先の大戦から十数年・・・地球、火星、そして木連は、完璧とはいえないまでも平和であった。
これは、そんな平和な人達の生活を綴った物語である。

 火星、ネオユートピアコロニー。 このコロニーの片隅にある小さな喫茶店、Milky Way。
ここはなんと、あの漆黒の戦神テンカワアキトとその妻天川千沙が営む喫茶店である。
・・・ご近所では、アツアツオシドリ夫婦として有名だ。

「何なんですか、アキトさん!
 何でキッチンがいつの間に中華料理用に改造されているんです!?
 ・・・また私に黙って改造しましたね!!?」

「ゆ、許してくれッ、千沙さん! これだけは譲れないんだぁーッ!!」

 ・・・最も、本人達は修羅場の真っ最中だったが(汗)。





時ナデアフター
Milky Way へようこそ♪
Act02:何も無い日が終わる時






「相変わらず仲いいわね、あの二人。 ・・・ナオおじさん、コーヒー出来たわよ」

「お、ありがとう千聖ちゃん。 ・・・いや〜千聖ちゃんのコーヒーが飲めるなんて幸せだなぁ〜」

 出来上がったコーヒーをナオに手渡す千沙そっくりの少女の名前は天川千聖、十五歳。
緑のウェーブヘアーが特徴のアキトと千沙の娘で、長女である。

「仲良過ぎるのも考えモノだなぁー・・・。
 あ、ロイヤルできたよミリアおばさん。 ・・・メティはイチゴサンデーだったな」

「ありがとう和人くん。 ・・・いい香りですね」

「ありがと、カーくん。 ・・・おいしーよー、イチゴサンデー」

 ロイヤルミルクティーをミリアに、イチゴサンデーをその娘メティス(愛称メティ)に手渡すのは、
アキトそっくりの少年、天川和人十三歳。 ・・・アキトと千沙の息子で長男である。

「な、何なんですか、このマッタリとした空間は! 何で誰もパパとママを止めないんですかーッ!!(汗)」

 その隣で叫び声を上げている緑色の髪を持つショートヘアーの少女は天川理沙十一歳。
これまたアキトと千沙の娘で、次女である。

「「「「「止めたって止まらない(し/だろ/でしょ/でしょう)、あの二人」」」」」

「えぅ〜、そんなこという人嫌いです〜」

 五人の容赦ない口撃に凹む理沙。 ・・・某病弱胸薄氷菓子少女の科白を言うのは、Excaliberの趣味である。

「待ちなさーい、アキトさん!」

「許してくれッ、千沙さんッ!」

 そんな事は露知らず、激戦を繰り広げるアキトと千沙の二人。

 パリーン! ガシャンガシャン! ガッシャーンッ!!

「ケーキ皿一枚・・・コーヒーカップ二個・・・ケーキ皿もう三枚追加・・・(汗)」

「食器代も馬鹿にならないのに〜(泣)」

「参ったわね・・・このままだと今月は赤字よ・・・」

 ハァ・・・と溜息を付きつつテンカワ姉弟妹。
和人は皿の割れた音で何が割れたかを判断し、理沙は壊れ物リストに壊れた物を書き込んでいく。
そして千聖はそれを見ながら電卓片手に家計簿を見てどこを切り詰めるか考えている。
・・・さすが姉弟妹、息がピッタリだ。

「待ちなさいって言ってるでしょうッ、アキトさん!」

「うわッ!? 千沙さん物投げるの反則ーッ!!(汗)」

 カコーン、カランカランカラン! カーン!!

「・・・ステンレス製の深鍋一つ、ボール三つ、チタン製のフライパン一つ追加・・・(汗)」

「えぅ〜、あのフライパン買ったばっかりなんですよ〜(大泣)」

「参ったわ・・・大赤字決定よ・・・(溜息)」

 はぁ・・・と特大の溜息を付く三人。 
実はこの喫茶店がやっていけるのも、千聖、和人、理沙の三人がしっかりしているからなのだ。
・・・まあ、こんな家庭で育てば誰だってそうなるのかもしれないが(汗)。

「カーくん、凄いね。 ・・・音だけで何が壊れたかわかるんだ・・・」

「「苦労してる(んだな/んですね)、三人とも」」

「「「こんな事日常茶飯事(だからね/だからな/ですから)・・・」」」

 メティの感嘆の声とナオとミリアの同情の声に、諦めの声で答える千聖、和人、理沙の三人。

「・・・でも、そろそろ止めて貰わないと仕事にならないわね・・・(怒)」

 ポツリと呟く千聖の顔は微笑んでいるが、目が笑ってない。
しかもこめかみには青筋が立っている・・・せっかくの美少女が台無しだ。

「「「「「!!!」」」」」

 瞬間、動きが止まる和人、理沙、メティ、ナオ、ミリアの五人。
そしておもむろに、懐から耳栓(飛厘印入り)を取り出して耳にねじ込む。

『やば・・・姉ちゃんオーバードライブしてやがる・・・(汗)』

『テンカワ家の闘姫降臨です・・・(汗)』

『・・・千聖さんの背後からドス黒い何かが噴出してるように見えるのは、私の気のせいかな?(汗)』

『この年でこれほどまでの殺気を放出できるとは・・・血は争えないってのは本当なんだな(汗)』

『な、何でしょう・・・急に寒気が・・・(汗)』

 ・・・和人達四人はともかく、あのナオまで怯ませる千聖・・・一体何者?(大汗)
実は、テンカワ家で怒らせていけないのはアキトでも千沙でもなく、なんと千聖なのである。
千聖の絶対零度の目線と的を射た正論は、相手を簡単に黙らせる事が出来るのだ。

「ふふふ・・・年貢の納め時ですね、アキトさん」

「ちょッ、千沙さんそのギラついた目と手に握ってる鈍く光ってる包丁は何!?(汗)」

 ・・・とてつもなくヤバイ事態になっているのは気のせいか?(激汗)

「・・・いい加減にしなさいよ二人とも!!(激怒)」

 千聖の怒鳴り声がネオユートピアコロニー中に響き渡ったのは、その直後であった。
その瞬間、近所の野良犬十匹、野良猫二十匹が泡を吹いてひっくり返ったらしい(汗)。
都会の騒音でさえ60〜80ホーンなのに・・・一体何ホーン出しているんだ、千聖は?(激汗)

「ばあさんや、この声は・・・」

「ええ・・・テンカワさんとこの千聖ちゃんでしょう・・・」

「「・・・(ズズー)」」 ←茶を啜る音

「・・・何時もの事じゃ」

「はい、何時もの事ですね」

 近所のエンドウさん老夫婦は、千聖の怒鳴り声を聞きながらノンビリと三時のお茶を啜っていた(笑)。
実は千聖の怒鳴り声はネオユートピアコロニーの名物になっている。
しかも、それがトトカルチョにまで発展(年に何回怒鳴るか。一等は賞金一千万円)しているのだ(爆笑)。
・・・ホント面白いコロニーである、いや全く。





「いい、お父さんにお母さん! 二人のせいで今月の家計簿はまっかっかよ!
 仲がいいのは結構だけど、自分達の年も考えてよね!!」


「「は、はい・・・(汗)」」

「・・・だいたいね、二人とも親としても経営者としても自覚が全然足りないのよ!! それに・・・(ブツブツブツ)」

「「で、でも・・・」」

 バンッ! ←手を床に叩きつけた音

「デモもストもないわッ!!(怒)」

「「ご、ごもっともです・・・(汗)」」

 アレから少しあと。
千聖はアキトと千沙の二人を奥の部屋に正座させ、お説教を始めていた。 
親の面目丸潰れである(笑)。

「あ、足が・・・(泣)」

「も、もうダメです・・・(泣)」

 涙目で限界を訴えるアキトと千沙の二人。

「「も、もう勘弁してくれない(かな)、千聖(汗)」」

「甘いッ! 甘い甘い甘い甘いッ!! 山葉堂の練乳蜂蜜ワッフルよりも甘すぎるわッ!!」

「「・・・(泣)」」

 興奮のあまり謎の言葉を口走る千聖。

「練乳蜂蜜ワッフルってなんだ? ・・・とてつもなく甘そうだが・・・」

「さぁ・・・美味しいんでしょうか?」

 首をかしげるヤガミ夫妻。 ・・・一部の人にしか分からないネタを言うのはどうかと思うぞ、千聖(汗)。

「始まったよ、地獄の説教トライアスロン・・・(汗)」

「・・・お見苦しい所を見せてしまってすみません・・・(汗)」

 皿を拭きながら和人が冷や汗を拭えば、理沙はペコリとナオ達に頭を下げる。

「いや、構わないよ。 ・・・それに、アキトをからかう口実も出来た事だしな」

「「・・・(姉ちゃん/お姉ちゃん)、説教して欲しい人もう一人追加(です)」」

「!(ブーッ)」 ←コーヒーを噴出す音

 静かな和人と理沙の言葉に、コーヒーを噴出すナオ。

「じょ、冗談だろ?」

「「本気と書いて『マジ』と読むくらい本気(です)」」

「いや、ほら。 千聖ちゃんの都合・・・「いいわよ、別に。 一人増えた所でどうってことないわ」」

 言葉を失うナオ。 今、ナオの頭の中に『口は災いの門』という諺が嫌というほどリフレインしていた。
そりゃ、誰だって自分から説教して欲しいやつなんていないだろう。

「ミ、ミリア! 何とか言ってやってくれよ!」

「いい機会です、タップリ千聖ちゃんに絞られてきて下さい」

「へッ? ミ、ミリア何を言って・・・メ、メティ! オマエはお父さんの味方だよな!?」

「・・・私にお父さんなんていないよ・・・」

「裏切り者ーッ! 裏切ったな、俺の気持ちをみんな裏切ったんだな!!?」

 ミリアとメティの容赦ない冷酷な言葉に、錯乱してどこかで聞いた事がある様な科白を吐くナオ。
・・・誰だって自分が可愛いんだし、当然といえよう。

「おっちゃん、苦しいのは初めの五分間だけだから。 全然オッケーだぞ」

「『全然オッケー』じゃねぇッ!!」

「ナオおじさん、トイレは済ませましたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする心の準備はOK?」

「んなもん出来てるかぁッ!!
 あ、コラ! 何ドサクサに紛れて鎖で拘束してるんだよ、二人とも! 離せぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!(汗)」

「「いやほら、せっかく(だし/ですし)」」

「せっかくって何だよ!?(怒)」

「お姉ちゃ〜ん、お一人様ご案内で〜す♪」

「ご案内って・・・や〜め〜ろ〜・・・」

 和人と理沙の二人に連行されていく、鎖で簀巻きにされたナオ。
ジャラジャラと喧しい音を立てつつ奥へ消えていった。

「ナオおじさん! 二人のイザコザの原因は大半がナオおじさんが原因なのよ!! わかってるの!?(怒)」

「ぐぁ・・・」

 ・・・一時間後、燃え尽きて真っ白になったアキト、千沙、ナオが
スッキリした顔の千聖と一緒に出てきたのだが・・・誰も彼女に話し掛けようとはしなかった。
・・・とばっちり受けたくなかったから。




「なあ、アキト」

「なんです、ナオさん」

「・・・この店俺達以外に客いないのか? ・・・俺は一度も他の客を見た事がないんだが・・・」

「ナオさん達が客のいない時間帯に来るからですよ。 こう見えても、この店は繁盛しているんですよ?」

 あの、世にも恐ろしい千聖のお説教から少しあと。
燃え尽きた状態から回復したアキトとナオの二人は、いつもの様に会話をしていた。
・・・ナデシコでのお仕置きで鍛えられてきたためか、この二人には免疫があるようだ。
まあ、隣ではまだ千沙が燃え尽きているのだが。

「繁盛してても自分達で赤字にしてたんじゃ意味無いじゃない・・・」

「ごもっともです、千聖さん」

 カフェオレを啜りながらの千聖の言葉に、苦笑で答えるアキト。
その千聖の隣では、和人と理沙の二人がうんうんと頷いていた。

 カランコロン♪

「おっ? お客だぞアキト」

「わかってますよ。 いらっしゃいま・・・!?」

「どうした、アキト。 鳩が豆鉄砲食らったような顔して・・・!?」

 言葉に詰まったアキトを不審に思い、アキトの目線の先を辿って同じく言葉を失うナオ。
その先にいる人物とは・・・。

「あら、私達の顔に何かついてる?」

「腕が落ちたな、アキト。 ・・・やっほーアー君、元気ー?」

「・・・ただ単にビックリしているだけだと思うんですけど、舞歌様、北ちゃん、枝織ちゃん・・・(汗)」

 そう、そこにいたのは木連の大物こと東舞歌、真紅の羅刹こと影護北斗(枝織)、
そしておまけこと紫苑零夜の三人であった。

「おまけってなんですか、おまけって!!(怒)」

 ナレーションに突っ込むな! ・・・ギャグキャラになってもいいのかい、零夜くん?

「うっ・・・(汗)」

「・・・零夜、何さっきからブツブツ言っているんだ?(汗) ←北斗
 気持ち悪いよ・・・(汗)」 ←枝織

「うっ!!(大汗)」

 北斗と枝織のダブルパンチに、床に座り込み『の』の字を書き始める零夜。 ・・・ちょっと苛めすぎたか?

「それはそうとアキトくん、千沙とは・・・上手くやってるわね、じゃなきゃ子供三人も作らないだろうし・・・
 (ちっ、不仲だったら私が取ろうと思ったのに!)」

 言っている事と考えている事が全く矛盾しているぞ、舞歌さん(汗)。 略奪愛はいかんぜよ(大汗)。

「・・・何を考えている、舞歌?(汗)」

「べ、別にアキトくんと千沙の仲が悪そうだったらアキトくんを取っちゃおうかな〜、
 なんてこれっぽっちも思ってないわよ!? ほ、ホントだからね!!」


「「・・・つまり考えていた(んだな/んですね)、舞歌(様)」」

「うっ!!(滝汗)」

 北斗と零夜の呆れたかのような科白に、言葉を失う舞歌。 アキト達も口には出さないものの、呆れた顔だ。

「そ、それはそうと元気でやってるみたいじゃない、千沙。 もうすっかりお母さんが板に付いてるわね」

「あ、あの、私なんですけど(汗)」

「・・・じ、冗談よ、でも本当に千沙の若い頃にそっくりね(汗)」

『『『『『『『『・・・間違えた(な/ね)』』』』』』』』

 慌てて取り繕う舞歌だが、悲しいかなバレバレである(笑)。
まあ、千聖は母である千沙にもの凄く似ているので、舞歌が間違うのも無理はないのだが・・・。

「あなた達の名前は? 私は舞歌、東舞歌よ。 好きに呼んでくれてかまわないわ」

「千聖です。 初めまして、舞歌さん」

「か、和人です、舞歌おば「何か言った、和人くん?(ギロリ)」・・・舞歌お姉さん(汗)」

「理沙です〜。 よろしくお願いします〜、舞歌さん」

 順に自己紹介していく天川姉弟妹。
途中和人が口篭ったのは、強烈な視線を感じたからである。
その視線の持ち主は・・・言わなくても分かると思うから、あえて書かない。

「初めまして、メティスです」

 メティもちゃんと挨拶を交わす。 ・・・流石はミリアさんの子供(違)だけあって、礼儀には厳しい。

「ほう・・・いい面構えをしている・・・」

「そうだね、北ちゃん」

 その隣では、北斗と零夜がうんうんと感心している。

「――舞歌様、どうして突然ウチにいらっしゃったんです? ・・・思いつきで来た訳じゃないですよね?」

「何時の間に復活したの、千沙(汗)」

「ついさっきですよ、舞歌様。 ・・・で、本当の所どうなんですか?」

「鋭くなったわね、千沙。 ・・・女のカン、って所かしら?」

『母』のカン、ってヤツです」

 苦笑気味の舞歌に、微笑みながら千沙が答える。

「ふふ・・・言うようになったわね、千沙。 ・・・実は、アキトくんと千沙を見込んでお願いがあるの」

「「・・・お願い、ですか?」」

「そう、お願い」

 アキトと千沙の疑問の声に、コーヒーを啜りつつウィンクをしながら答える舞歌。

「・・・と、その前に。 入ってらっしゃい、あなた達」

「「「・・・忘れられたと(思ったよ/思った/思いました)」」」

 舞歌の声と同時に店内に入ってくる三人の少女達。
一人目は、黒いショートの髪にカチューシャが特徴の小柄な少女。
緊張しているのかおどおどしているその姿は、どこか零夜に似ている。

 二人目は、長身で長い紅の髪を背中で一まとめにしている少女。
瑞々しいその体は、躍動感に溢れている・・・北斗に似ているのは、きっと気のせいだ。

 最後に、濡れたカラスの様な漆黒の髪をボブにしている落ち着いた雰囲気を持つ少女。
三人の中では、一番大人っぽい・・・舞歌に似ているのは、お約束という物だ。

「あの、舞歌さん? この子達もしかして・・・」

「「「(私/俺/わたし)達の子供(よ/だ/です)(ポッ)」」」

「けっ、結婚してたんですかッ、三人とも!?」

 驚愕の声を上げる千沙。 声こそ出さないものの、アキトとナオも驚いていた。
・・・二人の顔が劇画調になって固まっているくらいだし(笑)。

「嘘はダメだよ、零夜ママ」

「・・・嘘つきはドロボウの始まり・・・」

「早く訳を話してあげましょう、三人とも固まってますよ(汗)」

 一人目と二人目はともかく、三人目は呆れている。
どうやら、しっかりしている(=貧乏クジを引きやすい)ようだ。

「冗談よ、まさかここまで驚くとはおもわなかったわ。
 ・・・この子達は、私達のクローンよ。 木連のとある極秘研究所から北斗が連れてきたの。
 放っておく訳にもいかないし、私達が引き取ったんだけど・・・。
 私達だって何時狙われるかどうかわからないし・・・だから彼女達を預かって欲しいの」

「・・・俺達は、抗戦派にとって目障りな存在でしかないからな」

「それに・・・この子達に『家族の大切さ』を教えてあげたいんです」

「「「自分勝手な事はわかって(いるわ/いる/います)。
   でも・・・頼れるのがアキト(くん/さん)だけ(なの/なんだ/なんです)。
   ・・・お願い(頼む/お願いします)」」」


 ペコリ、と頭を下げる三人に顔を見合わせるアキトと千沙。

「顔を上げて、三人とも。 わかりました、引き受けます。 ・・・いいよね、千沙さん?」

「もちろんです、アキトさん。 あなた達は?」

「反対するわけないじゃない。 むしろ妹が増えたみたいで嬉しいわ」

「俺も別に構わない。 つーか、歓迎するよ」

「私もですー、お姉ちゃんが増えたみたいですー」

 千聖、和人、理沙の三人も賛成のようだ。

「で、舞歌さん。 この子達の名前は?」

「あ、まだ自己紹介させてなかったわね。 はい、じゃ順に自己紹介していって、三人とも」

「はーい。 ボクは紫苑弥生、十一歳だよッ」
 
 一番目の小柄な零夜似の少女が元気良く自己紹介すれば・・・。

「・・・命(みこと)・・・影護命十三歳・・・」

 二番目の北斗似の少女が言葉少なに自己紹介し・・・。

「初めまして、東夕菜十三歳です。 よろしくお願いします」

 三番目の少女が礼儀正しく自己紹介する。

「「よろしくね、三人とも。 で、この三人がウチの・・・」」

「千聖よ。 よろしくね三人とも」

「和人だ。 ・・・よろしくな」

「理沙です〜。 よろしくお願いします〜」

 テンカワ三姉弟妹も揃って自己紹介する。

「「「は、はい・・・」」」

 和人の顔を見た瞬間、ポーッと顔を何故か赤くする三人。

「・・・やっぱりこうなったか。 俺はヤガミナオ、よろしく」

「ミリアです(・・・メティ、恋敵が増えましたね)

「メティスだよ、よろしくね(う〜、ライバルが増えちゃったよ。 でもカーくんは譲らないよッ!)

 ヤガミファミリーも自己紹介する。

「「「・・・こちらこそ」」」

 ・・・メティと三人が握手をした時、何故か火花が飛び散る(笑)。

「な、何だ? ・・・なんか険悪な雰囲気だな(汗)」

「はぁ・・・我が弟ながら将来(さき)が思いやられるわ」

「同感です・・・」

 千聖と理沙の科白が、ここにいる全員の気持ちを代弁していた(笑)。





「・・・じゃ、私たちはこれで。 アキトくん、これお勘定ね」

「そうだな」

「そうですね」

 あれからずっと昔話に花を咲かせていたアキト達。
あの後、メティ、命、夕菜の三人が打ち解けたり、理沙と弥生が仲良くなったりといろいろあった。

「えっ? ・・・もう行っちゃうんですか?」

「ええ・・・アキトくんの料理久しぶりに食べたいけど、私達がいないと木連はまだまだ不安定だから・・・」

 意外そうなアキトに、残念そうな顔で笑う舞歌。 北斗と零夜も残念そうだ。

「千沙、これがこの子達の戸籍データとその他一式ね。 それと、教育費等はこのカードに入っているから」

「はい、わかりました」

「よろしくね。 ・・・三人とも、いい子にするのよ」

「「「(うん/・・・/はい)」」」

 そう返事する三人も、どこか元気が無い。

「そんな顔しないでよ。 ・・・大丈夫、暇を見つけてちょこちょこ来るから、ね?」

「「「・・・・・・(コクリ)」」」

 実際弥生と命の二人は既に涙ぐんでおり、夕菜もなくのをこらえるので精一杯の様だ。

「和人、次に会う時を楽しみにしているぞ」

「はいッ、北斗師匠! 俺、頑張ります!!」

 ・・・何時の間にか師弟の契りを交わしていた北斗と和人の二人。
まあ、アキトの息子だけに何か特別な才能でも見つけたのだろう。

「千聖ちゃん・・・三人の事、よろしくね」

「任せて下さい、零夜さん。 大船に乗った気持ちでいて下さいね」

「お互い苦労してそうだね・・・」

「・・・そうですね」

 はぁ・・・と同時に溜息を行く二人。 ・・・実際苦労してるし。

「舞歌様、そろそろ出ないと・・・」

「そうね」

「ああ」

 意を決したように席を立つ三人。

「それじゃ三人とも、私たちそろそろ行くから」

「命、俺がいないからって鍛錬をサボるなよ」

「じゃあね、弥生。 ・・・ちゃんといい子にするのよ」

 カラン・・・

 ドアをあけて店の外に出る三人。
ドア備え付けのカウベルも、今だけは何処か寂しげに聞こえた。

「ママ・・・(泣)」

「・・・(グスン)」

「母さま・・・(泣)」

 三人が出て行ったドアを見つめる弥生、命、夕菜の三人。 やはり、家族とはなれるのが辛いのだろう

「・・・・・・」

 そんな彼女達にどう声をかけようか迷っているアキト達。
そんな時、彼女達にそっと和人が歩み寄る。

「心配すんな、きっと舞歌さん達は迎えに来るって。
 俺だっているし、姉ちゃんや理沙、メティ、親父に母さん、
 ナオのおっちゃんやミリアおばさんだっているんだ、寂しくなんか無いだろ?」


 三人を優しく慰める和人。
・・・言ってる本人かなり恥ずかしいのだろう、和人は首まで真っ赤にしていた。

「・・・クサイわね、和人(ボソボソ)」

「お兄ちゃんらしいですー(ボソボソ)」

「カーくんかっこいー(ポッ)」

「・・・アキトさんにそっくりですね(ボソボソ)」

「・・・そう、かな?(ボソボソ)」

「やれやれ、苦労するぞメティのヤツ(ボソボソ)」

「・・・メティの方は受けて立つみたいですよ?(ボソボソ)」


 ・・・外野は凄くうるさいが。

「・・・そうですね、泣いていても何も変わりませんね」

「・・・(ウンウン)」

「そうだね」

「切り替えるの早ッ!!」×全員

 急に泣き止んだ三人に突っ込むアキト達全員。

「恥ずかしい想いをしてまであんな臭い科白言った俺って、一体何だったんだ・・・」

 がくっと、床に手をつく和人。

「・・・もしかして、嘘泣き?」

「失礼ですね、本心から泣いてましたよ?」

 漫画チックな汗を掻きつつ、メティが尋ねると、心外そうにむくれる夕菜。 他の二人も心外そうだ。

「えっと、これからよろしくね、夕菜さん」

「こちらこそ、メティスさん」

「メティでいいよ、みんなそう呼ぶから」

「わかりました、メティさん。 私も呼び捨てで構いません」

「わかったよ、夕菜ちゃん。 ・・・でも、カーくんは譲らないよ?(ボソボソ)

「よろしくお願いします、メティさん。 ・・・私達、これからライバルですね(ボソボソ)

 ・・・女同士の友情が芽生えたようだ。 とっても脆そうだが(笑)。

「・・・私も負けない」

「ボクもッ!」

 和人争奪戦に名乗りを上げる命と弥生の二人。

「やっぱり二人とも・・・負けないよッ!」

「「「望むところ(です/・・・/だよッ)」」」

 親友宣言及びライバル宣言してしまった四人。
事実、彼女達はとても仲の良い親友(和人絡み以外)になる。

「な、何だ? みんなどうしたんだ?」

「苦労しそうね、和人。 ・・・まあ私は見てるだけだから構わないけどね」

「えぅ〜、お兄ちゃんに甘えにくくなっちゃいましたね。 どうにかしないと・・・」

 何処か楽しそうな千聖に、悔しそうな理沙。

「どうですナオさん、久しぶりに一杯やりません?」

「・・・下戸のお前から声をかけてくるなんて珍しいな」

「そうですか? ・・・でも、彼女達を見てたら何となく、ね・・・」

「・・・そうだな」

 アキトとナオが、顔を見合わせて笑い合う。

「缶ビール一本だけですよ、アキトさん」

「ナオさんもですよ」

 そう言いつつも、顔は笑っている千沙とミリアの二人。

「何に乾杯します?」

「そりゃあ・・・メティ達四人の女の子の友情と、和人の幸せな将来にきまってるだろ?」

「確かに」

「何なんだ・・・全然わかんねえ・・・」

 それぞれの思惑を抱えつつ、喫茶店 Milky Way の夜は、賑やかに過ぎていった。




                                                             fin






「本当に三人とも預けて良かったんですか、舞歌様?」

「・・・残念だけど、まだまだ木連は不安定よ。 あの子達を守るには、これしかないのよ・・・」

「・・・しかし、和人といったか・・・いい目をしていた。 流石はアキトの息子だ」

「そうね・・・私もあんな子が息子に欲しかったわ」

「なんだ舞歌、気付かなかったのか?」

「え?」

「あの子達、和人君に一目惚れしちゃった様ですよ」

「そうなの? ・・・じゃあ、私が『お義母さん』と呼ばれる日も近いわね♪」

「それはまだ早いと思いますけど・・・(汗)」

「和人・・・今度会うときには、お前に俺と枝織の持つ全てを教えてやるぞ・・・ぐぅ」

「北ちゃん、寝ちゃったの?」

「寝かせておいてあげなさい、ここ最近休む間も無かったんだから」

「そうですね。 ・・・舞歌様」

「なあに?」

「・・・頑張らないといけませんね、あの子達の未来の為にも・・・」

「・・・ええ」

 木星行きの船の中で舞歌と零夜は、改めて平和の大切さを知った様な気がした。
そして五年後・・・木連を纏め上げた舞歌達が見たモノは、沢山の美少女に囲まれて困っている和人だったのはまた別の話。








 後書き・・・というか座談会




 う〜、頭は痛いし咳は止まらない、おまけに鼻水は流れっぱなしという三重苦中のExcaliberです。

「うつさないでよ、Excaliber。 新キャラの紫苑弥生だよッ」

「・・・大丈夫? 新キャラの影護命・・・」

「風邪は万病の元と言いますから、気を付けて下さいね。 新キャラの東夕菜です、初めまして」

 ・・・何気にキツイな弥生(汗)。 
さて、今回は前回に比べてギャグが50%増量(当社比)だ。 どう思う?

「千聖さんって強いんだね、ボク知らなかったよ」

「理沙の科白は・・・見敵必殺?

「メティさんの科白、あれはちょっと酷いと思いますが・・・」

 一編に喋らないでくれ、頭に響く。 ・・・でも、個人的に千聖みたいな娘がいたら嫌だなぁ。

「・・・言ってくれるじゃない、Excaliber(怒)」

 ち、千聖さん? な、何でそこにいるのかな?(滝汗)

「私が呼んだんです」 ←夕菜

「大体ねぇ、アンタ熱出してんのにネットなんかやってるんじゃないわよ!(怒)」

 し、しかしだね千聖、ネットは更新が速いから・・・(汗)。

「しかしもかかしもないッ!(怒)」

「・・・自分から地雷踏んだな、Excaliberのヤツ(汗)」 ←和人

「何時もの事です〜。 それでは、また次回作でお会いしましょう!」 ←理沙

「楽しみに待っててね〜♪」 ←メティ

 

 

代理人の感想

そーですよ、体調の悪い時はさっさと寝ないと。

ま、後でツケを払うのは自分だからいいっちゃいいんですが。(笑)

 

でも、アキトはまだしも千沙がここまで堕ちていたとは(爆笑)。

新婚ボケって脳にくるんですかね〜(笑)。

 

 

 

 

#しっかし、舞歌と北斗はまだしも零夜のクローンつくって何する気だったんだろ。