ナデシコは、艦長ミスマルユリカの命令を受けて、宇宙を目指し飛び立った。

 拘禁された後に、ムネタケに従う意思を見せた者以外が詰められたコンテナを残して。

 コンテナは波に揉まれているが、中の人間は大丈夫なのだろうか?

 何はともあれ、トビウメ、クロッカス、パンジーのいずれかの救援を待て。










 軌道ステーション、サクラ。

 そこには、第三防衛ラインとして、高々度用機動兵器『デルフィニュウム』が配備されている。

 ロケットに巨大な腕をくっつけたようなユーモラスな格好をしている。

 上昇性能は高いが、機動性に欠け、推進剤が無くなったら終わり、という機体である。

 安価なため、先行試作型エステバリスよりも、配備数が多い。

 ・・・・・・というか、連合軍の機動兵器の90%以上がこの機体だったりする。


 第七〜五防衛ラインは間に合わず、第四防衛ラインは、地上発進のミサイル網を、既に突破された。

 第二防衛ラインはナデシコを撃破してしまう可能性があるため、使われないだろう。

 実質的に有効なのは、この第三防衛ラインと第一防衛ラインだけ。

 しかし、シミュレーションによれば、ナデシコは第一次防衛ラインを無理やり突破することが可能だという。

 そのため、第三防衛ラインで少なくとも、相転移エンジンかDF発生装置にダメージを与えなくてはならない。

 地球、月を足がかりとし、地球側は勢力を盛り返さなければならない。

 でなければ、近い内に木星蜥蜴に地球を制圧されてしまうだろう。

 地球側に、木星蜥蜴に一艦だけで対抗できる艦はない。

 ・・・・・・機動戦艦ナデシコ、ただ一艦を除いて。

 だから、地球連合はナデシコを欲した。

 墜とすわけにはいかない。

 最悪、技術公開していない相転移エンジン、DF発生装置、G・ブラストを手に入れなければならないのだから。

 デルフィニウム部隊の責任は、重かった。





「第三防衛ライン到達まで後900秒」

 ユリカはルリの報告に頷き、

「メグミさん、パイロットに出撃用意をするよう伝えてください」

「分かりました」

 ・・・・・・・・・と、メグミがパイロットのヤマダに出撃用意を言い渡そうとして。

「・・・・・・そういえば、パイロットのヤマダさん、骨折中じゃありませんでしたっけ?」

「あ゛あ゛!!

 しまった!!」

 そのことをすっかり失念していたユリカ。

 さらに、

「ということは、またアキトに頑張ってもらわないといけないのね〜〜、ヤマダさんの役立たず」

 そこにプロスが突っ込む。

「いえ、テンカワさんはまだ意識が戻っていません」

「・・・・・・ふぇ?」

 ・・・・・・・・・・・・・・・。

 あの惨劇から約六時間。

 いまだ、アキトは目覚めていない。

 今は、食堂から医務室に移されていた。



「じゃ、誰が迎撃に出るの?」



 それが一番の問題だった。








機動戦艦ナデシコif 
THE AVENGER

第十五話
 宇宙(そら)へ










「・・・・・・・・・何でまた、こうなるんだ?」

 エステバリス、高々度用空戦フレームのコクピットで、男が呟いた。

 その男は、ゴート=ホーリー。

「まったくだ・・・・・・」

 もう一機のエステバリスの中でも、ボヤキ声がした。

 この声の持ち主は楊 飛雀(ヤン フェイチェン)。

 整備員である。

「こんなコトになるんだったら、ミリタリーマニアやってるんじゃなかった・・・・・・・・・」

 この韓国人の整備士は、自分で言うとおりミリタリーマニアだった。

 整備士になれば、軍事機器に直に触れることが出来る。

 そんな安直な考えの基、彼は整備士を志した。

 整備士としては過剰な軍事知識。

 彼は、エステバリスのマニュアル操作も完全に把握し、ウリバタケが制作中のシミュレーターのテストパイロットをやっていた。

 今のところまだ仮組みでしかないが、『それなり』の性能だ。

 プログラム判断でしか動かないバッタの動きは、1回目と2回目の僅かな戦闘の間に垣間見せたものは、インプット済みだ。

 それはまだまだ完璧とは言い難いが、無いよりはマシと言うものだろう。

 だが、いくらそれでも、フェイチェンはそれをパーフェクトでクリアした。

 シューティングゲーム(ガン・コン使用のもの)が非常に得意だった。

 そのノリで、遠距離射撃で全てを落としたのだ。

 それだけの技量があらば、ディルフィニウムをパイロットを殺すことなく破壊することが出来るだろう。

 それが、彼がエステバリスの臨時パイロットに抜擢された理由だ。

 ・・・・・・ゴートは、元軍人であり、先行試作型エステバリスのマニュアル操作も修めていた。

『それではゴートさん、フェイチェンさん、頼みましたよ』

 プロスペクターの少々無責任な言葉に、2人は溜息を付きながらも頷いた。



 十秒後、ナデシコから二機のエステバリスが射出された。





「をーーーっほほほほほほほほほほほほ」

 甲高い高笑いをあげているのは、責任重大なデルフィニウム隊の隊長だ。

 9機のデルフィニウムを統べる、デルフィニウム中隊中隊長の名を、

「わたくしの名は、オニキリマル カグヤよ!!」

 と言う。

「ふふふふ、ユリカさん。

 決着を付けるときが来たようですわね」

 怪しげな笑み。

『たっ、隊長?』

 通信回線から、その笑い声が聞こえてくるため、部下の1人が陳情しようとした。

 しかし、それは出来なかった。

 その理由は極めて単純明快。

 カグヤがミサイルをぶっ放したのだ。

 ピンクの頭の空戦エステバリスに。

「をっほほほほほほほほほ!!

 墜ちなさい!!

『隊長ぉぉぉぉ〜〜〜!!!!』

 何の予告も無しに攻撃。

 ただでさえ、マスコミに書き立てられても文句の言えないような状況だというのに、この隊長は・・・・・・

 なぜ火に油を注ぐ?!





 一方、カグヤに攻撃されたエステには、ゴートが乗っていた。

 フォーメーションは、ゴートが前衛でフェイチェンが後衛だった。

 そのため、ゴートの方が狙いやすかったのだ。

 しかし、八発のミサイルは、例外なくフェイチェンに墜とされた。

『よくやった、ヤン!』

 ゴートからの通信が開き、フェイチェンはヤレヤレと肩をすくめた。

「まったく、礼なんかいいから、俺に実戦なんかさせないでくれよ・・・・・・」

 とひとりごこちっていると、

『ナデシコ、これより反撃をする。

 いいな?!

 ナデシコよりユリカの声と映像が送られ、

『やっちゃってください!』

 と、無責任に言ってくれた。

 何はともあれ反撃の許可が下り、ゴートは左手に持つラピッドライフルで弾幕を形成しつつ、イミディエットナイフで躍りかかった。

 たちまち一機のデルフィニウムが増槽をやられ、帰還を余儀なくされる。

 ここで帰還しなくては、燃料が無くなって地上に墜ちてしまう。

 そうなれば、生存は絶望だ。

 しかし、デルフィニウム中隊の中隊長殿は横暴だった。

『こら! 何で逃げるんですの?!

 何もしないで逃げ帰るなど、許しませんわよ!!』

『そっ、そんな無茶苦茶なっ!!』

 図らずも、ゴート、フェイチェン、そしてデルフィニウム中隊の皆さんの声が唱和した。

「じゃあ、お前から墜とすッ!」

 言いながら、カグヤの操る腕の付いたロケット(デルフィニウムのこと。念のため)に三点射。

『甘くってよっ!』

 背後からの射撃だったにもかかわらず、まるで後ろに目があるかのような見事な回避。

『なっ、本当に人間か!!』

 ゴートが思わず怒鳴る。

『失礼な方ですわね。

 人間に決まっているでしょう。

 それともなんですか、わたくしがロボットにでも見えると?』

『・・・・・・というよりも、竜種の血を引く化け物女に見えるかもしれない』

 ゴートの言葉は、誰も理解できなかった。

 そんな三流漫才もどきの会話をしている隙に、先程のデルフィニウムは撤退した。

「墜ちろっ、墜ちろっ、墜ちろぉぉっっ!!」

 それはそうと、フェイチェンがカグヤ機にラピッドライフルを撃ちまくる。

 その全てを鮮やかに回避するカグヤをよそに、流れ弾に被弾し、二機のデルフィニウムが撤退した。

 他にも、ゴートの攻撃で二機が無力化される。
        
『殺ッたぁぁぁぁぁぁ!!!』

 カグヤが、フェイチェンの攻撃を回避しながら、ゴートの背後に回り、腕を振り上げ肉薄した。

 その時。


 ゾクッ


 何か悪寒を感じ、その感覚に任せてゴート機から大きく離れた。

 その判断は正解だった。

 つい先程までカグヤがいたところから、通常の回避機動程度でいるであろう個所を、銃弾が薙いだ。

 その銃弾を放ったのは、ナデシコ。

 機動戦艦ナデシコだった。

 距離があるため、機銃やミサイルでの援護が出来ないはずの、ナデシコからだった。










 本星への報告書 TA−15

 えーと、まず最初にカグヤファンの皆様へ。

 ごめんなさい、当初の予定と異なり、カグヤが某小早川 ○津子の様になってしまいました。

 きっと、最近『○竜伝』を読んでいる所為でしょう。

 とはいっても、流石に不死身女にはしません。

 キャラとして、少々言動行動が壊れる程度かと。

 ちなみに、なぜ小○川奈津子調になったかというと、彼女の高笑いが何か・・・・・・

 ・・・・・・ところで、高笑いと言えば某『白蛇(サーペント)のナー○』。

 もしも、今読んでいるのが『創竜○』ではなく『○レイヤーズ(スペシャル)』だったら、○ーガ調だったかも。

 小早○ 奈津子調と、ナ○ガ調のカグヤ。

 どちらの方がマシだろうか・・・・・・?



 ・・・・・・・・・あ、ところで、皆さん『創○伝』、知ってますよね?





追伸
>代理人様

 う〜〜ん、ムネタケのことを『やっぱり無能』とか、言ってほしくはないですねぇ。

 だって、例えば代理人様の職場にレイパーがいたとしますよ?(まずあり得ないというのは分かっちゃいますが・・・・・・)

 その人が、皆さん、大勢がいらっしゃる中で、いきなりナイフとかで威し、女性をレイプすると思いますか?

 ・・・・・・そ〜〜いうワケです。



本星への報告書 TA−15 終

 

 

代理人の感想

む〜?

「腕のついたロケット」と言う表現ですが、こう言う表現をする意図が不明です。

この表現は行動の主体がデルフィニュウムの事を知らない事を暗示しているわけですが。

ゴートにしろ軍事マニアのフェイチェン君にしろ、軍事的な知識はそれなり以上にあるわけで、

それを考えるとデルフィニュウムと言う名前を知らない可能性は低いでしょう。

それとも、これがなにか伏線になっているんでしょうか?

 

>ムネタケ無能発言

「彼らが婦女暴行の常習者であった事は、軍内ならばかなりの人間が知っていた」

作中に明記されている事を踏まえての発言なんですが何か。