ナデシコのブリッジに、主要メンバーと、何故かクルト、紫苑が居た。

「聴きなさい!我が下僕ども!!」

 ムネ茸がそう言った瞬間だった。

 ギヌロッ

「ひっ!?

 ほ、本当のことを言っただけでそんなに睨まないでよ!」

 何処が本当のことだか・・・・・・

「誰が誰の『下僕』ですって・・・・・・?」

 そう言って、眉をピクピクと震わせているのはミナトだ。

「あんなキノコの下僕だなんて心外ですよね」

 怒りを露わにしているのはメグミだ。

「ワタシきのこノげぼくジャナイ」

 可愛らしい眉毛を顰めているのはラピスだ。

「ら、ラピス、そんなこと言っちゃぁまずいよぉ〜。

 本当のことだけどさ」

 ラピスを諫めながらも文句を言っているのはハーリーだ。

「私は誰の下僕でもありません!ユリカぷんぷん〜〜!

 あ、で、でも・・・アキトご主人様だったら私・・・・・・」

 ・・・さりげなく問題発言をぶっこくユリカ。

「私はあなたの部下であっても下僕ではありません。

 そこの所を勘違いなさらずに」

 クールに受け流すルリ。

「俺、ナデシコに居着いてるだけだしぃ」

 クルトは、まあこんな感じで、別にムネ茸に対して何も思ってないようである。

 だが、考えようによっては嫌われているよりも不憫である。

 嫌われているということは、少なくともその存在を認められているわけだが、何も思ってないのは、居ようが居まいが同じであるからだ。

「オレは一般人だ。

 テメエの下僕じゃねぇ」

 紫苑は不快そうに青筋を立てながらそう言う。

「アンタは確かに提督かも知れない。けど!オレ達は軍人じゃない!!」

「ったく、アキトの言うとおりだぜ!

 テメぇと違って俺らは一般人なの、一般人。

 威張ってるだけのアンタと違ってオレたちはどう考えたって英雄だけどな!」

 アキトとヤマダもムネ茸の言葉に対して腹を立てている。

「オレらはキノコの部下でも何でもねぇってんだ」

「ほんとよね〜。

 もうこんな感じ」

「・・・ヒカル、それはさすがにヤバイ」

 リョウコの言葉に同意したヒカルが、キノコ(ムネ茸)の人形の首をもいでゲシゲシ踏み付け、ゴートからライターを強奪し、燃やした。

 それを見て、さすがのイズミも突っ込んだ。

 ・・・・・・?

 そういえばDとイツキの二人が居ない。

 プシュー

「・・・誰が誰の下僕だって?

 アンタは確かにオレたちの上司になるわけだが、正確には指揮系統が違う」

「部下と下僕の違いも分からないのですか。

 やはり、あなたにその中将という地位は釣り合いませんね。無能者」

 ブリッジに入るなり、遅れてきたDとイツキが冷たい声で言った。

 Dが居ないからこそ「下僕」発言をした(できた)ムネ茸が固まった。

「・・・・・・で、射程はどれくらいなんだ?ナナフシの」

 

 

機動戦艦ナデシコ 

TWIN DE アキト

第十一話 気が付けば『お約束』






「な、な、な、なな何でアンタがそんなことを知ってるのよ!D!!」

「え?やっぱり、ほら。俺はオメガとオモイカネというスーパーAIが味方に付いてるから」

「反則よ!それは!!」

「気にしない気にしない」

「気にするわよ!

 

 ・・・・・・まぁいいわ。

 今度の作戦は、クルスクの奪還よ。

 Dのヤツが言った“ナナフシ”という木星の新型兵器が送り込まれていてね〜、おかげで連合軍は2度連続で作戦を失敗しているわ。

 この作戦を成功させれば勲章ものね!

 私のために、この作戦はなんとしても成功して貰うわよ〜!!」

「で、射程は?」

「あ、そうそう。

 射程は長いわよ〜。

 確かナデシコのグラビティブラストの1.(コンマ)数倍以上の筈よ。

 もしかしたら二倍以上だったかも知れないわ」

 

 その後、ユリカとジュン、Dが話し合い、結局前回と同じに、エステで接近、砲戦フレームで頑張って撃破と言うことになった。

 ・・・なお、サレナのG・ライフルは40%で一回きりしか発射できないくらいしか、修理が終わっていない。

 修理は、時として1から作るのよりも時間が掛かる。

 更にサレナ自身もオメガがそろそろ臨月っぽいので出るに出られず、中身のスーパーエステバリスカスタムで出ることになっている。

 

 

 アキトが出撃の準備をしている時だった。

「アキトさん」

「メグミちゃん?」

「ちょっとお話ししてもいいですか?」

「うん、いいよ」

 二人はエステの足に腰掛けた。

「私・・・前から気になってたんです。

 アキトさん、最初のうちは戦い、嫌がってたのに、それなのに、Dさんとよく訓練するようになったのが不思議なんです。

 ・・・どうしてなんですか?」

 メグミがアキトの顔を覗き込むようにそう言う。

「・・・・・・・・・

 ナデシコを・・・護りたいから・・・、かな」

「ナデシコを・・・護りたい?」

「うん」

 恥ずかしそうに頷くアキト。

「俺の力じゃたいしたことは出来ないかも知れないけど、Dに言われたんだ。

 力よりもまずは気持ち。

 力だけを求めれば、何時か後悔する日が来る。

 気持ちが有れば、力は自然と付いてくる・・・・・・まるで、そう経験したみたいに言ってたよ。

 だからね、俺も気持ちはしっかりあるから、力を身につけるために特訓中」

「そうだったんですか・・・。

 それにしても、Dさんって不思議な人ですよね」

「うん、ホントだね」

「ところでアキトさん、アキトさんには『護りたい人』って、いますか?」

「『護りたい・・・人』・・・・・・?」

「はい。

 ナデシコだけじゃなくって、個人個人で、護りたい人・・・」

 ・・・・・・つまりメグミは、遠回しに好きな人はいるか、と訊いているわけで・・・

 ンでもって、メグミ、暴走開始。

「(そ、そこでアキトさんが『それはメグミちゃんだよ』なんて言ったりして。

 キャーッ、わ、私ったら何を考えてるの?

 で、でも・・・アキトさんがそう言ったりしたら私・・・・・・)」

 イヤン、イヤンと首を振るメグミ。

「おいアキグワっ!!」

 メグミのおさげも一緒に左右に振れ、何の用かは知らんがアキトに声を掛けようとしたヤマダにヒットする。

   げすっ       ぐしゃっ
     どごぉっ               べきぃっ
                   がすっ
  げしっ      どげげん      げしょっ
     ぐちゃ        べこっ  etc、etc・・・
         30Hits!!

 ・・・・・・何か異様な音と共に、ヤマダが自らの血の海に沈んだ。

 

 それを偶々見ていたDが後に語る。

「アレは俺が今まで見た中で最兇の攻撃だ」

 

 しかし何故かアキトもメグミもそれ(ヤマダの惨状)には気付かず、話を進めていた。

 

 いや、もしかしたら気付かなかった振りをしただけかも知れないが。

「俺の『護りたい人』・・・・・・か・・・

 正直言って、分かんないな。そーゆうのは。

 ユリカもメグミちゃんも、ルリちゃんもラピスもハーリー君も、ホウメイさんにサユリちゃんエリちゃんミカコちゃんジュンコちゃんハルミちゃん・・・・・・みんな、護りたいからさ」

「そう・・・ですか・・・・・・

 (ちょっと・・・残念ですね。・・・だけど、何時か、アキトさんの『護りたい人』が私になりますように・・・・・・)」

「あ、そろそろ出撃だから、話はここまでね。

 また後でね、メグミちゃん」

「はい。

 アキトさん、頑張ってくださいね」

「うん」

 アキトは手を振りつつメグミを見送った。

 メグミが完全に視界から消えると、アキトは自分のエステを見上げた。

 とても重く機動性0と言ってもいいような機体・・・砲戦フレームのエステを・・・・・・
             
「むう・・・・・・これで出撃るのか、俺・・・・・・」

 そして不安そうに呟いた。

 因みに、アカツキHGも砲戦フレームである。

 

 

 ナデシコは、予想されるナナフシの最大射程距離の外側で待機、エステバリスを降ろそうとした。

 しかし、

「戦車隊がナデシコに接近中。

 数は計測不能」

「えっ!そんなっ」

「どーゆーことなのよ!これはっ!!」

「・・・ナデシコがなかなか近付いてこないから・・・・・・逆に向こうから迎撃に出てきたんだわ。

 でも・・・いくら旧時代の兵器とはいえ、戦車がこんなにいたら、突破するだけでどれくらいの時間が掛かるか・・・・・・」

 何故かブリッジにいるクルトがあまり困ってなさそうに、

「それは困ったねぃ」

 と言った。

「・・・・・・何故ここにクルトさんがいるんですか?

 クルトさんには、ナデシコに乗艦することは許可しましたが、ブリッジに入ることを許可した覚えはありませんよ」

「そんな細かいことを気にしてると禿げちまうぜぃ」

 これまた何故かブリッジにいる紫苑が言った。

「・・・・・・エステが出られるぐらいの道だったら、オレが作ってやる。
       
 だから、出撃る準備をしておけ」

 そして、すたすたとブリッジから出て行く。

 

 

 数分後、紫苑はナデシコの真下にいた。

 そして、Dに火の玉をぶつけたときと同じように何か呪文のようなものを唱え始める。

「テルナ・ジェティス・ブルグ・アード・シオン ミサキ(狂える炎の精霊に我神崎紫苑が命ずる)

 アーグディス・ジェティゥス・グルク・ウィーニィ(我に仇為し者に灼熱の鉄槌を与えよ)」
 


 ルリからの報告が入る。

「! 神崎さんの周囲より異様なエネルギー反応を検出。

 エネルギー総量は本艦のグラビティブラスト並か、それ以上です」

 

「グルンブルグ・テノスウル・ジェティス・グ・カディア・ゲルトゥス(願わくば、その炎の姿、円輪の刀とせよ)

 豪火炎陣(フレア・フラウ)」

 紫苑を中心に圧倒的な熱量を持った炎が生まれた。

 その炎の焦点温度は三千度を越える。

 鋼鉄など飴のように溶かしてしまう。

 そして炎はナデシコには何の影響も与えず、地を這い、空を奔った。

 炎に触れた戦車、いや、触れる前に戦車は文字通り飴細工のように溶け、その形を失っていく。

 

 

 ------同時刻 日本某所にて------

「・・・紫苑・・・・・・『力』、使いましたね・・・・・・?」

 どこぞの日本家屋の屋上(日本家屋に屋上?などという無粋なつっこみはしないで貰いたい)で一人の人物が呟いた。

 秀麗な眉を顰め、怒気の混じった声で。

 

 

 ------同時刻 ナデシコにて------

 それを見ていたナデシコクルーは言う。

「何なの!?アレは!!」

「何者よ!!あいつは!!!」
         あいつ
「Dもそうだが、紫苑はさらに異様すぎる!

 あんな事、人間に出来るわけがない!!」

「ふーむ・・・・・・紫苑さんは一体何者なんでしょうな〜」

「紫苑君って本当に人間〜?」

「神崎さんってすご〜い!」

「俺にもあんな事出来るかねぇ」

『スペシャルなパー、エス・パー』

 それ、ちょっと早いです。

【わーぉ、今度の同人でアレ使お〜】

[すっげぇー、マンガみてぇだな!!]

〔(・・・・・・何だ?紫苑を赤い・・・マンガみたいだが、オーラのようなモノが覆ってたように見えたが・・・・・・)〕

 少々ずれた言葉もあるが、ほとんどの人間が紫苑に驚嘆の念を禁じ得ない。

 Dが見たモノについては追々語ろう。

{・・・これでエステバリス、出られますよ}

「え・・・あ、そ、そうですね。

 これより、作戦を開始します」

 

 ナデシコから囮の修復不能の壊れたエステバリスが射出される。

 ナナフシがそれにマイクロブラックホールキャノンを撃ち込む。

 そのエステは圧壊し、爆発する。

 重力波の塊は宇宙へと行き・・・蒸発し、消えた。

 そしてエステが行軍を開始する。

 

 砲戦フレームのアキトとアカツキHGが先陣を切り、ナナフシへと向かう。

 途中、元々クルスク防衛のために埋設された地雷が爆発する。

 しかし、砲戦フレームは重装備の対地雷用エステバリスとして開発されたので、傷一つ無く先へと進む。

 ・・・因みに、アキトはまたなんか口を滑らせたおかげで、荷物持ちをしている。

 イツキは、Dと一緒に行きたかったが、ナデシコ防衛のために居残り。

「・・・クスン」

 

 同20時10分、グラニャーカ村通過。

 山越えをする。

 

 同20時45分、スベイヌン鉄橋通過。

 口笛を吹きつ、行軍する。

 

 同21時10分、カモフ岳通過。

 腕を伸ばして山登りをする。

 

 同21時30分、イール通過。

 川を渡る。

 

 同21時45分、モアナ平原。

 地雷原を越える。

 

 焚き火を囲んでみんなで食事。

 料理はDとアキトの合作だった。

 

 そして一同は再び行軍を開始した。

 

 

 ------ナデシコ------

 プシュー

「ただいまー」

 紫苑が帰ってきた。

「?何だ、その格好は」

 ブリッジクルーは軍服を着ていた。

 ルリに至っては何故か戦国武将のような鎧兜姿だった。

 ・・・ちなみに、ウリPはナポレオン風の格好だ。

 さて、ブリッジクルーは紫苑の疑問なんぞには気付かず、先程の炎についての質問を雨霰と浴びせかける。

「あ、紫苑さん、アレって何なんですか!?」

「私も知りたいわ〜」

「私も興味有ります」

「しおん、ホントにニンゲン?」

「ら、ラピス!!」

「ミサキ(神崎は、ミサキとも読めるんです例:神酒(みき)、神輿(みこし)などのように、「神」は「み」と読める)さん、あれは何なんですか?」

「神崎さん、ネルガルで働きません?お給料はこれくらいで・・・」

「ミスター、それでいいのか?」

「あ、アンタは一体何者なのよっ!!」

「え?オレ?

 んー、まぁ、秘密って事で」

 プロスは溜息を付いて一言。

「・・・あなたもDさんの同類ですか・・・・・・」

『類は友を呼ぶ』・・・そんなことわざを思い出すねぇ」

 て、的確すぎるぞ、そのことわざ・・・!

「だけどアレくらいで驚いちゃ・・・・・・

 宏美なんか解封(かいほう)したオレより力があんだぜ?普通の状態で」

「・・・宏美とは誰だ?

 解封とは何だ?」

 ゴートの質問はごもっともである。

「宏美は・・・んー・・・・・・言えるのは・・・御神楽学園ゆージョシコーの女子寮管理人やってることぐらいかなー・・・・・・

 二番目の質問は・・・やっぱり秘密だな。

 言っても信じてもらえるとは思えねえし。

 それに何より『禁忌』に触れる」

 んじゃ、オレ寝るわ、とか言って、紫苑は与えられた部屋へと向かう。

 

 

「んぎゃぁぁああああ」

『どっひぇぇええええ!!

 何々何々、何なのよこれ〜〜!!?』

【んがあぁぁぁあああ!】

〔・・・ふっ〕

{・・・・・・ふむ}

〈・・・・・・・・・〉

 エステバリス隊の面々は思いっきり逃げていた。

 その数数万の戦車隊から。

「何でだよ、さっきシオンが全部倒したんじゃなかったのかよ!!」

{ふむ・・・どうやら、戦車の工場をそのまま使ったのではなく、更に改造を施し、生産効率を高めていたらしいな}

【ンーなの反則だろがっ!!】

〈落ち着こう、リョーコ君。

 おそらく戦車どものコントロールはナナフシがしている。

 ということは{ナナフシを倒せばこいつらの動きは止まる、ということだ}

 ・・・・・・僕のセリフを取らないでくれないかい?D君〉

【となったら・・・】

『アキト君、アカツキ君、ここは私たちで何とかするからさ』

〔先に行ってな。

 あたしらの機体の武器じゃ効かないだろうからね〕

「・・・・・・分かりました。

 絶対にまた会いましょう。

 行くぞ!アカツキ!!」

〈分かったよ、テンカワ君!〉

 二機の砲戦フレームは一発も無駄玉を使わずに、リョウコ、ヒカル、イズミ、Dから予備のバッテリーを受け取り、ナナフシを目指し、走り去った。

{・・・さて、それじゃぁおれらは掃討戦を開始・・・だな}

〔そうね。

 それじゃ行くよ!リョーコ!ヒカル!!〕

【オウ!】

『は〜い!』

 エステ三人娘がライフルをぶっ放す。

 ライフル弾は戦車を貫き、土をえぐる。

 Dが放つライフル弾は確実に一発で戦車一台を潰す。

 戦車の放つ砲弾は機動性の高いエステにはほとんど当たらず(極々少しは当たった、の意)に地面へ潜り、はたまた虚空へと飛んでゆく。

 

 着実に戦車の数は減っていき、ついに最後の一台となった。

「これで終わりだっ!」

 弾切れで、イミディエットナイフを装備していたリョウコが最後の戦車を切り裂いた。

 戦車は爆光へと姿を変え、後にはその残骸が残った。

 しかし・・・・・・

「うそ・・・・・・だろ・・・・・・」

 リョウコの信じがたい現実を否定する声が伝わる。

『あんなの反則だよ』

【全くだね。

 あたしらにどうしろってぇの?】

 ヒカルとイズミもそれに同調する。

 あの巨大戦車が、更に十数台の戦車を伴い現れたのだ。

 だがDは呑気に欠伸をぶっこく。

〔あんなの結局ただの雑魚雑魚。

 まぁ見てな、って〕

 そう言うとDの駆るスーパーエステバリスカスタムはあの巨大戦車へと向かっていった。

 そのエステの手に持つ武器は高周波ブレード、レーザーブレード。

 動きを最小限に留め、バッテリーは、未だ半分ほど残っている。

〔ふっ〕

 軽く呼気を吐きつつ、巨大戦車へと肉薄する。

 ギィッ

 巨大戦車は素早くD機に照準を合わせるが、次の瞬間にはもうD機はその場から消えている。

 高周波ブレードはあらゆる物質に関して無類の切れ味を誇る。

 これで切れない物はほとんどない。

 レーザーブレードはその高熱を持って物体を焼き切る。

 これもまた、切れない物はほとんどない。

 故に・・・

 ザシュっ

 その厚い装甲を切り裂く。

 一瞬の間。

 ドゴオオォォォォォン!!!

 巨大戦車は爆光の中に消えた。

 そしてそのまま勢いを殺さずに戦車の群へ突っ込む。

 グシャッ                  ザシュッ
           ズバッ

 ドドドドドンッ!!

 巨大戦車の後ろにいた戦車どもも一瞬にして爆光に姿を変える。

 プシュゥ

 エステから白煙がたなびく。

 これでもまだバッテリーはかなり残っているが、パーツが少々加熱されたからだ。

 そうこうしていると、ナナフシの発光が止まった。

「おっ、アキトとアカツキのやつ、作戦成功か」

『良かった〜。一時はどうなるかと思ったよ』

【待ちな。 少し様子がおかしいよ】

〔何!?〕

 ナナフシの周りには・・・・・・凄まじいまでのスパークが発生していた。

 

 

 ------ナデシコブリッジ------

「どうしたんだ!?

 作戦は成功じゃなかったのか!!」

「困りましたなぁ・・・

 ルリさん、ナナフシの状況は?」

「現在ナナフシは先程のミサキさんの時をも遥かに上回るエネルギーが暴走しています。

 オモイカネの予測では約300秒後に縮退、爆発します」

「縮対って何ですか?ミナトさん」

「私に訊かないでよ〜」

「はっはっは、大変だねぇ。

 俺らこの世からお別れじゃんか」

 爽やかに言うなよ、ンな恐ろしいこと。

 

 

 少し時を戻そう。

 

「! 見えてきた!」

『そうだね、テンカワ君。

 弾薬はちゃんと残っているかい?』

「勿論。
           あいつら
 ナナフシを倒せば戦車は止まるはずなんだから、無駄玉なんか出せないよ」

『ここら辺で射程内だな。

 あんな大きいんだから、一発も外さないでくれよ、テンカワ君』

「任せろってモンだ。

 お前こそ外すんじゃねえぞ、アカツキ」

『はいはい』

 そんなことを言いながらアキトとアカツキHGはナナフシにありったけの弾丸を撃ち込む。

 その内にナナフシに光が集まる。

「どうしたんだ!?」

『充電を開始したんだ!!

 急がないと!』

「急ぐ・・・って言っても、これ以上はシステム上無理だぞ!!」

『それでも何とかするんだよ、テンカワ君!

 それが君の分野だろ!』

「ンな無茶言うな!」

 ドドドドドドドドッ 

 そんな会話をしながらも砲戦フレームはカノンを撃ち続ける。

 ドドンドドンドドンッ

 着弾する砲弾は、着実にナナフシにダメージを与える。

 そして、光を内包したまま、光り輝いていた本体の光が消える。

『やったか!?』

 アカツキHGが叫ぶようにそう言った。

 次の瞬間、

 バチバチバチバチィッ!!

 ナナフシを凄まじいスパークが覆った。

「どうしたって言うんだ!?」

『分からない。

 だがこれはヤバそうだ!!

 逃げるよ!テンカワ君!!』

「おう!」

 アキトとアカツキHGは逃走を開始した。

 

 

「?紫苑・・・?」

 Dは、何かを感じ、ふと空を見上げたら紫苑が空を飛んでいるのを目撃した。

「・・・・・・疲れてるのかな、オレ・・・っじゃなくてっ!

 これは現実だ!だが何故人間が単体で空を飛んでいるんだ!?」

 Dの疑問に答えられる人物は誰もいなかった・・・・・・

 

 

「(急がないと・・・・・・ここら辺一帯が消滅しちまう!

 本来さっきのですら禁忌に触れちまうってのに〜〜〜!!

 もう!どうしてくれんだよっ!ナナフシのヤロウは!!!)」

 紫苑は機嫌が悪かった。

 だって、宏美にばれたらきっと酷い目に合わせられるから。

 紫苑は宏美にばれたときにされるであろう『お仕置き』を想像し、顔を青くした。

「い・や・じゃぁぁぁぁぁぁ〜〜〜!!!」

 彼はそう叫ぶと一気に加速した。

 

 ルリがオモイカネの予測を伝えてから1分。

 紫苑はナナフシの元にたどり着いた。

「ふぅ・・・・・・『解封』して空間ねじ曲げにゃダメそうだな・・・・・・」

 そう言うと紫苑は地面に降り立ち、目を閉じ、腕を伸ばし、手を組んだ。
         ちから
「我ここに封印されし魔力解き放たん
            ほぐ
 大いなる封印の戒めを解き解し

 大いなる鎖を断ち切らん

 我が真なる力を解き放て
  アンテ
 解呪!」

 紫苑の言葉と共に、その赤味の髪が逆立ち、色が深紅へと変わる。

 髪で隠れていた耳に付けられていた、左右にそれぞれ三個の変わった形の金色のイヤリングが輝き、消える。

 その瞬間、紫苑の周りに風と、僅かながら炎が渦巻き、舞い、巨大な力を孕んだ光が月へと吸い込まれる。

 更に、ナナフシはその光の中に消え去る・・・・・・!

「これでOKっと。

 んじゃ、ナデシコに帰るか」

 そう呟き一度浮遊し、

「おっと、その前にも一回封印し直さないとな」

 と言い、また言葉を紡ぎ始める。

「我ここに聖なる竜に願い奉る

 竜の王すら滅ぼせし我が力
 

 その偉大なる力持て

 封印の戒めを授けよ

 我が力、天、地、海に帰せ
  シール
 封呪!」 

 風が舞い起こり、髪が再び逆立ち、耳に光が集う。

 そして風が止むときには、髪は元の赤味の茶髪に戻り、逆立った髪も元の位置に戻る。

 耳には消えたはずのイヤリングが付いていた。

「じゃ、今度こそナデシコに帰るか」

 紫苑はそう言うと再び浮遊し、ナデシコへと文字通り、飛んでゆく。

 

 

 ------同時刻 日本某所にて------

「・・・・・・紫苑、あなた・・・・・・『力』使うだけならまだしも、『封印』まで解きましたね・・・・・・?

 ・・・帰ってきたら、お仕置きです・・・・・・」

 今度は、無表情無感情でそう言った。

 ・・・さっきよりも、圧倒的に恐ろしかった・・・・・・。

 

 

 ------同時刻 ナデシコ------

 ナデシコからは何も見えてはいなかった。

 ただ、超巨大なエネルギー、質量が現れ、一瞬ナナフシ付近の全てをロストし、センサーが復活した後にナナフシが消えていた。

「い・・・一体何だったのだ!?今の光は!」

「今のは何よ!ちょっと誰か説明しなさい!!」

「「「「「「あ」」」」」」

 お馬鹿なキノコが言ったセリフに、それを聞いていたクルー全員が異口同音に文句を言う。

 ・・・尤も、それぐらいで謝るようなヤツではないが。

 “厚顔無恥”という言葉は、きっと彼のためにあるのだろう。

 これを否定する人はおそらくいない。

 今のところ『キノコ閣下万歳』なんて人、見たことも聞いたこともないから。

 ・・・かなり性格が変わってたヤツは何個か見たことはあるけどね・・・・・・

 まあそれは置いといて。

 ・・・イネスの説明もロケットにくくりつけて宇宙の彼方に飛ばして置いて。

 ナデシコクルーともあろう者達が、ただただ呆然と衛星を介して送られてくるナナフシの・・・もとい、ナナフシのあった場所の映像を見ていた。

 

 

 一応、この作戦は成功ということにされた。・・・事実、成功だったが。

 とりあえず、紫苑のことはナデシコクルーの間だけの秘密と言うことにされた。

 ・・・キノコがなにやら五月蠅かったが、Dが紫色液体(イネス製)を注射して黙らせて事なきを得た。

 

 

 追記1

 Dに謎の液体Xを注射されたキノコは、後日スライム化したらしい。

 

 追記2

 この日紫苑は世にも恐ろしい夢を見たとかで、真夜中にその叫び声でナデシコクルーの大半をたたき起こした。

 

 追記3

 ヨコスカに着く前に、無事にオメガの子供が産まれた。

 名前は「ミーミル」・・・通称「ミル」(女の子の方)と、「イクセル」・・・通称「イクス」(男の子の方)となった。
                   ↑別に両性具有のお姫様ではない

 

 次回予告

 味方(連合軍)に攻撃を仕掛けるエステ&ナデシコ。

 ウリバタケ作、七回受験したMITをイメージした電脳世界。

  次回 あの『忘れえぬ日々』
              をみんなで読もう!




 本星への報告書11

 やっと書き直し終了じゃぁぁぁぁぁ!!!

 執筆時間は7時間ぐらい。

 書き直しは3時間ぐらい。

 書き直したわけ?

 ふっ・・・・・・BBSに書いたんだが、どうも10話と一緒に送ったんだけど迷子メールになったらしくてね〜。

 upされてないのに気付いたのって、そのカキコした日(7月14日)だし。

 ・・・・・・因みに、書き直しが完了したのは7月19日である。

 再送信しようとしたんだけど何故か送信できなくってねぇ、書き直ししたんだよ。

 しかも、時間がなかなか無くて、3時間絞るのに何日間掛かった事やら・・・・・・

 ・・・まぁ、そんな暗いことは置いといて。


 tansanさんの考えてくれた「ミーミル」、使わせて貰いました。

 okumuraさんの考えてくれた「イクス」、ちょっと形変えたけど使わせて貰いました。

 tansanさん、okumuraさん、どーもねー。

 あ、そう言うわけだから、名前を考えてくれた方には申し訳ありませんが、名前の募集は打ち切りとさせていただきます。

 二つ名の投票はまだ続けますが。

 後10票!頼むぞ!!

 

 じゃっ、この辺で!
本星への報告書11 終 

 

 

代理人の感想

 

書きなおしご苦労様でした。

・・・・実を言うと「十一話修正版」は届いたんですが「十一話」が届いてなかったりして・・・・

まあ、「修正してから出した」とゆー意味だと思おう(笑)

 

 

ところで「ミーミル」と聞くとまず最初に「生首」を思い出してしまう私は異常なのかな(苦笑)?

知恵の泉の名前でもあるからその意味ではぴったりなんですが。