ナデひな
 第X+5話 ナデひな一発劇場part-6〜お料理コンテスト・番外編(後編)〜





 成瀬川なるが消えた後・・・・・・

 というかその直後、

 バタンッ

 と乱暴にドアが開き、人が駆け込んできた。

「なるちゃんっ!?」

「なる先輩!」

 何故キツネたちよりお前らが早い?

 まあそれは置いといて、アキト、素子の言葉に答える者はいなかった。

「う・・・うぅ・・・・・・」

 いや、答えではなかったが、声がした。

 いずれも、例外なく横たわって気絶している中、たった一人だけ、腹を押さえ、呻き声を漏らしていた。

「! 大丈夫ですか!」

「う・・・・・・あ・・・、あぁ・・・・・・。

 お前たち・・・・・・は・・・?」

「俺は浦島アキト。

 こっちは」

「青山素子だ。

 お前は?」

「俺・・・・・・は・・・・・・碇・・・・・・だ。

 お前・・・ら、あの女・・・・・・の知り合いなの・・・か?」

「あの女!?

 それは、触覚女のことか!?」

「(・・・・・・うまいな、その例え)」

 いや、そうじゃないだろ素子。

「ああ・・・・・・そうだ。

 あの女・・・・・・核弾頭・・・

 いや、神の拳と言われた俺の拳をあの触覚で受け止めた・・・・・・・・・。

 そして・・・ヤツは・・・・・・捨て台詞を残した後・・・・・・

 突然消えた」

「「消えた?」」

「・・・・・・そうだ。

 その後、そこには陽炎のような物が残っていた・・・・・・」





 その頃のチームβ。

「なーキツネ。

 ウチらこんなところであぶら売っててええんか?」

「光○館の門下生100人を倒すようなヤツ相手に、ウチにどないしろと?」

「だからってゲーセンで遊ぶか?」

 ・・・・・・キツネはダンレボ(ダンスダンスレボリューションの略。他の略称としてはDDRなど)をやっている。

 ・・・この時代にまだそんな物が・・・・・・。





 どこまでも続く荒れ果てた大地の真ん中に、なるは立っていた。

「ここは・・・・・・?」

 なるは呟いた。

「・・・・・・・・・・・・」

 なるは考えた。

「分からないや」

 なるは考えるのを放棄した。

「おい!

 あんなとこにマブい女がいるぜ!」

「おっ、ホントだ」

「おいネエちゃん、こっちきな」

 ・・・・・・などという粗野な声が聞こえてくる。

 そしてその声を発した奴等は・・・・・・

 なんていうか・・・・・・

 その・・・・・・
 
 北○の拳?
 
 って感じの格好をしていた。

「誰に言ってんの?」

 ちょっと眉をピクピクさせながら、なる。

「お前に決まってんだろ」

「拳王様への献上物にしてやる」

 などと彼らはのたまった。

「私は物じゃないわっ!!(怒)」

「うっせーんだよ!

 さっさとこっちに来やがれ」

 なるはキれた。
 
「うっせぇのはあんたたちだぁっっっっっっ!!!!」
 
 その怒りの一声と共に、どす黒い赤色の光を纏った拳で一撃。
 
「ひでぶわっ」
 
 そんな感じの叫び声(断末魔の悲鳴とも言う)をあげ、彼らは息絶えた。

 因みに、彼女は彼らを殺したなどとは思っていない。

 殴っても殴ってもダメージの無いアキトや、昂気のレベルが今の百分の一ぐらいだった時の相手だった光○館の連中と同じ扱いをしているからだ。

 たった一人、遅れてきたために難を逃れたデブは言った。
 
「お・・・・・・女の拳王様!!?」
 
「アンタもあいつらの仲間ね・・・・・・。
 
 死になさいっ!」
 
 再び静脈血の色の昂気を纏った拳で一撃。
 
「あべばぁっ!」
 
 彼も死んだ。

 そしてなるは呟いた。

「拳王・・・・・・・・・。

 悪くないわね」



 こうしてなるはこの世界に解き放たれた。

 もう、檻の無くなった猛獣の如く、猛威を振るった。

 例えば、生きるためだから、とかぬかして平気で村から食料、水を略奪。

 ・・・・・・もっとも、その際に人は一応誰も殺していないのが奴等に比べればまだマシか。

 さらに、拳王というヤツの部下を狩った。

 そして・・・・・・
       ブラッディ・クイーン
 彼女は「血塗れの女王」という二つ名を付けられた。

 ・・・・・・だが、本人は『拳王』を名乗っており、その二つ名のことを知らない。



 なるがここに来てから三日目、なるは遂にヤツと対面することとなった。





「お前か。

 我が部下たちを狩っている女というのは」

「そうよ。

 だったら、何?」

 超然と微笑むなる。

 ヤツ・・・・・・拳王と呼ばれる男、ラオウの殺気も何のその。

「しかもその女の身で『拳王』を名乗っていると・・・?」

「ええ、そうよ。

 で、それがどうしたの?」
 
「貴様のような女に拳王を名乗る資格無し!」
 
 目をくわっと開いてラオウはそう言った。
 
「ならば私はあなたを倒して拳王の名を手に入れてやるわ!」
 


 こうして・・・・・・・・・・・・

 拳王の座を賭けた、世紀の一大勝負が始まった!
 




 戦いが始まって数時間が経過した。
 
「北斗剛掌破ァっ!!」
 
「なんのっ!」

 ラオウの腕を回避し、カウンターをぶち込むなる。
 
「鉄拳パンチ裏参式!
 
 “自業自得”!」
 
 名前の通り、カウンター技だ。

 だが、ただ単にカウンターであると言うことだけで、いつもと同じ鉄拳にしか見えない。

 その違いは本人にも分からない。

 その一撃を受けたラオウは、膝を地に付けようとしてしまった。

「むぅっ!

 まだまだっ!
 
 北斗七死騎兵斬ッッッ!!」
 
「ぐはっあ!

 はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・・・・

 なかなかやるわね、あなた」

「貴様もやるな!
 
 だが勝負はこれからだっ!」
 
「望むところよっ!
 
 鉄拳パンチ裏弐式!“水切り”ぃっっ!
 
 水切りパぁぁぁぁぁンチぃっっ!!!」
 
「なんの!
 
 北斗剛掌破ぁァァっっっ!!」
 
 二人の攻撃が交錯する。

 なるの水切りパンチを受けたラオウは吹っ飛び、死んだ部下の血の水たまりの中を跳ねた。

 水切りの要領で。

 ラオウの拳を受けたなるはなるで吹っ飛び、後方にある岩にめり込んだ。

 しかし、二人は大きなダメージを負ったにも関わらず、立ち上がった。
 
「「これが最後だっ!」」
 
 お互いにそう叫びながら拳を放つ。

 そしてそれは・・・・・・・・・

 互いにカウンタークロスとして炸裂。

 その瞬間、なるの静脈血の色の昂気と、ラオウの可視の闘気が爆発的に膨らんだ。

 そして・・・・・・・・・・・・

 次の瞬間、なるの姿は消えた。



「・・・・・・・・・・・・。

 あの娘・・・・・・何処へ行ったのだ?

 まあいい。

 また相見えることを楽しみにしているぞ・・・・・・・・・」





「キツネ、ハルカから連絡入っとるで〜」

「ぶっ

 は、はるかぁっ!?」

『何が「はるかぁっ!?」だ、馬鹿者』

「き、聞いとったんかいな」

『まあな。

 それはそうとキツネ。

 もうアキトと素子は光○館の道場に着いているというのに・・・・・・
 
 お前らは一体何をしているんだ・・・・・・?(怒々)』
 
「そ・・・・・・それは・・・・・・」
 
『言い訳する暇があったらさっさと行けーっ!!』
 
「は、はいな〜っ」





 チームβが光○館の道場に着いたとき、そこには困惑する人間が二人いた。

「・・・・・・・・・どないしたんや?アキト、素子」

「なるちゃんが・・・・・・・・・」

「消えたそうです・・・・・・」

「はぁっ!?」

「なんやなんや、どうしたんや?」

「いいかい、スゥちゃん。

 なるちゃんがね、そこで寝てるおじさんの目の前で消えたんだって」

 ・・・・・・碇とやらはアキトと素子が手当をした後昏倒した。

「ほ〜。

 なるやん、やっぱり人間やなかったんやな〜〜」





 結局、その日は日が暮れて、捜索は打ち切りとなった。

 次の日にも結局なるは見つからなかった。

 そしてなるが消えてから二日経ち・・・・・・・・・




 
「くっ、やるわね!
 
 だけど私は立っているわ。
 
 あなたの負けね。
 
 それともまだ続ける・・・・・・?」
 
 などという声がひなた荘のロビーから聞こえた。

「なんだなんだ!?」

 と、住人たちが集まってくると、そこにはぼろぼろの服を着たなるがいた。

「あ、あの・・・・・・なるちゃん?

 何やってるの・・・・・・・・・?」
 
「そう、まだやる気なのね!
 
 受けて立つわっ!
                                      ストレート
 鉄拳パンチ!壱式“直線”!」
 
 座った目でそう言うなりなるはアキトに赤黒い昂気を纏った拳を打ち込んできた。
 
「どわああぁぁぁぁああ!!!!!(滝汗)」
 
 その一撃は、アキトを持ってしても回避が困難だった。

 意訳・・・・・・

 直撃こそしなかったものの、肩に掠った。

 それだけで、肩の肉がほんの一部だが・・・・・・刮げ落ちた。

「なっ、なる先輩!」

 素子が声を掛けると今度は素子に殴りかかってきた。
 
「鉄拳パンチ!参式“アッパー”!」
 
「ひっ、ひいぃぃぃぃいいい」
 
 危うく当たるところだったが、なるがバランスを崩したため、素子がその一撃を受けることはなかった。

 そしてバランスを崩したなるはそのままこけ、頭をぶつけた。



 暫くして・・・・・・

 なるは起き上がった。

「あれ?ここ・・・・・・・・・ひなた荘?」

 と、彼女はのたまった。

 しかし、その場にいたのは薄情にもなぜかこの時期にいたカエルさんだけだった。

「ゲコ」

「・・・・・・・・・・・・」



 他のみんなはと言うと・・・・・・・・・

 アキトの部屋にいた。

 さんざん皆に心配を掛けたくせに、戻ってくるなりいきなりアキト、素子に殴りかかってきたなるなど無視無視、である。

 さて、アキトだが、彼は高熱を出していた。

 さすがにあのナノマシンがあるとはいえ、一瞬にしてあの傷を治せるわけはない。

「浦島、大丈夫か!?」

「せんぱーい、大丈夫ですか〜?(涙目)」

「アキト、大丈夫か?」

「アキト、元気出しや〜」

「ほらほら、騒いでないで。

 この怪我は結構重いんだぞ?」

「「「「うぅ〜〜」」」」





 アキトのことを聴いた(みんなに訊いたんです)なるは反省した。

 だから彼女は罪滅ぼし(と自分では思っている)をした。



「アキトーっ、お見舞いとお詫び代わりに料理持ってきたよ〜」

 がらっ

 襖を開け、なるが管理人室に入ると、その場には誰もいなかった。

「・・・・・・アキト?」

 ひゅぅーう

 開いている窓から風が吹き込んできた。

 とても・・・・・・・・・寒かった。



「アキトーっ、お見舞い代わりに料理持ってきたよ〜」

「げっ!」

 あ、あの料理を食べさせられる!?

 この体調で!?

 味は問題ないが・・・・・・あの形は精神的にきついぞ!!
 
 こうなったら・・・・・・・・・

 逃げるか。

 そんな安易な答えを出したアキトは頑張って逃げた。

 窓を開け、そこから頑張って二階分上がり、三階へ出る。

 そこで偶々会った素子に頼み込んで部屋に匿って貰った。



 そこで一波乱あったが、それはそれでまた別の話。





 本星への報告書EX−6

 ふっ・・・・・・

 やってしまったよ。

 なる最強化。

 ラオウと互角だもんね〜。

 しかもアキトに結構な怪我負わせてるし。

 じゃっ、ここら辺で!



追記
 別に僕はなるのことを嫌いなワケじゃないですよ?

 ただ気に入らないだけで。

 もっと大きな理由としては前にも書いたけど素子属性だから。

 素子属性ならば「なるを嫌ってるぐらいの扱いにしろ!」と、どっかのホームページに書いてあったんで、それに忠実に実行しただけで。
本星への報告書EX−6 終