ナデシコは虹色の光と闇がせめぎ合う・・・・・・そうとしか形容できない空間を漂っていた。

 チューリップの中である。

 フクベの乗るクロッカスの自爆によってチューリップは消えた。

 とりあえず木星蜥蜴のことは心配しなくてもすむ。

 だが、たった一人以外は不安を隠せないでいた。

 それは当たり前である。

 チューリップを通ったクロッカスに生命は全くいなかったのだから・・・

 それなのに心配しないでいられる人間がいるだろうか?

 答えはNo。いるわけない。

 尤も、それは普通の人間に限った話だが。

 

 一人の人間がブリッジにいた。

 ホシノ ルリである。

 彼女はブリッジに詰めているべき時間なので、いつもの通りブリッジにいるのだ。

 ルリはこれから自分たちはどうなるのだろうか、という至極普通な疑問を考えていた。

 プシュウ

 ドアが開く音が、思考に没頭しているルリを現実へ引き戻す。

「やぁ、ルリちゃん」

「どうも」

 Dに挨拶されたので挨拶を返すルリ。

「Dさん、何か用でもあるんですか?」

 何時も、用のある(または、何かあるとしか考えられない)ときにしかブリッジに来ないので、疑問に思ったのだ。

「まあね。

 また、ちょっとオモイカネに頼み事ができたからね」

「今度は何なんですか?

 ・・・この間は連合政府と軍を困らせたみたいですけど」

「ああ。簡単だよ。

 ただ単に、通常空間復帰後も、ディストーションフィールドの出力をMAXにしておいてもらえるようにね。

 それだけだよ」

「はあ・・・」

 ふと・・・

 Dの体が発光し始めた。

 幾何学的な模様がDの体に現れる。

「Dさん、それは!?」

「ああ。

 通常空間復帰が近いみたいだね。

 ま、気にしない気にしない」

「・・・はぁ・・・・・・」

「イメージング・・・月軌道・・・同一時間軸・・・時間は八ヶ月後・・・・・・ジャンプ」 

 ルリの目の前から何かをぼそぼそ言っていたDの姿がかき消えた。

「・・・Dさん・・・・・・?」

 

 

機動戦艦ナデシコ 

TWIN DE アキト

 


第八話 温めno『冷たい方程式』

 

 


「(・・・・・・目覚めれば戦闘中(オメガ経由の情報です)・・・・・・か・・・まぁ、オレは寝てなかったけど。

 でも・・・・・・どうしてオレも展望室にいるんだろう?

 ボソンジャンプなんて、慣れきってるっつーのに・・・

 ・・・そういや、オレが握っているものはなんだ?」)」

 ボケーッとそんなことを考えていたら、ルリの・・・例の起きてくださいコール(これも一種のモーニング・コール、か?)が入った。

『お〜い皆さん、起きてくださーい』

「・・・やぁ、ルリちゃん」

『あ、Dさん。・・・何で展望室にいるんですか?

 それに、いきなり消えてしまうし・・・』

「んー・・・まぁ、秘密、かな。今のところはね」

『はぁ・・・・・・』

 ボヘ〜っと辺りを見まわすと、火星の方々で展望室は埋まっていた。

「それはそうと、今外はどうなってんの?」

 オメガから聞いたくせに、もうそれを忘れてルリに聞くD。

『映像、出します』

 ・・・・・・

「・・・・・・戦闘中だね。思いっきり」

『そうですね』

「とりあえずディストーションフィールドを張ってって、張りっぱなしだから、連合軍の邪魔にならないところまで下がって」

『良いんですか?』

「艦長命令ってことで」

『・・・艦長、寝てますよ・・・・・・』

「問題ある?」

 数秒考えてルリは答えた。

『問題ありませんね。

 それじゃあオモイカネ、後退して』

【了解、ルリ】

 オモイカネがそういうウインドウを開くと、ナデシコはゆっくり後退し始めた。

『ところでDさん、寝ている人たちはどうします?』

「(マントの中からとりだした耳栓をして)アラームを最大音量で流してくれ。

 それが一番手っ取り早いから」

『分かりました』

 ルリはそう言うと、Dに倣ってどこからとも無く取り出した耳栓をし、アラームを鳴らした。

「んぁ?」

 馬鹿みたいな声を出しながらアキトが起きた。

 自分の右手とイネスの手が握りあっているのを、何か不思議なものを見るかのように暫く見、大音量のアラームで、起きたばかりの頭を無理やり覚醒させられた。

「んをおぉぉぉぉぉ!!」 

 ユリカも身動ぎ(「みじろぎ」と読む)したが、起きはしなかった。

 そして今頃、Dは自分が握っているのがイツキの手だということに気が付いた。

 ・・・・・・この男も寝ぼけているのかもしれない・・・





 いんたーみっしょん その5

「行き先が分かったんですね!」

「いいえ・・・まだそれは分からないわ」

「じゃあどうして私を呼んだんですか?」

「それはね・・・・・・

 行き先を知るためなのよ・・・・・・」

「・・・?

 何で私がいると行き先が分かるんですか?」

「ふふふ・・・・・・

 それはね・・・」

 その理由を聞いて真っ青になる青髪の美女。

「そ・・・・・・そんな・・・」

 「いんたーみっしょん その5」 終





 (Dに命令されてやった)ルリに無理やり起こされたナデシコクルーは、体制を整えると連合軍の援軍として、戦線に出た。

『そぉーれ!』

 イツキの目の前でヒカルがバッタの大群に突っ込んだ。

 いつもの体当たりである。

 しかし・・・

『うっそぉ〜、十機中三機だけ〜?』

【まったくもう、フィールドが強化されてるみたいね】

『進化するメカぁ〜?』

 イツキやイズミの的確な射撃も、バッタの装備しているディストーションフィールドをなかなか破れないでいる。

「でも、ホント、堅いですね」

 Dは右手にも左手にもレーザーブレードを装備(右手は順手、左手は逆手)し、舞いを踊るかのように宙を翔る。

 バッタヤジョロたちとすれ違う度に、鋼鉄の虫たちは爆発し、ただの鉄屑へと回帰する。

[こいつらはね・・・無手なり何なりで接近戦じゃないと、フィールドが破れないよ]

「そうなんですか?

 それじゃあ・・・・・・」

 イツキはラピッド・ライフルを捨て、イミディエットナイフを抜いた。

「はああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 そして叫び声(雄叫び、とも言う)と共にバッタたちに斬りかかる。

 ディストーションフィールドに護られているバッタたちも、ディストーションフィールドを纏ったナイフの一撃に耐えられるわけもなく、爆発し、消滅していった。

 それを見たリョーコとヤマダ(復活しました)は、

〔ドツキ合いなら得意だぜぇっ!〕

{ダイゴウジ ガイ、かぁぁぁぁぁむ・ばあぁぁぁぁぁぁぁぁっっく!!

 そして・・・・・・必殺!ゲキガンフレアァァァァァァァァァァァァ!!}

 と言いつつ、バッタの群に飛び込む。

 二人の襲撃にあったバッタたちは次々とその姿を爆光へと変えていく。

 ・・・・・・蛇足だが、ヤマダのエステの色はグレーだ。

「何か・・・・・・あの二人って息、合ってますね・・・・・・」

 イツキは呆れつつもバッタを屠っていく。

[・・・・・・全くだな・・・]

 動きの悪いアキトをフォローしながらDもイツキの言葉に賛成する。

 

 アキトのトラウマが甦ったのは火星の人々の“死”だけでなく、フクベの“死”も大きく関わっていたらしい。

 アキトの動きは、佐世保の時よりも悪くなっていた。

 動きの悪いアキトはバッタたちの格好の標的となっている。

 何匹(機?)ものバッタがアキトのエステバリスの周りを旋回し、翻弄する。

 そしてついに攻撃を敢行する。

 アキトのエステバリスは河に浮かぶ木の葉のように大きく揺れる。

「うわあぁぁぁぁぁ!」

『アキト君!』

〔アキト!〕

【テンカワさん!】

{アキトぉ!!}

 ヒカルが、リョーコが、イツキが、ヤマダが叫ぶ。

 その時だった。

 バッタがいきなり爆発した。

 青い、見たことのない型のエステバリスが、アキト機とバッタの間にはいる。

[ここは引きたまえ]

 どことなく楽しげな声が、コミュニケを通じてパイロットたちの耳朶を打つ。

〈アカツキか?〉

[そのとおりだよ、Dクン。

 君なら分かるかもしれないけど、“あれ”が来てるから、もう退いても大丈夫だ]

〈そうか。みんな、退くぞ!〉

 

 ナデシコのパイロットたちが退いた後、十数条の光が宇宙(そら)に奔った。

 光の矢はバッタや木星の艦隊を一瞬にして蹴散らす。

 

  ------in ナデシコブリッジ------

「敵、二割がた消滅」

「うっそぉ〜〜!?」

「第二波感知」

「多連装のグラビティブラストだと!?」

 だとか、

「ネルガルでも開発していないものを云々」

 という会話が為されていた。

 

 ------宇宙(そと)にて------

「すげぇ・・・」

「何なんだよ、あれ・・・・・・」

 などと、正体不明艦の放ったグラビティブラストに感想を漏らしていた。

 

 ------in ナデシコブリッジ part-U------

 数分後、正体不明艦が無人兵器の群を蹴散らしたのち、ブリッジにロン髪男がいた。・・・・・・哀れにも(何故か)誰にも気づかれていないが・・・

「一体どうなってんだ?

 たった二ヶ月やそこらでグラビティブラストが連射できるようになってるだなんて?」

 ウリバタケの疑問に(今までなぜか誰にも気づかれていなかった)ロン髪男が答えた。

「ナデシコが火星で消えて八ヶ月・・・その間にネルガルと地球連合はナデシコを地球から脱出させるために脅してきた人間について喧嘩をしてたけど仲直り。

 そして地球は新たな力を手に入れたわけさ」

「誰だぁ?おたく」

「僕の名前はアカツキナガレ。コスモスから来た男さ」

「コスモスぅ?」 by D以外のみんな

「そうさ。ナデシコの二番艦、コスモス。

 地球の手に入れた新たなる力、ネルガルと地球連合の仲直りの象徴さ」





 ------ナデシコ 某部屋------

『・・・・・・そういうわけだ』

「そ、そんな・・・」

 ウインドウに映る(いろんな意味で嫌な)男の言葉に動揺するユリカ。

 それをプロスペクターが

「とりあえずみんなで相談、ということで」

 と、フォローする。

『・・・いい返事を期待しているよ』

 ピッ

 暗い部屋に明かりを投げかける唯一の光が消えた。



「ところでアカツキ」

『何だい?Dクン』

「頼んどいた二人のサブオペレーターは?」

『ああ。バッチリだよ。

 それはそうと、もう少しボソンジャンプの秘密を教えてくれたって良いんじゃないかい?』

「まあ・・・いいか。

 いいか、ボソンジャンプは、この間言ったとおり、普通の人間には耐えられない。

 耐えられるのは、遺伝子操作で耐えられるようにした人間と・・・・・・

 これは、絶対に約束してもらわないと言えないことだ。

 絶対に、人体実験はしないと誓うか?」

『・・・ああ。僕は最初から、人体実験は反対だったんだ。

 それなのに父さんは・・・・・・』

「それじゃあ・・・言おう。

 遺伝子操作をした人間と、もう一つは火星生まれの人間だ。

 極冠遺跡・・・あれの影響を受けたナノマシンが、火星の人々の遺伝子データを書き換えた。

 その、一番最初の影響を受けた人々がジャンプ可能かどうかはオレは知らないが、確実にジャンプが可能なのはその次の世代だ」

『・・・分かった。(後は・・・僕があの契約を守るだけか・・・・・・)』





 いんたーみっしょん その6

「そんな!

 どうしてですか!?」

「ふふふふふふ・・・・・・

 どうして・・・・・・?

 あなたは知りたくないの・・・・・・?

 彼の行方を・・・・・・」

「そんな簡単な方法にどうして、今まで気づかなかったんですか!!!」

「ふふふふふ・・・・・・

 そうよね・・・知りたいわよね・・・・・・

 彼の行方・・・・・・」

「ああ!やっと会えるのね!!」

「その彼の行方を知るためにはそれしかないのよ・・・・・・」

「愛があればこんな障害なんて、有って無きが如し!」

「だぁ〜いじょうぶ・・・・・・

 ちょっと痛いだけだから・・・・・・心配しないでね・・・・・・((ダークな感じで)ハート)」

「待っててね、マイダーリン!

 私はもうすぐ貴方の元へ行くわ!!」

 ・・・・・・・・・・・・・

 何かちっとも話がかみ合ってないぞ・・・・・・

 謎のマッドサイエンティスト・・・・・・究極天然ぼけ女・・・・・・

 「いんたーみっしょん その6」 終





「チューリップを通り抜けると、瞬間移動する・・・・・・とは限らないのね」

 (最後の最後まで・・・・・・っつーかついさっきまで展望室で気持ちよさそうに眠っていた)イネスが言った。

 今はナデシコのメインクルーを集めてこの先どうするかを検討している(事になっている)。

「少なくとも、火星での戦いから八ヶ月が経過しているのは事実。

 (多分・・・・・・そこら辺にDクンの秘密が隠されてそうね・・・)」

 自分の見解を話す間にも考えを巡らせるイネス。

「因みにその間にネルガルと連合軍は和解、新たな戦艦を建造して月を奪回した。

 で、私の見解では「まあまあ、その続きはまた今度の機会、ということで」

 話の途中でプロスペクターに止められて、ブリッジの隅っこでいじけるイネス。

「それでネルガル本社は連合軍と共同戦線張ることに致しまして・・・

 ね、艦長」

「・・・それでナデシコは連合軍の極東方面軍に編入されることになりました・・・」

 暗い表情でネルガル本社の決定をみなに伝えるユリカ。

「私たちに軍人になれっ言うての?」

「そうじゃないさ。

 一時的に共同戦線を張るだけ。

 ナデシコクルーはネルガルからの出向社員っていう扱いになるのさ」

 ・・・・・・その後ミナトを口説こうとするアカツキ。

 しかしミナトはその容姿や格好とは裏腹に古風な一面を有しており、アカツキのような(軟派な)男は相手にしない。

 それでもしつこく食い下がるアカツキ。

 そして・・・・・・

 バチンっ!!! 

 頬に見事な紅葉が頬にできた。

 Dはそれを見て

「ふっ・・・愚かな・・・」

 とか呟いていたが、誰も聞いていなかった。





 アキトがヤマダと一緒にゲキガンガーを見ていたときだった。

 プシュウ

 ドアが開き、

「テンカワ君、ちょっと良いかい?」

 アカツキが現れた。

 しかし・・・・・・・・・・・・・

『やめて、ケン!

 ロクロウ兄さんを殺さないで!

 どうして、どうして二人が戦わなくちゃならないの!!』


 部屋でバンドをやっていても隣の部屋には聞こえない、というのに、隣の部屋の住人“ナカタニ ユウマ”があまりの騒がしさ逃げ出すほどの音量。

『すまない、ナナコさん。

 だが、今は、暗黒ヒモ宇宙の戦士、シックースだ』

 ごくごく普通の大きさの声でアキトに話しかけたアカツキの声など聞こえるはずがない。

『ゲキガンソォォォォォォォォォド!!!』

 逆にアカツキの鼓膜がやられた。

『ゲキ・ガンガーのバカァァァァァァァァ!!』

 耳から血を垂れ流し、「ぐはっ」と呻いて倒れる。

 そしてピンクの肉片が当たりに散らばった。

 さらに肉体も静かに崩壊し始める。

 末端から徐々に徐々に輪郭を失い、掻き消えていく・・・・・・・・・・・・って、オイッ!

 ・・・・・・・・・・・・・

「何か声しなかったか?」

「気のせいだろ。

 でもやっぱいいよなぁ、ゲキ・ガンガー第十三話『聖夜の悲劇!サタン・クロックM!!』は・・・」

「本当だね」

 ・・・・・・哀れなり、アカツキ。

 アカツキ ナガレ・・・・・・享年「って、勝手に殺すな!」 by アカツキHG(ハイグレード)

 ・・・生きてたの・・・?あれで?

 消滅しかけてなかったかい?

 ・・・・・・君も(「時の流れに」の)ハーリー君の仲間入りか。

「彼と一緒にしないで・・・く・・・れ・・・・・・(がくっ)」 by (体が黒くなっている)アカツキ

 それだけ言うと、体力が尽きたのか、再び床にひれ伏すアカツキHG。

 体のだんだん輪郭が崩れてくる・・・・・・



 暫くして・・・・・・

 木星の艦隊さんが現れた。

 だからナデシコ(正確にはそのパイロットたち)の出撃命令が下された。



「コラぁ〜、アキト!ヤマダ!ロン髪!

 放送聞いてなかったのかっ!

 今すぐ格納庫に来い!!」

 うにょうにょ・・・

「やぁ、リョーコくん。

 僕は暫く行けそうにないよ・・・」

 うにょうにょ・・・

「・・・何だぁ?こいつは?」

 うにょうにょ・・・

「僕はアカツキ ナガレさ」

 うにょうにょ・・・

 びろ〜ん

 ぺちょ

 ・・・・・・おそらく肩に手を置いたつもりだったのだろうが・・・・・・

 そんな何だか得体の知れないベトベトした液体を滴らせた謎の物体に触られたらねぇ・・・

 そりゃ気持ち悪いよなぁ。

 それにしても・・・・・・人間辞めたな、アカツキ。

 スライムになってやがる。

 ・・・・・・それにしてもさっきと変わってねぇか?

 さっきは人間だったのに。

「うわっ! 気持ちわりぃ!」

 ぐにょ

 思わずアカツキスライムを踏みつけるリョーコ。

「げぇっ!」

 まるで・・・そう、生物の・・・排泄物を踏んだような感触だった。

「い・・・・・・いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 何処から取り出したのかは不明だが、リョーコは火炎放射器でアカツキスライムを焼き尽くす。

 アカツキスライムはきっちり三分間燃やされた。

 ぷしゅう・・・・・・

 ぷすぷすぷす・・・・・・

 アカツキスライムは火炎放射器の炎に焼き尽くされた後、アカツキは人間の姿を取り戻していた。

 ただ、体が(焦げたのもあるのだが)黒くなっていたが。

「はぁはぁはぁ・・・・・・」

 肩で息をするリョーコ。

「なんだよ、五月蠅いなぁ」

「全くだぜ。落ち着いてゲキ・ガンガー見てらんないぜ」

 アキトとヤマダ「俺の名前はダイゴウジ ガイ!」「・・・誰に話してるの?ガイ」が振り向いた。

 リョウコは、息が落ち着いたところで、

「アキトぉ!ヤマダぁ!格納庫にさっさと来い!!!」

「「ラジャッ!」」

 アキトとヤマダが振り向くと、そこには鬼のような形相のリョーコがいた。

 まあ、それでゲキ・ガンガーなんか見てはいられず、ヤマダにいたっては名前の訂正もせずにリョーコに返事をして格納庫目がけて走り出した。

『そうしなけりゃ殺される』

 二人は本気でそう思った。

 ・・・・・・・・・・・・・

 アキトとヤマダの部屋には黒こげの死体(死んでないけど)と、夜叉だけが残った。


 

 いんたーみっしょん その7

「・・・・・・それでは・・・手術を始めましょうか・・・・・・」

 どことなく嬉しそうな金髪科学者。

「はいっ!

 今すぐ!

 おらおらおらおらおらおらおら(中略)おらおらおらおらおらおらおら!

 さっさとしな!!」

「分かってるわよ・・・ふふふ・・・・・・

 じゃぁ・・・!!」

 バッ!

 ・・・・・・・・・・・・・

 金髪科学者が懐からいろんなものを取り出した。

「・・・・・・・・・・・・

 何でトンカチや鋸(ノコギリ)とか、かんけーなさそうなモノまで出てるんですか?」

 青髪バカ女が金髪科学者に聞いた。

「基本よ」

「・・・きほん・・・・・・ですか・・・」

「平仮名で言ってほしくないわね・・・」

「何でそんなことが分かるんですか?」

「それは秘密よ」

「はぁ・・・・・・」

 ただたんに怪電波に操られているだけ、という考えもあるのだが・・・

「それじゃあ手術開始ぃぃぃぃぃ!!!!」

「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「おぉぉぉーーーーーーーほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほ!!!!」

 青髪バカ女の悲鳴と、金髪科学者の哄笑、何で手術でこんな音が出んだ?って感じの『ぴゅるるん、ぷっちゅん。ぷよよん、ぺっちゃん』だとかいう音が、例の部屋に響き渡った・・・・・・

 「いんたーみっしょん その7」 終

 

 

『リョーコ、隊列はどうするの?』

 ヒカルがエステ隊のリーダーであるリョーコに聞いた。

 ・・・・・・Dがリーダーになるべきでは、という意見も出たが、Dがいやがり、なんだかんだのうちにリョーコがリーダーになった。

【鳳仙花だ!】

『りょうかい!』

[分かった]

〔了解しました〕

{・・・・・・}

「了解!」

〈分かったぜ!〉

【とか言いながら、もう隊列乱してんじゃねぇ!ヤマダ!!】

 ナデシコの愉快なパイロットたちに緊張感は全くない。

 全く、毎度のことながら、もう少し緊張感というモノは持てないのだろうか?

 ナデシコのクルーは。

 ・・・・・・・・・・・・・

『?アカツキ君は?』

【さっきオレが燃やした】

「は?」 by 通信を聞いていた人全員

【オレが、自称アカツキ ナガレってヤツを燃やした、と言ったんだが?】

『も・・・燃やしたって一体・・・・・・?』

「ガイ・・・・・・あの黒こげの人間って・・・・・・アカツキだったのか?」

〈そうみたいだな・・・・・・こえぇ女(ぼそっ)

【き〜こ〜え〜て〜る〜ぞぉぉ〜〜〜】

〈ひっ!(や・・・殺られる!)〉

 ヤマダはコクピットの中でがたがた震えた。

 ヤマダは隊列を(「分かった」とか言ったくせに)無視して飛び出しており、しかもそこはリョーコ機の絶好の射撃ポイントだった。

[冗談はそこまでにしておけ]

〔その通りです。第一陣が来ています〕

【分かったぜ。じゃあ行くぞ!】

 そして戦闘が始まる・・・・・・

 

『はぁ、はぁ、はぁ・・・』

 アキトは早速だったが息が荒くなっていた。

「うまい戦い方だねぇ」

 (HGバージョンで)復活を果たしたアカツキがアキトに声を掛ける。

 はっきり言ってアカツキの言葉は皮肉である。

 確かに相手に攻撃をさせないような動きではあるが、それは素人ゆえのでたらめな動きだから、と言っても差し支えない。

『うるさいっ!』

 次第にバッタの攻撃が当たってきた。

『うわぁぁぁぁ』

 ガツン!

 鈍い衝撃がアキトを襲う。

 バッタがアキトのエステにしがみついてきたのだ。

『こいつ!こいつ!』

 バッタを殴りつけるアキト。

 殴りつけた部分と、スラスターが小さな爆発をする。

 再び小さな衝撃が起こる。

 それでもバッタを殴り続けるアキト。

 バッタが盛大に火を噴いた。

 そして・・・・・・

『うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』 

 バッタに振り回され、飛んでいく。

「テンカワ君!バッタを放すんだ!!」

 しかし恐慌状態に陥ったアキトはアカツキ(HG)の言葉など聞いてはおらず・・・

 そのまま飛んでいって月の影に消えていく・・・・・・・・・

 

 その頃、

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 誰か助けてくれえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 ヤマダもアキトとは方向は違うが、月の影に消えていく・・・・・・

 

 ------in (戦闘後の)ナデシコブリッジ------

 どっかへ飛んでったアキトとヤマダ救出作戦について話し合っていた。

 アカツキ(HG)にユリカが質問する。

「アカツキさん、コスモスにノーマル戦闘機、ありますか?」

「ああ、あるけど?」

「貸してください」

 ユリカの言葉に苦笑しながらもOKを出すアカツキ(HG)。

「君がそんなに積極的だとは思わなかったよ」

 くすくす、っと小悪魔的な笑いをするユリカ。

 

 ---in コスモス カタパルトデッキ---

「まさかメグちゃんも来るなんて思わなかった」

「私だって云々」

 だのなんだのと会話をしつつ、ユリカとメグミはアキトを求めてコスモスから飛び立った。

 

 Dもまた、なんだかんだでヤマダを捜しにナデシコを飛び立った。

 

 

 アキトは宇宙空間をさまよっていた。

 ふと、アキトは数条の光が見た。

「誰かが戦ってるのか・・・

 まぁ、オレには関係ないな。

 (・・・だって・・・ここから動くエネルギーがないんだからな・・・・・・)」

 ふと、唇の端をつり上げて、自虐的な笑みを浮かべた。

 そのときアキトは何かが聞こえたような気がした。

『ア・・・キ・・・ガガッ・・・はん・・・ピーッ・・・さ・・・ザーーー・・・う・・・ガガッ、ザザザ・・・をつか・・・・・・だ・・・』

「(何だ何だ?)」

 耳を懲らすと、何か、通信を受信していることが分かる。

『はんさ・・・よ・・・ガガッ・・・う・・・ザザッ・・・・・・かう・・・ガガッ、ピーッ・・・』

「はんさよう?」

 少しづつ、通信の状態が良くなっていく。

 そして、その言葉を組み立てると、

『アキト、反作用を使うんだ』

 という言葉が出来上がった。

「反作用・・・?」

 反作用、反作用・・・

 と呟きながら、アキトは何かを思い出そうとしていた。

 『反作用』という言葉が引っかかっているのだ。

「あっ!」

 アキトは反作用が何かを思いだした。

「そうか!昔理科で習ったじゃないか!

 え・・・と、確か・・・・・・」

 

 アキトはエステバリスの足を強制排除した。

 軽い衝撃が起こる。

 そしてエステバリスは何者かが戦闘をしている場へと向かう。

 

 

「アキトのヤツ、気付いてくれたかな?

 だいぶ音声が乱れてたけど」

『多分気付かれたでしょう。

 交戦信号を受信しましたから』

「そうか。

 だけど、分かってくれなかったらどうなるのかな?」

『さぁ、私にも分かりません。

 分かることはユリカさんとメグミさんは確実にお亡くなりになるということだけです』

「そうならないことを祈るが・・・・・・」

 Dが言っているのは、“反作用”についてのことだ。

 今回は反作用を学ぶ機会がなかったことについさっき気が付いたので、それをアキトに通信で教えたのだ。

『マスター、ヤマダ機を発見しました』

「そうか。

 じゃ、回収、っと」

『了解』

 Dはヤマダ機に近づき、腕をむんず、と掴む。・・・・・・スラスターが破損していて、サレナからエネルギー供給を受けても動けないのだ。

「よぉ、生きてるか?熱血バカ」

【何だぁ!?熱血バカってのは!】

『貴方のことです。ヤマダさん』

【くっ!AI風情がぁ!!】

「AIじゃないオレが言えばなんて言うんだ?」

【D!酷いじゃないか!どうしてオレが“熱血バカ”なんて言われなきゃならんのじゃっ!!】

「心当たりはないのか?」

【ぐっ!!】

 心当たりはありすぎるほどあるヤマダ。

 だから何も言い返せない。

「よし、それじゃぁ帰るぞ」

『了解』

【おうともさっ!】

 

 

「ねえ、アキト。怖く・・・なかったの?」

「・・・・・・

 うん。

 二人を助けなきゃ・・・・・・って思ったら・・・

 怖くなかった」

 アキトの脳裏にユリカとメグミを助けたときのことが去来する。

 暫く・・・・・・

 たわいのないことを話す三人。

 そしてこのままだと三人はどうなるのか、ということに、自然と話が移る。

 アキトはそれをシミュレートする。

 機体内の酸素がこのままだと後何分持つかというと・・・

 絶望的な数字だった。

 それをなんとかすべく、エステバリスのパーツ全てを、反作用を利用するために排除した。

 それでも・・・

 エステの空気が無くなる十分後までにナデシコにたどり着くことはできない。

 ナデシコの位置まで後十分と少し・・・・・・

 シミュレーションの結果は、三つあった。

「ねぇ、この一番下の数字は何なの?」

「ああ、これね。

 一番下のヤツが一人で乗ってた場合。

 真ん中のヤツが二人だった場合だよ」

 と、アキトは答えた。

「それじゃあアキトはパイロットだから、私かメグちゃんが下りれば確実にナデシコの所までいけるんだね」

「ま、まあね」

「それじゃあ私が降ります」

「え〜、降りるのは私だよ、メグちゃん」

「いいえ、私です」

「私だよ〜」

「いいえ、私です!」

「私!」

「私です!」

「私!」

「私!」

「「私!!」」

 ・・・・・・・・・・・・・

 この二人が「自分が降りる」と言い合ってるのは、「自分が降りることこそがアキトの生に繋がる」であり、それが飛躍して「それ即ち、降りた方が、よりアキトのことを思っている」と考えたからである。

 ・・・・・・バカ丸出しだろ、それは・・・

 ・・・・・・・・・・・・・

 只今のアキトの心境はというと、

「(普通はどっちが降りるのか、っていう話になるんじゃないのか?)」

 ・・・だった。

 どーでもいー事を考えているな・・・アキト。

「それじゃあアキトに決めてもらおうよ!」

「いいですよ。

 アキトさん!もちろん降りるのは私ですよね!!」

「違うもん!私でしょ!アキト!!」

 アキトはしばし、真剣にどうするか考える。

「三人で行こう。

 きっとどうにかなるさ。

 

 それにオレにはユリカを降ろすか、メグミちゃんを降ろすか、なんて決められないから」

「でも良いの?アキト」

「死ぬかもしれないんですよ」

「良いんだ。オレは、オレの大事なモノのために、こうするんだ」

「大事なモノって?」

「私のことですよね!アキトさん!!」

「ええ〜、私だよぉ」

「私です!」

「私!」

「私です!!」

「私!」

「二人ともやめてよ!」

「「アキト(さん)は黙ってて(下さい)!!!」」

「は、はひぃっ」

『アキト君の大事なものか〜、私も興味あるな〜』

[確かにねぇ]

【私は全くありません】

「「「え?」」」

「コミュニケが・・・」

「通じてる?」

「っていうことは・・・」

「「「ナデシコ・・・」」」

『ねぇねぇアキト君。一体誰なの?アキト君の大事な人って』

「勿論私ですよね?」

「だから私だってば!」

「私ですって!」

「違うもん!私なんだもん!!」

「(・・・帰ってきたんだな・・・ナデシコに・・・・・・)」

 

 ------in ナデシコ ブリッジ------

「まさか君が助けに行くなんていうとは思わなかったよ」

「友達・・・ですからね・・・・・・」

 アカツキ(HG)の言葉に、そう答える(影の薄い、だけどそのくせして副長の)ジュン。

「!

 D機から緊急信号確認!!」

「なんですと!?」

「むっ!」

『状況を!』

「はい。

 サレナの制御システムに異常発生、コントロール不能。さらにバッタと遭遇!」

『急いで救援を!』

【わぁってる!

 今、格納庫だ!!】

[イツキ、出ます!]

【リョーコ、出るぞ!!】

 

 ナデシコから二つの光が飛び出した。

 二つの光は、彗星かと見まごうほどのスピードを出し、Dのいる宙域を目指す。

 

 

 ------数分前------

「後、このペースだと五分ぐらいでナデシコに着くからな」

『そうか!分かったぜ!!』

「しっかし・・・お前一体なにやらかしたんだ?」

『何って、バッタどもにゲキガンフレアをかましてやったら、生意気にもよけやがってさ、無茶な加速しちまったみたいでスラスターがドカンよ!』

「・・・・・・

 だから「熱血バカ」ゆわれんじゃぁっ!!!」

『なにっ!?そうなのか!?』 

「(気付いてなかったのか?こいつは・・・)」

 ピッ

【マスター、バッタが三匹接近中です】

「そうか。

 マシンキャノンで一気に片づけるか・・・・・・」

【マシンキャノン、レディ】

「発射」

 サレナのコクピットを軽い衝撃がおそ・・・・・・わなかった。

「!?

 どうしたんだ!?オメガ!!」

【不明。

 機能・・・てい・・・・・・し・・・・・・・・・】

 ガクンッ

 サレナのスラスターが停止した。

 続いてアイ・カメラの光が消え、非常灯がすぐ付いたが、コクピット内の電気も消えた。

「どうした、オメガ!

 オメガ?

 オメガ!オメガっ!

 くっ!

 ガイ!緊急信号を出してくれ!サレナは全機能停止、並びに操作不能だ!」

『お、おう!』

 

 ------イツキ&リョーコ------

「D、大丈夫よね・・・」

『当たり前だろ!

 あいつが簡単にくたばるわけないだろ!!』

「そう・・・ですよね。

 急ぎましょう!リョーコさん!!」

『おう!!』

 二人の乗ったエステは、赤い彗星なんて目じゃねぇぜ!ってスピード(エステのリミッターぎりぎりです)でDを求め、宇宙を飛翔する。

 

「『見えた!!』」

 三匹のバッタに襲われているサレナ(+ヤマダsエステ)。

【くっ!

 動け!動けぇ!!】

[うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?]

 回線から入ってくる叫び声が、D(とヤマダ)の焦り、危険さを、二人に嫌が応でも教える。

『いっけえぇぇぇぇぇぇ!!』

 リョーコがリミッターを解除し、さらに加速して一匹のバッタを屠る。

 無言のまま、高速で射撃し、一匹のバッタを仕留め、もう一匹を虚空にはじき飛ばすイツキ。

 その一匹をリョウコが振り向きざまに射撃し、倒す。

【あ、ありがとう、イツキ、リョーコちゃん。

 助かったよ】

『そ、そんな、礼を言われるほどの事じゃねぇよ』

「そうですよ、D。

 私と貴方の仲じゃないですか」

【それでも・・・ありがとう】

『よ、止せやい。こっぱずかしいじゃねぇか』

 思いっきり照れまくるリョウコ。

「はい」

 嬉しそうな顔で、Dからの言葉を受け取るイツキ。

[いや〜、それにしても、ホント、助かったぜ!

 サンキューな、リョーコ!イツキ!]

「『Dが危ない目にあった原因が何を言う!!』」 

[ひっ!]

 ・・・・・・後にヤマダは語る(そしてその後で宇宙の海に(宇宙服無しで)浮かんだが。

 しかも、それで生還してるヤマダって一体何者・・・?)。

「あの時、オレは確かに鬼を二匹見た」と・・・・・・

 

 まぁ、何はともあれ、D(&ヤマダ)は無事にナデシコに帰還した。

 

 この話は二話ぶりの、happy end。

 

 

「な〜〜んて終わってもらっちゃこまるのよ」

 ・・・・・・・・・・・・・とはいかないんだよね・・・やっぱり・・・・・・

「ええ〜〜〜」

 クルーの皆さんから不満がありありと伺えます。

「今日から私がこのナデシコの提督になるわ。

 死ぬ気で、働いてもらうわよ。

 そうそう、それが嫌だったら次の寄港地で降りてもらうわ。

 尤もそれまでには結構時間があるけど・・・・・・

 それまでにどうするのか決めておくのね」

 ブーイングが巻き起こる。

 ムネ茸は

「黙りなさい!五月蠅いわよ!!」

 とか言うが、どっちが五月蠅いんだか・・・・・・

「(ま〜た乗るのか・・・いーかげんにして欲しいぜ、全く・・・)」

「Dはどうするんですか?

 私は・・・あのキノコの下で働くとなると、考えてしまうんですが・・・・・・」

「オレも同じだよ。

 あいつは大っきらいだ。

 ・・・だけど・・・オレはナデシコを降りたりはしないよ」

「それじゃあ・・・私も降りるのはやめようかな」

 

「・・・・・・そろそろ私も自己紹介して良いかしら・・・・・・?」

 いつまでも騒ぎっぱなしのナデシコクルーに、怒りを押し込めた、ドスの利いた声で尋ねる黒髪の美女。

 彼女に気圧され、ナデシコクルーが静まった(!)。

「私はエリナ キンジョウ ウォン。

 ナデシコの副操舵士の任に付きます」

「全く、何で会長秘書が乗ってくんだか」 

「それとこの二人・・・サブオペレーターになる、ラピス・ラズリとマキビ・ハリよ」

 薄桃色の髪の毛をした、小学一年だとか二年くらいの少女がエリナの後ろから恐々と出てくる。

「ワタシ・・・ラピス・ラズリ・・・ヨロシク・・・・」

 少女に続いてやはりエリナの後ろから、半端な長さの黒髪のこれまたラピスと同じくらいの年齢とおぼしき少年が前に出てくる。

「僕はマキビ・ハリです。ヨロシクお願いします」

 ・・・どことなく緊張した声である。

 その二人に対するクルーの反応はといえば・・・・・・

「わぁっ、かっわいい〜〜〜(ハート)」

 とか、

「ねえねえ、ラピスちゃんは何才なの?」

 だとか、

「マキビ君は通称、ハーリー君よ」

 というエリナの声に、

「きゃぁぁぁ、かわゆいよぉ〜〜〜」

 だの、

「ねえねえハーリー君、お姉さんの部屋でいいことしない?」(爆)

 と、とてもすごい歓迎だった。

 そんな中、Dはラピスに声を掛けた。

 ご丁寧に、膝をついて、目線の高さまで揃えて。

「オレは“D”。ヨロシクな、ラピス」

 そしてDはラピスに手を差し出す。

「あ」 

 Dの怪しさ大爆発の格好に怯えることもなく、ラピスはDをじっと見つめる。

「ワタシ、ラピス・ラズリ。ヨロシク、D」

 ラピスはDの手を取った。そして握り合う。

 エリナが不思議そうな顔をしてDを見る。

「へえ、こんな事もあるのね。

 私以外の人には滅多に心を開かないのに・・・・・・一目見ただけで懐くだなんて」

 

 キノコが何かキィキィ喚いていたが、誰もが何にも言わずに無視している。

 哀れと思われない・・・って言うか、ざまぁみろって感じだが。

 

 

 こうして、ナデシコのクルーはまた増えた。・・・まぁ、一人はみんなにシカトこかれているが。

 

 

 次回予告

 北の地に吹きすさぶ嵐

 メグミに迫られるアキト

  次回 奇跡の作戦『キスか?』
               をみんなで読もう!

 

 

 本星への報告書8

 執筆時間七時間。・・・・・・前作より長いクセに時間は短い。これって一体・・・?

 さて・・・・・・やっぱりキノコは復活です。

 ナデシコクルーは「艦内の湿度が高いんじゃないのか?」とか言ったとか言わないとか・・・・・・

 まあそんなことを言われてもしょうがありませんけどね。

 ところで、前作を送った日に来た鋼の城さんからのメール(「相転移砲」だけでなく、全ての兵器が非人道的だと思うぞ、というもの)ですが・・・・・・

 鋼の城さんには次の日に返答を送ったのですが、そう思う人が他にもいるかもしれないので、ここに書きます。

 

 「相転移砲は非人道的すぎる」というのは、強力すぎる威力のことを言っているのではなく、「良心」というモノにある、と、私は考えたからです。

 「相転移砲」で消された人々というのは、つまりこの世界から消えてしまいます。何の残骸も、生きた形跡も残さずに・・・・・・

 

 果たして、「相転移砲」を使った人々に「罪悪感」はあるのでしょうか?

 答えはNOです。

 生きた形跡が残っていれば、(正常な神経の持ち主ならば)罪悪感というモノが残ります。

 しかし、その形跡がなければ、人々は「自分が人を殺したんだ」という自覚ができません。

 罪を犯しても、罪悪感があれば許される、などということは言いませんが、罪悪感というモノの存在はとても大きいのです。

 

 ・・・・・・それ故に、私は「相転移砲」というものを特に「非人道的」だと思うのです。

 

 分かっていただけたでしょうか?

 

 それではこの辺で・・・・・・

本星への報告書8 終

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

E.Tさんからの連続投稿です!!

うむ、まああの二人が乗り込んだのは予定通りでしょう(笑)

しかし・・・

ハーリーが幸福に包まれている!!

誰がこれを予想しえたでしょうか?

まさに、天変地異の前触れでしょう!!

 

・・・本当、どうなるんだろう(苦笑)

 

ではE.Tさん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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