ナデシコ、格納庫内。

 

「しかしまぁ…よくこんな化け物乗りこなしてるな、お前。
 〔ホワイトエンペラ−〕っていったっけ? ・・・出力はブロ−ディアの2倍、
 フィ−ルド出力も1.5倍って・・・戦艦並みだぞ?」

 

「そうかなぁ? でも、父さんと北斗母さんは楽々乗りこなしていたんだけど?
 …あ、そうそう。 サイクロンと合体すれば、全性能が1.5割増しになるよ」

 

 格納庫で、まるで世間話のように恐ろしい話をしている二人の青年が、
二体の機動兵器を見上げながら話していた。

 

 二体の機動兵器…一方は、ブラックサレナ・カスタム〔ブロ−ディア〕。
〔守護〕の花言葉を持つ、漆黒の機動兵器である。
 そしてもう一方は、〔白き皇帝〕の二つ名を持つ純白の機動兵器…
〔ホワイトエンペラ−〕である。

 

 

 

 

機動戦艦ナデシコ 時の流れに外伝
ナデシコであった、本当に怖い話Vol.06.
未来より来たりし災厄、あるいは幸せの予兆 − その2 −
明星のワルキュ−レ Aパート

 

 

 

 

 そして、そこにいた二人の青年…
 二人とも見た目が双子レベルぐらいそっくりだが、一人がメガネをかけているため、
何とか区別がついた。

 

「そうなんだよね、いつもそれで俺は父さんと間違われるんだよ。
 だから、俺は伊達メガネしてるんだ。
 しかも声まで似てるっていうからさ、電話でもよく間違われるんだよね…」

 

「…誰に向かって説明してるんだ、お前…(汗)」

 

「読者様に決まってるじゃないか、父さん」

 

 メガネをかけていないのは、〔漆黒の戦神〕、もしくは〔希代の女たらし〕
という二つ名を持つ…〔超鈍感王〕テンカワ・アキト。
 そしてメガネをかけているもう一人が…彼の未来の息子、テンカワ・マイトだ。

 

「今頃みんな心配…いや、怒ってるだろうなぁ…。
 黙って逃げてきたけど…大丈夫かな?」

 

「「大丈夫かな、じゃないでしょ(でしょう)、お兄ちゃん(兄さま)!!」」

 

 と、何時の間にいたのか、この世にあり得ざる水色と紫の髪を持つ少女達が、
アキト達の側にやって来ていた。

 

 …彼女達も同じく未来のアキトの娘、テンカワ・カスミ、ヒサメの二人である。
二人ともかなりのレベルの美少女で、振り向かずにはいられない容姿を持っているが、
実体は二人とも極度のファザコン、そしてブラコンである(笑)。

 

 カスミは動きやすそうなラフな恰好をしており、反対にヒサメは未来の母親、
ナデシコ一エキセントリック(変人)な美人女医の、イネス・フレサンジュとお揃いの
白衣を羽織っている。

 

 ただ…その白衣の所々に飛び散っている、赤い点々は何なんだ、ヒサメちゃん?

 

「これですか? …さっき、イネス母様と一緒に、ヤマダさんを生きたまま
 解剖(!?)してたんですよ。
 ・・・御陰で、いい実験デ−タがとれました」

 

 …何の実験デ−タなんだい、ヒサメちゃん?
普通、生きたまま解剖するか? 活け作りじゃないんだから(汗)。
ガイの活け作りか…。 食べたら、一発で当たりそうだ(笑)。
…って、食べられるわけがない。 犯罪だって(汗)。

 

「人間の体はどれだけの量のナノマシンに耐えられるか…じゃなくて、
 どうしてヤマダさんは異常なほどの治癒能力があるか、調べてたんです。
 そういえば…ヤマダさんの脳には、シワが三本しかありませんでしたね」

 

 …成仏しろよ、ガイ。 間違っても、化けて出てくるなよ。

 

「そうそう、今回の事、お姉ちゃん達に連絡してあるから。
 …どんな事になっても知らないからね、お兄ちゃん(ニッコリ)」

 

「私達から黙って逃げた罰です。
 …反省してくださいね、兄さま(ニッコリ)」

 

 天使の様な笑顔で死刑宣告をする、カスミ、ヒサメの二人。

 

「な、なにぃ!?
 た、頼む、それだけは勘弁してくれ!
 何でも言うこと聞くから(汗)!」

 

「もう無理だね(ですね)、多分」

 

「…そんな」

 

 …格納庫の隅で、漆黒の闇より暗い影を背負って落ち込むマイト。
 …テンカワ家の男達って、ホント不幸だよなぁ…。

 

「「お前が不幸にしてるんじゃないか!!」」

 

 

 

「マイト君って、なかなかイケてるんじゃない?」

 

「当たり前じゃないですか!
 私とアキトさんとの間に出来た子供(ぽっ)なんですから!!」

 

 ここはブリッジ。 ここナデシコで、一番のナイスバディを誇る操舵士の
ハルカ・ミナトは、缶紅茶を飲みながらブリッジ要員達とお茶をしていたりする

 

(艦内時間はいま午後三時)。

 

 そして、そのミナトさんの科白に胸を張って自慢しているのが…
今世紀最大(あ、そろそろ20世紀終わりだな…)の我等のヒロイン(たぶん)、
ホシノ・ルリ嬢その人である。

 

 ギンッ!! 

 

 他のブリッジ要員の方々の熱い(憎しみの)視線が、ルリの突き刺さる。
んが、幸せレベル最高潮のルリには、そんな視線なんぞへっちゃらぷ−(?)なのだ。

 

「…ルリ、わたしの娘もいることも忘れないでね。
 アキトは、あなただけのモノじゃない。
 わたしのモノだから…(怒)」

 

 さり気なくやばい科白を言っているのは、劇場版で華々しくデビュ−した、
ラピス・ラズリだ。 そういえば、ラピスって劇場版では科白が数える程しかない。
もうちょっと、というかハ−リ−の出番を削って出してもよかったんじゃない?
こんなにいいキャラを消すのは、すごくもったいない。

 

「ちょっと待って、二人とも。 …アキトは私の王子様なんだよ?
 そんな貧弱な体で、アキトを満足させる(何を満足させるんだ、何を?)
 事が出来るわけないじゃない。
 …可愛そうなアキト。
 大丈夫、私が、ユリカが目覚めさせてあげるからね!!」

 

 そして、一人で想像を逞しくしているのが…TV版ヒロインのナデシコ艦長、ミスマル・ユリカだ。
 さっきから何を考えているのか、時折体がクネクネ動いたり、
顔を赤らめたり忙しいので見ていて飽きない。
 ・・・ユリカ百面相だ。

 

 …だけど、何を目覚めさしてあげるんだろう…?

 

「なに言ってるんですか、艦長!
 アキトさんに相応しいのはこの私です!
 勘違いしないで欲しいですね!!
 ああっ、アキトさん!
 メグミは あなたに振り向いて貰えるその日まで、日々努力してるんですよ!!」

 

 …上には上がいる。 ナデシコ内でも前歴が声優という異色の通信士、
メグミ・レイナ−ドが器用に片方の眉を上げながら、ユリカに抗議の声を上げる。
この人も、かなり人気が高い。
 ナデシコ一の性悪女、策略家、ゲ−○−キ−○−などといろいろ騒がれているが、
実際はアキトに一途な夢見る美少女なのだ。
(十七って美少女でいいのか?)

 

 …ただ、やり方が少々、いやかなり強引なだけだ。
まあ許せる範囲だろう、多分。
 ・・・料理だけは勘弁して欲しいケドね。

 

「アキトってば…。
 浮気するのは男の甲斐性って言うけれど、今回は許せないわね・・・(怒)」

 

 怒り心頭な御様子のナデシコ副通信士、サラ・ファ−・ハ−テッドが呟く。
その怒り具合いは…彼女の握っている、スチ−ル缶の様子が如実に物語っている。
そう、サラの握っている缶はスチ−ル缶だと言うのに、ベコベコになっていた。

 

 恐るべし、乙女の恋するパワ−。

 

「なにやってるの、アナタ達! 給料から差し引くわよ!!」

 

とそこにナデシコ副操舵士、そしてネルガル会長秘書の
エリナ・キンジョウ・ウォンが参戦する。

 

「…八つ当たりはやめて下さい、エリナさん。
 …みっともないですよ」

 

「「「「そうそう(そうよそうよ、そうですよ)、エリナ(さん)。
  …年寄りの出る幕じゃないのよ(ボソッ)」」」」

 

 ルリの科白に、同調する面々。 最後の方の科白がちょっと余分だが。

 

「…何が言ったかしら、艦長、ラピスちゃん、メグミちゃん、サラちゃん…?
 …最後の方、よく聞こえなかったんだけど?」

 

「「「「…別に」」」」

 

とまあ、ブリッジは何時もの様に平和だった。

 

 一方、ナデシコ医務室。通称〔あの世へと続く医務室〕。

 

「ふふふ…。
 ヒサメちゃんは私に似て利発(エキセントリック?)だし、美人だし…(それは認めますけどね)。
 将来が楽しみだわ」

 

 と、自画自賛しているのは、ナデシコでも十得ナイフのように有能で、そして
ナデシコ一年増、そろそろ三十路のイネス・フレサンジュで…。

 

ヒュンッ!!

 

 ぬおっ、いきなりメスが!?

 

「…さて、と。
 …そろそろヤマダ君も復活した頃だし、
 もう一回解剖してみようかしら。
 あ、ヒサメちゃんも呼ばないと…」

 

 そして、コミュニケのスイッチを入れてヒサメを呼ぶイネス。

 

 …これ以上、ここにいては危ない。 そろそろ避難しよう…(汗)。

 

 場面は再び格納庫に戻る。

 

「「… …」」

 

 無言で自分の愛機のエステバリスを調整する、パイロットのスバル・リョ−コと
アリサ・ファ−・ハ−テッドの二人。
 …二人から出る無言の圧力に、周りの整備班員達も怖くて近寄れない。

 

「…なんか最近機嫌悪いよな、あの二人」

 

「…そりゃそうだろ。
 …ルリちゃんとラピスちゃん、イネスさんに大きな顔されてるんだから…」

 

「確かに…」

 

 コソコソと、格納庫の隅で呟き合っているのは、最近このナデシコに配属されて来た
新人のニイジマ・タカシ(25歳、独身。 彼女募集中!!(笑))と、同じく新人の
アサミヤ・ユウイチ(24歳、独身。 同じく彼女募集中!!(爆))の二人だ。

 

「「それにしても…」」

 

と、二人は声を合わせて呟いた。

 

「「…ウリバタケ班長は、いったい何処にいったんだろう?」」

 

 …はっ、しまった、すっかり忘れてた。
 …次元の狭間に吸い込まれたままだったんだ…
(前前作、彼方より来たりし災厄、あるいは幸せの予兆参照)。

 

「「…まあいいか。 さ−て、仕事仕事」」

 

と、二人は自分の上司の事なんて気にせず、仕事に戻るのだった。

 

 …ひでぇ部下を持ったな、ウリバタケ…。

 

 まぁ、そんな事ばかり気にしてたら、ナデシコでやっていけないのも事実なんだけどね・・・(笑)。

 

「ちょっと、そこ! グズグズしてないで早く終わらせてちょうだい!!」

 

「「ウィ−ッス!」」

 

と他の整備員に指示を出しているのは、〔魅惑のスパナ使い〕ことレイナ・キンジョウ・ウォンだ。

 

「なんか最近、仕事きつくないっすか?」

 

「おれもそう思う。
 …でもな、あの状態でレイナちゃんに文句言える奴がいたら、おれは見てみたいぞ」

 

「…あ、それ言えるっすね、確かに」

 

 仕事をしながら話しているのは、古株の整備員のマツヤマ・ヨウスケ
(32歳、既婚済み。 今、二児のパパである)とヒロサキ・セイジ
(28歳、同じく既婚済み。 一児のパパ)の二人だ。

 

 そう、今のレイナはまさに
『触るな危険! 後でどうなっても知らないからね(はぁと)』という状態なのだ。

 

「おい、見てみろよ。
 文句言いにいったやつがいるぜ」

 

「え、どれっすか?」

 

「そこだよ、そこ」

 

と二人が仕事の手を止め、そちらを見た瞬間、レイナに文句を言いにいったやつは
レイナの持つ妖刀村正、違った巨大スパナの錆となった。
いくらナデシコは治外法権だって言ったってさ…これは完璧に傷害事件だぞ…(大汗)。

 

「あ、ああ…」

 

「さあ仕事だ、マツヤマ。
 おれ達は何も見なかった。
 そうだな?」

 

「…そうっすね、ヒロサキさん。
 俺達は何も見ませんでしたね」

 

「「… …」」

 

 しばらく無言の二人。

 

「「さあ、仕事仕事と…」」

 

 やっぱり、自分の身が一番可愛い二人だった。

 

 

 

 一方、ナデシコ食堂では…。

 

「「「「「アキトさん…覚悟して下さいね…。
     …ふふふ」」」」」

 

 シャ−、シャ−、シャ−…。

 

 …包丁を研いでいる、ホウメイガ−ルズの姿がある(汗)。

 

 それぞれ出刃包丁、刺身包丁、菜切り包丁、中華包丁、そしてホウメイが
通販で買った穴空き万能包丁(お値段2,980円、お買い得!)を研いでいる。
時折、研ぎ具合いを確認するために明かりにかざすため、包丁がギラリと光を反射する。

 

『テンカワ…お前も災難だねぇ。
 大丈夫、骨はちゃんと拾ってやるよ…』

 

 ナデシコ料理長、ホウメイさんがその様子を見ながら、心の中で愛弟子に向かって呟いていた。

 

 

 

 

 

 メキョ!!

 

「・・・ほ、本当にどうしたの、北ちゃん!? 最近なんかおかしいよ?」

 

「…心配するな、零夜。
 何故か、むしょうに腹がたっただけだ」

 

 …またも、ジュラルミン合金の扉をベコベコにした北斗がいた。

 

「はは−ん…。
 ストレスが溜まってるんだね、北ちゃん?
 でも大丈夫、零夜にまかせて! こんな時は!!」

 

「…こんな時は?」

 

「高杉さんをボコボコにしちゃえば、スッキリするよ!」

 

「なるほど、そうか…」

 

「ちょっと待ていっ、零夜ちゃんっ!
 北斗殿も、そう簡単に納得しないで…。
 ああっ、早まらないでください!!
 何なんですかっ、その握り拳はっ!?」

 

 零夜の科白と北斗の闘気に、背筋が凍る思いのサブロウタ。

 

「ちょうどいい、最近は体が鈍ってしょうがない。
 … … はぁぁぁぁぁぁ … …」

 

「わ−っ! ちょっと待ったぁ−!!(泣)」

 

 朱金のオ−ラを上げ始める北斗を、何とか説得しようとするサブロウタ。

 

「…はっ!!!」

 

 が、無駄な努力だったようだ。
 北斗から放たれた気は、サブロウタの鳩尾を完璧に捕らえていた。

 

「ああ…俺は…もう駄目だ…」

 

ドサッ ← サブロウタが床に叩きつけられる音。

 

「どう、北ちゃん? 少しはスッキリした?」

 

「…全然駄目だな。
 おいサブロウタ、もう少し付き合ってもらうぞ」

 

「… …(気絶中)」

 

「ふん、情けないヤツだな」

 

「ほ、北ちゃん。
 高杉さんが情けないんじゃなくて、北ちゃんが強過ぎるんだよ」

 

「そうなのか?」

 

 いまいち自分の実力を理解していない北斗と、脅えている零夜がそこにいた。
 サブロウタもかわいそうに。 八つ当たりされてさ。

 

「そういえば、北ちゃん。
 ナデシコに新しい機動兵器が搬入されたみたいだよ。
 なんでも白い機動兵器みたいで、テンカワ・アキトの乗っている機動兵器と
 同等かそれ以上の性能を持っているんだって」

 

「ふん、それは面白そうだな。 よし、進路変更。 ナデシコに向かえ」

 

「…北ちゃんかっこいい…(はぁと)」

 

 最後の零夜の科白はちょっとヤバめだが、取り合えず無視してナデシコへと向かう事にした北斗。

 

 この後、彼女にとって衝撃的な出来事が待っているのだが…そんなことは
まだ誰も知らなかったのである。
 そう、戦いの申し子である北斗でさえも…。

 

 ま、それだからこそ、人生っていうのが面白いのだけれど。

 

 

〔前方50km先にボソン粒子の増大反応を確認!〕

 

「総員戦闘配置! 第一級戦闘態勢へ移行して下さい!!」

 

「「「えっ、なに?」」」

 

「「どうかした(の、んですか)、オモイカネ?」

 

 突然開かれたオモイカネの警告ウィンドウに、ユリカ以外まともに反応出来る
人がいなかったりする。
 ホントに大丈夫か、ナデシコ?

 

「でもさぁ、ナデシコに向かって直接ボソンジャンプ出来るんだから、
 またアキト君の娘だったりして」

 

「「そんな…まさか…」」

 

「「「「ありえますね、それ」」」」

 

 その可能性を信じたくないルリとラピスに対し、いくぶん嬉しそうな感じの
ユリカ、サラ、メグミ、エリナの四人。
 …自分の娘かもしれないからだ。

 

 そしてそこに現れたのは…紅の、機動兵器だった。

 

「ま、まさか…」

 

「こ、これって…」

 

「北斗が乗っている…」

 

「「「「「「「ダ、ダリア…?」」」」」」」

 

 畏怖の念に取られ、動けないブリッジ要員一同。
(ちなみに副長ことアオイ・ジュンは、次元の狭間旅行に行っているので、
 この場にはいない)

 

「ど、どうするの、艦長!?」

 

「ど、どうするって言われても…」

 

 珍しく慌てているエリナに尋ねられて、慌てふためいているユリカ。

 

「と、とりあえず、アキトかマイトくんに伝えて!」

 

「は、はいっ!」

 

 メグミが、慌ててコンソ−ルを操作し、アキト達に連絡しようとした、その時。

 

 スッ…っと、横から、何時の間にかブリッジに来ていたカスミの手が伸びてきて、それを押し止めた。

 

「その必要はないよ、ユリカママ達」

 

「え? ど、どうして、カスミちゃん?」

 

「カスミ姉さまに変わって私が説明させていただきます。
 まず、あの機動兵器はダリアではありません」

 

「じゃあ、なんなの?」

 

 サラの科白に、カスミとヒサメの両人はにっこりと、誰をも魅了するような笑顔で、

 

「「あの機動兵器は、私達のお姉ちゃん(姉さま)、マトイお姉ちゃん(姉さま)の
  〔レッド・ロイヤルガ−ド(赤き近衛騎士)〕だよ(です)」」

 

と息を揃えて言う。 さすが双子、息がピッタリだ。

 

「「「「えっ、えぇぇぇぇぇぇぇぇ−っ!?」」」」

 

 ユリカ達が驚きの声を上げた、その時。

 

〔私の名はテンカワ・マトイだ。
 …着艦許可願いたいのだが、よろしいか?〕

 

 音声のみで、テンカワ・マトイと名乗る女性が、ブリッジに着艦許可を求めていた。

 

「は、はあ…。 どうぞ…」

 

「マトイお姉ちゃん、久し振りだね! 元気だった!?」

 

とカスミが元気な声で自分の姉に挨拶すれば、

 

「マトイ姉さま、お久し振りです。 母さま達の御様子はどうですか?」

 

というように、ヒサメは穏やかに挨拶する。

 

〔ああ、久し振りだな、二人とも。 …細かいことは後で話す。
 取り合えず、ゲ−トを開けてくれ。 …アズサ達も、一緒に来ているぞ〕

 

「「えっ、アズサお姉ちゃん(姉さま)も(ですか)?」」

 

〔そう、私も今回便乗して来たのよね。 …久し振り、二人とも〕

 

〔うぅ−っ、一人用の機動兵器に四人はきつかったよぅ〕

 

〔あらあら、イ−ナったら。 もう少しだから我慢してね〕

 

と、音声だけだが賑やかな声がブリッジに響く。

 

「さて、どうなることやら…。 楽しみだわ(ニヤリ)」

 

 ミナトさんのその科白は、誰にも聞き取られる事がなく消えていった。
…実は書いてる僕自身、楽しみだったりして(笑)。

 

 

 ザワザワザワザワ…。

 

「ん? 何か賑やかになってきたな。 どうしたんだろ?」

 

「さあ? …でも…な−んか嫌な予感するのは気のせいかな?」

 

「…お前もそう思うか、マイト。 …実は、オレもだ」

 

 親子揃って自分達の愛機を調整していたアキトとマイトは、突然賑やかになった格納庫を
不思議に思いながらも、愛機の調整を続けていた。

 

「ディア、一体この騒ぎは何なんだ?」

 

と、アキトは自分の愛機、〔ブロ−ディア〕のメインA・Iに尋ねてみる。
…この胸の悪い予感が、ただの思い過ごしだといいな、と思いながら。

 

〔ん−? 何かね、マトイっていう人が着艦したいんだって、アキト兄〕

 

「な、何だって!?」

 

 ガシャ−ンッ!!

 

「ど、どうした、マイト。 そんなに慌てて?」

 

「シルビアッ、おいっ、シルビアッ! その話は本当なのかっ!?」

 

 今まで持っていた工具を辺り一面にぶちまけるマイト。
 しかし、今の彼にそんな音は聞こえない。
 何せ、彼にとって死活問題だからだ。

 

〔ええ、そうよ。 ついさっき、マトイさんやアズサさん達も来たみたいね〕

 

〔あ、それと〔レッド・ロイヤルガ−ド〕のメインA・Iから通信が来てるぞ。
 そろそろ来るんじゃないか?〕

 

 ポンポンッと次々にマイトの回りに開くウィンドウに映っているのは、
〔ホワイトエンペラ−〕メインA・Iのシルビアと、ガイア・カスタムメインA・I、
スコットである。 シルビアの方は金髪の美少女、スコットはやんちゃ坊主を連想させた。

 

「そ、そんな…こんなにもあいつらの行動が早いなんて…」

 

 茫然としているマイト。

 

「マイト…。 お前の考えていることが、大体読めたぞ。
 …さあ、行きたくもないけど、ブリッジに行くぞ」

 

「…そうだね」

 

 騒ぎの元凶(アキト)と騒ぎの張本人(マイト)の二人は、暗くて長い、
そして重い影を背負いながらも、行きたくもないブリッジへと向かっていった。

 

 そして二人がブリッジに上がったとき、ブリッジは(アキトにとって)凄い事になっていた。
 まずルリ、ラピス、イネスの機嫌がすこぶる悪い。
 他のTA同盟の連中に対してのアドバンテ−ジが無くなるからだ。

 

 それに対し、他の連中は見事に浮足立っていた。
 そわそわそわそわ、と傍から見ていても落ち着きが足りない。
 特に、ユリカとメグミは赤面したり、くねくね体を動かしたり、顔を真っ青にしたり、
顔を手で覆ったり、果てには〔イヤンイヤン〕なんて両手を振りつつ声を上げている始末(笑)。

 

 ホントに見ていて飽きない。 

 

 その様子を面白そうに見ているのは、ナデシコ内でも数少ない中立の立場のハルカ・ミナトと、
元クリムゾン諜報部のヤガミ・ナオだ。

 

「さてさて、騒ぎの元凶と張本人がやって来た所で、お姫様達をお通ししますか」

 

 ウキウキと、この騒ぎをどう見ても楽しんでいる様にしか見えないナオが呟く。

 

「…楽しんでるわね、ナオさん」

 

「…そういうミナトさんこそ」

 

「「ふふふ…(ニヤリ)」」

 

 こ、怖いって二人とも…(汗)。 じゃ、そろそろお姫様達を登場させよう。

 

シュッ ← ブリッジの自動ドアが開いた音。

 

「…ふむ。 ここが昔のナデシコか」

 

「未来のナデシコと何ら変わりないのね」

 

「ほえぇ−…。 広いねぇ−、お姉ちゃん達…」

 

「あらあら、まぁまぁ…。 ここが過去のナデシコですか…」

 

 口々にそんな事を言いながら現れたのが、未来のアキトの娘達である。

 

「わ−い、マトイお姉ちゃ−ん! みんな−、久し振り−」

 

「マトイ姉さま、アズサ姉さま、メイナ姉さま、そして、イ−ナ。
 お久し振りです。 お母さま達は、お変わりありませんか?」

 

とカスミとヒサメが自分達の姉に挨拶をしている。

 

 それぞれの容姿を順に説明していくと、一番最初に現れた女の子は燃えるように紅く長い髪を
ポニ−テ−ルにし、紅の瞳を持っている大和撫子を絵に書いた様な少女だった。
 野性の野鹿の様な躍動感が感じられるのが特徴だ。

 

 次に、紺色の髪をセミロングにした女の子。 明朗快活な様子らしく、
ハキハキとした喋り方が特徴の女の子だ。 ただ、この子からは優しさ、
そして母性が滲み出ている。

 

 三番手はプラチナの様な銀色の髪をロングにし、ピョコンと出ているアンテナの様な
髪が特徴の、カスミやヒサメと同じくらいの年齢のボ−イッシュな女の子。
天真爛漫というかなんというか、ほえぇ−という表情が何ともチャ−ミングだ。

 

 最後に、金髪で眉毛が太い、マイペ−スそうな女性がブリッジに入ってきた。
この四人の中では一番スタイルがいい。 いや、決して他の三人のスタイルが悪いわけではない。
 それどころか、全員かなりスタイルがいい部類に入るのだが、
彼女が飛び抜けてスタイルがよかった。 バンッ、キュッ、ボンッみたいな(笑)
感じで、何か抱き締めたらふにふにしてそうな柔らかそうな体だ。

 

「お初にお目に掛かる。
 私の名はテンカワ・マトイ。
 十七歳だ」

 

「わたしの名前はテンカワ・アズサ。
 マトイと同じ、花のセブンティ−ン。
 趣味は料理。
 特技は裁縫、家事全般よ」

 

「ボクの名前はテンカワ・イ−ナ。
 十五歳で−す。
 えっと、趣味は…本を読むことかなぁ…」

 

「あらあら、わたしが最後ですか? じゃぁ、自己紹介しないといけませんね。
 わたしの名前はテンカワ・メイナ、十八歳です。
 …よろしくお願いします」

 

「は、はあ。 どうも…」 ← ブリッジにいる人全員。

 

 一方、未来の父親のテンカワ・アキトは回りの視線(特にTA同盟)の視線がすごく痛かった。
 そして彼女達の兄、テンカワ・マイトもこの場からすぐにでも逃げ出したかった。
 何故なら、この後の展開が読めたからだ。

 

「ところでカスミ、父上は何処に?」

 

「パパなら…、そこで黄昏ているよ」

 

とカスミが指差す先には、もうどうでもいいや、オレの人生なんてしょせん
ジェットコ−スタ−かフリ−フォ−ルなんだし…という感じのアキトがいた。

 

「お初にお目に掛かります、父上。
 私の名はマトイと申します」

 

「あ、う、うん。
 はじめまして」

 

 純大和撫子みたいな感じのマトイに、ドギマギしているアキト。
 それはそうだろう。
 ナデシコに、こんな礼儀正しい子はいないからな。

 

「マトイばっかりずるい。
 お父さん、私はアズサよ。 初めまして!」

 

「おね−ちゃん達ばっかりズルいよぉ。
 おとうさん、ボクはイ−ナって言うの」

 

「あらあら、みんな抜け駆けしてずるいですよ。
 お父さま、私はメイナです」

 

 ガシッ×4 ← 全員アキトに抱きついた音。

 

「…やっぱりファザコンなのね、この子達。 ということは…」

 

と隣にいるルリ達の顔が正視出来ないので、マイトの方に顔を向けたミナト。

 

 どうして正視出来ないかって?
 それは…とてつもなく恐ろしいからである。
 敢えて言葉にするなら…〔言葉にも書けない恐ろしさ〕とでも言った方がいいのだろうか?

 

(…ってどんな恐ろしさなんだろ。 書いてる本人がわからないや(笑))

 

 そして、何時の間にかアキトの側から離れ、今度はマイトに詰め寄っている四人。

 

「兄上! 何の相談もなしに勝手に何処かに行くのは、今後辞めて頂きたい!!
 罰として、後で私の剣の練習相手になってもらうぞ」

 

「マイト兄さん、ホントに心配したんだからね。
 罰として、後で料理手伝う事」

 

「おにいちゃん、ボク、ホント−に寂しかったんだよ。
 罰として、後で勉強手伝ってね」

 

「あらあら、マイトお兄さま。
 幸せ物ですね、こんなに妹達に心配してもらえて。
 でも、私も心配してたんですよ? 後で、肩叩き五百回お願いしますね」

 

「……はい(涙)」

 

 口々に彼女達はそう述べた後、やっぱりマイトに抱きついた。

 

「そんでもって、やっぱり極度のブラコンなワケね」

 

 その一部始終を見ていたナオが、呆れたように呟く。

 

「…あれ? そこにいるのは…ナオおじさんだぁ!」

 

「え、どこどこ?」

 

「む、ナオ殿?」

 

「あらあら、ホントですねぇ」

 

と、今度はナオに向かって四人。

 

「ナオおじさぁぁぁぁぁぁんっ!!」

 

 ドゴシャッ!!

 

「ぬおわっ!? い、いきなり何するんだっ!?」

 

「…惜しい、かわされちゃった…」

 

 すんでの所で、イ−ナの走り幅跳び・世界新記録ばりのジャンプキックをかわしたナオ。
 ちなみに、その時イ−ナはナオからどんなに軽く見積もっても10mは離れていたのだが。

 

 ところで、ナオの後ろには運よくと言うか運悪くというか、マキビ・ハリこと人柱
(反対か?)がいたため、巻き込まれて艦橋の隅まで吹っ飛び、そこでピクピクと
小さく断末魔の痙攣を起こしていたりする。

 

 まあ、ハ−リ−なんてほっといて、話を続けよう。

 

「ヒドイッ! 僕の事なんてどうでもいいんですかっ!?」

 

 ぬおっ、ゾンビッ!?

 

「…この頃から、ハ−リ−おじさんって不死身だったのね(汗)」

 

 ハンカチで、汗を拭くアズサ。

 

「ナオ殿ぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」

 

 ブオンッ!

 

 ハッシ ← 刀を真剣白刃取りした音。

 

「こ、殺す気か君はぁ!!?」

 

 頭に大きな汗を浮かべたナオがマトイに怒鳴る。
 そりゃ、殺されかけたんだから、当然だ。

 

「…流石はナオ殿。
 いくら手を抜いたとはいえ、私の剣を受け止めるとは」

 

「だめですよ、そんなことしちゃ」

 

 感心している様子のマトイを、宥めているメイナ。
おっとりお姉さんというのが、しっくり来る。

 

「…未来でも人気物ですね−、ナオさん…」

 

「よかないわっ!
 本気で殺されかけたんだぞっ!!
 …アキト、お前の娘達は一体どうなってるんだ!?」

 

「…オレが聞きたいですよ、それ…」

 

 ゼ−ゼ−と肩で息をしているナオが、アキトに詰め寄るが、アキトは取り合わない。

 

「もうっ、そんな事はどうでもいいのっ!
 …で、あなた達は誰の娘なの?」

 

「よくないですよっ、ミナトさんっ!!!」

 

 ナオが文句を言うが、ミナトは取り合わなかった。

 

「私は…」

 

「ストップ、マトイ。 …マトイは最後の方がいいわ。 その方が面白いし。
 …と言うことで、私から。 さっきも自己紹介したけど、私の名前はテンカワ・アズサ。 
 …エステバリスパイロットの、スバル・リョ−コが私の母親です」

 

「お、オレがっ!?」

 

「…全然雰囲気違う…。
 リョ−コ(ちゃん、さん)の娘だったら、
 もうちょっとガサツだと思ったんだけど(ですけど)…」

 

「…褒め言葉として、受け取っておくぜ」

 

 ちょっといらついているが、内心嬉しさが隠せない様子のリョ−コ。

 

「次はボクかな? ボクのおかあさんは、アリサおかあさんだよ」

 

「わ、私ですかっ!?」

 

 …艦長の子供じゃない(んですか)、この子…?

 

 疑わしそうに、ジト−という目で見るTA同盟の方々。
確かに、アリサのように凛とした感じではなく、
ホニャラ−みたいな雰囲気をかもし出しているからだ。

 

「でも…、どうしてこうなったんでしょうか?」

 

「…イ−ナの場合、何故かはわからないけどユリカ母さんの劣性遺伝子が
 混ざり込んじゃったんだ。
 …その影響かどうかは知らないけど、天真爛漫で手先が異常に不器用なんだよ」

 

 いまだ首ねっこにしがみついているイ−ナを、何とかひっぺがしながらマイトが原因を説明する。

 

「…遺伝子の、神秘ですね」

 

「…それどういう意味なの、アリサちゃん」

 

 感心しているアリサを、ジト目で見るユリカ。
 自分の娘じゃないのがよっぽど悔しいらしく、少々機嫌が悪い。

 

「はいはい、次はわたしの番ですね? わたしのお母さまは、
 そこにいるサラ・ファ−・ハ−ッテッドですわ」

 

「…わたし? …でも、ぜんぜん似てないわよ?」

 

 驚きの表情で、自分の未来の娘を見ているサラ。
 たしかに、金髪という所は共通しているが、眉毛が太い所、
そしてノホホンとした性格はどう見ても自分のものじゃない、とサラは考えていた。

 

 …結構、酷い事を考えているサラである。

 

「それでしたら…わたしの体には、ミナトおばさまの遺伝子が入っています。
 性格も、それの影響じゃないでしょうか?」

 

「…ミナトさん、大活躍ですね」

 

「あ、あは、あははははは……(汗)」

 

 頭にでっかい汗を浮かべて笑っているミナト。
 何となく、理由が分かったからだ。
 …実際、その通りなんだけどね(前前回を参照して下さい)。

 

「…では、最後に私の番だな。
 …っと、その前にもう一人紹介するのを忘れていたな。 
 …少し、待っていてくれ」

 

と、マトイがポニ−テ−ルを解き、目を閉じる。 
その瞬間、髪の毛の色が真紅から、だんだん色鮮やかな
エメラルドグリ−ンに変わっていく。

 

「か、髪の毛の色が変わった!? …どうなってるの、コレ?」

 

「ふふ、絶対びっくりするよ、みんな」

 

「そうですね」

 

 これから先に何が起こるのか分かっているカスミとヒサメの二人は、
クスクスと忍び笑いを洩らしている。 そして、他のテンカワ家の娘達も、
何が起こるのかを言いたくて言いたくてしょうがない、という顔をしていた。

 

「はじめましてっ! テンカワ・マトイの裏の人格、テンカワ・キリンです!!」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇっ!!!?」

 

 と、瞳を開けたマトイ、いやキリンは元気な声で挨拶した。
いつの間にか、彼女の瞳は真紅から髪と同じエメラルドグリ−ンに変わっている。
それどころか、彼女から発せられていた近寄りがたい威圧感は綺麗さっぱり
消えており、反対に人懐っこい雰囲気が滲み出ている。

 

「普段はマトイが出てますけど、マトイが疲れたとき、もしくは交代したい
 という時に出てきますので、よろしくねっ」

 

 ここで、ウィンク一つ。 …このウィンクで、他の男どもを魅了してしまった。
 特に、ガイ(本名、ヤマダ・ジロウ)。
 彼曰く、萌える、ちがった燃えるシチュエ−ションなんだそうだ。
 …よくわからんが。

 

「…それはわかったけど…。
 どうして髪の毛の色や目の色が変わるの?」

 

 恐らく、未来のテンカワ家を除くブリッジにいる全員が思っているであろう疑問を、
今までセリフが少なかったエリナが代表して尋ねる。

 

「ナノマシンですよ。
 マトイ姉さまがキリン姉さまになる時、ナノマシンが反応して、髪の毛や瞳の色が変わるんです」

 

「へぇ−…」

 

 ナデシコクル−は、もう感心するしかない。

 

「そうそう、私の母親の話だが…」

 

 いつの間にキリンからマトイに戻ったのか、本題を切り出すマトイ。
 その代わり身は、びっくりするほど早い(僅か0.3秒)。

 

「母上?
 …母上は何処だ、兄上?」

 

「ああ、北斗母さんなら、まだこの時代はまだ父さん達と戦っている頃だよ」

 

 キョロキョロと辺りを見回すマトイに、マイトが助け船を出す。

 

「「な、なにぃぃぃぃぃっ!?
  ほ、北斗の娘だってぇぇぇぇぇぇっ!!?」」

 

 驚愕の声を上げる、アキト、ナオ両名。

 

「あれ、まだ話してなかったっけ?
 父さん未来では北斗母さんと一緒になってるって?」

 

「い、いや、聞いてたけど、まさかここまでとは思わなかった…(汗)」

 

 マイトのセリフに、冷汗をかきながらアキトは上擦った声を出す。
 いよいよ、回りのTA同盟の(憎しみの)視線が強くなってきた。
 その視線に、何とか耐えているアキト。
 ただ、もうそろそろ駄目みたいだが。

 

「母上は…何処に…」

 

 ドゴ−ンッ

 

 マトイがそう呟いた瞬間、ブリッジに衝撃が襲う。

 

〔ディスト−ションフィ−ルド発生ブレ−ドに被弾! フィ−ルド出力50%に減少!
 ブリッジ付近には、損害なし!〕

 

 オモイカネから、被害状況が報告される。 

 

「ダリアの機影を確認!!」

 

 メグミの報告を聞き、ユリカが檄を飛ばす!!

 

「エステバリス隊、発進! 全機、艦からあまり離れず、近寄ってくる
 敵だけに攻撃して下さい!! アキトは北斗の相手をして!!」

 

「了解!!」×7 (アカツキもまた、次元の狭間観光に出掛けているため不在)

 

と、急いで格納庫に向かって走っていくパイロット七人。

 

「じゃあ、俺も出るよ。
 念のため、ということで」

 

と、マイトまでバックアップを名乗り出る。

 

「兄上、私も…」

 

とマトイも名乗り出るが、マイトは首を振る。

 

「マトイはここに残ってみんなの護衛だ。
 あれが囮かもしれないからね」

 

「…はい」

 

 しぶしぶ、承知するマトイ。

 

「アズサ、イ−ナ、メイナ。
 みんなも頼む」

 

「はいっ!」 「うんっ!」 「はい」

 

 三者三様の答えを返す三人。

 

「兄上、これを母上に…」

 

とマトイが懐から取り出したのは、一枚の光ディスク(MOディスク)。

 

「わかった、渡しておくよ」

 

 ディスクを受け取り、マイトはニッコリ笑うと、アキト達の後を追いかけて、格納庫へ走っていった。

 

 

 

 …そして一分後。 ホワイトエンペラ−を含む八機のエステバリスが、
ナデシコから飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

  Bパートへ続く