Act.0 ナンパ 

 とある平日の朝、午前8時頃。

 蔵人 醍醐はユートピアコロニーの一角を歩いていた。

 そして、ナンパに勤しんでいた。


「やあ、彼女。

 一緒にお茶しない?」


 答えは、


 ピシンッ


 という、澄んだ音。

 ちなみに彼の顔は、手形でいっぱいである。

 当然、赤く腫れた、ビンタの後である。

 ナンパした相手は、もう20人近いだろうか。

 一回、間違えてゲイの方をナンパして、危うくそちらの道に入ってしまうところだった。

 そして今、また1人の女性に声を掛けた。


「やあ、彼女。

 一緒にお茶しない?」


 声を掛けた相手は、3人のグループ。

 黒い、長髪の少女、黒髪のショートの少女、それから茶髪でショートの少女。








機動戦艦ナデシコif
AnotherNADESICO
第5話「疑惑」










Act.1 ・・・○○コン 

 唐突ではあるが、ここでもう一度彼、蔵人 醍醐の年齢を言おう。

 彼の年齢は現在19歳である。

 また、来月に20の誕生日を控えている。

 そして、ミナト、ミサオ、はるかは12歳である。

 ・・・・・・何故このようなことを書くかというと、だ。

 醍醐が今ナンパした相手はミナトだったからだ。 

 公式設定がどうだったのかは知らないが、少なくともこの『ANOTHER NADESICO』においては、キャラ設定は別人28号さんの物が優先される。

 となるとだ、ミナトは『幼児体型』というわけだ。

 悲しいことだが、それを自覚しているミナトはこう言った。


「・・・・・・アナタさ、ロリコン?


 ・・・・・・自分で言って、なんかミナトは悲しくなってきた。


「ふっ、心外だね。

 僕はただ、その君の青い肢体に惹かれただけだよ」

「そーいうのをロリコンって言うんだよ」


 と、ミサオの冷たい突っ込み。


「何を言っているのかな?

 その子の容姿からすれば、ロリコンじゃなくてアリコン(アリス・コンプレックス)さ」


 もっとヤバイやん、ソレ 


 3人ともそう思ったが、口には出さなかった。

 ちなみに、彼がナンパした二十人近くの方々は、ことごとく幼児体型だった。


「そ、それじゃ私たちはこれで」


 そうミナトが言い、全員逃げ出した。


「ふっ、照れ屋さんだね」

「あっ、あの人です、小さな女の子にナンパしてた人類のクズは!」


 通行人が警察を連れてきた。


「貴様、人類のクズめっ!

 逮捕してやるっ!!」


 粕谷 太一(カスヤタイチ)巡査は、醍醐に対して人間として至極当たり前な怒りを爆発させた。


「何故僕が逮捕されなければならないんだい!?」

「やかましいっ! 人類のクズがっ!!

 クズの分際で人間様の言葉喋ってんじゃねぇっ!!」


 ガチャリ


 醍醐、逮捕。

 罪状は『青少年保護条例違反』。 

 当然である。





「なぜだい?何故この僕がこんな留置場なんかに拉致監禁されなければならないんだい?」


 醍醐はそう呟いた。

 何故か、留置場には彼しかいなかった。

 とても・・・・・・寂しかった。

 寂しかったから・・・・・・・・・

 寂しかったから・・・・・・・・・

 寂しかったから・・・・・・・・・








脱獄した。















「もう! やんなっちゃう!!」


 醍醐から逃げて、道を爆走し、中学校の校門前で肩で息をしながら一言。


「全くよね、何だったんだろう、アレ」

「アリコンという人類のクズ」


 ミナトの言葉にはるかとミサオが続く。

 それを不思議そうに見ながら、1人の女生徒が近付いてきた。


「どうしたのー?

 ミナト、はるか、ミサオ」

「あ、ユウノ」


 栗色のロングヘアーに、赤いヘアバンドをした少々背の高い少女を、ミナトはユウノと呼んだ。

 彼女の本名は『虎狩 悠乃(モガリ ユウノ)』。

 第2話で、ミナトに名字について聞いたのは彼女だ。


「あははははは、ミナトがね、アリコン変態人類のクズ男にナンパされたの。

 あははははははは・・・・・・って、さすがに笑うコトじゃないよね」


 ポリポリ、と頭をかきながら、「アハハハハ」と笑う。


「アリコン・・・・・・・・・人類の敵ね。

 それでどうしたの? ミナトは」

「逃げたわ。 速攻で。

 逃げた後で、なんか後ろで騒いでたけど」

「そうそう、なんか『逮捕』とか、そーいう言葉がしてたよね」

「うん。 そうだったわね。

 それよりも、あんな人類のクズ、どうしてのさばらせておくのかしらね?」

「一応、アレでも『人権』というものが」

「人権について、一考の余地有りだと思うんだけど?」

「確かに、ね」


 それから、四人はクスクスと笑った。


 キーーン、コーーン、カーーン、コーーン

 キーーン、コーーン、カーーン、コーーン


 予鈴が鳴った。


「あ、早く行かないと」

「そうだね。 それじゃあ、また後で」

「うん、休み時間に」

「・・・・・・なんて、言ってる場合じゃないって。

 先生、来るのも出席取るのも予鈴なってすぐなんだから」


 ユウノの言葉に、慌てて走り出す。

 ミサオは、はるかの言葉も聞かずにもう走り去っている。










Act.2 自宅にて 

「ただいまーー」

「おかえりなさーい」


 ミナト帰宅。


「ねえねえアキト、聞いてよもぉ」

「どうしたの? 義姉さん」


 今は、午後5時半。

 アキトは、キッチンで夕食の食材を切るのを中断し、玄関に顔を見せる。

 キッチンと玄関はかなり近くにあり、それを仕切る布を潜ると、真正面にミナトの顔があった。

 あと2、3p顔を前に出せば、唇同士が触れ合うような距離だ。

 実際、アキトの顔に、唇に、ミナトが言葉を発し、息をする度にその少し甘い吐息がかかる。

 顔を赤くしながら、もう一度。


「だから、一体どうしたの?」

「・・・・・・今朝、学校に行くときに、アリコンを自称してる変態野郎にナンパされたの。

 それだけなら良かったんだけどね、下校するときに、また遭って追っかけ回されたの」


 「遭う」という言葉は、「主として好ましくないものに出会う」という意味である。※代理人注

 ・・・・・・まあ、相手は醍醐だし。


「それはそれは・・・・・・大変だったね」

「そうよ、大変だったのよ!

 でも、運が良かったわ。

 お巡りさんがそこを偶然通りかかって、

『貴様っ、人類のクズめっ!!

 性懲りもなく幼い少女を毒牙に掛けようとしやがって!!

 しかも脱獄までしやがって!

 両親は悲しんでるぞぉっ!!!』

 ・・・・・・って言いながら、逃げたその変態男を追い掛けてったの。

 清々したわ」


 いつの間にか、アキトの額と鼻に、自分の額と鼻を押しつけていた。

 アキトの顔は、まるで溶岩のように真っ赤で、煙を出していた。










Act.3 ミルキー・ウェイ 

 喫茶ミルキー・ウェイの朝は早い。

 普通の喫茶店は、午前十時頃からなのに、ここミルキーウェイでは平日は八時半、休日でも九時から営業を開始する。

 これは、営業の準備をする人手が四人いて、しかも全員がそこに住んでいるからだ。

 そして今は、平日の午前8時。

 昨日、ユートピアコロニーでは、どこぞのアリコン野郎がナンパをしまくっている時間である。


「ヒスイー、テーブル拭いてくれるー?」

「はーい」


 綺麗な翠の髪の女の子がホナミの言葉に返事し、洗い場に置いてある台に乗り、布巾を水に濡らして絞る。

 それから各テーブルを、靴を脱いで椅子に乗り、拭く。

 それを頼んだホナミは、皿やらコップを洗いながら、それを拭くカズヒサと談笑している。


 クイ、クイ


 そのホナミの、薄い水色のエプロンを引っ張る者がいた。

 その子どもは、紅い短い髪の少女。 というか幼女。


「・・・私も、何か仕事」

「それじゃあ・・・・・・」


 期待に目を輝かせる。


「それじゃあ、コウギョクはヒスイが拭いたところを、乾いた布巾で拭いてくれる?」

「うん!」


 大きく頷き、ホナミに手渡された布巾で、ヒスイが拭いた、まだ濡れているテーブルを拭く。

 二人仲良く、話しながら働く姿は本物の姉妹のようだった。





午後1時
「あー、ったく。

 ホント非道い目にあったね、昨日は」


 ミルキー・ウェイに、金髪の男がそんなことを言いながら入ってきた。


「いらっしゃいませ。

 空いてるお席にどうぞ」


 薄い水色のエプロンを着た、30歳くらいの黒髪の女性。

 しかし、顔に皺はなく、肌の張り艶も二十代前半の女性のようだった。

 だから、ナンパしようとした男性も結構いた。

 ・・・・・・左手の薬指に嵌められた指輪を見て、すごすごと引き下がったが。

 だが、彼は北辰並か、もしかしたらそれ以上に人の道を踏み外した、いわば『超外道』たる者。

 よって、彼はその女性の周りにいた二人の少女ーーー 翠のポニーテールの髪の美少女と紅い短い髪の美少女ーーー に食指を働かせた。

 曰く、


「お嬢ちゃん、傷心気味の僕をベットで慰めてくれる気はないかい?」


 このアリコン野郎が!! 


「・・・・・・このおじちゃん、恐い。グスっ(涙目)」

「ちょっとオッさん!

 なに妹泣かせてるのよ!!」


 翠の髪の少女が、そう言いながら金髪アリコン野郎、つまり蔵人醍醐の股間を蹴り飛ばした。



 キーーンッッッ!!! 


 なんか、そんな音がその場にいた客達の耳に聞こえた(ような気がした)。

 
「はぁうっ!!」 ×男性客


 もちろん気のせいであるが、思わず男の客達は、股間を押さえた。

 翠の髪の少女、ヒスイに股間を蹴られた醍醐は、その場に崩れ落ち、


「燃えたよ・・・・・・

 燃え尽きちまったよ、真っ白によ・・・・・・」


 などと、不朽の名作のセリフを言い(と言っても、間違っているが)、もう一発ヒスイにイイのをもらった。鼻っ面に。


「・・・・・・全く、なんなのよ、このアリコン男は・・・・・・!」


 と、一言。

 さすがにここまで来ると、

 
「おおーーー」 ×複数


 パチパチパチパチ


 拍手喝采。

 5歳児が、周りから見ればどんなに大きく見ても小学校一年生にしか見えないような少女が、空手家・キックボクサー顔負けのローキックを放ったのだから。

 ついでに、この馬鹿アリコン男醍醐は、


「我が生涯に一片の悔い無し・・・・・・ゲフっ」


 ・・・・・・名作を汚すな!! 









Act.4 みんなで相談 

 とある6月後半の日曜日。

 数人の少年少女がテンカワ家(結局、二人で生活することになりました。ただし、生活費はじいちゃんもち)に集まっていた。

 理由は、夏休みの旅行についてである。


「それじゃあ、まずみんなは何処に行きたい?」


 アキトが聞くと、


「俺はコロニーエデンに行きたいな。

 あそこは、丁度旅行行く予定の日にコスミケがあるんだ」

「ははは、ガイらしいや」

「・・・コスミケとはなんだ?」


 なんか取っつきにくい、とちょっと敬遠されているジュウゾウ。

 しかし、このメンバーにそんなことを気にするヤツはいなかった。

 だから、特に予定もなさそうなジュウゾウを旅行に誘った。

 本来、彼の休暇はもう終わっているはずなのだが、そこはまあ、レイがいろいろと手を回した。


「コスミケっていうのはね、ナンバ君。

 同人誌の即売所よ」

「違う! 違うぞセンパイ!!

 コスミケはっ、コスミケはっ、ただの同人誌の即売所じゃでぶわぁっ!!」 


 コスミケについて熱く語ろうとしたガイは、イツキに殴り飛ばされて黙る。


「アンタはっ、黙ってなさい・・・・・・!!!」


 というか、顎の骨が砕けちゃ、喋れやしねえ。 


「で、イツキちゃんは何処に行きたい?」


 だが、アキトはそんないつもの光景を気にすることもなく、話を進める。


「・・・・・・・・・・・・・・・。

 (非常識だ。俺ほど非常識な人生を送っているヤツはそうはいないと思っていたが・・・・・・

 ・・・・・・やはり世界は広いな)」


 などとジュウゾウが思っていたりするが、そんなこと誰も知る由もなく、ユウノが自分の考えを言う。


「私は、ヘブンズコロニーに行きたいな。

 あそこの火星資料館で、夏休みの宿題一つ片付けちゃおうと思ってるの。

 それから情報誌に載ってたんだけどね、『ミルキー・ウェイ』って言う喫茶店に行ってみたいの」


 夏休みの宿題。

 それは、学生にとって永遠の敵である。

 各教科から出る宿題もさることながら、人によっては『自由研究』というものが一番の難敵ではないだろうか?

 事実、E.Tにとってはこれが最もキツイ宿題だった。


「あ、お姉ちゃんも?

 私も、『ミルキー・ウェイ』行ってみたいんだぁ」


 と、ユウノの妹、琴美(コトミ)。


「へぇーー、『ミルキー・ウェイ』、ね」


 何かを考えるかのように、ミナトが小さな声で呟いた。


「『ミルキー・ウェイ』・・・・・・天の川・・・・・・・・・」


 それからも様々な意見が出る。

 他にも、「アルカディアコロニー」に行く等々、ユートピアコロニー周辺のコロニーに行こうという意見が多数出る。

 そして結局ーーー


「それじゃあ旅行先は、ヘブンズコロニーで良いね」


 アキトの確認の言葉に、ミナト、イツキ、ミサオ、はるか、ジュウゾウ、ユウノが頷いた。

 ・・・・・・・・・ちなみに、ダイゴウジ ガイことヤマダジロウは、まだ壁にめり込んだまま気絶中である。





 その日、ナンバ宅にての会話。


「ねえねえ、ヘブンズコロニーに行くんだって?」

「・・・・・・なぜ知っている」

「ふっ、クリムゾンの情報収集能力はあなたはよく分かっているでしょ?」


 レイの言葉に、ジュウゾウは呆然とした。


「(何でこんなどうでもいいことに・・・・・・・・・!?)」


 それが、彼の偽らざる本心だった。


「面白そうだから私も連れてってね♪」










オリキャラ設定(その5)


虎狩 悠乃(モガリ ユウノ)♀
 ○小学校時代からのミナトの友人。

 ○容姿のイメージは『烈火の炎』の佐古下 柳を、少し幼くした感じ。

 ○後述の妹がいる。

 ○真面目で、誠実。 でも、情熱的なところもある。

   しかし、おっちょこちょいな一面も。

 ○運動は苦手で、走ると何も無いとこで『ズルっ、ベターーンっ』ってこける。


虎狩 琴美(モガリ コトミ)♀
 ○現在小学五年で、アキトたちより一学年上。

 ○容姿は『スパイラル 推理の絆』の結崎 ひよの。

 ○どこかおっとりとしているが、その実しっかり者。

   肝心なとこで間が抜けているユウノを影で支えている。

 ○運動は割と得意だが、『そこそこ』の感が拭えない。


粕谷 太一(カスヤ タイチ)♂
 ○一発キャラ(の予定)。

 ○よって、細かな設定はなし。

   強いて言うなら、『巡査』であることと正義感が強い、ぐらいか。

 ○もしかしたら、また出てくるかも。





『オリキャラ設定』についての補足。
 これは、とにかく名前と描写が出たキャラです。

 よって、使い捨てキャラもここに登場することがあります。

 ただし、使い捨て予定のキャラが再登場する可能性も大いにあります。










後書き
 まず最初に、『湊 はるか』及び『蔵人醍醐』は、別人28号さんの許可の元出演しています。



 どうですか? 醍醐の活躍(爆)は。

 この『ロリコン&アリコンネタ』は、醍醐とミナトの年齢差で思いついたものです。

 28歳と21(20)歳。

 この7歳差(8歳差)は、別に「ちょっと離れてるかな」、程度です。

 しかし、それが『19歳と12歳』なら、話は違ってきます。

 しかも、それが年齢不相応に発育していれば、まだ分かりますが、作中にも書いたとおり、この『ANOTHER NADESICO』のミナト(中学生時)は、幼児体型です。

 中学生時で幼児体型と言えば、『アリス(年齢一桁(!!))』並と言うことになります。


 ところで、コロニーの名前を、みなさんにも考えていただけないでしょうか?

 名前は、「楽園」、「天国」、「理想郷」という意味の、横文字の言葉です



 それと、最後に。

 『ANOTHER  NADESICO』は、ジュンに恐ろしい事実を教えようと、E.Tは企んでいます。



 それでは、次話をお楽しみに。

 

 

代理人の感想

・・・別に中学生が胸ペタでも小学校低学年に間違われることはそうそうないと思うんですが。

そもそも12〜3と言えば女子の身長が飛躍的に伸びる時期。

成長その物が遅れてる、あるいは極端に背が低いならともかく、

体の凹凸だけで間違えることはまずないでしょう。

 

代理人注:「遭う」ですが、実際は別に悪い物に対して使う言葉ではありません。おまちがえなく。

代理人注その2:ミナトはナデシコ出航当時22歳です。
          醍醐との差は六歳ですから、作中では一才ほど若い計算になりますね。