「ウリバタケさん、これを」

 新しいバイザーを付けたDがウリバタケに何かのディスクを手渡す。

「なんだ、こりゃ」

「それは俺の機体・・・・・・ブラックサレナMk−Uの基本設計図です。

 それともう一つ、こちらも」

 マントの中からもう一枚ディスクを取りだし、ウリバタケに渡す。

「こいつはサレナ専用の武器の設計図です。

 今までこれを作ってもらうかどうかを考えていたんですが、お願いすることにしました」

「お前の機体の専用だと?」

「はい、そうです。 名前はグラビティ・ライフル。

 名前から想像が付くと思いますが、こいつはグラビティブラストを撃てます」

「んな馬鹿な!

 技術レベルが違いすぎる!」

「まあそこら辺の所は気にしないで下さい」

「ふぅ〜、“そのうち分かる”・・・ってか?」

「まぁ、そんなところですね。 そのうち教えますよ」

「本当だろうな?」

「俺が死なないかぎり」

「まあいいか。

 で、こいつはいつぐらいまでに完成させればいい?」

「出来れば火星圏内に入る前に。

 無理でしょうか?」

「いいぜ。 やってやろうじゃねえか。

 それはそうと、サレナの設計図があって良かったぜ。

 なんてったて、お前もオメガも整備に必要な最低限しか教えてくれないんだからな。

 今になって考えてみれば、それも分かるがな。 ・・・あいつはオーバーテクノロジーの塊だからな。

 それじゃあな、D。

 火星に付くまでにグラビティ・ライフル、作っといてやるからな」

 そういうと、Dのお見舞いに来た(というかDに呼ばれて来た)ウリバタケが医療室から出ていった。

 それと入れ違いに、イツキやアキトを始めとするパイロットたちが医療室になだれ込んできた。

 念のため、入院することになったが、健康体のDにはこんなにお見舞いはいらないが・・・・・・まあ、ナデシコだし、そんなもんかな?・・・・・・暇さえあれば、お見舞いに来る。

 また、医療室は騒がしくなりそうだ。


 

機動戦艦ナデシコ 

TWIN DE アキト

 


第五話 ルリちゃん『航海日誌』




 みなさんこんにちわ。

 わたし、ホシノ ルリです。

 漢字で書くと星野 瑠璃。

 まあ、それは別にどうでもいいのですが。

 ところで、最近、オモイカネとDさんの機体・・・ブラックサレナMk−UのサポートA・Iオメガが、非常に仲がいいようです。

 わたしがオモイカネにアクセスしても、いつもオメガと回線がつながっているんです。

 何の用事も無いのに、です。

 これは一体、どういうことなんでしょうか?

 考えても分かりません。

 オモイカネとオメガは恋仲?

 いくらオモイカネが男性型A・Iで、オメガが女性型A・Iだからって、A・Iが恋愛感情を持つなんて、聞いたことありません。

「う〜〜〜、暇だよ〜」

 それはそうと、さっきから、艦長が五月蠅いです。

「暇なんだったらDさんやヤマダさんのお見舞いにでも行ったらどうですか?」

 しつこいから冷たく答えます。・・・尤も、いつもこうですが。

「ヤマダさんは五月蠅いし、Dさんのお見舞いにはさっき行ったばかりだし、何にもやること無いんだよ」

「だったらトランプとかテレビゲームとか、適当な遊びでもしたらどうですか?」

 そういえばヤマダさん、前回は作者に忘れ去られて出番がありませんでしたね。・・・あ、アオイさんもか。

 不憫・・・ですね。

「じゃあルリちゃんが付き合ってよぉ〜」

 かんちょー、あなた、子どもですか?

「すいませんが、こらからちょっとやりたいことがあるので」

「う゛〜〜」

 これからやること、それはウリバタケさんが影で何かこそこそやっているので、それが何か突き止めることです。

 もちろん私が趣味や興味本位で調べるんじゃありません。 プロスペクターさんに頼まれたんです。

「それじゃあミナトさんに頼んだらどうですか?」

 それが聞こえたのでしょう。

「何か言った?ルリルリ」

 と訊いてきました。

 でも・・・・・・ルリルリって・・・何?

「ルリルリ・・・? ああ、ルリちゃんのことか」

 と艦長が呟きます。

「ミナトさん、艦長のお守りしてくれませんか?」

「艦長のお守り?」

「はい。 私はやることがあるので、艦長に騒がれると迷惑するんです」

 私がそういうとミナトさんは笑いながら「艦長って子どもみたい」と言いました。

 それを聞いて、

「私は子どもじゃないもん!」

 と言いながら顔を『ぷぅ〜』っと膨らませました。

 そういうところが『子ども』なんですよ。

 言っても認めようとしないでしょうから口には出しませんけど。

 そして私はコンソールに手を置いて、オモイカネにアクセスを開始しました。



 これは・・・・・・

 程なくして、私はウリバタケさんが何をしているのかを知りました。

 さて、私が見つけたものですが・・・それはオーバーテクノロジーの塊でした。

 ブラックサレナMk−Uの設計図、そしてグラビティ・ライフルという異様な武器の設計図でした。

 ディストーションフィールドやグラビティブラストといい、このナデシコ自体がオーバーテクノロジーの塊ですが・・・なんなのですか!?

 ブラックサレナMk−U、それは小型の相転移エンジンを二つ、小型のグラビティブラストや、
 重力波を全方位に敵味方の区別無く叩き付ける殲滅型の武器『グラビティウェイブ』など、現在の技術水準では作成不能なものや、
 ジャンプフィールド発生装置などという訳の分からないものまで装備しているのです。

 それも異様なのですが、『グラビティ・ライフル』は、ナデシコのグラビティブラストの二倍強の威力を持つグラビティブラストを・・・それも十何発もの連射が可能というものなのです。

 技術が数世代先にいっている。

 一体・・・・・・Dさんは何者なのでしょう。

 私はウリバタケさんにこのことについてストレートに訊くことにしました。

 回線をウリバタケさんに繋げます。

 ピッ

 ウインドウが開きます。

『おうわぁっ!』

 着信拒否なのに回線が開いたので驚いたのでしょう。

 こけてます。

 因みに回線はオモイカネがこじ開けてくれました。

「ウリバタケさん、話がありますがいいですか?」

『お、おう、何のようだ?』

 焦ってます。

 きっと信用できる数人でDさんの機体、グラビティ・ライフルを組み立てているので、オーバーテクノロジーの塊だということがばれるのを(特にプロスペクターさんを始めとするネルガルの人々に対して)恐れているからでしょう。

「そのオーバーテクノロジーの塊のことについてなんですが」

『お・・・オーバーテクノロジーの塊ぃ? な、何のことかな?』

 それ、怪しすぎです、ウリバタケさん。

「ネタはあがってます。 正直に話してくれないと、プロスペクターさんにそれのこと、言いますよ?」

『そ、そそそそれだけはやめてくれ! Dとの約束なんだから』

「それじゃあ話してください」

『ああ、分かったよ』

 一度ため息を付いてからウリバタケさんは喋り始めました。

『これはDとの約束だからな、絶対に口外は無用だぞ。

 Dが言うには、全ての鍵は古代火星遺跡。

 自分の秘密も、サレナの異様のまでのスペック、グラビティ・ライフルなんつー問答無用の武器も、古代火星遺跡の秘密が分かったときに、全ての謎は解ける・・・・・・

 だってよ』

「古代火星遺跡?」

『ああ。 Dが言うには相転移エンジンもディストーションフィールドもグラビティブラストも、全て古代火星遺跡から発見されたもんなんだとよ。

 それからもう一つ、これは・・・信じられないし、信じたくもないことだ。

 Dが木星蜥蜴を『無人兵器』としか呼ばない理由・・・』

「理由ですか」

『ルリルリは信じられるか?』

 なんでミナトさんがついさっき私に付けた渾名(というものらしい)を知っているんでしょう?

 それはともかく、ウリバタケさんの話は続きます。

『木星蜥蜴の正体は、百年前に月を追い出された独立派の末裔だ・・・・・・なんて事』

 そんなこと・・・・・・!

 でも・・・あり得る。

『月を追い出された連中はテラフォーミングが試験的になされた火星の一部に住み着いた。

 時の軍は、その火星に核を打ち込んだ。

 それを察した一部の人々が木星に逃れ、そこでプラント・・・・・・つまり、古代火星遺跡を見つけた。

 それから時が経ち、百年前のことを公開し、正式に謝罪を要求したが現政府はそれを拒否した。

 ・・・・・・どうだ?

 こんなこと信じられるか?

 だが、Dはそれを言ったとき、バイザーをはずして、俺を見据えながら言いやがった。

 あいつの瞳は、嘘を言うヤツの目じゃなかった。

 さらに、他にもいろいろとな・・・・・・それで、そのためにはブラックサレナMk−Uなんてぇ化け物が必要なんだ』

 何で・・・なんでDさんはそんなことを知っているの・・・・・・?

「他にもいろいろ・・・って、一体何なんですか?」

 珍しく動揺するが、それを意志の力で押さえ込む私。

『・・・・・・・・・・・・』

 少し逡巡してからウリバタケさんは言いました。

『未来の事だ。

 そして、それが古代火星遺跡の力なんだとよ』





 Dは昼過ぎの今、食堂にいた。

「何だって? 厨房を貸してほしいだぁ?」

「はい、そうですよ」

「料理できるのかい?」

「俺、昔一時期、屋台だしてましたから。

 でもいろいろあって、こんな風に、自分で言うのもあれなんですが、戦闘のスペシャリストになっちまって」

「ふぅ〜ん・・・でもさ、D? どうして今まで来なかったんだい?」

「んー、まあ今来たのが気まぐれですから。 死ぬほど暇ですし」

「まあいいか。

 でも、後かたづけはしっかりやってくれよ」

「ありがとうございます、ホウメイさん」



 ・・・・・・何で文句無しのナデシコのエースパイロットが料理なんか作ってるんですか?

 ウリバタケさんのことを調べていて、まだ昼食をとってなかったので、食堂に昼食を食べに来た私が見たのは、料理をしているDさんでした。

「・・・何をしているんですか?」

「え? 何って、料理だけど」

「そういうことではなく、入院中じゃなかったんですか、という意味です」

「ん、ああ。 ガイがね、見舞客が五月蠅いから、とっとと退院してくれ、って泣きついてきてね」

「・・・ガイって誰ですか?」

 そんな人、乗船員名簿に載ってましたっけ?

「ヤマダ ジロウのことって言えば分かるかな?」

「ああ、ヤマダさんのことですか」

 このとき、「俺の名前はダイゴウジ ガイだぁぁ〜〜〜!!」と叫んでいた人がいるとかいないとか。

「ところで、Dさんは料理、できるんですか?」

「まあ二年ぶりくらいだし、自信はないけど、昔はコック志望だったし、たぶんね」

 Dさんが作っているのはチキンライスだそうです。

「よっと、完成完成」

 そんなことを言いながら、私と会話をしているうちにできたチキンライスをお皿に盛るDさん。

「さてと、味の方は・・・・・・」

 ぱくっ

 むぐむぐむぐ・・・

「んん〜〜〜、塩が少し多かったかなぁ〜」

「どれ?」

 厨房の奥で食器の整理をしていたホウメイさんが、Dさんのチキンライスを一口食べます。

「・・・D、あんたさ、料理作んの、二年ぶりって言ってたよね」

「はい、そうですけど?」

「二年間も料理してなかったヤツが、よくもまあこんなもんを作れるね」

「それはほめ言葉っすよね?」

「ああ。 当然だろ。

 ところでD、昔のことを訊かれるのはいやかもしれないけど、いろいろって、一体何があったんだい?」

「そうですね・・・・・・五感がほとんど、特に味覚は完全に無くなった・・・・・・そういうことがあったんですよ。

 気が付いたら治ってましたけどね」

「味覚がねぇ。 それは災難だったね」

「はい」

「どうだい、ルリ坊にそのチキンライス、食べさせてくれないかい」

「ルリちゃんさえよければ」

 なんかいつの間にか話が私に回ってきました。

 Dさんの作った料理に興味ありましたから、頂くことにしました。

「・・・それじゃあ頂きます」

「はい」

 私にDさんがお皿を新しいスプーンと一緒に渡してくれました。

 ぱくっ

 一口食べます。

 むぐむぐむぐ・・・

 ごっくん

 確かに少し塩味が濃いですね。

 私には料理のことはよく分かりませんが、二年も料理をしていないでこの味だったら、十分だと思います。

「どう?」

「美味しいです。 でも、やっぱり塩味が濃いと思います」

 私は正直に思ったことを言いました。

「そうか、良かった」

 そう言って微笑むDさん。

 バイザー越しでも、その笑顔はとても嬉しそうだった。

 昔はコックを目指していたり、

 本当かどうかは分からないけど、百年前の政府の汚点を知っていたり・・・・・・

 ほんと・・・・・・不思議な人ですね、Dさんは。





「我々はぁ、断固ネルガルに抗議する!!」 

 ある日、ナデシコ艦内で反乱が起こった。

「こらぁ〜!! 責任者、出てこぉおいっ!!」

 スパナを右手に、何かの紙を左手にしたウリバタケがブリッジに押し入って叫ぶ。

「あたしたちもいるよぉ〜」

 銃を手にしたヒカルが何か嬉しそうにそう言った。

 リョーコとイズミも一緒である。

「なんなんすか、一体」

 何故かブリッジにいたアキトが疑問を口にする。

「これを見ろ! これを!!」

 ウリバタケが左手に持った紙をアキトに突きつける。

 それを見、

「契約書がどうかしたんですか?」

 と、さらにアキトは疑問を重ねた。

「此処を見ろ! この一番下の小さい字のところを!」

 ユリカがそれを引ったくって、その字を読む。

「な、何これぇ!!」

 ユリカが絶叫する。

「何よ何よ、何なのよ、この男女交際は手を繋ぐまでってぇ〜〜!」

「そういうことだ。

 ・・・お手手繋いでってここはナデシコ保育園か!?」

 そういいつ、リョウコとヒカルの手を握り、鳩尾に一発貰うウリバタケ。

「調子に乗るなっ!」(リョウコ&ヒカル)

「俺はまだ若い!」

「若いか?」

 崩れ落ちながら自分は若いと主張するウリバタケに突っ込むアキト。

 以後ウリバタケの演説が暫く続き、プロスペクターが現れる。

 曰く

「そのエスカレートが困るんですよね」

 だの、反論するウリバタケたちには

「それは契約書にサインしたあなた達が悪いのです」

 と言う。

 ウリバタケたちは銃を持ち、プロスペクターは契約書を突きつける。

 プシュウ

 ドアが開き、Dが入ってくる。

「? なんの騒ぎだ?」

「おいD、お前もこっちに付くよな!?」

「だから一体どうしたんだ」

「男女交際は手を繋ぐまで・・・なんて言うんだぞ!?

 これを横暴だとは思わないのか!?

 お前も共にネルガルに抗議しようではないか!!」

「(そっか。 そんな時期か)別にんなもん見つからないように隠れてやればいいだろう」

「それは困りますね、Dさん。

 契約書にサインされた以上、そんなことは許されません」

「おいD、お前は契約書なんて読むかぁ!?

 読まねぇだろう? こんな字のこまけーもん」

「読んだが?」

「は?」×複数

 Dの返答に唖然とする面々。

「私も読みましたが?」

 更にルリのだめ押し。

「ふふふふふ、これであなたたちの論拠は崩れましたね」

 勝ち誇るプロスペクター。

 ふと、Dの前にウインドウが開く。

 それを見、Dは近場にいたルリを抱きしめる。

「な、何ですか、Dさん」

 珍しく慌てた声を出すルリ。

「なななななななななななな(以下数百行分略)ななななな、何やってんだオメエはぁー!!」

 ウリバタケが絶叫する。 魂の叫びだ。

「困りますなぁ、Dさん。

 契約違反ですよ?貴方の行動は」

「なあにぃ、D君ってロリコンだったの?」

「でもミナトさん、この状況でやるんですから、すごい勇気ですよね」

 など言われるが、Dは気にしたふうでもない。

 そのとき、

 ドゴオオオォォォォォォン!!! 

 凄まじい衝撃がナデシコを揺さぶった。

 Dと、Dに抱きしめられていたルリ以外のクルーのほとんどが、衝撃でバランスを崩した。

「(このためだったんですか)あ、ありがとうございます」

 ルリはDにお礼を言った。

「気にしないでいいよ」

「あ、はい。 でもなんで今の攻撃が来るって分かったんですか?」

「オメガが教えてくれたから。

 オメガ・・・・・・〈全てを知るもの〉の名前は伊達じゃないよ」

「はい、そうですね。

 ・・・・・・でも・・・今の攻撃はこれまでの比じゃない。 迎撃が必要・・・・・・」





  次回予告

 イネスとの邂逅、迫り来る無人兵器の艦隊。

 黒い王子様は、はたして生き残りの人々を救えるのか!?

 次回 『運命の選択』みたいな

             をみんなで見よう!





   本星への報告書5

 執筆時間3時間弱。

 なんかちょっと容量が少ない。

 それにしてもいいのか?こんなところで木星蜥蜴の秘密をばらして・・・・・・

 まあいいか、どーでもさ。

 ちょっと嫌なことがあってブルーなE・Tでした。

本星への報告書5 終

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

E.Tさんからの連続投稿第五話です!!

もうウリバタケに木連の事を話しましたね〜

・・・今後、どうなるんでしょうかね?

それにしても、Dとルリちゃんが急接近(爆)

今のDって・・・何歳なんだろうか?(苦笑)

 

ではE.Tさん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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