Act.0 ラーメンを作ろう!

「それでー、注文は決まったかー?」


 のーんびりと言う。

 少し時間停止を引き起こしていた彼の教え子+αは、活動を再開した。


「うーんと、それじゃあ五目ラーメンを」

「みそラーメンを一つ。 それからニンニク大盛りで餃子を一皿」


 とレイ&イネスが言ったのを皮切りに、


「冷やし中華とやらを頼む」 ×ジュウゾウ

「豚骨ラーメンと餃子!」 ×ミナト

「「私は半ちゃんラーメンと餃子!!」」 ×モガリ姉妹

「東京ラーメン、のりプラスと餃子だ!!」 ×ガイ

「ワンタン麺」 ×アキト

「トンコツ!」 イツキ

「五目と、みそチャーシュー。

 それに餃子も。 ニンニクたっぷりで」 ×ミサオ

「塩とトンコツを一つずつ」 ×はるか

「湊ー、それはー、お前ー。

 少しデインジャーな組み合わせじゃー、ないかー。なー」 ×ルーファス


 はるかはルーファスに「ほっといて!」と言い、


「それで先生。

 先生のラーメン、美味しい?」

「はっはっは、それはー、食べてのー、お楽しみー、だー」


 ・・・・・・・・・・・・・・・。

 なぜ、ルーファスの周りの空気が淀んで見えるのだろうか?


「くっくっく、まあー、自分の身でー、確かめるんだー、なー」


 ・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・不吉度128%

 そして、彼は鍋に湯を張り始めた。


「ふはははははー」


 ・・・・・・なぜか、不気味な声で笑う。

 また、それがアキトたちの不安をかき立てる。



 沸騰する湯の中、金色の麺が踊る。

 泡が麺と絡み合い、いい具合に、縮れて来る。


「燃え上がーれー、オレの焼ーい料理人魂ー!!」


 ・・・・・・・・・・・・・・・。

 何はともあれ、大量の麺は、しっかりと茹で上がってくる。

 その合間に、彼は黄金色のスープを、乳白色のスープを掻き混ぜる。

 なぜか、ダークな微笑みを浮かべる。

 それから、やはり怪しげな笑みを浮かべながら、五目ラーメンのための野菜を炒め始める。

 中華鍋に放り込まれたキャベツやニンジンに、少量の水で溶かした片栗粉を入れる。

 いつの間にやら丼に麺とスープが用意されており、その一つに野菜を放り込んだ。

 五目麺が完成。

 すぐにチャーシューやら半分に切ったゆで卵やらを盛り、他のラーメンも完成する。


「へい、お待ち!」


 めを−きゅぴーんと輝かせつつ、丼をアキトたちの目の前に置く。

 ルーファスの姿はどこからどう見ても怪しさ大爆発だったが、彼の作ったラーメンはどこからどう見ても上出来だった。








機動戦艦ナデシコif
AnotherNADESICO

第14話 『昼時』










Act.1 幸薄の場合

「さあー、食いねえー、食いねえー!」


 何となく、ルーファスの姿に圧倒されていたアキトたちは、その言葉で石化の呪縛が解けた。


「い・・・いただきます」


 未だ多少圧倒されつつもアキトはふー、ふーと息を吹きかけ少し冷ましてから、スープを啜った。

 スープは、黄金色の醤油ベース。

 さらりとした喉越しで、飲みやすい。

 そのくせに、油の濃厚なうまみが舌を楽しませる。


「・・・・・・!」


 続いて、具の下から麺をほじくり出す。

 スープと同じく、金色をした少し細めの縮れ麺。

 スープが絡みつき、滴る麺を一気に口の中に放り込む。

 スープの味と、麺が持つ少し甘いような味が渾然一体となって口の中に広がる。


「・・・・・・!!」


 さらに、形の良いワンタンを食べる。

 肉汁とスープがおり織り混ざり、複雑な味のハーモニーが、アキトの舌を直撃した。


「・・・・・・うまい!!」


 アキトは、いっそ感動した。

 過去にこれだけうまいラーメンを食べたことがあっただろうか?

 答えは、否とは言わずとも、2、3回もなかったことは確実である。

 そして、それは彼の心の奥底に眠る料理人魂を揺り動かした。


「師匠と呼ばせてください!!」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


『・・・・・・は?』 ×全員−レイ、イネス、ルーファス


 そのラーメンの旨さに舌鼓を叩いていたメンバー達は、そのアキトの言葉に唖然とした。


「な・・・・・・な、何言ってるの、アキト?」


 ミナトが途切れ途切れの声で言うと、


「え・・・、でも、アキト君料理上手だし、良いんじゃない?

 もっと料理が上手くなるんだったら、それにこしたこと無いでしょ」


 とはるか。


「そう言うこと言ってるんじゃなくて、体育科の先生に料理を習うっていうのが、その・・・・・・なんて言うか・・・・・・」

「あははは、そうだよね。

 普通、料理習うんだったら家庭科の先生だよね」


 ミナトの言葉にミサオが同意する。

 その隣で、コトミが少し精神崩壊を起こし掛けていた。


「あ、あはははははは・・・・・・

 あ、アキト君が、ルーファス先生に料理を習う?

 う、嘘よね、あんな肉体派の先生が料理上手いなんて・・・・・・」


 ・・・・・・・・・そこまで信じられないのか?

 ルーファスが料理(少なくとも中華は)が上手いことが?


「お、お姉ちゃん、落ち着いて。

 信じたくない気持ちは私も同じだけどさ・・・」


 ・・・・・・何も言うまい。


「アキト君が弟子いり?!

 そっ、そんな、信じられない!!」 ×イツキ

「ンなこたーねぇだろ。

 腕を上げるための弟子入りッ!

 かぁーッ、燃え燃えだぜっ!!」 ×ガイ

「『萌え萌え』? 何だそれは」 ×ジュウゾウ


 ・・・・・・だから、何も言わないってば!

 ちなみに、レイとイネスはラーメンと食べるのに夢中になっている。


「はふはふ、ずるずる・・・・・・。」

「むぐむぐ、うまうま」


 ルーファスは「はっはっはっは」と笑っている。

 ・・・・・・彼のことは、よく分からない。










Act.2 円羅大凶殺の場合

 ホテル、カイゼル・デス・マルスに入っている中華料理屋の一つ。

 その店の名前は『円羅大凶殺』という。

 そして現在、その店は人でごった返していた。

 そのため、ウェイターやウェイトレス達は、右へ左へと大忙しだった。

 もっとも、それに見合っただけの給料は出るのだが。


「う゛〜〜ん、どれが良いかしらねぇ・・・・・・」


 かまティックな言葉遣いをする男性がいた。

 その男性の名前はムネタケ サダアキ。

 地球連合軍の大尉さんである。

 キノコという渾名(彼は知らない)の通り、髪型がキノコヘア(マッシュルームカットではない)である。

 親が少将と地位が高いため、自然と彼には取り巻きが入る。

 今回、彼は休暇を取って一人旅をアバンチュールしていた。

 意外と誤解されがちなのだが、彼は取り巻き連と入るよりも1人でいる方が好きだった。

 取り巻き連がいると、優秀な父親のことを感じさせられてしまうからである。


「そうねぇ・・・・・・

 麻婆豆腐なんかいいけど、こんな所に来てまでそれは、なんかねぇ・・・・・・大勢ならまだしも。

 ・・・・・・というよりも、一品だけで済ますのがちょっと考え物よね。

 それじゃあセットもあることだし・・・・・・

 よし、決めたわ」


 と一人ごこちると、店員を呼んだ。


「点心セットを一つと、ウーロン茶をお願い」

「かしこまりました、点心セットとウーロン茶をお一つずつですね」


 ウェイトレスはムネタケの注文を復唱し、「以上でよろしいですか」と確認する。

 ムネタケは「ええ、それでいいわ」と答えると、隣の椅子に置いていた鞄から本を取りだした。

 本の題名は『ヘブンズWalker』。

 20世紀より出版される、旅の共的な本(雑誌)だ。


「ふぅ・・・・・・・・・。

 『喫茶ミルキー・ウェイ』ね・・・・・・。

 ハァ・・・・・・・・・行ってみたいわ・・・・・・」


 ムネタケは、紅茶とケーキが大好物だった。

 と言うよりも、紅茶とケーキを愛していた。

 そして、ヘブンズWalkerには、一押しの店に『ミルキー・ウェイ』の名があった。

 お薦めの品は、紅茶のシフォンケーキとダージリンティー。

 両者とも、ムネタケの一番好きなものだった。

 それに対して、ムネタケはなにやら運命じみたものを感じてみたりする。



 そしてしばらくすると、頼んだ料理が来た。

 餃子と春巻きが2個ずつ、シュウマイ、エビシュウマイが一個ずつに、麻婆豆腐、ご飯の点心セットである。

 点心でないものも混ざっているが、これはこの円羅大凶殺のいい加減さだ(好評だが)。

 それと、ウーロン茶。


「それじゃ、いただきまーす、と」










Act.3 ミルキー・ウェイの場合

 ホナミは大きく溜息を付いた。

 その理由は簡単である。


「コウギョクちゃ〜ん、一緒にご飯たべないかい?

 僕が食べさせてあげるよ?

 だから僕にも食べさせてねぇ?」


 ・・・・・・・・・。

 蔵人 醍醐その人である。

 一応客ではあるのだが、当方としては客とは認めたくはない。

 むしろ、犯罪者として警察に突き出したいところだ。

 しかし、残念ながら彼は警察が来る気配を察知して逃げ出すのだ。不思議なことに。

 そのため、警察を呼んでも無益なのだ。

 何とも度し難いヤツである。


「おじちゃん怖いよぉ〜〜(泣きべそ)」


 そして、コウギョクが泣き始める。

 で、ヒスイの登場。


「妹を泣かせるなと何回言ったら分かるんだぁぁぁ〜〜〜!!!」


 ケリっ、ケリっ、ケリぃぃぃぃーーー!!!


「ぐはっぁ(吐血)」


 いつものように、いつもの通りマット(どこにあるン?)に沈んだ。

 それで、それ以降もいつもの通りならば醍醐は車道の真ん中に放り出されるところだったが、今日は違った。


 カラン、カラーン


 ドアベルが軽い音を立て、開く。

 そこには、スーツを着た品のいい東洋系男性が立っていた。

 その男性は壮年で、如何にも働き盛りという風だった。

 彼は鋭い目つきで店内を見回し、翠色の髪の少女にボコされる金髪の男に目を留めた。


「・・・醍醐」


 静かな声で、彼はその男の名を呼んだ。


「お、親父?!」


 壮年の男性は、蔵人 醍醐の父親だった。


「醍醐、お前・・・・・・一体何をやっている?」

「え? なに、って、お嫁さん探し」


 ・・・・・・・・・・・・・・・。


「そうか。 嫁探しか。

 じゃあ訊くが、その嫁は見つかったのかな?」

「ああ、見つかったよ」

「まさかその嫁候補は、そこの少女じゃぁないだろうな?」


 自分にしては上出来なジョークだな、などと思っていたら、


「第2、第3候補かな」


 と、真顔で醍醐が答えた。

 偶然火星はヘブンズコロニーに社長自ら出張してきた彼は、醍醐がよく見掛けられるという喫茶店に来た。

 実際そこには醍醐がいた。

 年端もいかない少女にボコされていたが。

 彼が2代目としての勉強もせずに遊び回っているのは、一応嫁探しと言うことになっていた。

 まぁ、結婚は自分の望む相手でいいだろうと思っていたので許可したのだが。

 しかし、その相手はどう見ても10歳に満たない少女(というか幼女)である。


「・・・・・・・・・・・・」


 パチン


 指を鳴らした。

 次の瞬間、どこからか黒服サングラスの男が二人現れた。


「座敷牢に幽閉しておけ」

「「はっ」」


 男達は、命令に従って醍醐の両腕を掴み、引きずって行ってしまった。


「・・・・・・お騒がせしました。

 倅が迷惑をかけたようで。

 少ないですが、迷惑料です」


 懐から財布をとりだし、札束を近くにいたカズヒサに渡した。


「は・・・はぁ・・・・・・」


 なんと反応すればいいか、よく分からなかった。










後書き
 まず最初に、『湊 はるか』と『蔵人 醍醐』は別人28号さんの許可の元出演しています。

 醍醐、どこかへ連行されてしまいましたね〜。

 まぁ、こういうわけで10年後の帳尻合わせです。


 えーと、今回書くことが特にないので、短いですがここで。



 それでは。



コメント代理人 別人28号のコメント


警告!

醍醐は危険感知なんてできる高等な脳ミソは持っていませんし

醍醐父はこんな毅然とした人じゃないデス

バカ息子の奇行を止められず、タコ殴り大会にこっそりと参加し

ミナトに辞表叩き付けられて何も言えなくなるような人なんですから・・・




しかし、話が進んでませんねぇ

どうも、毎回更新に拘り過ぎて 時間の無さから1話の文量が減り

ストーリーの流れもぷちっと途切れているような・・・


連載とは言え、その1話、1話に1つの話(エピソード)があった方がいいと思います

一度、今後の展開含めて じっくり話を練り上げてみたらどうでしょう?

それこそ、蒲鉾を練り上げるがごとく