今は午前二時。

 多分ほとんどの人間が眠っていることだろう。

 しかし、ナデシコの、ある普段から人気のない通路に、二人の人間がいた。

 一人は背が高く、ごつい、いかめしい顔の男。

 もう一人は幅の広いバイザーを付け、闇を具現化させたが如き漆黒のマントにその身を包む、これでもかっ、と言うほどに怪しい格好をした男だ。

 後者の男は前者の男にその無防備な背中に銃を押しつけられていた。

 普通に考えれば銃を押しつけられている人間は恐慌に陥るだろう。

 しかし、黒マントの男は恐れる様子など、みじんもなかった。

 銃を押しつけている男が言葉を発した。

「D、おまえはいったい何者なんだ」

 Dと呼ばれた男が言葉を発した男に問い返す。

「一体何でそんなことを聞くんですか? ゴートさん」

「質問しているのはこちらだ」

 ゴートはDのプレッシャーに押され、震えそうになる声を、意志の力で何とか抑えて言った。

「何をおびえてるんですか? ゴートさん」

「っ!(見透かされているのか!?)」

「まあいいです。 それよりも、どうしてそんな事が聞きたいのか、その理由を教えてくれなければ答えてあげません」

 明らかにDはこの状況を楽しんでいる。

 それは、Dの言葉からも伺える。

 それにはゴートも気付いた。

 ついにはDのプレッシャーにほとんど押しつぶされた。

「お前はあまりにも危険すぎる! 異様なまでの戦闘力・・・生身でもあのエステバリスのような機体での戦闘も!

 もしお前がナデシコクルーに危害を加えるとしたら、その前にしかるべき処置を執らなくてはいけない。

 そう、お前の返答の如何によっては!」

「・・・なんだ、そんなことか・・・・・・大丈夫ですよ。 俺はナデシコクルーを守りたいとは思いこそ、傷つけようなんて思いやしませんよ。 よしんば思ったとしても、ゴートさんが思ってるような危害は加えませんって」

「その言葉に嘘は無いな」

「 ああ。 嘘偽りは全くないさ」

「その言葉、違えたならば、たとえ敵わなくとも全力を持ってお前を排除する」

「ああ。 分かった。

 ・・・・・・じゃあそろそろ部屋に戻らせてもらうよ。 誘っといて悪いけど」

 Dは足音もなく、去っていった。



 しばらくして・・・・・・

「本当に・・・・何者なんだ?・・・あいつは・・・・・・」




機動戦艦ナデシコ 

TWIN DE アキト

 

 

第四話 水色宇宙に『ときめき』





 お昼時、食堂にて、Dはアキトと会話した。

 内容を要約すると、『エステバリスの稽古を付けてやろうか?』と言うことだった。

 アキトは、OKした。

 パイロットとして働くことをOKしたのだから、それなりの力がほしかったからだ。

 エステなどの訓練は、早速、今日から始めることにした。

 そして今、Dは鶏ガラしょうゆラーメンを食べていた。・・・ちなみに、何故味覚が戻ったかについては、めんどくさいし、考えても分からなかったので、考えるのはやめにした。

 そこにイツキが来た。

 手にはランチセットAを持っている。

「隣、よろしいですか?」

「ああ、いいですよ」

 暫くの間無言で箸が進む。

「あの、Dさん」

 イツキが沈黙をうち破る。

「ん? 何?」

「昼食が終わったら、シュミレーション、お願いしてもいいですか?」

 つるつる〜、むぐむぐ、ごっくん。

「ああ。もち、オッケーだよ」

「ありがとうございます」

「いえいえ」

 

 少しして・・・

「「ご馳走様でした」」

 食べ終わり、トレーを返すDとイツキ。

 食堂から一緒に退室する。



 言葉少なく二人で廊下を歩く。

 Dは無表情を装って(九割がた成功)歩いてい、イツキは少し顔を赤らめ、俯いている。

 こう書くと何だか男に免疫のない女性が男性と一緒にいる、とか、純情カップルとかに思えるが、実状は、

「(なんか・・・あんなこと言ったけど、やっぱりこの格好は・・・・・・)」

「どうかした? イツキさん」

「あ、いえ・・・月で、あんなこと言ったけど、やっぱりDさんの素顔や本名、そのマントを着ているわけ・・・知りたいなー、と思っただけで、何でもありません」

「あ、やっぱ気になる? じゃあ教えてあげようか?」

「え? いいんですか?」

「別にかまわないんだけどね、ただみんな、ちょっとすごんで、『後悔しない?』・・・って言ったら、遠慮しちゃうんだよねぇ」

 気づかないうちにその顔をするD。

「(うっ・・・確かにこの顔を見たら遠慮しちゃうかも・・・)・・・・・・後悔・・・しません」

「そお? それじゃあ、どっちかの部屋とか、そーゆうルリちゃんとかの監視の目が届かないところでね。

 ・・・ってそういえば、明日着くサツキミドリ二号で、休暇貰えるそうだし・・・その時かな? まあ俺も、さすがにこの格好で外にはでないけどね。

(・・・・・・そういえば・・・サツキミドリ二号はどうする? まあいいや。 部屋に戻ったら考えよ)」





 アキトとイツキとシュミレーションにつきあってから部屋に戻り、オメガと相談する。

 そして、決める。

「じゃあ、プロスさんをよぶかぁ」
 


「Dさん、用とは一体なんですかな?」

「大したことじゃないんですけど、俺を一足早く、サツキミドリ二号に行かせてくれませんか?」

「何でですか?」

「時間が経てば分かります」

「はぁ・・・どうしてあなたはそう・・・あれなんですか?」

「は?」

「まあいいです。 許可しましょう」

「ありがとうございます」

「いえいえ。 ところでいつ頃行きますか?」

「そうですね・・・それじゃあ・・・・・・」



 プロスとの対談が終わる。

『マスター、何故あの時間なんですか?』

「簡単なことだよ、オメガ。

 おそらく・・・俺たちの世界では、ナデシコの相転移エンジンを感知したんだと思う。 そうじゃなく、あの時間にチューリップからバッタたちが出てきたんだったとしても、俺がサレナで行けば・・・・・・あるいは、なんとかなるかもしれない。

 だからだよ」

『そうですか』

「ああ」

 黒い王子様は決意する。

 あの悲劇を再び起こさせないことを。





「D機、発進」

「ほえ?」

「なんでですか?」

「ほんとよねぇ。 プロスさん、なんか知ってる?」

「ああ、どうしてだか知りませんが、どうしても一足先に行きたいと言ってきかないんですよ。

 ここの制宙権は地球にありますし、別に問題ないでしょうから許可しました。

 しかも、Dさんの話しに寄れば、あれは増曹無しで十分サツキミドリ二号まで行けるそうですしねぇ」

「続いてイツキ機の射出も確認」

「何ですと!?

 イツキさんに通信繋げて下さい!」

 ピッ

 メグミがイツキに通信を繋げる前に、Dからの通信が来た。

『問題ない。 こっちからエネルギー供給が可能だ。 増曹は全く使わずに放棄できる。 それを回収してくれ』

「Dさん! 本当に大丈夫なんですか?」

『ああ。 問題は全くない』

「そうですか・・・それじゃあイツキさんに、さっさと増曹を放棄するよう伝えてください」

『了解した』

 数秒してパープルのイツキ機から増曹が切り離された。

「D機、イツキ機、共にエネルギー供給フィールドを抜けます」

「はぁ・・・一体どうなることやら・・・」

 プロスペクターが肩をすくめた。





『Dさん、一体どうしたって言うんですか?』

「いや、ちょっと気になる事があってね」

『気になること?』

「ああ。 オメガにこの宙域を調べさせたら、割と近くにチューリップがあったんでね。
  こいつ
 サレナなら、チューリップの一つや二つ、楽に倒せるからね」

『チューリップを!』

「ああそうさ。 イツキちゃんも知ってるだろ? この機体に装備されたグラビティブラストを」

『はい。 でも、機動兵器に搭載した物くらいで、チューリップを落とせるんですか? 

 ナデシコのモノでも、チューリップがディストーションフィールドを全開にしていたら一撃では落とせないと言うのに』

「でも、落とせるんだ。 誇大妄想なんかじゃない、純然たる事実なんだ」

 通信を聞いてイツキは思った。

『(この人は真実を言っている。・・・・・・シュミレーションで相手をしてもらったときも、余裕を感じたけど・・・この人の実力は、私なんかの想像も付かない高みにある!)』

 しかし、不安も大いにあったが。

「イツキちゃん、そろそろサツキミドリ二号に着くよ」

『あ、本当ですね。 ところでこれからどうするんですか? Dさん』

「そうだな・・・・・・サツキミドリ二号がナデシコの視界にはいるのが大体・・・一時間半後・・・か。

 二十分ぐらい休んだら、チューリップ破壊しに行くか」

『分かりました。・・・そういえば、オメガ・・・って誰ですか?』

「オメガ? ああ、俺の機体・・・サレナのサポートA・Iだよ」

[どうも、イツキ様。  只今ご紹介預かりました”オメガ”です]

 というウインドウがイツキの前に現れる。

『うわあっ!』

 突然、目の前にそんなウインドウが現れたからだろう。

 Dの目の前のウインドウにはイツキの驚いた顔が映り、驚いた声が聞こえた。

「ク、ククク・・・」

 思わずDは、かみ殺しはしたが、笑ってしまった。

『でぃ、Dさん! そ、そんなに笑わないでください!』

[すいません、イツキ様。 驚かせてしまったようですね・・・]

『い、いいのよ、別に』

「イツキちゃんもオメガも、サツキミドリ二号に着くよ」

『あ、はい』

[イエス、マスター。 回線を開きますか?]

「ああ。 頼む」

[通信、開きます]

【は〜い、なに・・・・・・その格好・・・何?】

 サツキミドリ二号の通信士(本名不詳)がDを見て、あからさまに不審者を見る目つきをする。

「気にしないでくれ。 ただの対Gスーツだから」

【そ・・・・・・そお・・・・・・・・・・・・・・・・あ、と、ところで、何のようですか】

「サツキミドリ二号に入港したい。 許可は出して貰えるかな?」

【・・・しょ、所属は・・・・・・どこ?】

『私たちはナデシコのエステバリス・ライダーです』

【お、君かわいい声だねぇ。 どお? 今度お茶しない?】

『え・・・遠慮します・・・』

「・・・で、許可は出るのか?」

【ん? 別に良いんじゃないの? ナデシコのクルーなんだろ?】

『それじゃあ、D、イツキ、入港します』



「おい」

「ん?」

 サツキミドリ二号に入港して自分たちの機体から下りてすぐ、Dとイツキは誰かに声をかけられた。

「何か用でしょうか?」

「あんたらだろ? ナデシコから来たってのは」

 Dとイツキが振り向くと、そこには三人の美少女がいた。

 一人は染めたであろう、エメラルドグリーンの髪をショートカットにした、妙に男っぽい女性。

 一人は栗色の少しウェーブがかった髪の眼鏡っ娘。

 最後の一人は藍色の長い髪の、影がある、独特の雰囲気を持った女性だ。

「ああ、そうだが?」

「今ナデシコはどの辺にいるんだ?」

「ん? そーだなあ。 イツキちゃん、此処来るまで、どれくらいかかったっけ?」

「さあ・・・・・・五十分くらいだと思いますけど・・・オメガに聞いたらどうですか」

「それもそうだね。 オメガ?」

『五十六分です』

「・・・だってさ。 ところで君たちは?」

「い・・・今のは何だ!?」

「オメガ・・・俺の機動兵器のサポートA ・Iだよ」

「それで・・・あなた方は・・・?」

「ん、ああ。 俺はスバル リョウコ。 お前らと同じ、エステバリス・ライダーさ」

「私はアマノ ヒカル。 ついでに言えば、私たちもナデシコに乗るんだよ。」

「わた「お前はしゃべるな!」・・・ひどい・・・」

「こいつはマキ イズミ。 喋ると寒いギャグを言うことがしばしばある」

「ふ〜ん。 俺は本名は言えないんで、Dとでも呼んでくれ」

「本名が言えない・・・?」

「ど〜いうことなの?」

「ほ「まぁ、いろいろと事情があってな」・・・私にも喋らせて・・・(涙)」

「いろいろな事情ね〜」

「それで、こっちの女は?」

「私はイツキ カザマ。 連合宇宙軍のエステバリス・ライダーです。

 尤も、今の所属はナデシコですけど・・・」

「ところで、あんたらは何でまた、ナデシコで来ないで、エステで来たんだ?」

「それもいろんな事情があってね・・・」

「一体どーいう事情なんだか・・・・・・」

「秘密♪

 でも、知りたければ、そろそろ此処を出るから、付いてきな」

「どうするよ・・・」

「私知りた〜い」

「私も興味有るわね・・・」

『マスター、二十分経過しました』

「そうか。 それじゃあイツキちゃん、行くよ」

「はい」

「リョーコちゃんもヒカルちゃんもイズミさんも、外で待ってるから早く来てね」

 そう言い残してDとイツキはそれぞれの機体に乗り込んだ。

「何なんだあいつは! 何が『リョーコちゃん』だ! 馴れ馴れしい!」

「なんか面白そーな人だったね」

「あのDとかいう男・・・多分、あたしらの誰よりも強いよ」

「シリアスモードのイズミだ〜」

「まあそれはともかく、さっさと行くぞ!」

「あ、何処まで行くんだろー? 増曹付けなくて平気かな〜」

 ピッ

 三人の前にウインドウが開く。

『言い忘れてたけど、増曹はいらないから。 じゃ』

 それだけ言うと、Dの開いたウインドウは消えた。

「・・・・・・行くか」

「そうだね」

「そうね」





 七分ぐらい飛んで・・・・・・・・・

『おお、有った有った。 こいつだ、こいつ』

「って、これ、チューリップじゃねぇか!」

『そうだよ』

「そうだよ、っておめえ!」

[スバルさん、何をそんなに慌てているんですか?]

【イツキちゃんが落ち着きすぎなだけだよ〜】

「・・・お前も十分落ち着いてるぞ・・・ヒカル・・・」

【そうかな〜】

〔落ち着く・・・落ち「お前は喋るな! イズミ!」・・・何故・・・?〕

『さってと、オメガ、グラビティブラスト発射準備して』

〈出力は?〉

『100%で』

〈了解。 マスター〉

「【〔・・・って、グラビティブラストぉ!?〕】」

 Dの言葉に驚愕するリョウコ、ヒカル、イズミ。

 イツキは話を聞いていたし、チューリップのディストーションフィールドをDの機体が放ったグラビティブラストが消滅させたのを、映像越しとはいえ、見たので驚きはしなかった。

 ・・・・・・尤も、一撃でチューリップを落とせるとは思わなかった。 逆に、チューリップを活性化させそうな気がして、内心、おどおどしているが。

『そうだよ。 俺のサレナはグラビティブラストを装備しているんだよ。
                 こいつ ←一回り小さく(サレナの振り仮名)
 ・・・まあ、今はないけど、サレナ専用の装備・・・・・・グラビティ・ライフルは、グラビティブラストを連射できたんだけどねぇ・・・』

「ぐ、グラビティブラストを連射って・・・」

〔技術が・・・違いすぎる・・・・・・〕

〈発射準備完了。 いつでもいけます〉

『ターゲットロックは?』

〈すでに〉

『発射』

 次の瞬間、リョウコは見た。 サレナの前面に出ているテールバインダーから放たれた光が、チューリップを貫いた。

「う・・・・・・嘘・・・だろ・・・」

 チューリップは大爆発を起こし、跡形もなく消え去った。

〔冗談・・・よね・・・・・・〕

【Dさんって・・・何者なの・・・】



 サツキミドリ二号に戻った五人に、オメガがメッセージを出す。

〈コロニー内より無人兵器の反応が一つ〉

「なにっ!?」

〈現在コロニー内を移動中〉

『場所は?』

〈隔壁内。 外からも内からも破壊は不可能〉

『コロニー側は?』

〈気づいていないようです〉

『避難勧告を』

〈了解〉

 オメガがサツキミドリ二号に避難勧告と、無人兵器の現在位置のデータを送る。

『とりあえず俺たちはナデシコに向かう』

「あ、ああ。 分かった」



 十五分ぐらいして、脱出艇の最初の一機がサツキミドリ二号から飛び出した。

 こんな短時間で出られたのは、普段の弛まぬ訓練のおかげだろう。

 それに次いで、続々と脱出艇が飛び出してくる。

 それは、ナデシコからも確認できた。

「何々何々、一体どうしたってゆうのぉ〜〜!?」

 と、それを見た某艦長が言ったという。

「エステバリス五機確認」

「合流予定だった三人のパイロットとDさん、カザマさんの五人でしょうね」

『こちらD。 サツキミドリ二号内に無人兵器の反応を確認した。 外から戻ってきたときに確認したからな、脱出艇の邪魔はできないからとりあえず0Gフレームは置いてきた』

「そうですか・・・それじゃあ、これから取りに行って貰えますか?」

『分かりました。 でも、少しぐらい休ませてくださいね』

「はい。 それでは五分後に行ってください」

『了解』



 五分後、D、イツキ、リョウコ、ヒカル、イズミ、アキトの六人(ヤマダはイツキにボコボコにされ、未だ入院中)は、サツキミドリ二号に、エステの回収に向かった。

〔コロニーには誰が行く?〕

『俺とヒカルとイズミ、それからDだな』

{いや、俺は外に残っとくよ。 無人兵器が万が一外に出てきても、確実に仕留められるように。

 それとオメガに、無人兵器をサーチしておいてもらうから、参考にしてくれ}

[私はどうしましょうか?]

『悪いが、コックのお守りをしてくれ』

[分かりました。 でも、やりたくてパイロットをやっているわけではないんですから、そのいい方はないと思います]

『いいんだよ、別に』

「(何なんだよ! あの言い種は! 俺は好きでやってる訳じゃないんだ!

 ・・・それに、Dさんに訓練してもらったんだ、あいつらが思ってるよりも俺は強いはずだ!)」

 ヒカルは何も言いはしなかったが、とても楽しそうにニコニコ笑っていた。





{どうした? アキト。 そんな浮かない顔をして}

「何でもないよ」

{そうか? そうだったらいいんだが。 (やっぱり、あんなこと言われるのは気分が悪いよな)}



 しばらくして

[何にもありませんね・・・]

{! 交戦信号確認。 中で無人兵器と戦闘中だ!}

「それって!」

{ああ、そうだ。 中でリョーコちゃんたちが戦ってる。 しかも・・・早いぞ、この無人兵器は!}



 唐突に、

 ドゴォォォォォン!

 と言う音が、地球上ならしたであろう、凄まじい爆発が起こった。

 爆発の中から現れたのは、多少傷ついているものの、0Gフレームに、無人兵器が寄生した・・・デビルエステバリスだった。

 そして、デビルエステバリスは、一直線にアキトを目がけ、突っ込んできた。

「うわああぁぁぁぁぁぁぁ!」

 Dが稽古を付けているといっても、所詮は素人。

 恐慌に陥ってしまっている。

{落ち着け! アキト!}

 アキトはラピッド・ライフルをむやみやたらとデビルエステバリスに打ち込むが、当たらないし、当たったものもディストーションフィールドに弾かれている。 

【テンカワさん、危ない!】

 イツキがアキトのエステを自らのエステではじき飛ばした。

「イツキさぁん!」

 アキトが絶叫する。

{何をやってるんだ! イツキちゃん!!}

 Dが叫び、デビルエステバリスの進路からアキトを突き飛ばしたイツキの機体の前に躍り出る。

{オメガ・・・ディストーションフィールドは?}

〈間に合いません!〉

{ちっ! 胸部装甲強制排除!}

〈胸部装甲強制排除!〉

 サレナの胸部のあたりで爆発が起こる。

 その瞬間、デビルエステバリスの突きが胸部に炸裂する。

「【Dさん!!】」

 エステ三人娘がコロニーから出てきた。

[なんだ、どうしたんだ!]

【私をかばって・・・Dさんが・・・あのエステの・・・・・・直撃を受けました・・・】

[何だって!!]

 リョウコがー叫んだ。

 しかし・・・次の瞬間、デビルエステバリスが大爆発をした。

『何々何々、一体どうしたっていうの〜〜!?』

〔デビルエステバリスの反応が・・・消えた・・・・・・〕

【Dの機体は!?】

〔分からない・・・でも、距離を考えると・・・・・・絶望的・・・〕

【そんな!】

「そんなばかな! Dがそんなに簡単に死ぬわけないだろ!」

{アキトの・・・言うとおりだ・・・・・・}

「【〔『[D(さん)!!]』〕】」

{尤も・・・動力系をやられて・・・動けないがな・・・。

 全く・・・情けないぜ・・・・・・}

【無事だったんだ・・・良かった・・・・・・】

「D・・・お前・・・その顔・・・・・・・・・」

{ん? ああ、バイザー・・・壊れちまった・・・な}

『あ、アキト君!?』

 ヒカルが驚くのも無理ない。

 そこにあったのは、アキトと瓜二つの顔だったのだから・・・・・・

{イツキちゃん。 これが俺が顔を隠してた理由・・・さ}

【そんなこと! 今はどうでも良いです!】

[こんなことしてる場合じゃねえ!]

〔早く機体をナデシコに・・・!〕

『・・・・? あれ? D君のエステ・・・剥がれてる・・・?』

「ほ、ほんとだ・・・」

[どうなってんだ・・・!?]

{こいつは・・・追加装甲だ。 ウリバタケさんは知ってるんだけど・・・聞いてない?

 ・・・って、反応からすれば当たり前・・・か。 話す必要もないし・・・}

〔何やってるの! 早くナデシコに持ってかないと危険だよ!〕

[あ、ああ、分かった]





『Dさん! 大丈夫ですか!?』

 ナデシコに帰還するなり、そんな通信がメグミから来た。・・・断って置くが、これは断じてメグミがDのことを好きだからではない。 人の死に接したことがなかったがため、素人目からも”危ない”とはっきり分かる一撃を見たから、Dのことを心配したのだ。・・・ちなみに、先ほどの戦闘はブリッジに映し出されていた。

「ん? メグミちゃんか。 俺は大丈夫だよ。

 サレナのシステムと、オメガ、ディストーションフィールドのおかげだな」

「医療班! さっさとDを運べー!!」」

 担架がイツキとアキトに担がれていたDを医療室へと運ぶ。

「D・・・大丈夫なの・・・・・・?」

「後でお見舞い・・・行かないと」

 Dを心配そうに見送るイツキやアキトたち。

「全くだな。 それにしても・・・何なんだ?この機体は・・・」

 そして胸部が拉げ、一部が捲れ、ピンクのスーパーエステバリスカスタムが、覗くサレナを見上げるリョウコ。





 サツキミドリ二号は助かったが、力を失った漆黒の機体・・・・・・

 今後の無人兵器との戦闘は一体どうなるのか・・・・・・





   次回予告

 荒れ狂うウリバタケたちの反乱!

 ナデシコの命運の如何は!?

 次回 ルリちゃん『航海日誌』
          をみんなで読もう!





  本星への報告書4

 執筆時間は四時間半。 今回はなかなかに長かったが、時間はそんなにかかっていない。 こんな事もあるんだなぁ。

 さて、ブラックサレナMk−U、壊れてしまいましたねぇ(最初からこうする予定だったけど)。

 みなさん、楽しんでいただけたでしょうか?

 そうであることを祈って・・・・・・
本星への報告書4終

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

E.Tさんからの連続投稿第四話です!!

壊れてしまいましたね〜サレナMkUが。

今後、Dはどうやって戦うのでしょか?

それと、アカツキは今何をしてるんだろうか(笑)

だんだん、ストーリーが加速を始めました。

続きが凄く楽しみですね!!

 

ではE.Tさん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

感想のメールを出す時には、この E.Tさん の名前をクリックして下さいね!!

後、もしメールが事情により出せ無い方は、掲示板にでも感想をお願いします!!

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