「突然ですが、みなさんにお集まりしていただいたのには、ワケがあります」

 プロスは開口一番そう言った。

「ほえ? なんですか?」

 ユリカの言葉に頷くと、言った。

「ナデシコの目的です」

「やっと発表してくれるんですか!」

  と、ジュン。

「今までナデシコの目的地を明らかにしなかったのは、妨害者の目を欺く必要があったためです」

 ネルガルが、わざわざ独自に機動戦艦を建造した理由は別に有ります。

 以後、ナデシコはスキャパレリ・プロジェクトの一環を担い、軍とは別行動をとります」

 それから、ジュンよりも影が薄かったかもしれない、フクベ提督。

「我々の目的地は火星だ!」

「では、地球が抱えている侵略は見逃すというのですか!?」

 ジュンが意見する。

「多くの地球人が、火星と月に殖民していたというのに、連合軍はそれらを見捨て、地球のみに防衛戦を引きました。

 火星に残された、人々と資源はどうなったんでしょう?」

 バシュウ

 突然扉が開いた。

「それは分からないわ。

 でも、これだけは言えるわ。

 ナデシコは私たちの支配下にはいるわ。

 例え目的が何であろうと、ね」

 入ってきたのは、数人の軍人を引き連れたムネタケ。

 その手には銃。

 そして、彼らは鮮やかな手並みで、ブリッジを占拠した。


機動戦艦ナデシコif
THE AVENGER

第十一話
 艦内制圧戦(反旗)





「動かない方が良いわよ。

 艦長の脳漿をぶちまけたくなければね」

 手を、後ろに回し何かを取り出そうとしていたプロスとゴートの動きが止まった。
 
「血迷ったか、ムネタケ!!」 

 フクベが、ユリカの頭に銃を突きつけたムネタケを叱咤する。

「いいえ、血迷ってなんかいないわよ、提督。

 これが私の任務なんだから」

「どういうことですか!?

 軍に話は付いているはずです!!」

「そんな物私の知ったこっちゃないわ。

 第一、言ったでしょ。 これは、『私の任務』だって。

 上からの命令なのよ。 ナデシコの制圧は」

 ムネタケは、憎らしいくらいに落ち着いた様子で言った。

 そのムネタケに銃を突きつけられているユリカは、口の端から泡を覗かせている。

 顔も、恐怖で歪み、普段の柔和を通り越して締まりのない顔からは想像できないほど。

「軍はね、戦力が欲しいの。

 少しでも木星蜥蜴と対等以上に渡り合える艦が。

 ・・・・・・もちろん、ナデシコと同時に、テンカワ アキトもね」

「何故テンカワさんを・・・・・・?」

「そんなこと、承知しているんでしょ? ネルガルの道化師」

 ムネタケの声に、プロスは静かに、だが確かに頷いた。

「・・・・・・テンカワさんの、あの異様なまでの戦闘力ですね」

 ルリが静かな声で言った。

「その通りよ。

 ナデシコと、それと同等かそれ以上の戦闘力を持つあの調理補助のガキ。

 ・・・・・・全く、私が言うのもなんだけど、ホント勝手よね」

「副提督、それなら任務を拒否すれば「出来ると思うの? 本気で?」

 ・・・・・・・・・・。」

「思う訳ないわよね。

 それにね、そろそろじゃないかしら?」

 ムネタケがそう言ったのを見計らったかのように、三隻の艦がナデシコの前方に浮上した。

 護衛艦クロッカス、パンジー、そして極東方面軍旗艦トビウメ。

 そして、トビウメから通信が入った。
 
『ユぅリぃくわぁぁーーーー!!!』
 
 通信の内容は、超音波攻撃だった。
 
「お父様!!!」 

 しかも、二段攻撃。

 ユリカ以外の全員が、気絶した。

 ユリカの大声に慣れているジュンは、ユリカの父ミスマルコウイチロウの声には慣れていなかった。

 逆にコウイチロウの声に慣れているトビウメ、クロッカス、パンジーのクルーは、慣れていないユリカの声で。

 ナデシコのクルーは、最初のコウイチロウの声で。

 当然、ユリカに銃を突きつけていたムネタケも、今はその足下に転がっている。

 更に悪いことに、超至近距離で受けたため、耳の周辺に、ピンク(肉の色)の肉片が・・・・・・(滝汗)

『ユリカ!! おお、久しぶりだな。 こんなに立派になって・・・・(号泣)』

「お父様、昨日お別れしたばかりじゃないですか」

『そうだったかな?』

「これはこれは、ミスマル提督・・・一体どの様な御用件でしょうか?」

 と、早々と復活したプロス。

『うむ、こちらの用件を言おう』

 軍人の顔つきになるコウイチロウ。

『機動戦艦ナデシコに告ぐ!! 地球連合宇宙軍提督として命じる!! 直ちに停船せよ!!』

「お父様、それはどういうことですの?」

『おお、ユリカ元気かい(はぁと)』

「はい♪」

「これも任務だ、許しておくれ。パパも辛いんだよ」

「困りましたな〜、連合軍とのお話は済んでいる筈ですよ。ナデシコは、ネルガルが私的に使用すると」

『我々が欲しいのは、今、確実に木星蜥蜴どもと戦える兵器!それを、みすみす民間に・・・・・!』

「ミスマル提督の言う通りよ。

 さっき私も言ったでしょ?

 『軍は少しでも多く、木星蜥蜴と戦える戦力が欲しい』って。

 そのためなら手段は選ばないわけ。

 だから、私が反乱を起こしたのよ」

 そう言いながら、彼は再びユリカの頭に銃を突きつける。

『ムネタケ、一体何をしている?』

「見て分かりませんか、ミスマル提督?

 艦長は、あなたへの人質ですわ。

 命令通り、ナデシコは制圧しました。

 ですが、その後どうしろとは言われてませんよ?

 だったら、軍の戦力として、火星解放に向かっても構わないわけですわ」

 無茶苦茶な理論を振り翳す。

「今まで待っていたのは、ここで降りたい人間を降ろすため。

 私に同調してくれた人間は、もう既に、ナデシコの主要個所を再制圧しているわ。

 ・・・・・・ナデシコクルーと“仲間”以外の人間を、簀巻きにでもしてね」

『どういうつもりだ!?』

「私たちは悔やんでいるんですよ、提督。

 火星を救えなかったどころか、コロニーを一つ破壊してしまったことを。

 ・・・・・・提督。

 お嬢さんの命が惜しくなければ、停船勧告でも、どうぞご自由に。

 惜しければ、パスワードを教えてください。

 防衛ライン停止コードを・・・・・・。」





 本星への報告書 TA−11

 と言うわけで、「THE AVENGER」第11話でした。

 このムネタケの外道な行動、どう思いますか?

 個人的には、結構この行動、気に入ってたり。

 ・・・・・・といっても、銃を突きつけるのは良くない。


 ・・・・・・・・・前も書いたとおり、どうも後書きは苦手なので、この辺で。
本星への報告書 TA−11 終

 

 

代理人の感想

ガキの理屈だ(爆笑)。

有能というべきか否か・・・迷うなぁ(笑)