Dは紫苑に連れられ、日本は東京の神楽市(架空の市。八王子の北に有り)にある“御神楽学園”という学校の寮に来た。

「ほう・・・・・・これは・・・」

 寮は純和風であり、しかし、何故か屋上が確認できた。

 小綺麗な庭園もある。

 そしてその入り口には・・・・・・一人の美しい人がいた。




機動戦艦ナデシコ
TWIN DE アキト
サイドストーリー第一部〜蜥蜴戦争前夜〜
 


ぷろろーぐ 凍り付いた『刻』





「あ、宏美」
         べっぴん
 紫苑はその別嬪さんをそう呼んだ。

 そう、この蒼く腰まで届く長い髪の、眼鏡がちょっと邪魔かな〜って感じの別嬪さんこそが、おそらく読者の皆様が正体を知りたい
                  なにがし
かな〜と思っていたであろう、某(←名字じゃないよ)宏美なのだ。

「紫苑、久しぶり。

 そっちの怪しいカッコした人がDさんですか?」

「ああ、そうだ。

 D、こっちが例の“神楽財閥”の会長のお孫さんだ」
  かぐら
「神楽 宏美です。よろしく」

 宏美はにっこりと笑みを浮かべて手を差し出した。

「Dだ。本名は言えん。こちらこそよろしく」

 Dは宏美の手を握った。

 つまり、握手である。

「(ん? 宏美さんとやら、ずいぶんと手にタコが有ったんだな。しかもそれを削り落としてるなんて・・・・・・)」

 手の感触から、そんなことを思うD。

「(しっかし・・・女性にしてはずいぶんと声が低いんだな。 ハスキーボイスってヤツか?いや、それにしてもちょっと低い気が・・・)」

「ところで、ちょっと失礼」

「うわっ、いきなり何を!?」

 握手の後、宏美はDのバイザーを取り、頭を押さえ、額と額をくっつけたのだ。

「・・・・・・成る程・・・・・・(Dを解放する)

 紫苑、彼があなたのルーンを見たのは本当らしいですね。
              みかげ
 彼はどうやら神影家の血を引いているようです。
                                                 かげこ
 でも、その割にルーンの絶対量が少ないから・・・おそらく二代前ほどが神影の影児なのでしょう」

「ルーン?何だそれは」

「・・・そうですね、誰もがこう言えば多分分かってくれるでしょう。

 ゲームやアニメな、マンガどで言う“魔力”や、“氣”です」

「は?」

 ・・・この瞬間、Dの周りの刻は凍り付いた。

 

 “刻”が再び動き始めたのはそこに二人の女性と一人の女の子が来てからだ。

「紫苑!元気してた?」

 一人は太陽のようなまぶしい笑顔の、ショートの黒髪黒目の女性。

 この声がDの周りの凍った“刻”を解凍した。

「宏美、この方がDさん?」

 もう一人はしっとりとした長い黒髪と黒目の、どことなく氷のような冷たさと、春日のような暖かさを感じさせる女性。

 ・・・・・・何故か胴着を着ている。

「紫苑、久しぶり。

 ・・・そっちが“D”?」
                     ア ル ビ ノ                                        みどり
 最後が薄紫の長い髪、色素欠乏なのか異様なまでに白い肌、そして右目が碧で左目が蒼く、丈の異様に短い着物を着、スカートをはいている少女。

 頭に子猫のような物がひっついている。

 ・・・彼女を見てDは「どことなくルリちゃんやラピスに似てるな」と思った。

「薫〜〜!」

 紫苑が一番最初の女性に、両手を広げて走り寄る。

「紫苑!」

 二人が抱き合おうとした、その時。
 
 がこんっ!!
 
 ・・・・・・鈍い音が辺りに響いた。

 宏美が刀(鞘付き)で紫苑の頭を殴ったからだ。

 でもって
 
 ぴゅーー
 
 と、血が吹いている。

「紫苑、あなたにはそんなことをする前にしなくてはならないことがあります」

 宏美が手にした凶器(何処から取り出したのかは不明。しかも血が付いてる)を腰に戻しつつ言った。

「や、やらなけりゃならないこと?」

「ええ。私からのお仕置き・・・『逆エコロジカル逆さ吊り悶絶』を受けなければいけません」

「げぇっ!」

「あ、それとDさんには暫くこの寮で修行して貰いますので。あ、ネルガル会長の許可はありますからご心配なく」

 それだけ言うと宏美は紫苑の襟元を掴んで何処かへ引き擦って行く。

「さあ、それではお仕置き部屋へれっつ・ごーーっ!!」
 
「いーやーじゃーぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 
 紫苑の叫び声も虚しく・・・・・・彼は“お仕置き部屋”へと連行されていったのだ。

「ああ、紫苑・・・・・・」

 薫の声も虚しく響く。

 合掌。チーン



 そんな彼らを後目にDと他の二人は自己紹介をしていた。

「俺は本名は言えん。“D”と名乗っている」

「私は神楽 龍之(かぐら たつの)と申します。

 以後お見知り置きを」

「私は辰巳 理樹(たつみ りじゅ)。

 よろしく、D。

 それでこの子は“シャール”」

 頭に貼っ付いている子猫のような動物を両手で差し出し、そう言った。

 そしてそこに紫苑を見送っていた薫が来た。

「私は文月 薫(ふみつき かおる)。

 紫苑の恋人よ(はぁと)」

 少し恥ずかしそうにそんなことを言ってくれました。

「(へぇ〜、あん時(第10話)言ってた恋人って、この人か〜)

 俺はDだ。よろしく」

 とりあえず、これでDはこの場にいる全員の自己紹介を聞いた。
                            また
 そして四人と一匹は寮、“御神楽荘”の敷居を跨いだ。

 

 中に入ってまずDが驚いたのは、その敷地の広さだった。

 壁などからしてもかなり広いのは予想していたが、まさかこの一角丸々が御神楽の寮だとは思わなかった。

「一体どんな広さですか、ここは」

「まあ、いろいろな設備があるから」

「そうすると、これでも狭いくらいなんですよ」

「だから奥多摩の方にもっと広い施設があるよ。

 尤も、北海道の方の学校は、寮だけでここの十数倍あるし」

「(・・・・・・どんな学校だよ、オイ)」

 薫、龍之、理樹の言葉に、思わずそんなことを思うD。



 寮の中に入っても、驚くことがたくさんあった。

 特筆すべきは、女性の多さだろう。

 いや、正確に言うならば、男性がいないのだ。

 全く。誰も。一人も。影も形も。

 例外は今頃お仕置き部屋と言うところで“逆エコロジカル逆さ吊り悶絶”なるお仕置きを受けているであろう紫苑だけだ。

 当然だが、D自身のことは除いている。

 それについて龍之に訊ねると、こんな答えが返ってきた。
 
「だってここは女子校の寮ですから」
 
 Dの刻は再び止まった。

「(女子校の寮ってことはつまり女子寮だろ?そこに俺が滞在するのか?)」

 などという疑問を抱えたまま。

 今度のフリーズが解(融?)けるのは宏美とボロボロになった紫苑が戻ってきたときである。

 

 

 結局、Dはこの女子寮に滞在することになるのだが・・・・・・

 ンでもって、修行がどうの、ルーンがどうの、A10がどうのという話や昔話を(強制的に)聞くことになった。





 補足  サレナMk−Uは先にこの女子寮に運ばれている。

     何でも、地下の格納庫に格納したらしい。

 

 

 本星への報告書 TDA-S-0

 執筆時間は2時間。

 まあ、短いしね。

 それにしても、やっとここまで来たか〜。

 だが、サイドストーリーは全三部計12話+プロローグ、エピローグが3個ずつ(の予定)。

 ・・・・・・長い・・・・・・・・・



 そーいや、「逆エコロジカル逆さ吊り悶絶」って、何から引用したか分かります?

 これを言ったキャラも分かりますか?

 分かったからどーしたってモノでもありませんが。



 あ、ところで、最後の「女子校」というの、しっかり11話に書いてありますから。

 特に関係有りませんが。



 じゃっ、これからも応援よろしくね〜。
本星への報告書 TDA-S1-0 終