった比較的大柄な男性。

 今朝の朝刊を騒がせた、五人の男女を殺害した時の人、通り魔。

 だが、フィーリアがそんなことを知る由もなかった。

 人が殺されたことは知っていたが、犯人が目の前に立っている男だ、などと・・・・・・。

 男は自分の姿を見ると、ニヤリと、背筋にヒンヤリとするモノを感じさせる笑みを浮かべた。


 ゾクッ


「ぁ・・・・・・」

 小さく、悲鳴をあげる。

 男から、何か、自分の知っているモノを感じた。

 記憶喪失であることを辛いと思っていないと言えば嘘になる。

 しかし、辛い記憶を思い出すなら、いっそのこと・・・・・・。

 と思うのも事実である。

 そして、失われた記憶の中で、この男とよく似た何かに出会ったことを微かに思い出した。

 自分を殺そうとする、女性の形をした何か・・・・・・・・・。

 ・・・・・・ソレが纏っていた空気と同質のモノを、この男は纏っている。

 もしかしたら、記憶喪失となる原因となったかもしれない。

 その何かと同じ空気を。

 フィーリアは後退った。

 その空気に圧され。

 男は酷薄な笑みを浮かべたまま、懐に手を伸ばした。

 そして、銀色に輝く、5人の生き血を啜ったナイフを取り出した。


 ーーー 殺される!


 そう思ったフィーリアは、右へ駆け出した。

 男は呟く。

「そうだ・・・・・・逃げろ、逃げるんだ・・・・・・・・・

 じゃなければ、狩ではない・・・・・・」

 笑みの酷薄さが、一層増した。

 そして、昨晩の女性達と同じように、ゆっくりと、ゆっくりとその後を追い始めた。

 美しい顔を恐怖と絶望に歪めたその様を、少しでも長く、より深くし、楽しむために。

「Game....start ....」





「・・・・・・ん?」

 先程から正確に一分後。

 アキトはひなた荘最寄りの路面電車の駅の辺りにいた。

 そして今、昂気を盛大に纏う彼の身体能力は、普段の数倍〜数十倍(もしかしたら数百倍)に跳ね上がっている。

 故に、ここからでもまで随分と離れたひなた荘の気配を感知することが出来た。

「なんだ、この異様な殺気は・・・・・・?

 ・・・・・・ただの殺気とは異質だ、昔のオレみたいに、殺気と狂気が入り混じっている・・・・・・?」

「・・・急がんとならんな」

「・・・・・・え?」

 突如聞こえた声に驚き、思わず立ち止まる。

 ふと声がした方を見ると、“アーサー”が居た。

「あ、久しぶり、アーサー」

「久しぶりだな、主よ。

 ・・・と、和んでいる場合ではないぞ」

「あの殺気が関係しているのか?」

 訊くと、“アーサー”は頷き、

「そうだ。

 今、フィーリアが今朝の朝刊を騒がせていた通り魔に襲われている最中だ」

「何ぃッ!!?」

 絶叫するなり、先程に倍するスピードでは知り始めた。

 さらに、

「ラーンスロット・ザ・ワールド!

 時よ、止まれ!!



「・・・・・・そういえば、何でアーサーにはあんなことが分かったんだ?」

 止まった時の中で、高速移動中のアキトが呟いた。

「スタンド能力は進化する、より強力になる。

 主の身を護るため、主の願いを叶えるため。

 主と、主の心と共に、成長する。

 そして我は、我が能力『完璧なる知覚』がより強化され、離れた物事をも知ることが出来るようになった」


「ふ〜〜ん、成る程ね〜〜」

 ・・・・・・などと会話をしながらも、凄まじい速さを維持する。





「はあ、はあ、はあ、はあ」

 フィーリアは走っていた。

 ひなた荘の周りを一周ぐるりと周り、和風茶房日向を目指し。

 そうすれば、はるかがいる。

 なぜかは分からないが、はるかはかなり強いらしい。

 ・・・・・・噂によると、『浦島流柔術』というモノがあり、はるかはその免許皆伝の腕前だとか。

 噂の真偽はさておいて、実際はるかは強い。
 どの程度なのかは流石に判らないが、瀬田と2人で組んで、謎の教団と渡り合ったり、未開の地の原住民に襲われ、(インディー・ジョーンズ?その戦いを生き抜いてきた。

 並の人間では、とても彼女に太刀打ちできない。

 戦闘のプロやスペシャリストだったとしても、簡単に勝たせてもらえるような相手ではないのだ。


 しかし、彼女のその思惑は外れることになった。

 いやさ、外されることになった。


 ビュウッ


 突然の突風。

 脇の茂みや木々が、その風に葉擦れの音を鳴らす。

 しばらくし、階段が見えてきた。

 だが、それと同時に絶望も見えた。

「クックック・・・・・・、残念だったな・・・・・・・・・」

 低く呟く。
                  マーダラー
 俯く、トレンチコートの殺人鬼。

 それが顔を上げ、再び、あのニヤリ笑いを浮かべる。

ーーーー !!」

 鹿撃ち帽がずれ、その狂気に輝く双眸が白日の下に晒された。

 狂気を湛える瞳は、フィーリアのサマードレスに隠された双丘、股間の辺り、そして、恐怖に歪められた顔に注がれていた。










 白く光る雲が、空に輝く太陽を隠した。

 目が痛くなるぐらいの明るさが、一転薄暗く変わった。

 ・・・・・・まるで、狂気に彩られた殺意を象徴するかのような、薄暗い闇にーーー










後書き

 まず最初に。

 すいません!

 『ANOTHER NADESICO』最新話、またジーネと親父殿のプロフィール書くの忘れてました!

 ああ! 何でこんなに忘れっぽいよ、オレ!



 ・・・・・・・・・こんなコト書いてても気が滅入ってくるんで、今日のとあるコトについてお話しします。

 今日、部活の試合がありました。

 以前BBSで書いたんですが、多分覚えている人はいないでしょう。

 僕は剣道部に所属しています。

 新設の高校で、今は三年が居ません。

 それなので、トーシローの僕も試合に出ることが出来ました。

 ですが・・・・・・・・・


















なぜに『大将』?






 ・・・・・・思ったよりは善戦できましたが、高校に入って剣道始めたばっかの奴に、大将させます?普通。

 いやぁ、綺麗な面と小手もらって、二本取られて負けましたよ、ハッハッハ。

 ・・・ちなみに、一回戦突破はなりませんでした。

 ちくしょう、両○高校め、偏差値高いだけじゃなくて剣道もかよ、文武両道かよ!チクショウ!!

 ○国高校め、今度は見てろよ、今度の機会には部長達が仇をとってくれるからなぁーー!!

 って、他力本願かよ・・・・・・・・・





 なお、現在暑くてラリかけのため、後書きが支離滅裂になっております。

 気分が悪くなったらごめんなさい。

 

 

 

 

管理人の感想

いいところで終わってますね(笑)

しかし、これ以上強くなってどうするつもりだ・・・アキトよ。

まあ、それだけの能力がないと、『彼女達』から逃げられないのが現状か(苦笑)

次回の話では、この猟奇殺人犯がボコにされるんですかねぇ?

 

それでは、E.Tさん。

投稿有り難うございました!!