「・・・え・・・・・・?」(ルリ)

「な・・・・・・?」(ウリバタケ)

「こんな馬鹿なことがあるの!?」(イネス)

「でも・・・・・・これは事実ですよ・・・?」(ユウマ)

「だからってなぁユーマ、お前にはこれが信じられるのか?」(ウリバタケ)

「いえ・・・オレも信じられないっすけど・・・『事実は事実として受け入れなければ、何事も先へは進めない』とも言いますし・・・

 まずは、これを受け入れましょうよ、班長、イネスさん、ルリちゃん」(ユウマ)

「はい・・・そうですね・・・」(ルリ)

「確かにね。でも、そんなことを私に向かって言うなんて・・・・・・生意気ね、ナカタニユウマ君」(イネス)

「お仕置きは勘弁してくださいよ、イネスさん」(ユウマ)

「さぁ・・・どうかしらね・・・・・・・・・」(イネス)

「でも・・・やっぱり信じられませんよね・・・

 オメガのプログラム内に、謎のプログラムがいつの間にか内包されていただなんて・・・・・・

 しかも、それがオモイカネとオメガの良いとこ取りのプログラムが二種類ですからね・・・・・・」(ルリ)

「全くだぜ。

 一体全体、こんな事ってあるのか?」(ウリバタケ)

「ところで、これってやっぱり、このプログラムを消去すればオメガは復帰するんでしょうか、班長」(ユウマ)

「さあ、どうだろうな」(ウリバタケ)

「消去するよりも、プログラムを取り出した方がいいかもしれないわね。

 もしかしたら、とっても使えるプログラムでしょうし」(イネス)

「そうですね。

 それでは早速・・・・・・」(ルリ)



 

機動戦艦ナデシコ 

TWIN DE アキト

 

第九話 奇跡の作戦『キスか?』

前編  アキトの戦い編

 



「確かにネルガルと連合軍は共同戦線を張っています!!

 ですが、理不尽な命令に、我々には拒否権が認められているはずです!!」

「一応はね・・・」

「本艦クルーの総意に反する命令には、このミスマル ユリカ・・・・・・

 艦長として拒否しますのでご了解下さい」

「戦うだけの手駒にはならない・・・・・・ってワケね」

 暫くの間、ユリカとムネ茸は睨み合った。

 普段のボケたユリカとは違う、ナデシコ艦長としてのユリカがそこにいた。

 ムネ茸が口を開いた。

「・・・お生憎様。

 あなた達への命令は戦う事じゃないわ。

 敵の目をかいくぐって救出作戦を成功させる事よ」

「救出作戦!!?」 

 ・・・ブリッジにいる全員が驚きまくった。

 だってねぇ、ムネ茸が言う言葉じゃないもんねえ。

 ムネ茸が言うのは「味方を後ろから攻撃してでも手柄を上げろ」だろうし。

「木星蜥蜴の攻撃が無くても、地球の平和を守るというナデシコの目的は・・・・・・果たさなくちゃダメよね〜」

 ムネ茸ほどこんなセリフが似合わない人間も珍しいだろう。

 ・・・まあそれはともかく、マップが浮かび上がった。

 北極海域ウチャツラワトツスク島のマップが。

「で、この北極海域ウチャツラワトツスク島に取り残された某国の親善大使を救出して欲しいのよね〜」

 どことなく楽しげなムネ茸。

 言うなれば、大ッキライな相手にしたいたずらが、バッチリヒットしたときに、思わず見せてしまうような嫌な笑顔である。

「質問〜〜〜」

「何?艦長」

「どうして大使はそんな所に取り残されたんですか〜?」

「大使は好奇心旺盛な方でね〜、現地はブリザードが荒れ狂ってる大変なトコだっていうのにね〜」

 以後、ムネ茸は延々と説明を続けたが、誰も聞いちゃいなかった。

 当たり前の話であるが。

 ふと、Dがアキトとユリカを見てみると、Dが経験した通り、何かぎくしゃくしていた。

 アキトは、今回も例の夢を見たらしい。

「お〜お〜、何だかアキト君と艦長の間がギクシャクしてる〜」

「幼馴染みの仲もこれまでこれまで、かな?」

「「ほらほらリョーコ、チャンスチャンス」」

「な、何を言ってるんだ!お前らは!」

「あれ?あ、そーか、リョーコ、アキト君とDクンの間でまだ揺れ動いてるのね〜」

「揺れ動く心は」

「甘く切ない恋心」

「どちらが良いか」

「決められない」

「二股だからこそ」

「この恋は禁断の」

「「蜜の味〜」」

「何言ってやがんだ!!」

「きゃーきゃー、りょーこが怒ったー」

「そんなに怒ると皺が増えるよ?」

「うるせー!

 待ちやがれ、お前ら!」

「「あはははははーー」」

 リョウコとヒカル、イズミは追いかけっこを始めた。

 いつもの平和な光景である。

「ラブラブ話は!もういいわね・・・・・・?」

 そこにムネ茸が水を差す。

 そして喧噪が収まる。

 これまたいつもの光景である。

「いい事!

 この作戦はなんとしても成功させるのよ!!

 解ったわね!!!」

「は、はい!」

 ・・・・・・今日はいつも以上に声がでかいぞ、ムネ茸。

 只今入院中のヤマダ並だ。

 

 

「む?

 誰かが俺を呼んでいる!」 

「黙れ」

 ガツン☆

「ぐはっ(吐血)」

 

 

「ふう〜、移動中って、私たちパイロットは暇よね〜」

「ま、現場に着かないと俺たちに仕事はないよな」

 食堂の机の上に寝っ転がるヒカルの愚痴に、そう答えるリョウコ。

 Dはラピスの昼食を作っている。

 ラピスはそれを足をブラブラさせながら見つめている。

「やあ、テンカワ君。

 今暇なら、ちょっと付き合ってほしいんだ、け、ど・・・ってそういう意味じゃないよ!」

 周りから好奇の目で見られ、慌てて弁解するアカツキ。

 ・・・そういえばお前、どっから出てきた?

「ちょっとトレーニングルームまで来てもらおうか」

「あ、ああ・・・」

 アキトとアカツキに二人は食堂を出ていった。

「おし、出来た、っと」

 Dは器に(テンカワ特製)ラーメンを盛った。

「イイニオイ」

「どうぞ、お食べ。ラピス」

「ウン。

 ・・・イタダキマス」

 ずるずる〜、むぐむぐむぐ、ごっくん

「・・・オイシイ・・・」

 ラピスはぎこちなくだが、確かに、笑った。

 未来に於いて、黒い王子様がラピスに出会ったときよりは、トラウマなどが多くないとはいえ、決して、表情豊かとは言えないのに・・・

「良かった」

 Dもつられて嬉しそうに微笑んだ。

「・・・オレも食ってみたいかも・・・・・・」

「私も〜。

 ラピスちゃんが笑うぐらい美味しいんでしょ?」

「ええ、美味しいですよ」

「うわっ!

 何処から湧いて出た!イツキ!」

「湧いて出た・・・って、人をウジか何かみたいに言わないでください!

 ちゃんとドアから入ってきたんですから!」

「悪かったな。

 ・・・って、イツキ、お前、食ったことあんのか!?Dの料理」

「ええ、ありますよ。

 この間、頼んだら作ってくれました」

 にっこり微笑んで言うイツキ。

その内心は「ふっ・・・私の勝ちね、リョーコ」・・・だった。

「よ、よし、それじゃあ早速オレも頼んでみよ」

「私も、私も〜」

「そーいや、イズミは何処行った?」

「さあ?

 また部屋で新しいギャグでも考えてるんじゃないの?」

「あり得るあり得る」

 二人はDの側まで行くと、早速料理を作ってくれるよう頼んだ。

 Dは二つ返事でオーケーした。

「ちょっと待っててね」

「お、おう」

「うん、解った〜」

 二十分ほどして、リョウコとヒカルもDの(テンカワ特製)ラーメンにありついた。

「ん、んまい!」

「ホント、おいし〜。こんな美味しいラーメン、ホウメイさん以外に作れるなんて思わなかった〜〜」

「やっぱり、そう言ってもらえると嬉しいな」

「ところでD君、ものは相談なんだけど・・・・・・

 今度良かったら作り方教えてくれない?」

「ああ、良いよ」

「お、オレにも教えてくれるか?」

「勿の論ってね」

「“モチノロン”ッテナニ?」

 あはは、と軽く笑って、Dは答えた。

「“勿の論”っていうのは、“勿論”って事だよ。

 軽いシャレみたいなものかな?」

「フーン。ソウナンダ」

「シャレだったら私に任せて」

 どこからともなく、ナデシコ七不思議の一つとも言われる人物、イズミが現れた。

「い、イズミ!?」

「何処から現れるんだか、全く」

「ホント不思議よね〜。

 イズミ〜、そんなことばっかりやってるから『ナデシコ七不思議の一つ』なんて言われるんだよ?」

「・・・言い始めたの、貴女でしょ、ヒカル」

「アレ?そうだったかなぁ?」

「D、ヒカル、バカ?ジブンデイイハジメタコトワスレルンダカラ」

「いいかい、ラピス。そういうことはね、例え本当のことでも、口に出しちゃいけないんだよ。

 分かった?」

「ハーイ」

「・・・なんかDクン酷いこと言うね」

「どこが?」

「だって、遠回しに私のことバカって言ってるじゃん。どう聞いても」

「そうか?」

「そうだよ」

「そうかなぁ?」

「そうだよ」

「そうかもしれないな〜」

「ってゆーか、そーだよ」

「んじゃ、まあそーゆーことにしておくか」

 

 

「はっ、オレは一体何をしているんだ!?

 誰かがオレを呼んでいたというのに眠りこけてしまうだなんて!」

 ヤマダは、さっきイネスに殴られたことに気付いていなかったらしい。

「・・・・・・もう起きたの?ヤマダ君。

 流石はナデシコ七不思議の一人よね・・・・・・

 是非とも研究してみたいものだわ」

 ヤマダが目覚めたことに気付いたイネスがそう言った。

 眼鏡を怪しく光らせて。

 ヤマダはその光景を見て、体中に汗をびっしり浮かばせた。

 宇宙空間に生身で放り出されても生きていられる男が怖がるイネスって・・・・・・・・・?

「うふふふふ・・・・・・それじゃあ早速・・・・・・」

 何処からともなく取り出した超巨大注射器が、眼鏡同様怪しい輝きを帯びる。

「いやじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 誰か助けてくれえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 ヤマダの魂の叫びがナデシコ中に・・・・・・響かなかった。

「・・・・・・無駄よ、怪生物君。

 あなたの予想最大声量の82.7倍程の声までなら完全にシャットダウンできるように、医療室中の壁を改造しまくったから。

 したがって・・・・・・誰も助けに来ないわ」

         コツ・・・                             コツ・・・
                                コツ・・・               コツ・・・
    コツ・・・                                                    コツ・・・
                      コツ・・・
          コツ・・・               コツ・・・         コツ・・・

            コツ・・・               コツ・・・                 コツ・・・
                                           コツ・・・
                                                               コツ・・・

 イネスの足音が


 顔を恐怖に引きつらせた


 哀れなモルモット(ヤマダ)へ


 近付いていく。


 この先彼を待つのは


 死よりも恐ろしい


 山崎以上の


 恐怖の実験。


 惨たらしい


 死体の山が


 ヤマダには見えた。


 それは幻覚。


 しかし・・・


 事実でもある。


「うぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」 

 ヤマダの声が医療室に響いた。

 

 

 いんたーみっしょん その8

「・・・・・・あなたって、本当に非常識ね・・・・・・」

「何がですか?」
    ..
「普通アレを吸収する?」

「そういえばそうですね」

「そういえば・・・ってね・・・・・・」

「ところで、これで見つけられるんですよね?」

「ええ、その筈よ」

「それじゃあ早速探しましょ!」

「え、ええ、そうね」

「行方が分かったら、みんなにも教えてあげなくちゃ」

「そ、そうね・・・・・・

 (もう見つかった気でいるとは・・・・・・)」

「じゃ、始めましょ」

「分かったわ」

 金髪マッドサイエンティストは青い長髪のバカ女にヘルメットのようなものをかぶせた。

「それじゃあ・・・・・・スイィィィィィィッチ、オォォォォォォォォォォォォォォォォォンンンゥ!!!」

 ヘルメットもどきは、周りから見ても分かるほど、スパークを出した。

 これは電気椅子よりも、電圧がはるかに高いということだ。

 それを見る金髪マッドサイエンティストはとても楽しそうだ。

「ぴぎゃああぁぁぁぁあああぁぁぁぁああぁあああああああああああ!!!!!」

 青い長髪のバカ女は悲鳴をあげた。

 とんでもなく痛いらしい。・・・って、そりゃそーか。

 「いんたーみっしょん その8」 終

 

 

「で・・・・・・実際のところ、君と艦長はどんな関係なんだい?」

 アカツキ(HG)は、アキトとの模擬戦中に、唐突にそんなことを聞いた。

『なんだよ、いきなり!』

 動揺したのか、動きが思いっきり悪くなった。

「いや、君と艦長の間には、僕が入る余地が十分あるんじゃないかと思ってね」

 ズドドドドドド

 アカツキ(HG)の放った弾丸がアキト機に命中する。

【GAME OVER】

 そんな文字がアキトの前に浮かんだ。

 プシュウゥゥ

 間抜けな音と共にシュミレーターのドアが開く。

「きたねえぞ、アカツキ!」

 アキトはシュミレーターから出るなりそう言った。

「汚いだなんて、別にただの世間話じゃないか」

「何おぅ!」

「何かな?」

 しばし二人は睨み合う。

「とりあえずもう一回!」

「よし来た!」

 アカツキ(HG)とアキトは再びシュミレーターの中に入っていった。





「目的地の北極海域に入ります」

「凄いブリザードね〜」

「目視に変えても支障はないとおもうよ、ユリカ」

「だがそれがこちらの有利ともなる」

 ブリッジではそんな会話がなされていた。

 

 

「ア〜キ〜ト〜さ〜ん!」

「ん?メグミちゃん?

 どうしたの?」

 アカツキ(HG)と模擬戦を終了して部屋に戻って、くつろいでいたときにメグミが来た。

「今、暇ですか?」

「ん?あ、ああ。

 待機にはいるまで一時間ぐらいだったらあるよ」

「じゃ、ちょっと付き合ってください」

「え、う、うん。いいよ」

 アキトはバーチャルルームに引きずられていった。

 部屋に着いたとき、少し磨り減っていたとかいないとか。


「じゃ、どんな設定にします?」

「え?ど、どんなって・・・?」

『説明しましょう!!』 ←一回り大きく

 アキトの言葉に反応してか、イネスの作ったビデオ・説明システムが起動した。

『バーチャルルームとは・・・』

 ブツッ!

「五月蠅いから、これは切っちゃいましょう」

 メグミは容赦なく、何処か、よく分からない場所にあるビデオ・プログラムのスイッチをオフにした。

「それじゃあ・・・二十世紀の学校で」

 ポチッとな、とか言いながら、メグミはバーチャルシステムを起動させた。

 

 

「え・・・っと、こ、こうか?」

「そうそう。そこで麺をあげて水気をきる」

「お、おう」

「こ〜だね?」

「そうそう、二人とも上手いぞ。

 そうしたら、水・・・流水で麺を冷やして」

 ・・・Dは早速リョウコとヒカルに料理(二人の希望もあり、ラーメン)を教えていた。

「D・・・ワタシヒマ」

「はは、ごめんな、ラピス。

 後で遊んでやるから、もうちょっと待ってて」

「ウン。ワカッタ」

「・・・・・・」

 リョウコがじーっとDとラピスを見ていた。

「な〜に見てんのかな?リョーコ」

「えっ!?あ、ああ。いや、Dとラピスってついこないだ会ったばかりだろ?

 それなのに・・・なんか、二人が一緒にいるのが、妙に自然に見えてさ」

「確かに言われてみればそうよね〜」

 リョウコの言葉は正鵠を射ていた。

 あの・・・Dが変えようとしている未来に於いて、黒い王子様とラピスは、文字通り一心同体。二人が共にあるのが自然な姿だったのだから。

「さて、それじゃあ続きと行こうか」

「「はい、先生!」」

「麺を器にあけて。

 で、具を乗っける。

 それでスープをかけて」

「「「「完成(一名はカタカナ)」」」」

 リョウコとヒカルは喜びを噛みしめていた。

「うわ〜っ、オレにも出来た!!」

「ホント〜〜、夢みたい〜〜〜!!」

「それにしても、飯作るのって、意外と疲れるんだな」

「さっき食べたばっかりなのに、もうお腹ぺっこぺこだよ〜」

「はは。そんなもんさ。

 慣れてないと、特にラーメン程度でも、中華料理を作るのには、結構体力使うからね」

「はやくタベナイトさめるヨ、リョーコ、ヒカル」

「そうだな、ラピス。

 じゃぁ食べてみな。リョーコちゃん。ヒカルちゃん」

「ああ」

「「いただきま〜す」」

 はふはふ、ズルズル〜、むぐむぐ、ゴックン

「ん、んまい!」

「おいし〜い!これ私たちが作ったんだよね〜?」

「ああ。そうだよ。

 二人が、自分で作ったんだよ」

「信じられないよぉぉぉぉ」

「ホントだぜ!

 オレがこんなに上手に料理が作れるだなんて・・・!!(漢泣き)」

「(泣くほどの事じゃな・・・・・・いや、あるか。あの毒料理だもんな・・・・・・リョーコちゃんが作れるのって・・・・・・)」

「D、アソビにイコ」

「ん?ああ。

 じゃあリョーコちゃん、ヒカルちゃん。

 後片付けはしっかりしてね」

「ああ。まかせとけ」

「安心して良いよ。

 ちゃんとやっておくから〜」

 

 

「アキトさん」

「あ、メグミちゃん・・・ってその格好、なに?」

 メグミはセーラー服なんぞを着ていた。めっちゃミニのスカートの。

「これですか?うふ(はーと)」

 (小悪魔風に)可愛く笑って誤魔化すメグミ。

「それはそうと、設定は二十世紀の高校で、私はアキトさんの後輩で、私もアキトさんも美術部に所属しているみたいですね」

「あ、そうなんだ」

「ええ。

 それじゃあ・・・・・・

 先輩、今度のコンクールの絵・・・・・・私を描いてくれませんか?」

 俯きながらメグミが言う。

「え?あ、ああ(そーゆー設定なのか)。

 う、うん。勿論いいよ」

 メグミは何故か、教室の鍵を閉めた。

 そして胸元に手をかけながら

「私・・・私、先輩だったら・・・・・・」

 とか言い、スカーフを投げ捨てた。

「め、メグミちゃん!?」

 メグミはついに、上着をも脱ぎ捨てる。

 ムネの谷間が覗き、おへその辺りが見えそうで見えない。

 その姿は色っぽく、アキトは理性を保のに大変な労力を用いらされている。

「先輩!」

 メグミはアキトに抱きついた。

 アキトは思いっきりどぎまぎする。

「(ふふ。設定、ちょっとアダルトにして正解だったかな?)」

 

 

 ブリッジにユリカがいた。

 ユリカ以外の人は、昼時なので、食堂とかにいた。

「・・・・・・・・・」

 ユリカはボ〜っとしていた。

 アキトとメグミのことが気になって仕方がないのだ。

 唐突に床が揺れた。

 敵に発見されて攻撃を受けたわけではなく、突風でバランスを崩したのだ。

「あ・・・・・・」

 しかし、ぼうっとしていたユリカには、それは致命的だった。

 思いっきりバランスを崩し、コンソールに腕をぶつけた。

 しかも運悪く、腕をぶつけたところは「グラビティブラスト発射」のボタンだった。

 そしてグラビティブラストが発射される・・・・・・

 

 

「アキトさん!」

「メグミちゃん!ダメだよ!!」

「アキトさん?」

「メグミちゃん、ダメだよ!俺たちは、まだ高校生じゃないか!!」

 ゴーン

 何処かで・・・・・・鐘が鳴り響いた・・・・・・



「あれ?」

 唐突に教室の映像が消え、エマージェンシーコールが鳴り響いた。

「どうしたんだ?一体」

「知りません!!」

 メグミは不機嫌そうにそう言った。

 アキトには、メグミが不機嫌な理由が分からなかった。

 

 

「何を考えているんだ!!」

「ユリカ〜、なんであんな事をしたんだい?」

「全くもう!わざわざ敵をおびき寄せちゃって!!」

「損害の少ない作戦だったのに、これじゃあ一体どれだけの損害が出ることだか」

 ユリカはゴート、ジュン、エリナ、プロスペクターからの熾烈な攻撃(口撃)を受けていた。

「ふみゅう」

「誤魔化そうってったって、そうはいかないわよ!」

「だって・・・だってだって・・・だってなんだもん」

「キューティーハニーの真似して誤魔化すんじゃない!!」

「ほえ?キューティーハニーってなんですか?」

「そんなもの、どーでもいーわよ!」

 ってゆーか、なぜあんたがんなもん知ってる?

「で、一体この始末はどう付けてくれるわけ!?」

「うう・・・・・・」

 そういえば、ムネ茸がいない。

 Dがブリッジにきているので、どこかへ行ってしまっているのだ。

 何てったって、ムネ茸はDが嫌いだ。苦手だ。

 尤も、誰もムネ茸がいないことなんか気付いてないし、気付いていても、気にしてなんかいないが。

 ・・・・・・ユリカへの説教は続く。

 何時になったら、エリナは説教をやめるのだろうか?

 そんな疑問がクルーの脳裏をよぎり始めたとき、ついにプロスペクターがエリナを止めた。

「まあまあエリナさん、そのくらいにして」

 さすがに、やりすぎだと思ったらしい。



 そして、なんだかんだでこれからどうするかが決まる。

 リョウコ、ヒカル、イズミがバッタたちを捌き、アキトが親善大使の救出に赴くことになった。

 Dは、オメガが不調なので、サレナが動かず、出られない。

 イツキは何故か手首を捻挫して(理由:ヤマダを素手でボコ殴りにしたこと)、安静にしていなければならないので、出られない。



 ------アキトが発艦する少し前------

「おい、アキト」

「ん?なに、D」

「いやな、お前には伝えておこうと思うんだが・・・・・・

 親善大使は人間じゃないぞ」

「は?」

「なに、ちょっと調べたんだがな、なんせ、キノコのことだから気になってな。

 そうしたらな、その親善大使とやらは、シロクマらしいんだよ。これが」

「シロクマ・・・・・・っすか・・・?」

「そう。シロクマ」

「・・・・・・マジ?それ」

「マジもマジ。本気と書いてマジだ」

「うっわー、きつー」

「まあそういうわけだから」

「分かりました。

 それじゃあ、アキト、出ます」

 そうして、アキトは親善大使救出に行った。





「うわ〜、ホント、視界がないな〜」

 アキトは、そんなことをぼやきながら飛行していた。

 親善大使(シロクマ)を探しながら。

 勿論、生命反応を手掛かりにしている。

「ん?なんだ?」

 生命反応ではないが、何かアキトは光を見たような気がした。

 ただ、何となく嫌な予感がしたので、アキトは飛行コースから少し外れた。

 すると、今までアキトがいた場所を、光が貫いた。

「ひえぇ〜〜、危なかった〜」

 アキトは光を放った相手を確認した。

 それはやっぱり木星の無人兵器だった。

 しかも、新型、あるいは火星のヤツと同じで、こういった地形に特化したタイプの。

 アキトは、その無人兵器に対して攻撃を敢行する。

 しかし、ブリザードで視界が悪いため、ちっともライフルの弾は当たってくれない。

「くっそ〜、もうちょっと視界が良ければ・・・・・・

 ! そうだ!」


 今回は、Dとの訓練が功を奏したのか、あんなギリギリの状況にはならず、ライフルのマガジンを打ち抜いて明かりにすることを思いついた。


 アキトの投げたマガジンが空を舞う。

 アキトは、それをDとの訓練で身につけたなかなかの精度を誇る射撃で打ち抜いた。

 爆光が辺りを照らす。

「よし、行け(逝け?)ぇええ!!」

 ズダダダダダン!

 銃弾が空気を引き裂く。

 ガシン、ガシィィ!

 無人兵器の装甲を、アキトの放った弾が削り取る。

 そして、その銃弾の中の一つが、ついに無人兵器の装甲と装甲の継ぎ目に飛び込んだ。

 一回、小さな爆発が巻き起こる。

 それから一瞬の間を置いて、

 ドガガァァアアアアアァアァァンン!!!

 無人兵器は巨大な炎の塊と化し、ブリザードの強大な力を有する風の中に掻き消える・・・・・・

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 アキトは暫く肩で息をした。

「・・・・・・親善大使(シロクマ)を探さないと」

 アキトは、シロクマ探しへと戻った。





 本星への報告書9-前

 執筆時間4時間弱の作品・・・・・・完結してなかったりする。

 これから「後編 結婚式・・・ですか・・・編」を書き始める。

 いちおーそーゆーわけだから、次回予告は書いておりません。

 ところで、8話のあとがきでも8話後日談のあとがきでも書き忘れたことを一つ。

 ヤマダが緊急信号を出したのに、D機からの緊急信号を確認した理由です。

 Dがいた未来に於いて、ブラックサレナMk−Uと、ユーチャリス改には、ある特定の周波数の通信を、増幅して、これまたある特定の受信機に対して送るシステムが搭載されています。

 ・・・・・・これは、ユーチャリス改に搭載された通信傍受・撹乱システムが容量を取りすぎてしまったために、送信機が、小型のパワーのないモノになってしまったので、それを二つの増幅システムで増幅し合うシステムを載せることで解決したからです。

 そして、ヤマダの緊急信号が、サレナを通してナデシコに送られたために、こんな事が起こったのです。

 まぁ、そういうわけなんで。

 感想メールお待ちしてまーす。
本星への報告書9-前 終

 

 

 

 

 

後編に続く