Act.0 朝の出来事
 
「「ふあぁ〜〜、あ・・・・・・」」


 突然だが、カズトとミナミは黄色い太陽と挨拶した。

 何故、などとは聞かないで、察してやって欲しい。

 ・・・・・・彼らは、夫婦なのだから。

 まだ籍は入れてないけど。

 そして事件は起こる。

 カズトとミナミの鞄が、引ったくりされたのだ。

 火星の一都市、コロニーエデンでの出来事だった。





 コロニーエデンの一角にある宙港に向かって、メインストリートを歩いていたときだった。


「あっ、この服可愛いっ!」

「え、どれどれ」


 ブティックの前で立ち止まる2人。


「ほら、この服」

「ああ、これ。

 うん、ミナミに似合いそうだね。

 ・・・・・・買う?」

「・・・・・・買って、くれるの?」


 上目遣いにカズトを見るミナミ。


「ああ、もちろんさ」


 そんな会話をしている2人に、1人の男が飛びかかってきた。


 バッ


「あっ、何をする!」


 カズトが持っていたアタッシュケースが引ったくられたのだ。

 犯人の男は、猛然と駆け去る。


「待てっ、ドロボーーっっ!!」

「それにはパスポートや旅券が入ってるのぉーーっ!」

「出発は1時間後なんだぁーー!」

「お願いだから返してぇぇーー!!」


 カズトもミナミも必死で追い掛けたのだが、引ったくり犯は捕まらなかった。










 チュン・・・・・・チュン・・・・・・チュン・・・・・・


「う・・・・ん・・・

 う〜〜ん・・・・・・」


 小鳥のさえずり声で、ミナトは少女漫画チックな(第二土曜の)朝を迎えた。

 フカフカのベッドの中で目を開け、少しの間ボーっとする。


「ふぁ、ふあ〜〜あぁ」


 それから、大きなのびをしながら欠伸をする。

 低血圧気味なので、またそこでボーっとする。

 そしてやおら、


 パチッ


「おしっ、起きるか!」


 頬をはたいて、ベッドから飛び起きる。

 それから、タンスから洋服を取り出し、着替え始める。

 白地にピンクのチェックのパジャマを脱ぎ、シンプルな子供らしい下着姿となる。

 胸は、付けるほどのものではない。


「余計なお世話よっ!」


 そして薄手の白いシャツを着ようとしたとき。


 ーー コンコン


 ドアを叩く音がし、ミナトが答える間もなく、


 ガチャ


 と、ドアが開く。

 そしてそこにいるのはーーー


ーーー あ」


 血の繋がらない弟、テンカワ アキト(八歳)だった。
 






 
機動戦艦ナデシコif
AnotherNADESICO
第3話「別離」









Act.1 サヨナラ……
 
 事故というものは起こるべくして起こるものである。

 ミナトの着替え中にアキトが部屋に入ってしまうのも、当然起こりうる事故だった。

 そのことはミナトも分かっていた。

 しかし、それでも・・・・・・


「・・・・・・アキトくぅ〜〜ん・・・・・・」


 絶対零度の声だった。

 多分、バラで釘が打てる。
 

「あ・・・い、いや、そ・・・そそ、その、こ、これは・・・・・・」


 アキトがしどろもどろに何かを言おうとしたとき。


 バタムッ
 

 玄関のドアが開き、


 ドダダダダダダダ・・・
 
 階段を駆け上る音。

 そして。

 
「アキトおぉぉぉぉぉーーー!!」
 
「アキト様ぁぁぁぁぁぁーー!!」
 

 という、耳を劈くような轟声が聞こえた。

 それは、幼馴染みの少女達の声だった。


「・・・・・・?

 ユリカとカグヤちゃん?」


 アキトが呟いた次の瞬間。


 ドゴォッ!
 

 ・・・・・・閉じかけていた扉が吹き飛ばされた。


 っぱりいぃぃぃぃぃんん!!
 

 でもって、その扉は窓を割って飛び出て、


 キラーーン
 

 お星様になった。


「「・・・・・・・・・・・・」」


 それを見て茫然とする2人。

 そのアキトにユリカとカグヤが抱き(飛び)付く。

 
「「アキトぉ(様)、聞いてよ(下さい)!!
 
 ユリカ(わたくし)お父様の都合で地球に・・・・・・」」
 

 と、そこまで言いかけたところで、

 
「「って、何やってるの(ですか)、アキト(様)っっ!!\(>_<#)/\(>_<#)/」」
 

 べしぃっ!
 

 世界を狙える、強烈な鉄拳がアキトにクリーンヒット。

 
「ひでぶぅっ!」
 

 アキトは吹っ飛び、窓から落ちた。





 ところで疑問。

 何故2人は、アキトがミナトの部屋にいると分かったのだろうか?

 
「アキトの匂いがしたから!」
 

 ・・・・・・犬?
 
 
「アキト様の気配がしたからですわ!!」
 
 
 ・・・・・・武術(闘)家?
 



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ・・・・・・・・・・・・


 ・・・・・・



 数分後、リビングルームにて。


「で、一体どうしたわけ、2人とも」


 怒ってそっぽを向いているアキトの隣で、ミナトが聞いた。

 口調は、やはりどこかぞんざいだ。

 もちろん、服はちゃんと着ている。

 2人は、俯きながら、小さな声で、だが、しっかりと2人に聞こえる声で言った。


「・・・アキト、ユリカとカグヤちゃんね、アキトとお別れしなくちゃいけないの」

「・・・・・・!」


 そっぽを向いていたアキトが、身を固くした。


「それ・・・どういうことなの?」

「わたくしも、ユリカさんも、お父様の都合で地球に行かなくてはならなくなったんですの・・・・・・

 出発は、明日。

 次のシャトルだったらお義父様にもお義母様にも挨拶が出来たのですが・・・・・・。

 ・・・・・・もちろん、それよりもずっとアキト様のお側に居られた方が良いのですけれども・・・・・・」


 一旦顔を上げたカグヤだが、それだけ言うと、再び目を床に落とした。





 ユリカは、最初の言葉の後、アキトが作った昼食の合間も、夜の帳が降り、迎えの者が来るまで、ずっと黙りこくっていた。










 翌日、時間ぎりぎりまで、ユリカとカグヤは、アキトを始めとする幼馴染み達と遊んだ。





 午後二時頃。

 
「あきとぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 
「アキト様ぁぁぁぁぁぁ!!」
 

 2人の少女の叫び声が、その旅客機の一個室に響き渡った。


「こら、ユリカ、静かにしなさい!」

「カグヤ、静かにせんか!」


 その父親が注意するも、2人は少しも静かにしない。

 その2人を、カグヤの家の執事頭のミヤオカと、同じくメイド頭のヨツハが弁護する。


旦那様!

 お嬢様のお気持ちも考えてください!」

「う・・・うむ?」

「旦那様方もよく御存知でしょうに。

 大切な方と離れることの辛さを!」

「「う・・・うむ・・・・・・」」


 唸りながらも、


「し、しかしだな」


 反論を試みようとするが、


「・・・・・・・・・バラしますよ?
 

 ユリカの父ミスマルコウイチロウと、カグヤの父サカキ・オニキリマルに、反論するすべはなかった。

 というか、サカキにいたっては、ある意味反論は『死』と同義語。
 
 しかし、この親父2人は失念していた。

 そこが個室で、この6人+ミヤオカの部下のSS(シークレット・サービス)2人の、計八人しか居なかったことに。

 そしてその個室がVIPルームであることも。

 訳:人間の声量の範囲内ならば、いくら騒いでも周りに迷惑をかけない。

 ・・・・・・人間の範囲ならば、ネ
 





 ゴオオォ・・・・・・
 
                                                    シャトル
 アキト、ミナト、イツキ、ガイ、ミサオ、はるかの四人が見送る中、ユリカとカグヤが乗る航宙機は飛び立っていった。

 一路、青き水の惑星【地球】を目指して・・・・・・


「・・・・・・行っちまったな、あいつ等」


 ガイが感慨深げに呟いた。


「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・寂しく、なるわね・・・・・・・・・」

「そうね。 また会えるかな・・・・・・

 (会えない方が良いに決まってるけど、ね)」

「あーあ、ユリカちゃんともカグヤちゃんともお別れか・・・・・・。

 ほーんと、寂しくなるなぁー・・・・・・」

「でも、きっとまたどこかで会えると思うわよ。

 クスッ・・・

 私のこういう予感って、結構当たるのよ?」


 ガイの言葉に、アキトは沈黙、ミナトとミサオは感じたことをそのままに、イツキは建て前と本音、はるかはある人にとっては不吉な予(預)言(?)で答えた。


                     シャトル
 二十分ほど経ち、今度は一機の航空機が宙港に向かって、その高度を下げてきた。

 そのシャトルに、アキトとミナトの父、カズトとミナミが乗っているはずだった。


 ドゴオオォォォォォォン・・・・・・
 

 何の前触れもなく、そのシャトルが空中で爆発した。


「え・・・・・・・・・?」

「嘘・・・・・・でしょ・・・・・・・・・」


 アキトとミナトは、茫然と呟いた。

 他の四人は、口にする言葉が見つからなかった。


 ツーーー
 

 アキトの目から、ミナトの目から、一筋の光が生まれた。

 その光は、頬を伝い、一粒の滴となって、地面に吸い込まれた。

 涙で変色した、舗装された灰色の道に、2人は座り込んだ。


「はは・・・はははは・・・・・・嘘、だよな・・・・・・

 シャトルが・・・爆発したなんて・・・・・・嘘、だよな・・・・・・・・・」

「ねえ、嘘よね・・・・・・

 お母さんとお義父さんが乗ったシャトル・・・・・・ちゃんと、着陸したのよね・・・・・・

 爆発なんて・・・・・・してないわよね・・・・・・・・・」


 2人は、壊れたかのように、静かに、嗤った。

 ・・・・・・・・・狂笑。

 その言葉が2人に似つかわしい。

 その言葉に2人が似つかわしい。

 2人は・・・・・・

 嗤い続けた・・・・・・

 いつまでも・・・・・・

 いつまでも・・・・・・















Act.2 決意

 その日の午前十時。

 テンカワ家には、一本の電話が入った。

 しかし、その時、アキトもミナトも、ユリカ達と外に出ていた。


『ただいま留守にしております。

 ご用の方は、“ピー”という音の後に、御用件をお言い下さい』


 ピーーー


『アキト、ミナト。 父さんだが。

 パスポートや旅券の入った鞄を盗まれてな。

 今日、帰れない。

 今、再発行の手続きをしているから、どんなに遅くても一週間後には帰るからな』

『ミナト?アキト?

 元気にしてる?

 カズトさんの言ったとおりだから、ちゃんとしてるのよ』

『それじゃあ、また』





 その時夫妻は、テレビを見ていた。

 もう帰りのシャトルに乗っているはずだったのだが、旅券もパスポートも盗まれてしまったのだから仕方がない。

 探しまわったが、犯人は見つからなかった。

 窃盗届けを警察に出しもしたが、三時間は短すぎた。

 仕方がないので、夫妻はコロニーエデンにとりあえずもう一泊(多分、もっとすることになる)することにした。

 そしてぼんやりとニュースを見ていると。


『・・・・・・続きまして、テロ事件の続報です。

 乗客員名簿から、事故の犠牲者は、乗務員十八名を合わせて、三百二十七名。

 ・・・被害者の名簿が届きました。

 コロニーエデンの朝美・ラーフィルさん(32)主婦

 同じくアースランド・ラーフィルさん(35)会社員

 ケイト・ラーフィルちゃん(6)

 ・・・・・・・・・・・・』


 そして、


『ユートピアコロニーのエミル=ファーランドさん(22)フリーター

 同じくテンカワ カズトさん(35)会社員・科学者

 テンカワ ミナミさん(34)会社員

 名取 満さん(62)自由業

 ・・・・・・・・・・・・』


 カズトもミナミも、固まった。


「・・・・・・・・・何で、俺が・・・・・・?」

「・・・・・・私も・・・・・・乗ってないのに・・・・・・・・・」


 ほんの少しの間考え、カズトが言う。


「・・・あの時鞄を置き引きした奴が乗ったのかも知れない。

 そいつから買った奴かも知れないが・・・・・・」

「・・・・・・私たち、運がよかった・・・・・・・・・のかしら」


 その問に答えられる者はいなかった。



 数分後、呆然としていた2人ははっと我に返った。


「そうだ、アキトたちと義父さんに連絡しないと!」


 言うが早いか、カズトは備え付けの電話を取る。

 素早く指がテンキーの上を舞い、


『むっ、誰だね』

「こんにちは、お義父さん」


 ヒデマサに電話を繋ぐ。


『カズト君かっ!?

 今、確かにニュースで・・・!?』

「はい。 そのとおりです。

 ですが、僕たちは乗っていなかったんです。・・・あのシャトルには」

『・・・一体どうして』

「置き引きです。

 パスポートや旅券を入れていた鞄を盗まれました。

 ・・・・・・そのおかげで命が助かったというのは、皮肉なものですけどね」


 画面の中のヒデマサは、どこか窶れたように見えた。

 だが、それは気のせい。

 実際に窶れてはいない。

 しかし、纏っている雰囲気が、彼をそう見せていた。


『・・・・・・・カズト君』

「はい。」

『・・・ミナミと一緒に、死んだことにして身を隠しなさい。

 場所は儂が用意する』


 カズトとミナミは、顔を見合わせた。


「どういうことなの、お父様」

『・・・・・・・・・』


 ミナミの問い掛けに、しばし黙考する。


『・・・・・・あれは、テロ事件と報道されているが、実際には違うような気がするのだ。

 昨日の遅く、ネルガル本社から連絡があった。

 プロフェッサー・テンカワの、抹殺を決定した、と』

「「・・・・・・!!」」


 2人の顔色が変わった。


「・・・・・・それは、やはり、ボソンジャンプの・・・・・・・・・?」

『ああ、そのとおりだろうな。

 会長はボソンジャンプの独占しようとしている。

 公開派の君は、会長には邪魔な存在だからな』

「・・・・・・分かりました。

 いいな・・・・・・ミナミ」

「ええ。 でも・・・・・・」

『分かっておる。

 ミナトもアキト君も、儂が責任を持って育てよう。

 そういえば・・・・・・2人に連絡は入れたのか?』


 ヒデマサの言葉に、


「10時頃に・・・・・・

 これからもう一度連絡を入れます」

『・・・・・・2人には儂からその旨を伝えておこう。

 さて、それから身を隠す場所だが、丁度具合のいい場所がある。

 ヘブンズコロニーの東区域だ。

 あそこは、つい一ヶ月ほど前に行政施設がテロにあったからな。

 幸か不幸か、そのおかげで住民データが失われている。

 簡単に潜り込むことができるだろう』


 ヘブンズコロニーは、無差別テロにより、行政施設、並びに連合軍の軍事施設の一部、そしてネルガルや明日香インダストリーなどの研究所に被害が出た。

 住民データのほとんどが失われ、今再登録を行っている。

 今ならば、比較的簡単に潜り込むことができるのは間違いない。


『移動手段他の一切は儂が用意する。

 遅くとも四、五時間後にはそこに迎えの者を派遣しよう』

「・・・分かりました」

『・・・・・・・・・。

 達者でな、ミナミ、カズト君・・・・・・』

「・・・・・・はい。 お義父さんもお元気で・・・・・・」

「・・・父、さん・・・・・・さよなら・・・・・・・・・」


 ヒデマサは一度頷き、その画像が消えた。










 6時間後、ヘブンズコロニーで、テンカワ夫妻によく似た、一組の夫婦が見かけられたという。















 はるかやミサオ、イツキ、ガイは、アキトとミナトを慰め、励ましながら、2人を家まで連れて行った。

 2人とも、目は開ききったまま、涙を流しながら壊れたかのように嗤い続けていた。

 ・・・・・・いや、実際壊れていたのかも知れない。

 とりあえずその2人をテンカワ家のリビングルームに連れ込む。


「・・・私、ちょっと家に電話してくる」


 はるかがそう言って、同じ部屋にある電話機の所へ向かう。


「あれ、留守録・・・」


 電話機には、メッセージが2つ残されていた。


「なんだろう、これ。

 ・・・・・・ま、いいか。 聞いてみよ」


 そう言って、メッセージを再生する。


『アキト、ミナト。 父さんだが。

 パスポートや旅券の入った鞄を盗まれてな。

 今日、帰れない。

 今、再発行の手続きをしているから、どんなに遅くても一週間後には帰るからな』

『ミナト?アキト?

 元気にしてる?

 カズトさんの言ったとおりだから、ちゃんとしてるのよ』

『それじゃあ、また』

「・・・これ・・・・・・!」


 はるかが、叫んだ。

 
「ミナト!アキト君!お父さんとお母さん、生きてるわよ!」
 

 その声を聞いた瞬間、2人の顔に生気が甦った。

 青白い、いわば死相の浮かんだ顔に、朱が入った。


「お父さんとお母さん、チケットとパスポート盗まれて、あのシャトルに乗ってなかったんだって・・・・・・」


 2人は、泣いた。

 笑いながら。

 今度は、先程までの壊れた嗤いではない。

 心の底からの、歓喜の、笑い。


「生きて・・・・・・るんだ・・・・・・

 父さんと・・・・・・義母さん・・・・・・」

「良かった・・・・・・良かった・・・・・・・・・、本当に・・・・・・・・・」

「・・・・・・それと、もう一つメッセージが入ってるわ。

 とりあえず、聞いて。

 ・・・何でもないものかもしれないけど、ね」


 もう一つのメッセージを再生する。


『・・・ミナト、アキト君。

 ヒデマサだ。 ミナミの父親の。

 ・・・・・・2人は、テロには巻き込まれていない。

 2人が死んだとニュースなどでも報道されていたが、2人とも、生きている。

 このメッセージを聞いているということは、そのことはもう分かっているとは思うがな。

 2人は、ネルガルの陰謀で殺されかけた可能性が高い。

 ネルガルのあるプロジェクトに関して、会長と対立していたからな、会長にはカズト君が邪魔だったのだよ。

 ・・・・・・実際、儂の所にも、夫妻を暗殺するという連絡が入っていた。

 だが、2人は生きている。

 彼らが、カズト君が生きていることを知ったら、今度こそ、確実に殺されるだろう。

 だから・・・・・・ミナトとアキト君には本当にすまないが、2人は死んだことにし、あるコロニーに移り住んで貰うことにした。

 ・・・・・・・・・本当に、すまない。

 ・・・・・・2人は、これからどうするつもりだ?

 うちに来るか、それとも、2人で生きるか。

 その年で決断するには辛いだろうが、察してくれ・・・・・・。

 ・・・・・・連絡を待っている』


 そのメッセージを聞いた2人の反応は、はるか達の予想とは違い、淡泊なものだった。


「・・・・・・そっか・・・・・・・・・」

「え・・・・・・?

 『そっか』って、それだけ?」

「・・・・・・何か?」

「いや、もっと悲しむものじゃないかなー、と」


 はるかの言葉に、ミナトもアキトも同時に微笑を浮かべ、言った。


「「2人とも生きてる、って分かっただけで充分(だ)よ」」

「(・・・・・・アキト君もミナト先輩も、強いのね。

 私だったら、きっと泣いちゃうと思うな)」


 イツキの持った、2人への感想。

 そしてやおら、


「ねえ、みんな。

 みんなはさ、将来の夢って、ちゃんと考えてる?」

「え? 何を藪から棒に」

「決まってんだろ、正義の味方!

 となりゃ軍人だ!!」(ガイ)

「私は・・・・・・・・・お嫁さん、かな。

 お互いに、支え合えるような」(イツキ)

「私は・・・・・・何だろ?

 とりあえず、現世利益最優先で」(ミサオ)


 ・・・・・・某GS?
 

「私も分からないな。

 でも、1人で生きていけるようにはなりたいわ」(はるか)

「私も、はるかと同じね。

 1人だけでも生きていけるようになりたいわ」(ミナト)

「ところでよ、アキト。

 ・・・お前また、何でンーなこと訊くんだ?」

「ん? 別に、何でもないよ。

 ただ・・・・・・今さ、自分が何になりたいのか分かったような気がして」

「じゃ、何になりたいの?」

「ガイと同じだよ。

 何も失いたくないから・・・・・・

 そのための力を手に入れられる、軍に・・・・・・」















Act.3 真紅
 
 ユートピアコロニーの宙港の近くの林、その大樹の太い幹に、1人の人間がいた。


「・・・・・・・・・任務、完了」


 ジーパンに、革ジャンという、どこにでもいそうな格好をした13、4歳の少年が呟いた。

 その手には、ミサイルがあった。

 正確に言うと、その抜け殻。

 もうミサイルはない。

 たった今発射したばかりだからだ。

 ターゲットの、シャトルに。

 そのミサイルは見事にシャトルの燃料積載部に命中し、大爆発した。

 生きている人間は、おそらく0。

 しかし、少年の顔には後悔や悔恨と言った感情は伺えなかった。

 ただただ、無表情なだけ。


「・・・・・・No.0(ナンバー・ゼロ)へ、No.13(ナンバー・サーティーン)、これより帰投する」


 襟に付いている高性能マイクが、その声を拾う。


『了解した。

 ・・・・・・・・・任務、ご苦労様でした』


 耳に直接つけている、超小型通信機から、女性の声がした。

 その声を聞き、少年が幹から飛び降りた。


 ザッ


 葉と服が擦れ、音を立てる。


 タッ


 軽やかな着地。

 そして彼は、その場から走り去った。















オリキャラ設定(その3)


No.0(ナンバー・ゼロ)♀
 ○本名は秘密。

 ○No.13の(建前上の)上司。

 ○そのうち出てきますので、詳しくはその時に。



No.13(サーティーン)♂
 ○本名は、まだ秘密。

 ○そのうち出てくるので、ま、お楽しみに。

 ○彼はヒイロ・ユイを元にしていますが、決して本人ではありません。
 









後書き
 まずは最初に、別人28号さんの許可の元、「湊はるか」、「サカキ」「ヨツハ」「ミヤオカ」は出演しております。

 ふう、書き終わった。


 ああ、それにしても前作までのほのぼのとした雰囲気が消え去ったな・・・・・・

 これから、またほのぼの路線に戻るけど。


 それではこの辺で。

 

 

代理人の感想

手持ちのミサイルって・・・・。

数百人乗りの飛行機を撃墜できるミサイルが手で持てるのか(汗)。

さすが200年後の世界だ(爆)

 

>ナンバー十三

・・・・性格と言いしゃべり方といい元にしているというよりまんまですな(爆)。