『・・・・・・残念だが、承服できん。

 『軍人である前にユリカの父親だ』と言いたいが・・・・・・

 地球連合軍極東方面軍司令官としてここ、旗艦トビウメにいる限り。

 儂は『ユリカの父親である前に軍人だ』と言うしかできないのだよ』

「残念ですわね。

 交渉決裂とは」

 暫く押し黙ったコウイチロウの言葉に、あまり残念そうには感じない口調で、ムネタケが答えた。

 それから、コウイチロウが続けた。

『だから、我々は貴艦を逃がすわけにはいかん。

 ・・・・・・何かで、貴艦を追えなくならない限りは、な』

 その言葉に、ムネタケはニヤリと笑った。

 小さな声で、コミュニケに向かって何事かを言い、

「一応、もう十分ぐらい時間を差し上げましょう。

 人間としての道を貫くか、軍人としての道を貫くか、しっかりと考えてください」

 再びコウイチロウに言った。



 ・・・・・・十分後。

 コウイチロウからの返答は簡潔だった。

 即ち、

『貴官の意には添えない』

「では仕方がありませんね。

 ・・・・・・機関部に砲撃を。

 小破・・・・・・いえ、機関部では中破、大破クラスかもね?・・・・・・それで十分。

 逆に、それ以上は必要ないわ」

 オペレーターのルリに、命令とは言えないぐらいの口調で言った。

 命令と言うよりは、頼んだという程度だろうか。

「三隻とも、ですか」

「そうよ」

 ルリの確認に、簡潔に答える。

「了解しました。

 ・・・オモイカネ」

『了解』

 ルリがコンソールに手を置き、ナデシコのメインA.I.オモイカネに声をかけると、彼はウィンドウを開いて答えた。

 そして、三発のミサイルが発射された。

 ミサイルは狙い違わず、三隻の艦の機関部付近に命中した。

 ・・・・・・爆発はなかった。

「では、ミスマル ユリカ。

 あなたに一時的に指揮権を渡します。

 ・・・・・・好きに命令を」

 ムネタケは、突きつけていた銃を懐に戻しながらそう言った。

 その後に、非礼を詫びる言葉も忘れない。

 ユリカは溜息を付き、それから

「それでは、機動戦艦ナデシコ、はっしーーーんん!!」



機動戦艦ナデシコif 
THE AVENGER 


第十二話
 艦内制圧戦(降臨)





「・・・・・・人死には出た?」

 ムネタケは、部下達に問うた。

 答えは、

「三人ほど。

 それから重傷者が四人、軽傷者が四、五人ほど」

 と言うものだった。

「身内は?」

「被害ゼロです」

 その報告に、そうと答え、頷いてから、

「やったのは?」

「テンカワ アキトというクルーです。

 その他のクルーとも協力しましたが、彼らは一人頭蓋骨陥没を出しただけです。

 ・・・・・・なお、命に別状はないそうです」

 艦内制圧、並びに再制圧で出た被害。

 決して小さなものではなかったが、かといって別段大きいものではなかった。

「・・・・・・考えていたよりは大きかったわね。

 まあ、最悪全員を殺すことも考えてはいたけど・・・・・・」

 と呟き、それから、

「それで、詳しい状況を教えてくれる」

「はっ」





 ーーー 時は数刻遡る。



 タッタッタッタ

 何人かの人間が走ってくる音が聞こえた。

 今は、別に食事時というわけではない。

 食堂は閑散としていて、遅い朝食というか、早い昼食というか・・・・・・ブランチを取っている人間が数人いるだけだった。

 だから、別に今は食堂まで走ってくる必要はないのだ。

「・・・・・・? どうかしたのかな」

 と、溜まっていた食器を洗うアキト。

「さあね。

 ・・・それよりも、手が止まってるよ!」

「あ、すいません」

 ・・・・・・この2人の関係は、どちらが師匠でどちらが弟子なのだろうか?

 一抹の疑問は残るが、特に2人は気にしていない。

 第一、アキトは記憶を失っているのだから、どうしようもないのだ。

 そして、足音の正体が分かった。
 
「全員手を挙げろ!!」

 銃で武装した、三人の兵士。

 半ば条件反射でその場にいた全員が手を挙げた。

「なっ!? い、一体何なんですか!?」

 と厨房から飛び出しながらアキトが言うと、
 
「うるさい、黙れ!」


 ゴスッ

 
「ぐわぁっ!」

 有無を言わさず銃底で殴られた。


 ドンッ


 そのまま床を滑り、壁に頭を打ち付け、彼は気絶した。

「てっ、テンカワ!?」

 ホウメイは悲鳴をあげ、アキトの元に駆け寄る。
 
「ここで暴力沙汰は止しとくれっ!」

 それでもなお、横暴なこの軍人達に怒鳴り声を上げる。
 
うるせえって言ってんだよ!

 ・・・・・・ナンだったらお前も一撃入れてやろうか?

 そうすりゃ少しは大人しくなンだろ」

 アキトを殴り飛ばした軍人がそう言うと、そのもう一人が、

「へっ、どうせ入れるんなら、一撃よりも一物の方がいいがな、へへへっ」

 下卑た笑い。

 もう一人は、その言葉を聞いて、

「クククっ、それもそうだな。

 ちっとは年食ってるようだが、まだまだ女盛りみてぇだもんな」

 その言葉を合図に、三人は嗤った。

 ・・・・・・生理的嫌悪感さえ感じる、嫌な嗤い方だった。



 しばらくして。

「ここで大人しくしてろ」

「どうわぁっ?!」

 数人の、ツナギ姿の男達が放り込まれた。

 これで、艦内主要個所の人間が、全員ココ食堂に集められた。

 唯一の例外は、ブリッジ要員とパイロット(一人だけど。しかも骨折中)。

 ムネタケからの命令で、だ。

 理由は、自分たちではナデシコを操ることができないから、ブリッジクルーだけは仕方がない、と言うものだと聴いていた。

 本当の理由は、万が一の際にムネタケ派でない人間を、隔壁閉鎖により分断、幽閉することだ。

 結局のところ、それは自分たちではナデシコを操れないからでもあるが、もう一つの万が一。

 即ち、木星蜥蜴が出現したとき、パイロットとブリッジクルーがいなければ、話にもならないからだ。

 もっとも、これも自分たちではナデシコを操れないことが原因だが。

 ・・・・・・パイロットに関しては、足を骨折しているのでこの場にいてもあまり変わらないような気もするが。


 その食堂の中、アキトは長椅子に横たえられ、ホウメイ、サユリ、ハルミの三人に看病を受けていた。

 ホウメイが手桶に水を汲んできて、サユリとハルミが交互に額に当てたタオルを水に浸し、絞っては換える。


 彼らを見張るのは、食堂を最初に占拠した三人の軍人。

 三人とも、アキトの看護をする二人の美少女を真後ろから見、下卑た笑みを浮かべていた。

「カズ、ヤス・・・いい尻してんな、あの二人」

「ああ、そうだな、タケ。ピッチンピッチンのタイトスカートに包まれてよ、むしゃぶりつきたいくらいだぜ」

「ぷりぷり美味そうでもーたまんないッス〜〜」


 そんなことを言われているなどつゆ知らず、二人はアキトの看護をする。

「っきしょーーっ!」

「ああっ、もう我慢できねぇっ!!」

「姦っちゃる!!」

 言うなり、三人はサユリとハルミに、後ろから襲いかかる。

 こういう経験がもう何回かあるのか、役割分担はアッという間だった。

「きゃあっ!!」

 タケがサユリを羽交い締めにしたかと思うと、そのまま力任せに床に押し倒す。

「なっ!?」

 カズはアキトのタオルを換えようとして、横を向いたハルミを仰向けに押し倒した。

 ヤスが、銃を全く抵抗することができない唯一の人物、即ちテンカワアキトのこめかみに押し当てる。
 
「オッ、お前ら一体なにを!?」

「うっせぇ、黙って見てろ!」

 ウリバタケに、ヤスが言う。

 それからサユリとハルミを押し倒した男たちも、

「へへへっ、オレたちゃ民間人を護る軍人だぜ?」

「これぐらいの役得なきゃ、前線で戦ってなんかいられるかッつーの」

 タケはサユリの胸を、後ろから揉みしだこうとする。
 
「いっ、嫌ああぁぁぁ!!」

 必死で男の拘束から逃れようとするサユリ。

 四つん這いになり、アキトの方へ手を伸ばそうとする。

 その肩下から手を差し入れ、その豊かな胸をもみし抱いた。

「ほら、大人しくオレを楽しませろよ」

 自分勝手なことを言いながら、その手は休むことはない。
 
「イヤッ、イヤッ、嫌あ!!」

 頭を振り、髪を振り乱しながらアキトの方へ這っていこうとすると、タケは一旦手を胸から放した。

 が、だからといって彼女の拘束を解いたわけではない。

 そのまま太股を掴むと、その臀部に鼻っ面を埋める。

「へへっ、軟らかい胸とケツだな」

 というと、タイトスカートをまくり始めた。

「こんな物履いてるから抵抗しようなんざ考えンだ」
 
「やっ、やめてぇぇぇぇっっっ!!」

「暴れンじゃねぇよっ!」

 ピシッ
 
「いっ、痛あぁぁぁい!」

 言いながらサユリの豊かな臀部に平手を入れる。

 サユリは悲鳴をあげ、その目尻からは涙が一筋こぼれ落ちた。

「(なんでっ!? なんでこんな目に遭わなくちゃいけないの・・・!?)」

 女性として、いや、人間としてタケ達の行動は許せるものではなかった。

 だが抵抗しようにも彼女はあまりにも脆弱で、また他の者達はアキトを人質に取られているために、彼女を助けられなかった。

「ほらぁっ!

 どんな下着履いてんだ!? オレたちに見せて見ろ!!」
 
「っ!!」

 ビリビリビリッ

 スカートは、太股を半ばまで晒したところで、裂けた。

「ヒヒヒっ、色っぽい下着履いてンなぁ。

 ん? なんだ? ええ!?

 あの兄ちゃんに見せるためにでも履いてんのか?!」

 ピンクの、薄いレースがあしらわれた、大人っぽいショーツ。

 そのショーツに包まれた臀部を、タケは我が物顔で顔を埋め、大きく息を吸った。

「ん〜〜、いい匂いだなぁっ。

 ・・・こっちの方はどんな匂いかな?」

 いったん臀部から顔を離し、女性の最も大切な処に、その鼻面を埋めようとした。





 一方ハルミを押し倒したカズは、その可憐な薄桃色の唇を奪おうとしていた。

「やっ、やぁっ、やめっ」

 カズの生臭い吐息から顔を背け、遠ざけようとする。

 無精髭が生える頬を、両の手で突っぱねる。

「いいじゃねぇか、減るもんじゃなし」

 荒い、酒臭い息が頬に掛かる。

 それに耐えながら抵抗を続けていたが、

「へへっ、所詮女の力じゃ、どうにもなんねぇんだよ!」

 肩を掴んでいたカズの右手が、ハルミの頬を打った。


 ピシッ


 やけに澄んだ音が響いた。

「痛ッ!」

 カズの左手が肩を押さえる力を強め、右手はハルミの両の手を頭上の方に押さえつける。

「へへへっ、きめ細かい綺麗な肌だ」

 ハルミの、その首筋に顔を埋め、思いっ切り吸い上げる。
 
「っっ!!」

 それから左手を首元にかけ、黄色い制服を引き裂いた。

 純白ブラウスの首元から、白い肌が覗く。

 カズはそこにも顔を埋め、吸い立てる。

 ハルミの顔は、恥辱と屈辱とに歪んでいる。



「おいおい二人ともよー、さっさと終わらせてオレに回せよなー」

 二人に追い打ちをかけるように、ヤスが言う。

 そして、彼がアキトから完全に注意を逸らした瞬間、彼が目覚めた。



「(ここは・・・・・・どこだ?)」

 覚醒した彼が、最初に思ったこと。

 ふと辺りを見まわすと、二人の女性が男に襲われていた。

 サユリという、自分の幼馴染みらしい女性と、その友人のハルミという女性。

 その光景が、ナニか、おそらく失われた記憶の一部と、重なった。


 白衣を着た男達に覆い被される、黒髪の美少女。

 自分に、助けて、というかのように伸ばされる白い腕。

 その美しい白い裸身に男達の手が、舌が這い回る。

 自分も、その少女を助けようと手を伸ばすが、後ろから誰かに押さえ付けられている。

「クククク・・・・・・

 自らの非力を悔やむがいい」

 聞くだけでもおぞましい、男の声。
 
「やめろぉっ!

 ヤメテくれっ、頼む!

 ヤメろおォォォォォォォォォ!!!」

 獣の雄叫び。



 その、在りし日の幻と、現実の彼の悲鳴が重なった瞬間、それは現れた。


 
「やめろぉっ!

 ヤメテくれっ、頼む!

 ヤメろおォォォォォォォォォ!!!」

 アキトの咆哮。

 ヤスはアキトに突きつけた銃の引き金を引こうとした。

 だが、銃はアキトの手で明後日の方向を向かされていた。

 それを戻そうとする。

 銃は、動かなかった。

 力を込めてみる。

 動かない。

 更に込める。

 だが、やはり動かない。

「放せッ!」

 ヤスはテコの原理を応用し、掴まれた銃身を軸に銃底でアキトを殴ろうとした。

 それから撃っても十分だ。


 ガッ


 硬く重いその一撃を、アキトは左手一本で受け止めた。

 銃身は、彼の手からもう放れている。

 が、アキトが無造作に左手を払うと、それだけでヤスの手から銃が放れていった。

「・・・え?・・・・・・」

 格闘術は、女性を弄ぶためだけに習っていたようなものだった。

 だが、それでもそこそこの実力はあったのだ。

 それが、大して筋肉も付いていない青年に・・・・・・

「(筋肉が・・・・・・付いてない?)」

 彼は、自分の思ったことに疑問を抱いた。

 その回答は、すぐに得られた。


 ガシッ


 アキトに顔を掴まれた。

 そして、


 ミシミシッ・・・


 奇妙なオト。

「・・・・・・え?」

 アキトの右腕は、肩の付け根から異様なまでに膨れあがっていた。

 右腕にはナノマシンの紋様が輝いていた。

 そして、ヤスの絶叫。
 
「ギャアアアァァァァァァァァァ!!!」

 アキトが手を放した。

 どさっと崩れ落ちると、痙攣し始める。

 その様子に、さすがにタケとカズも二人の少女を放り出す。

 懐からブラスターを取り出すと、それをアキトに目掛けて躊躇い無く、撃った。


 チュンッ
       チュンッ
          チュンッ
                チュンッ


 合わせて四回の銃声。

 そして、それらはアキトを傷付けることはなかった。

 アキトが左腕を振るうと、その銃弾の二つが打ち払われた。

 しかも、その弾かれた銃弾は、残り二つの銃弾を連鎖的に弾いたのだ。



 ・・・・・・いつのまにか、左腕もナノマシンの紋様が覆い、異様に膨らんでいた。





 二の腕の半ば程から素肌が晒されているナデシコ生活班の、黄色い制服。

 異様なまでに膨らんだ、ナノマシンの紋様が輝くその両腕に、肩口から裂けていた。

 顔は恐ろしいまでに無表情で、赤い瞳が爛々と輝いていた。










 この時、ナデシコに天使が降臨した。

 ・・・生けるモノを死へと導く翼を持つ、破壊を司る死天使が・・・・・・










 本星への報告書 TA−12

 どうも、E.Tです。

 とりあえず本編とは全く関係無しですが。


>代理人の感想

>わからないよ、君の書いてることがわからないよETさん!(爆)

 
 とのことでしたが、(「起動戦艦 クリサンテマム」のヤツね)安心してください。

 僕自身よく分かってませんから。 ナニ書いてンだか。(核爆)





 あー、それとですが、これでのナデシコの兵装、後書きで書くの忘れてましたね(汗)

 というわけで、ここで書かせていただきます。


ND001機動戦艦ナデシコ
 
      全長278メートル
 
      全高106.8メートル

      全幅148メートル

      総重量37530トン

      収容人員214名

      核パルスエンジン4基、相転移エンジン2基装備

      中枢コンピューター SVC2027、通称オモイカネ

    兵装
      グラビティブラスト1門

      対空機銃32門
 
      対空ミサイル24門
 
      対艦ミサイル8門
 
      レールガン4門


 ということです。

 ついでに途中で改装して、武装強化が行われます。

 でも、TV版のナデシコの武装って、生きて還ってくること前提になっていないような気が・・・・・・

 だってさ、武装貧弱すぎだと思いません?


 ・・・・・・という理由で、武装が変わっているわけです。

 レールガンとミサイルが増設されただけかい!!・・・などというツッコミは無しです。というか、野暮ってモンです。

 あ、一応言っておきますけど、TV版でもミサイルはありましたからネ。

 砲門が増えた、という意味だからね、上(↑)は。




 ンで、最後にアキト君についてです。

 アキト君は右腕左腕に限らず、全身これ武器人間です。

 004なんか問題じゃありません。

 某『武器』という題名のマンガ(和訳済み)のパクやろがー! というツッコミを受けるやもしれません。

 ですが、決してソレではありませんので。


 ンじゃ、ここら辺で。
本星への報告書 TA−12 終

 

 

代理人の感想

>ソレではありませんので

……パクリには違いないのね(爆)