ゴックン・・・。

 

 〔漆黒の戦神〕テンカワ・アキトと、その息子〔白き皇帝〕テンカワ・マイトは、

自分に聞こえるほどの大きな音を立て、ゆっくりと唾を飲み込んだ。

・・・自分の唾を飲み下す音がこんなに大きく聞こえたのは、

アキト(マイトもであるが)の人生の中では初めてである。

 

「父さん・・・どうして俺達親子は、料理でこんなにも苦しむんだろうね・・・?

 これって、俺達親子の宿命なのかな・・・神様ってホント不公平だ・・・(泣)」

 

「・・・言うなマイト、それだけは言わないでくれ。 オレが聞きたいくらいなんだから・・・(涙)」

 

 はぁ・・・

 

 時を越えた親子は、顔を見合わせた後、揃いも揃って大きな溜め息を付いた。

ちなみに、ここは機動戦艦ナデシコ内食堂、通称ナデシコ食堂である。

 

「・・・神よ・・・先立つ不幸を許してくれ・・・。 ・・・俺はまだ、死にたくない・・・(汗)」

 

「人間・・・諦め時は大切だ・・・。 だけどオレには、まだやり残した事があるんだよぉぉぉぉぉッ!!!!(泣)」

 

 ブル−を通り越してブラックに入っているテンカワ親子の隣で、

神に祈っている青年が二人・・・何を隠そう、未来から来たマイトの友達である。

 

「ア・・・アテナの手料理・・・。 超感激・・・!!(感涙)

 でも・・・やっぱりオレも、一緒に食べなきゃいけないのか?(汗)」

 

 そんな沈黙の中、一人だけ歓喜に狂っている青年・・・ヤガミ・ナオその人である。

これから自分に襲いかかる、不幸も知らずに・・・。

 

「「「「みんな−、料理できたよ−♪」」」」

 

 厨房の方から聞こえてくる、楽しそうな少女達の声。

その時、彼らは自分達に最後の審判が下った事を悟ったという・・・。

 

 

 

機動戦艦ナデシコ・時の流れに外伝

ナデシコであった、本当に怖い話Vol.08

未来より来たりし災厄、あるいは幸せの予兆 − その4 −

目指せ! クッキングマスタ−!!

 

 

 

 話はちょっと・・・いや、かなり遡る。

 

「ハ−リ−おじさ−ん! 一緒に遊ぶです−ッ!!」

 

「えっ・・・。 ・・・うん、わかったよ、キャルちゃん。 何して遊ぶの?」

 

ナデシコ・メインブリッジ。

暇を持て余していたハ−リ−ことマキビ・ハリは、たまたま偶然ブリッジに遊びに来ていた少女、

テンカワ・キャル(未来のアキトの娘)に誘われていた。

 

・・・あのハ−リ−女の子から誘われる・・・世も末である。

 

「・・・それ、どういう意味ですか?」

 

 読んで字の如く、世も末だと言ったんだよ。

読者のみなさん、どう思います? あのハ−リ−が女の子に誘われてるんですよ!?

世界の破滅はもう近い・・・。

 

「ハ−リ−おじさん、どうしたんです−? プロレスで遊ぶです−ッ!!」

 

「プッ、プロレスッ!? ゴ、ゴメン、ちょっと急用が・・・」

 

 それを聞いた途端、クルリと回れ右をして急いで逃げ出そうとするハ−リ−。

だが、時既に遅し。 キャルは、ハ−リ−の目前に迫っていた。

 

「え−いっ! うぇすたん・らりあっとです−!!」

 

 ガスッ!!

 

「ギャアアアアアアアッ!!?」

 

 キャルの放ったウェスタンラリアットが、ハ−リ−の喉に吸い込まれる様にHitする。

綺麗な放物線を描き、吹っ飛んでいくハ−リ−。

 

「ううっ・・・」

 

 ガシッ!

 

「!?」

 

「それ−、きゃめるくらっちです−♪」

 

 ギシギシギシ・・・

 

「ヒィィィィィィィィッ!!? ぎ、ギブギブギブゥッ!!!」

 

 バンバンバンッ、と床を叩くハ−リ−の声が聞こえるが、キャルは無視。

ブリッジ要員の方々はその悲鳴を肴に女だけの秘密の話に華を咲かせていた。

 

 ちなみにジュンも彼女の生け贄となっており、

彼も全身の間接という間接バラバラに外れていたという(汗)。

 

「へぇ−、アテナちゃんってすごく頭いいんだ−。

 ・・・やっぱり、大好きな彼の隣に何時もいたいから、某有名国立大学にもくっついていったの?(ニヤリ)」

 

「な、なんですかっ、その大好きな彼っていうのは!?

 ミナトおばさま、からかうのはやめてくださいっ!! ただ、その・・・私はアイツが何やるか心配なだけで・・・(赤面)」

 

「・・・あなたになら、マイトを安心して任せられますね。 母として、これからマイトの世話をよろしくお願いします、アテナさん」

 

「ルリおばさままでぇ! わ、私とマイトは何でもないんですから!!(赤面)」

 

 ミナトにからかわれ、ルリには頭を下げられて焦っているアテナ(ナオの一人娘)。

どうやら、ルリはアテナの事をマイトには相応しいと思っているようだ(笑)。

 

「あ−ッ、アテナ姉赤くなってる−ッ!!(ミチル)」

 

「シッ、静かにッ! 今いい所なんだからッ!!(アルナ)」

 

「・・・アルナお姉ちゃんも好きだね−、他人の色恋沙汰・・・。 自分の事を心配した方がいいんじゃない?(カスミ)」

 

「あらあら、まぁまぁ。 私も興味ありますわ(メイナ)」

 

「・・・・・・(コクコク)」 ← ミル

 

「あ、ミルも〔私も興味あります〕って言ってます。 でも、さっきから何かうるさい様な気が・・・?(ヒサメ)」

 

 好き勝手に喋り出すテンカワ・シスタ−ズ。

もちろん、そこでピクピクと痙攣しているハ−リ−などアウトオブ眼中だ。

・・・いや、意識的に忘れ去っているのね、君達・・・(汗)。

 

 ・・・数分後、全身の間接がバラバラになったハ−リ−の姿が、そこにはあった。

恐るべし、キャルのプロレスフリ−ク・・・(大汗)。

 

 

 

 所変わって、ナデシコ格納庫。

 

「ウリバタケおじさ−ん、ちょっと実験を手伝って欲しいんだけど・・・ダメ?」

 

「何だ、どうしたんだイ−ナちゃん。 この俺に出来る事なら何でも言ってくれ!」

 

 イ−ナのお願い攻撃に、わずか0.03秒で即答するウリバタケ。

所詮男は男、女性(女の子も、である)の頼みを断れるわけがない。

女性のお願いを断る事が出来るヤツを、一度拝んでみたい物である。

 

「よかったぁ、誰も手伝ってくれなくてボク困ってたんだよ。 ・・・じゃあ、このリンゴを頭に乗っけて立っててくれない?」

 

「・・・リンゴ? まあ、いいが・・・どうするんだ?」

 

 何処から取り出したのか、イ−ナはリンゴをポンとウリバタケの頭に乗っける。

これって、どっかで見た事があるような・・・?

 

 ズギュ−ン!!

 

「ひいぃぃぃぃぃッ!? あ、アダムズアップルを俺でやるなぁ!!!」

 

「駄目だよ、ウリバタケおじさん。 動いたら余計危ないよ?」

 

 ウリバタケで銃の練習をする、イ−ナの姿があった。 可愛い顔してやる事は結構酷い。

 

 ・・・数分後、イ−ナが銃弾を全て撃ち終えた時には、ウリバタケは泡を拭いて気絶していた。

何故なら、時々銃弾が顔を掠るからだ。 もしかしなくても、ワザとである(汗)。

やめようね、いくらゴム弾だからって・・・死んだら元も子も無いんだし(大汗)。

 

 

 

「・・・許しませんよ、アカツキさん・・・。 この本を汚した報い、身を持って受けてくださいね・・・。

 この兵法書、探すの苦労したんですよ・・・(怒)」

 

「そうよっ! おかげでマイト兄さん直伝のシチュ−が焦げちゃったじゃないのッ!! 責任取ってくれるんでしょうねぇ!!?」

 

「・・・私の至福の時間、〔十六夜(アキトに貰った大切な刀)の手入れを邪魔するなんて・・・。 

 いい度胸してるじゃない、覚悟は出来てるんでしょうねェ!?」

 

 怒り爆発な御様子のテンカワ・シスタ−ズの三人。 上からアイカ、アズサ、ピュア(あいうえお順)である。

 

「な、僕が何をしたっていうんだい!? 僕は何もしていないよ!!? ・・・って、これじゃ前回と同じじゃないか−ッ!!!??」

 

 たまたま偶然そこに通り掛かったネルガル会長アカツキが、アイカ達三人のイライラをぶつけられる標的となったらしい。

 

「・・・アズサ、あなたからやりなさい」

 

「はいっ、アイカ姉さん! ・・・テンカワ流格闘術! ・・・覇王烈風乱舞ッ!!

 

 ドガガガガガガガガガッ!!!

 

 凄まじい勢いで繰り出される、アズサの拳打と蹴りのコンビネ−ションを、アカツキは一体どうかわせというのだろうか?

アカツキはかわす術もなく、拳打と蹴りの嵐を身に浴びていた。

 

「次は私よっ! ・・・テンカワ流抜刀術・弐の型! 昇龍牙神速剣!!

 

 ゴキャッ!!

 

 下段から上段へと移る鋭い抜刀術を喰らい、天井近くまで吹き飛ぶアカツキ。

今回はちゃんと普通に使っているので、前回の様に切れたりはしない。

 

「ふふっ・・・今回は私の出番が多いわ・・・。

 アカツキさん、これで楽にしてあげる・・・。 ← その科白はヤバイって(汗)

 テンカワ流短刀術! ・・・春雷ッ!!

 

 ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ、ズバッ!!

 

 空中に飛び上がって、アカツキを五連続で切り刻むアイカ。 アイカの振るうナイフに沿って、赤い閃光が走る。

おおっ、初めてアイカの特技が公開されたぞ。 短刀術・・・早さを主体とする剣技である。

 

 スタッ

 

 グシャッ!

 

 華麗な着地を決めるアイカと同時に、アカツキが地面に叩きつけられる。

 

「・・・また一つ、つまらぬモノを切ってしまったわ・・・」

 

短剣にこびりついている血糊を拭き取りながら(汗)、ポツリと呟くアイカ。 これじゃ、どっかの怪盗と同じである。

 

「・・・彼も災難だねぇ、彼女達の前に出てこなければよかったのに・・・」

 

「? ・・・どうしたんですか、ホウメイさん?」 ← ホウメイガ−ルズ一同

 

「いや、何でもないさね。 さあ、とっとと仕込みを片付けるよっ!」

 

「は−いっ!!」×5

 

 とりあえず、倒れているアカツキを無視して仕込みに取り掛かるホウメイ達。

何故なら、彼女達には料理の仕込みという大事な使命があるからである。

いちいち彼に構っている暇はないのだ。

 

 女は強し、と言った所・・・だろうか?

 

「・・・それ、絶対間違って・・・いるぞ・・・(ガクッ)」×4

 

 

 

「・・・というワケなの、マトイおね−ちゃん。 この四人、どうやって治せばいいかな?」

 

「というワケと言ったって・・・(汗)」

 

 ここは、テンカワ・シスタ−ズにあてがわれた部屋。

一人静かに将棋の練習をしていたマトイは、突然のイ−ナ達の質問に面食らった。

ちなみに、彼女はテンカワ家でも珍しい文武両道なのである。

 

「・・・お前達、一体何をしたんだ(汗)? アイカ姉上とピュア姉上もそうです! 一体何をしたんですかっ!?」

 

「それは、ちょっと・・・ねえ?(汗)」

 

「・・・ええ・・・(遠い目)」

 

 微妙に頬が引きつっているアイカとピュアの二人。

 

「・・・イネス母上かヒサメに頼むのが一番の方法だが・・・

 あの二人にこの四人を預けるとなると、恐らく改造人間として蘇るだろうし・・・(汗)」

 

 冷汗をかきながら、呟くマトイ。

マトイの頭の中では、喜んで注射器やらメスやらを振り回す母と妹がいた。

あ、それ大方間違ってない。 あの二人ならやりそう(汗)。

 

「・・・かといって、このまま放っておくのも人道に反するし・・・」

 

 う−ん、と腕を組んで考え始めたマトイ。 いい考えが浮かばないようである。

 

「仕方がない、メイナ姉上に相談してみるとするか・・・」

 

 で、所変わってメインブリッジ。

 

「はぁ、この四人を・・・ですか? それなら、いい考えがありますよ」

 

「本当ですか、メイナ姉上(姉さんetc.)?」

 

 ポン、と手を叩いて言うメイナに、安堵するテンカワ・シスタ−ズ一同。 やはり、頼れる姉である。

 

「みなさんを格納庫に集めておいて下さいね」

 

 訂正、やっぱり何か企んでる・・・この人(汗)。

 

そして、場面は格納庫に移る。 もちろん、メインクル−も集合している。

 

「なんだなんだ、お前たち? こんな所で何をするつもりなんだ?」

 

 アキトの部屋で、最近見つけたテクノの音楽デ−タを聞いていたマイトは、少々不機嫌らしく、ぶっきらぼうに妹達に尋ねる。

その隣には、アテナが心得たようにちょこんと立っていたりする。

 

「ええ、この四人がおかしくなってしまったので、治そうかと思ったんですよ」

 

「「・・・じゃあ、なんで四人は銅線でグルグル巻きにされているんだ?(汗)」」

 

 何故か四人を銅線でグルグル巻きにしていくメイナに、アキトとマイトが冷静に突っ込む。

 

「さて、と・・・準備できましたね。 パヴァさん、お願いします」

 

〔はいは−い! ・・・ポチッとな〕

 

 バチチチチチチチチチッ!!

 

 アイカ専用機、〔ブル−マジシャン〕メインA・Iのパヴァの謎の掛け声と同時に、

ハ−リ−達四人に巻かれている銅線を伝って高圧電流が流れ込む。

 

 ・・・高圧電流?

 

「な、なにやってるの−っ!!?」 ← 全員

 

「えっ? みなさんの体に活力が無いんで、充電しているんですけど、それが何か?」

 

「感電だろそれ!!?」

 

 頭に?を浮かべているメイナに、その場にいる全員が突っ込む。

ウリバタケ達は高圧電流の影響でガイコツが見えてしまっている(笑)。

 

「雷に撃たれると骨が見えるマンガのシ−ンは何回か見たことがあるけれど・・・。

 本当になるなんて思わなかったわね。 実に興味深いわ・・・(にやぁり)」

 

 一人興味深そうにその光景を眺めているのは、説明お姉さんことイネス・フレサンジュその人である。

・・・観察してないで、助けなくていいんですか?(汗)

 

「大丈夫だよ、おと−さん。 ハ−リ−おじさん達なら、これくらいじゃ死なないよ」

 

相転移エンジン直接はヤバいって!(汗) 何かプスプスいってるし!!(大汗)」

 

 黒い煙をプスプス立てているハ−リ−達四人に、慌てて駆け寄るメインクル−。

何故か、ハ−リ−おじさん達なら大丈夫、という部分を妙に強調するイ−ナである。

 

「・・・エ」 ← 炭化した四人(大汗)

 

「・・・エ?」 ← メインクル−一同。

 

「エキゾチッ−−−−−−クッ!!!!!」×4

 

 突然ワケのわからない叫びを上げる四人に、思わずズッコケる一同。

想像してみて欲しい。 炭化して真っ黒焦げになったモノ(元人だけど(汗))が

いきなり奇声を上げれば、誰だってびっくりするはずだ。

 

 エキゾチック:異国情緒があるさまのこと。

         何故ハ−リ−達がこの言葉を叫んだかは、謎である(汗)。

 

「・・・まだ駄目みたいですねぇ。 もう一度・・・」

 

 ポチッ

 

「あがががあがっがががあががっっがが!!!!!」

 

 容赦無くハ−リ−達に高圧電流をもう一度流すメイナ。

ちなみに、テンカワ・シスタ−ズの中で誰を怒らせたら一番怖いか、というと

メイナ(姉さん)と他の姉妹は口を揃えて言うという(大汗)。

 

「これでどうでしょうかね−?」

 

「・・・エ・・・」

 

 メイナが電流を流し終えると同時に、またまた呟き出す四人組。 今度は、何を叫び出すのだろうか?

 

「エクスタシィィィィ−−−−−−!!!!!」×4

 

 エクスタシ−:無我夢中、狂喜、恍惚、快感など。ちなみに、スペルはecstasy(名詞)。

 

「・・・どうしようかルリちゃん、この人達・・・(汗)」

 

高圧電流快感を感じるのでは、マズイのではないでしょうか?(汗) ほっといた方がいいと思いますが・・・(大汗)」

 

「・・・同感・・・(滝汗)」

 

 取り合えず、高圧電流の影響でおかしくなったハ−リ−達四人を格納庫に残し、アキト達ブリッジ要員は早々とブリッジに帰っていた。

たぶん、彼らが狂った原因は、かなりの量の電磁波を浴びた影響だろう(汗)。

後に残るは、いまだに〔エクスタシ−〕等の奇声を上げている炭素の固まり・・・。

何時か、彼らに元に戻れる時が来るのだろうか?

 

 ・・・それは、書いているExcaliber自身でさえわからない・・・(汗)。

 

 

 

「唐突だけど、新乗組員がナデシコに派遣されることになったわ」

 

「・・・ホントに唐突ですね、エリナさん」

 

「今の今まで忘れてたんだね、エリナ・・・」

 

 場所は戻ってメインブリッジ。

ブリッジに着いた時、エリナが突然思い出したかの様に宣言したため、

ユリカとラピスの二人に突っ込まれていた。

 

 その近くでは、ルリ、メグミ、ミナト、サラ、アリサの四人が呆れたようにエリナを見つめている。

 

「うるさいわよ、艦長にラピス。 ・・・いいわよ、入ってらっしゃい」

 

 プシュ−・・・

 

 エリナと声と同時に開いたドアから現れたのは、ラピスと同じか一つくらい下の歳恰好の、灰色の長い髪と瞳が特徴的な少女だ。

何よりも、彼女の手にはIFSコネクタ−の特徴ある文様がハッキリと浮き出ている。

 

「初めましてみなさん、ごきげんよう。 わたくし、ミ−シャ・アレクサンドリアともうしますの。

 役職は、オモイカネのサブ・オペレ−タ−ですわ。 以後、お見知りおきの程を・・・」

 

と、中世のお姫様の様な年齢不釣り合いの口調で自己紹介するミ−シャ。

何処から取り出したのか、扇子でゆっくりと優雅に自分を扇いでいる。

 

「は、はあ・・・。 よ、よろしくね、ミ−シャちゃん」

 

 取り合えず、挨拶をするユリカ達一同。

が・・・ミ−シャの目は、ある二人に対しては憎悪のこもった鋭い目で睨んでいた。

 

「ねえルリ、私達何かやったかな? さっきから睨まれてるんだけど・・・」

 

「・・・さあ?」

 

 ・・・そう、電子の妖精姉妹ことルリとラピスの二人である。

初対面なのに、何故恨まれなければいけないのか、心当たりがなかった。

と言う風にルリとラピスが話していると、ツカツカツカという勢いでミ−シャが二人の元にやってくる。

 

「・・・ホシノ・ルリに、ラピス・ラズリ・・・ですね。

 あなた達なんかにハ−リ−様は渡しませんことよ!!

 

「「・・・はぁ?」」

 

 ビシッという効果音が似合いそうな勢いで、二人に指を突きつけるミ−シャに、ルリとラピスは訳が分からない、という顔で答えた。

 

「大胆ねぇ、最近の子供は(これは面白い事になって来たわ・・・)

 

「ミナトさん、そういう問題ですか?

 (彼女の出現の影響か何かで、ルリちゃんかラピスちゃんの気持ちがハ−リ−君に移ってくれれば儲け物なんだけどなぁ・・・)

 

「全く、最近のお子様って進んでるわね・・・(・・・ライバルが減るかもしれないワケだし、これは歓迎するべき事ね・・・)

 

「一途なんですね、ミ−シャちゃんって・・・

(ふふふ・・・ルリさん達がハ−リ−君達の方に傾いてくれれば、それだけ私がアキトさんをモノに出来る確率が高くなるワケですね・・・)

 

「・・・オ、オレはそんな話に興味ないからな(こっ、これはチャンスだ、オレとアキトの未来の為にも頑張れよ、ミ−シャってヤツ)

 

「ミ−シャちゃんって、大人なんだね・・・(でも、アキトは渡さないからねっ! アキトは私の王子様だもんっ)

 

 言っている事と考えている事が全く矛盾しているミナト、メグミ、サラ、アリサ、リョ−コ、そしてユリカの五人。

自分に対してプラスになる事しか考えていない。

 

「ハ−リ−様はわたくしにとって白馬に乗った王子様にも等しい存在なのです。 ・・・お二人には、負けませんことよっ!!!」

 

 ふんっ、と胸を張るミ−シャだが、彼女が胸を張って威張っても

可愛らしいとしか言いようがなく、ブリッジにいた全員の微小を誘う。

 

 ・・・でも、何故にあのハ−リ−が王子様?

世の中は不条理に満ちているモンなんだなぁ・・・(しみじみ)

 

「ああ、なるほど・・・。 そういうコトね・・・」

 

「そうですか・・・それでは、ちょっとこちらにいらして下さい、ミ−シャさん」

 

「ふんっ、買収など笑止千万ですわっ!

 このミ−シャ・アレクサンドリアの、ハ−リ−様に対する愛は海の様に深く、山の様に高いんですのよっ!!

 

 ちょいちょいと、ミ−シャを手招きしているルリを、思いっきり睨み突けながら、ルリの元に歩いていくミ−シャ。

そして、そのまま三人はブリッジの物陰へと消えていった。

 

「・・・気になるわね・・・」×6

 

 ブリッジにいた六人が呟いてから数分後・・・。 三人が物陰からメインクル−の前に現れた。

御丁寧に、ミ−シャはルリとラピスの腕を抱えていたりする。 一体どういう風の吹き回しなのだろうか?

 

「わかっていただけましたか、ミ−シャさん?」

 

「応援するからね、ミ−シャ」

 

「はいっ! ありがとうございます、ホシノ・ルリさんにラピス・ラズリさんっ!!

 いえっ、これからはルリお姉様にラピスお姉様と呼ばさせて頂きますわっ!!!(ちなみに彼女は五歳である)

 

 さっきまで毛嫌いしていた二人を、いきなりお姉様と呼ぶようになったミ−シャ。

・・・どうやら、彼女達の間でハ−リ−に対する裏取引があったらしい(汗)。

 

 ・・・でも、お姉様はないんでないの、ミ−シャよ(汗)。

 

 プシュ−・・・

 

エクスタシィィィィ−−−−−!!!!

 ・・・じゃなかった、早く仕事しなくちゃ・・・。 ああ、まだ体がビリビリする・・・」

 

 タイミングがいいというか悪いというか(敢えて筆者がそうしている説アリ)体のところどころがコゲているハ−リ−がブリッジに上がってくる。

・・・どうやら、エクスタシ−という言葉が口癖になってしまったらしい(汗)。

 

「!? ・・・ハ−リ−さま!!?」

 

この声を聞いた瞬間、物凄い勢いでハ−リ−の声が聞こえた方向に振り向くミ−シャ。

彼女のまわりにバラの花びらが現れるくらいだから、この世の幸せは私のモノよ、ってな感じで凄く嬉しそうだ。

 

「! ・・・き、君は・・・ミ−シャ・アレクサンドリアさん!?」

 

 一方、こちらは物凄く会いたくなかったらしいハ−リ−。

冷汗ダラダラ、顔の縦線ベタ化、おまけに背中に影までしょってしまっている。

もしもこの世に〔自分がどれだけ不幸かコンテスト(なんだそりゃ?)があれば、

彼はもちろん上位入賞、ていうか優勝(したくはないだろうが)出来るであろう。

 

「ハ−リ−様−っ、お会いしとうございましたわ−−−っ!(歓喜)」

 

「僕は会いたくなかったよ−−−−っ!(涙)」

 

 ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ・・・・・・!

 

 泣き叫ぶハ−リ−は、モノ凄い勢いでハ−リ−に迫るミ−シャを紙一重でかわし、

得意のハ−リ−ランニング(*ハ−リ−ダッシュと同意味)でブリッジの外に走り去っていく。

 

「チィッ、また逃げられましたわっ!! ・・・逃がしませんことよっ、ハ−リ−様ッ!!!」

 

 ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ・・・・・・!

 

 言うが早いか、ハ−リ−並みの速度で、去っていったハ−リ−を追い駆けるために走り始めるミーシャ。

・・・いつも思うのだが、いったい彼らはどういう脚力をしているんだろう?

 

「・・・リテルゴルロケットでも、使ってるんじゃないんですか?」

 

「ルリ、ハ−リ−なんかすぐ戦死しちゃうだろうから役に立たないよ。

 アキトくらいじゃないと絢爛舞踏章は取れないだろうし。

 ・・・そうだね、極楽トンボ章ならハ−リ−でも取れるんじゃない?」

 

 あの−、お二人さん? 話題は〔ガンパレ〕じゃなくてさぁ、ハ−リ−とミ−シャの二人なんだけどさ。

 

「うわ−・・・あの二人、スゴい事やってるよ」

 

「どれどれ?」×ブリッジにいる人達。

 

 そう、その二人はスゴい事やっていた。

いまやナデシコ内を走る暴走特急と化した二人は、他人の迷惑も考えずに

ひたすら走って走って走りまくっていたのだ。

 

 

ハ−リ−&ミ−シャの暴走による、主な被害者リスト(ば−い・ラピス)

 

 

 

 ・・・総勢39名の被害者である。 何て大迷惑なんだろう・・・(汗)。

 

 関係ない話だが、ミ−シャの部屋はハ−リ−と同室という事に決まった。

もちろん、黒幕は言わずと知れた某電子の妖精さん姉妹である。

ちなみに、この件に関しては、ハ−リ−が反対しただけで、残りのクル−は「面白そうだから」という一言で即決してしまったりする。

 

 ・・・教育に悪いと思うんだが、いいのだろうか?

 

 

 

 

 パチリッ!!

 

「あ、兄上、その手だけは勘弁してください(汗)。 ・・・むっ? ・・・これは・・・?」

 

「どうしたマトイ、何かあったのか? ・・・ついでに王手だぞ」

 

 ナデシコ食堂で将棋をしていたマイトとマトイの二人だが、急にマトイの動きが止まった。

 

「・・・地震はル−ル違反だぞ、マトイ。 わかってるだろ?」

 

 急に動きが止まったマトイを怪しんで、予めマイトはマトイに釘を刺しておく。

ちなみにマイトが言っている地震とは、将棋盤を揺らしたりして駒をグチャグチャにする事を指している。

ちなみに、これをやると二度と勝負してもらえなくなりますので、使用上の注意を読んでから行ってください。

 

「違います、兄上(汗)。 ・・・キリンが、出たがっている」

 

「・・・キリン・・・って、確かマトイちゃんの第二の人格だったっけ・・・?」

 

「そうよ、アキトおじさん。 もう一人のマトイちゃんよ」

 

と、これはアキトとアテナ。 彼らはマイトとマトイの間でお茶を啜りながら、二人一緒にあ−だこ−だ口を挟んでいたのだ。

 

「そう急かすな、キリン。 ・・・今変わるぞ」

 

 目を閉じ、結ってある髪を解くと、ほどなく母譲りの真紅の髪の毛が鮮やかなエメラルドグリ−ンに変わっていく。

(ちなみにマトイの母親は、あの真紅の羅刹である北斗さんである)

 

「初めて読む読者様初めまして、そして前から読んでくれている読者様久し振り。

 テンカワ・マトイの裏の人格、テンカワ・キリンで−っす!」

 

「「「・・・何処に向かって言ってるんだ(のよ)、キリン(ちゃん)・・・(汗)」」」

 

虚空に向かって自己紹介しているキリンを、思いっきり怪しんでいるアキト、マイト、アテナの三人。

人格が入れ替わっただけで、こうも変わる物かと、感心していたりする。

 

「気にしない気にしない、そんなの気にしてたらいつかハゲちゃうよ

 じつはね、私のシックス・センス(第六感の事)がピピッときたのよ。

 あたしの第六感って、かなりの確率で当たるのよね−」

 

 よく分からないが、彼女の言っている事は予言みたいな物であろう。

実はこれが彼女、キリンの特技・・・というか能力である。

ちなみに的中率は99.8%で、ほぼ100%と言ってもいいだろう。

 

「ふ−ん。 ・・・で、何て出たんだ?」

 

爆弾娘、無愛想男、ナンパ男、天然少女、そして箱入り娘って出たわ。

 あとは・・・料理を食べて寝込んでいる5人の青年の姿が見えるわね。

 ・・・駄目、あとは分からない。 ・・・今回は、何だか抽象的ねぇ・・・」

 

と、そこまでキリンが言った時、メグミの緊張した声が艦内放送で流れた。

 

〔前方100km先に、ボソン反応を確認! ・・・戦艦クラスです!! 艦内警戒パタ−ンAに移行してください!!〕

 

「・・・ゆっくりしているヒマはなさそうだ。 急いでブリッジに行くよ、三人とも」

 

「りょ−かい(・・・命拾いしたな、マトイ)

 

「わかりました(さすがマイトね、落ち着いているわ)

 

「わかっています、父上(あぶなかった・・・)

 

 アキトの声に、マイト、アテナ、そして何時の間に入れ替わったのか、マトイが返事をする。

そして一瞬の後、彼ら三人の姿は忽然と消えた。 後に残るのは、虹色に輝くボソンの輝きだけ・・・。

 

 

 シュオンッ!!

 

「きゃっ!? ・・・アキトさんっ! ジャンプで直接跳んでこないで下さいっ!! びっくりするじゃないですか!!」

 

 直接ブリッジにジャンプアウトしたアキト達四人に驚いて、可愛い抗議の声を上げるルリ。

 

「そんな悠長な事も言ってる場合じゃないでしょ、ルリちゃん。 ・・・今は、その戦艦の事だけを考えないとね」

 

 ナデシコのちょい先に現れた戦艦から、目を離さずにルリに詫びるアキト。

その目線の先には、ナデシコに似た純白の戦艦が悠然と佇んでいた。

 

「そうだよ、ルリ母さん。 ・・・でも、ボソンジャンプする戦艦って・・・まさか、ね。

 いま思えば、あの予言ってアイツらの事・・・なワケないか」

 

「でも、有り得ないことはないわよ、マイト」

 

「そうですね、アテナ先輩」

 

 どうやらマイト達はボソンジャンプする戦艦に心当たりがあるらしい。

その事を尋ねようとしたアキトだったが・・・。

 

 ピピピッ!

 

 ・・・突然謎の戦艦から送られてきた通信に邪魔されて、結局聞けず仕舞いだった。

 

〔・・・こちらは、次世代ナデシコ型戦艦〔エンペラ−パレス(皇帝の宮殿)だ。

 悪いが、ナデシコとドッキングさせてもらいたいのだが・・・〕

 

〔全くっ、スコ−ルったら相変わらず無愛想なんだからっ! でも、そこがまたカッコいいんだけどね(はぁと)。

 ・・・おほん、この時代のナデシコのみなさん初めまして、私はムラサメ・ユリっていいます〕

 

〔うひゃ−っ、美人がいっぱいだ(ウキウキ)

 

〔・・・十郎太っ! 何であなたは何時も女性にしか興味がないの?

 ・・・あ、すみません。 わたしはシルフィ−ヌ・レインフォ−ドともうします。 初めまして・・・〕

 

〔マ−くん、この私から逃げようっていうのは甘過ぎるのよ。 もちろん、覚悟は出来てるわよねぇ・・・?〕

 

 五人それぞれの自己紹介(なのか?)に、驚くナデシコクル−一同。

どうして、こうナデシコっていうのは濃いキャラクタ−が多いのだろうという謎が彼らの間を駆け抜けていった。

 

 

 

 

後編に、続くっ!!