Act.0 もう一つの出会い
 
 2184年2月26日午後6時35分


 天河 和人は、ネルガルユートピアコロニー支社にいた。


 月に一度の、データではなく紙による、支社長・遙秀雅への、成果報告の日だからだ。


 ネルガルユートピアコロニー支社とは名ばかりで、実質的に、日本にある本社に次ぐ位置にある。


 そこで為されている研究。


 その価値が、ユートピアコロニー支社の地位を高めていた。


 そしてまた、自然とそこの支社長は、実力者が派遣されることになる。


 そのため、重役たるハルカ ヒデマサが、支社長を務めているのだ。


 カズトは報告を終え、帰路に就いていた。


 社長室から出、かなり複雑な造りになっている階層をエレベーターに向かって歩いていた。


 そして、曲がりくねった廊下の角を曲がろうとしたとき、 


 ドン

 
「きゃあっ」


「おっと」


 一人の女性とぶつかった。


「いったぁーい」


「どうもすみません」


 カズトは謝りながら、尻餅を付いた女性の手を引いて、起きるのを手伝った。


 綺麗な黒髪に、ほんの少し混じった白髪。


 だが、その白髪さえ、黒髪のアクセントに過ぎないほどの、綺麗な髪。


 意志の強さを感じさせる、大きな、綺麗な透き通った瞳。


 顔立ちも良く、間違いなく、美人だった。


 そして和人は、思わず彼女に見とれた。


「ありがとう。

 優しいのね」


「あっ、いえ・・・・・・

 僕の責任ですし」


「そう。気取らないところが良いわね。

 そう言う人、好きよ」


「えっ・・・・・・(頬がうっすらと赤く染まる)」


「なーんてね、冗談よ。

 でも、本当にありがとう。

 私は遙 美波よ。

 縁があったら、また会いましょう」


「僕は天河 和人です。

 それでは、縁があったら、また」


 そうして、2人は別れた。








「父さん、父さんは『テンカワ カズト』って人のこと、知ってる?」


「藪から棒に、なんだね、美波」


 ここは、ハルカ家の一室、ヒデマサの書斎。


「え、ちょっと、気になって・・・・・・

 ほら、今日、社長室に行く途中にちょっとしたことで知り合ったんだけど・・・・・・」


 頬を、ほんのりと染めて、ミナミは言った。


「はぁ・・・・・・

 また悪い癖かね?

 そのお陰で優君と結婚して、結局離婚したというのに・・・・・・」


「しょうがないでしょ、父さん。

 私が惚れっぽいのは、昔っからなんだから」


「まあ、それもそうだがな。

 ・・・・・・ふぅ、それでカズト君のことだったね?

 カズト君は、優秀な科学者だ。

 彼は、プロジェクトBJ、プロジェクトNDの研究主任を務める男。
           ・ ・
 そして・・・・・・アレを発掘したときに、プロジェクトLCの研究主任ともなる。

 その能力は高いが、プロジェクトBJについて、少々会長と揉めていることがある。

 そのため・・・・・・立場は、少々不安定だ。

 だが、彼には息子がいるから・・・・・・・・・

 そのことでも、また揉めている。

 ・・・・・・って、どうした、ミナミ?」


「息子・・・・・・息子がいるの・・・・・・?

 それじゃ・・・・・・彼は既婚者?

 そんな・・・・・・そんなことって・・・・・・・・・

 なんで?なんでなの!?
 
 どうして運命はこんなにも残酷なの!?」
 

 ヒデマサは、ミナミを三白眼で見た。



 ・・・・・・気持ちは、痛い程良く分かる。



 某艦長を彷彿とさせる彼女に、ヒデマサは言った。


「それでだね、カズト君の妻・・・・・・明奈君は、4年前に亡くなっているんだよ」


「え!?

 本当!?」


「こんな事で嘘を付いてどうするんだね。

 本当のことに決まっているだろう」


「そう・・・そうなの。

 それじゃぁ・・・・・・・・・」


「まぁ、一応応援しておくよ。

 あ、それとだね、カズト君の息子の名前は『明人』。『テンカワアキト』だ。

 ミナトより4歳下の、6歳・・・・・・いや、今日が誕生日だとカズト君が言っていたな。

 だから7歳か。

 それと・・・・・・」


 ヒデマサがA4サイズの茶封筒を取り出した。


「これを渡しておこう。

 ささやかなプレゼントだよ」


「これ・・・は?」


「見てのお楽しみ、と言っておこうかね」


 早速中身を見たミナミは、ヒデマサに笑いながら滂沱の涙を流し、礼を言った。


 茶封筒の中身は・・・・・・・・・


 カズトの個人データだった。













機動戦艦ナデシコif
AnotherNADESICO
第1話 「祝言」














 
2186年3月24日
 
Act.1 宣言
 
天河 和人宅
 
 突然だがカズトはアキトに宣言した。

「アキト、事後承諾で悪いが、父さん、今度再婚することにした」


 アキトは暫く、カズトの言葉を理解できなかった。


 そして数十秒後、やっと口を開いた。


「は?」


 口からでた言葉はそれだけだった。


「だから、父さんは今度再婚する、と言ったんだ。

 相手はハルカ ミナミさんという。

 いい人だよ。

 ミナミさんは旦那さんと別れて5年経つそうでね、アキトより・・・3歳上の娘さんがいるんだ。

 仲良くするんだぞ」


「う、うん・・・・・・・・・」


 アキトは未だ、よく状況が飲み込めていなかった。


 ただ単に、


(・・・ハルカ?

 どこかで聞いたような・・・・・・・・・)


 とか思ったりするだけだった。


 よく、どころか、完全に飲み込めてないのかも知れない。









 
秀雅宅
 
「ミナト」


「何?母さん」


 自室で美紗緒から借りた少女漫画雑誌『うるるん』を読んでいたミナトに、ミナミが声を掛けた。


「ミナト、事後承諾で悪いんだけどね、母さん、再婚することにしたの」


「ふ〜ん」


 うるるんを読みながら返事した。


「・・・『ふ〜ん』、って、驚かないの?」


「まあ、母さんだし。

 いろいろと不条理なことやってくれたからね。

 それに、母さん1年前ぐらいから、男の人とお付き合いしてたみたいじゃない。

 それぐらい分からない母さんの娘じゃないわよ」


 顔を上げ、にっこりと微笑みかけた。


「くすっ、それもそうね。

 あ、それとね、相手はテンカワ カズトさんという方よ。

 カズトさんにも私と同じように、お子さんがいらっしゃるから、仲良くね」


「んー、努力はしてみるわ」


 再び、うるるんに意識と視線を向けた。


「それじゃね」


 ミナミが部屋から出ていった。


 それからミナトは、小さな声で呟いた。


「テンカワ・・・・・・か。

 ・・・・・・まさか、ね」














 
Act.2 顔合わせ
 
2186年3月30日
 
テンカワ 和人宅
 
「おーい、アキト。

 準備は出来たか?」


 一張羅のスーツを着たカズトが、アキトを呼んだ。


「はーい、ちょっと待ってー」


 アキトは自室でネクタイを四苦八苦しながら付けていた。



 ・・・・・・小学生が良くもまぁ・・・・・・・・・



 何だかんだで2、3分後、アキトはネクタイを締め、玄関に降りてきた(家は二階建て)。


 どうして一人で出来たのかは謎である。


「よし、それじゃあアキト、行くぞ」


 2人は家を出た。









 
秀雅宅
 
「ちょっと母さん、まだなの?」


 呆れ気味の声を、ミナミの部屋の入り口に立つミナトが発した。


「もーちょっと、待って!」


「さっきから何回言ってるのよ、もう・・・・・・」


 ミナミは、丁寧に丁寧に、化粧をしていた。


 数分して、


「お待たせっ、ミナトっ!」


 白いスーツに身を包んだミナミが、障子を開けて出てきた(ミナミの部屋は和室)。


 そして2人は家を出た。












 
同日11時00分、料亭『玉簾(たますだれ)』
 
 高級料亭『玉簾』の離れの一室に、2人の男がいた。


 一人は火星に名だたる科学者天河 和人。


 もう一人はその息子の天河 明人。


 今日は、カズトの再婚相手との顔合わせに来たのだ。


 これで、アキトか、再婚相手の遙美波の娘が馴染まなければ、お流れになることになっていたりする。


 それは、カズトとミナミが相談して決めたことだ。


(あ、そうか。

 ハルカ、って聞いたことあると思ったら、ミナトさんの名字だ。

 でも・・・・・・まさか、ね)


 アキトがそんなことを考えているときだった。


 ガラッ
 

 と障子が開き、離れに2人の女性が入ってきた。


「遅れました」


 入ってきたのは、こざっぱりとした白いスーツを着た女性と、青いワンピースを着た少女だった。


「「あ」」


 女性と少女が入ってくるなり、アキトと少女は全く同じタイミングで言った。


「「何でミナトさん(アキト君)がここに!?」」










「なんだ、2人とも知り合いだったのか」


「それじゃあ話が早いわね」


「ミナトちゃんは愚息のこと、嫌いかな?」

 
「愚息、って・・・・・・」
 

 アキトがちょっと闇を背負うが、誰も気にしない、って言うか気づかない。


 ミナトは、カズトの言葉に、


「ううん、私はアキト君のこと、好きよ。

 かわいいし、何より良い子だから」


 アキトがその言葉を聞いて、


 ぼんっ

 
 顔を真っ赤に染めた。


 そんなアキトを見たミナトが、


「アキト君、どうしたの?」


 しっらじらしい! 小悪魔的な笑顔浮かべてるぞ。


「え、あ、いや、何でもありません」


 顔が真っ赤じゃ説得力がないぞ。


 ミナトはそのアキトに抱きついた。


「いや〜〜ん、かわいいよぉ〜〜〜」


 頬ずり頬ずり


「やっ、やめっ、やめてくだ、さい、ミナトさん〜〜」


 2人を横目に、


「これなら大丈夫だね」


「ええ。2人とも、仲良いみたいね。

 安心してカズトさんと結婚できるわ」


















 同年4月3日、天河 和人と遙 美波は結婚した。

 天河 和人35歳、遙・・・・・・いや、天河美波、34歳の春であった。




















 裏切り者(?)の手記

 今日、届いた手紙を見た。

 恐る恐る中を見てみたが、爆発物や白い粉(又はその仲間)ではなかった。

 届いた手紙の内容は、オレへの怨唆の手紙などではなく、仲間内での会合の件だった。

 だが、もし、手紙が爆弾だったりウィルスだったりしたら、




































 SSが書けなくなってしまうところだった!
 





 ・・・・・・・・・・・・と、言うわけで改めて、













 「裏切り者(?)の手記」改め後書き
 
 裏切り者(?)とは、つまり僕のことだったわけですね、

 ナデシコキャラ(又はこれに出てくるオリキャラ)ではなく。


 え?何で僕が「裏切り者(?)」かって?

 そんなこと、決まってるじゃないですか。

 僕は何を隠そう

 イツキを一分以上出せ!組合副会長兼戦闘部隊隊長兼暗殺部隊隊長ですよ?
 
 それなのに

 ミナトSS書いてるんだから!
 
 これが裏切り(?)行為じゃないとしたら、一体何なんですか?
 


 さて、それはそうと、気が付けばこれってもう第54作目なんですよね、数え間違いでなければ。

 いやー、時が経つのは早いもので、僕が投稿作家になってからもう半年ほどが経ちました。

 今まで続いてきたのも、ひとえに読者の皆様、そして管理人様・代理人様のお陰です!



 それでなんですがね、唐突なんですが、これから暫くの間、投稿スピードがガクンと落ちます。

 何故なら、ついこの間買った『レベ○オン炎を背負う少年達』に入っていたチラシ(?)に、

 第9回電撃ゲーム3大大賞募集要項なる物があったんですね。

 そいで、本気で作家になりたい僕としては、今まで暖めてきたオリジナルの小説を投稿用ではなくきちんとした形で書くわけで、そのために投稿SS書く時間が少なくなるわけです。

 そう言うわけですので、よろしくお願いします。


 応援してね!



 あ、できることなら、管理人様・代理人様、この後書きにつっこみ下さい。





PS
 フルメタの方に書いた「ちょっとしたこと」とは、第9回ゲーム三大大賞募集の件です。



 じゃっ!

 

 

 

代理人のつっこみ

 

細かい事を気にするな。

ハゲるぞ。

 

 

こんなものでどうでしょう(笑)。